「ネット銀行」検索者の“気になりごと”をデータで分析。金利や手数料などの数字をシビアに検討か

「ネット銀行」検索者の“気になりごと”をデータで分析。金利や手数料などの数字をシビアに検討か

実店舗をもたず、インターネット上で取引を行うことができるネット銀行。ネット銀行に関心を寄せる人々はどんなことが気になっているのでしょうか? 本記事では、検索ワードや訪問されたWebページから、ネット銀行に関する気になりごとを紐解いていきます。


「ネット銀行」検索者数は、オミクロン株拡大時に増加傾向が見られた

実店舗をもたず、インターネット上での取引を中心としているのがネット銀行。店舗がないことにより固定費を削減することができるため、取引手数料は安く、金利は高い傾向にあるようです。また、インターネット上でサービスを完結させているため、店舗での待ち時間や営業時間を気にせず利用することができるなど、通常の銀行にはないメリットもあります。

本記事ではそんなネット銀行にまつわる関心を、Web行動ログから分析していきます。なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用います。

まず、以下のグラフは2021年3月から2024年2月における、「ネット銀行」検索ワードでの検索者数の推移を示しています。

「ネット銀行」の検索者数
期間:2021年3月-2022年2月
デバイス:PC&スマートフォン

「ネット銀行」の検索者数
期間:2022年3月-2024年2月
デバイス:PC&スマートフォン

過去3年間の検索者数の推移を見ると、2022年の1月から3月にかけて少し検索者数が伸びているのが見て取れます。

この期間には、新型コロナウイルスの「オミクロン株」が急速に拡大していました。2022年2月にはこの1ヶ月のみで国内の累計感染者数が200万人も増加。身近に罹患してしまう人が増えたため、感染対策への意識がより高まったのではないでしょうか。そこで、対面での手続きを必要としないネット銀行への関心が高まったのではないかと推察できます。

それ以降は、全体的に横ばいから緩やかな減少傾向にあります。ネット銀行に関心を寄せている人は常に一定以上いるものの、コロナ禍で高まったニーズが落ち着きつつあるのかもしれません。

ネット銀行各社のセッションシェアはSBI系列が50%以上を占める

次に、ユーザーがネット銀行に関してどんなことを検索しているのか見ていきます。以下の表は、「ネット銀行」の掛け合わせワード(一緒に検索された言葉)を検索者数が多い順に示しています。

「ネット銀行」の掛け合わせワードランキング
期間:2023年3月-2024年2月
デバイス:PC&スマートフォン

もっとも検索されたのは「SBI」となっていました。SBI系列のネット銀行には、住信SBI銀行とSBI新生銀行があります。“ネット銀行といえば”で想起されやすい高いブランド力がうかがえます。

この2つのネット銀行の業界におけるポジションについては、Dockpitの「業界分析」機能でも把握することができました。以下のグラフは、主要なネット銀行サービスにおいて、Dockpitのカスタム業界分析機能を用いて、Webサイトセッション数でのシェアを調査したものです。すると、住信SBI銀行とSBI新生銀行があわせて50%以上を占めていることがわかります。

ネット銀行各サービスの業界シェア(セッション)
期間:2023年3月-2024年2月
デバイス:PC、スマートフォン

ここで、先ほどの「ネット銀行」検索における掛け合わせワードランキングを再度見てみると、「比較」や「おすすめ」「金利」など、どのブランドを利用するかの検討材料を求めているようなワードが並んでいます。ネット銀行においては開設が手軽な分、金利やその他サービスなどをしっかり吟味したいと考える方が多いのではないでしょうか。

「ネット銀行」検索者の情報収集のポイントは? “比較記事を比較”してみる

次は、Web上の比較記事について深掘りしていきます。

先ほどみた「ネット銀行」と一緒に検索されやすい言葉の中に多かった「比較」という検索から、検索者がどんなWebページを訪問しているかを見ていきましょう。

以下は、「ネット銀行 比較」という検索から訪問されたWebページを、訪問者数が多い順に示しています。

検索ワード「ネット銀行 比較」から流入したwebページ
期間:2023年3月-2024年2月
デバイス:PC、スマートフォン

ネット上には多くの比較記事が存在していますが、1位のダイヤモンドオンラインが2位以下に大きく差をつけて閲覧されています。ユーザー数のみならず、直帰率(そのサイト内で1ページしか見なかった割合)も低く、平均滞在時間も他と比較して長くなっていました。

ダイヤモンドオンラインとその他の記事を比較して分析すれば、ユーザーのネット銀行に対するニーズが見えてくるかもしれません。そこでここからは、実際に比較ページを訪問して、違いを考察していきます。分析したのはもっとも訪問されていたダイヤモンドオンラインの記事と、2番目のmybest(マイベスト)の記事です。

まずはダイヤモンドオンラインの方から見てみます。

ひとつの銀行の情報が1画面から少しのスクロール以内にまとまっています。画面内の情報量は比較的多いですが、金利や手数料など、掛け合わせワード上位に登場した情報が赤字で強調されています。

