Z世代による新しいミニマリズム「アンダーコンサンプション・コア(過小消費コア)」とは | 海外トレンドに見るビジネスの種(2024年9月)

Z世代による新しいミニマリズム「アンダーコンサンプション・コア(過小消費コア)」とは | 海外トレンドに見るビジネスの種(2024年9月)

海外からやってくるトレンドが多い中、現地メディアの記事に日々目を通すのはなかなか難しいもの。そこでマナミナでは、海外メディアの情報をもとに世界のトレンドをピックアップしてご紹介します。今回は、Z世代を中心に広がっている消費に関する価値観「アンダーコンサンプション・コア(過小消費コア)」について取り上げます。


今あるものを大切に使う|アンダーコンサンプション・コア(過小消費コア)

今やSNSはインフルエンサーによる購入品紹介や商品プロモーションで溢れています。そのようなコンテンツから実際に購買意欲をそそられたり、さらに商品の購入まで至った経験がある人も多いのではないでしょうか。

「アンダーコンサンプション・コア(過小消費コア)」とは、そんな過剰とも言える消費を促される状況に抗おうとするムーブメントです。例えば、すでに持っているモノを長く大切に使い続けたり、トレンドに流されて無駄な買い物をしないことを動画を通じて伝えています。2024年8月頃からアメリカのZ世代やミレニアル世代を中心に共感を呼びTikTok上でトレンドとなりました。

#underconsumptionのタグをつけて投稿されたTikTok動画には、何年も履き古した靴や、古着屋で買ったもの、化粧品のチューブをハサミで切って中身を全部使い切る様子などが紹介されています。他にも、インフルエンサーがたくさんの化粧品をレビューする動画とは反対に、化粧品の種類につき1つずつしか持っていないことを紹介するような動画も多く見られます。

たくさんの物をコレクションしたりトレンド商品をおすすめする動画をSNS上で日常的に目にしていると、それが普通の消費のあり方だと錯覚してしまいそうになりますが、アンダーコンサンプション・コアは、それが決して普通ではないということを気づかせてくれるものとなっています。

サステナブル志向と節約意識の高まりが共感の鍵に

なぜ若い世代の間でアンダーコンサンプション・コアの価値観が広がり話題となっているのでしょうか。その背景には、環境問題への関心の高まりや、昨今の厳しい経済状況があげられます。

ヴィンテージ古着を販売するオンラインショップ「ThredUp」が2022年に行った調査(※)によると、Z世代の65%が洋服を購入する際によりサステナブルな買い物を心がけたいと回答しています。しかしその一方で、Z世代の3分の1がファストファッションに依存していると感じており、回答者の72%は2021年にファストファッションを購入したという結果が出ています。なるべく環境に配慮したい気持ちと、過剰な消費主義にどうしても抗えないというジレンマが生じていると言えます。そのようなジレンマがある中で、アンダーコンサンプション・コアの投稿は消費主義に流されない生活の良さを確かめ合うような場所にもなっています。

※ thredUP’s Gen Z Fast Fashion Report
https://newsroom.thredup.com/gen-z-fast-fashion-report
2022年の調査。アメリカのZ世代(16〜25歳)1,989人が対象。

また、インフレや学費ローンの返済から生じている経済的な負担も、Z世代やミレニアル世代の消費に対する価値観に影響を及ぼしています。経済的なプレッシャーを感じている層にとって、商品を大量購入して紹介するインフルエンサーの生活はもはや現実的ではないと感じるため、リアルな生活を反映しているアンダーコンサンプション・コアの投稿が共感を呼んでいます。

中には、アンダーコンサンプション・コアの投稿で見るような、元々持っているものを再利用したり最後まで使い切