また、連携している証券サービスを紹介している部分もあります。このように、関心の高い情報にすばやくアクセスできる点が、長い平均滞在時間や低い離脱率に貢献しているのではないでしょうか。

続いて、訪問数が2番目に多いmybestのページを見てみます。

目次を読んでみると、はじめに「ネット銀行の選び方」というパートがあり、その後各銀行の解説が続くという構成でした。

ページの3分の1ほどスクロールすると各銀行の解説があります。ダイヤモンドオンラインと違い、画像が多く使用されており銀行ひとつあたりの記事の長さは長めになっています。

訪問数が最も高いサイトと他のサイトを比べてみると、前者の方が

関心度の高い情報(金利など)を強調している
・ひとつの銀行の情報が一画面程度にまとまっている
・他の情報を廃し、銀行の情報に少ないスクロールでアクセスできる
・連携する証券サービスを同時に紹介している

などの違いがありました。

以上のことから、ネット銀行に関心を持っている人のなかには

・金利や手数料を重視
・情報へ素早くアクセスしたい
・自身の判断基準をすでに持っている(=選び方、などの情報は必要ない)


といった特徴をもつ方が多いのかもしれません。

独身・子なし世帯で関心度が高い? 属性別に分析

ここまで、ネット銀行に関心を持っている人が、どんな点を重要視しているか調べてきました。ここからは視点を変えて、どんな人がネット銀行に興味を持っているかを調査します。

まずは、性別と年代で分類してネット銀行への関心を見ていきます。以下は性別と年代ごとの検索者数の割合を示したものです。

「ネット銀行」の男女・年代別検索者割合
期間:2023年3月-2024年2月
デバイス:PC、スマートフォン

ネット利用者全体と比べると、30〜50代の女性の検索者割合が多いことがうかがえました。家計を管理し、少しでも手数料を安く済ませる方法を検討する女性の姿が見えてきます。

続いて、「ネット銀行」の掛け合わせワード(同時に検索された言葉)における属性別の違いも確認してみましょう。以下の図は、縦軸に年代、横軸に性別をとり、各掛け合わせワードがどの性別、どの年代に検索されやすいかを示したものです。

「ネット銀行」検索者の属性別マップ
期間:2023年3月-2024年2月
デバイス:PC、スマートフォン

図の下側、若い世代には「審査」、「給与振り込み」、「口座」などといった掛け合わせワードが並んでいます。これから口座を開設し、給与の振込先などメインの銀行として使いたい意図を示すような言葉が並びます。

一方、比較的高年代の女性では「相続」や「死亡」、「解約」などといったワードが並んでいました。家計を管理している女性像が浮かんできます。こうした検索者は、自分自身や夫に何かあったときのこと、そしてその際の子供への相続はどうなるのかといった点を想定していると推察できます。ネット銀行選びでもしっかりと将来を見据えて検討をすすめるユーザーの姿が見えてくるでしょう。

続いてはさらに視点を変えて、配偶者や子供の有無で分類してみます。以下のグラフはネット利用者全体と「ネット銀行」検索者の未婚・既婚の割合の比較です。

ネット利用者全体と「ネット銀行」検索者の未婚・既婚割合
期間:2023年3月-2024年2月
デバイス:PC、スマートフォン

未婚・既婚の割合がネット利用者全体と比べ逆転しています。独身者の方がネット銀行に関心を示す割合が高いようです。手続きや利用が手軽な点が、1人で生活することが多い未婚の方にマッチしているのではないでしょうか。

ネット利用者全体と「ネット銀行」検索者の子供の有無の割合
期間:2023年3月-2024年2月
デバイス:PC、スマートフォン

未婚と子供なしでは属性が被る部分がありますが、ネット利用者全体に比べ、ネット銀行に関心を持つ人は子供を持たない方に多いようです。裏を返すと、子供を持つ人は対面の手続きが必要だったりしても、実店舗があり信頼しやすい通常の銀行を選びやすい傾向があるのかもしれません。

まとめ

今回は、実店舗を持たない銀行形態であるネット銀行にまつわる関心を調査してきました。
まとめると、以下のようなことがわかりました。

ネット銀行に関心があるユーザーは……
金利や手数料など数字の部分が気になる
・比較の際は上記のような情報がコンパクトにまとまっていると高評価
・同時に証券(投資)に関心を持っているかもしれない

ネット銀行に関心をもちやすい属性は……
・給与振り込みなどに使いたい若い男性
家計を管理しているような30代以上の女性
・独身や子供のいない世帯

以上のような特徴が見えてきました。

ITの進歩が著しい現代において、オンラインで全てを完結できるネット銀行はひとつの進歩の象徴と言えます。そんな新興サービスの利点やデメリットを理解しようとするユーザーの姿やニーズを捉え、適切なコミュニケーションを行うことが重要なのではないでしょうか。

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この記事のライター

趣味はアカペラ・ゲーム・謎解き。

大学で経済学を学びながら、マナミナのライターを務めています。
ライター歴は浅いですが、Z世代のならではの視点をお届けできるよう頑張ります!

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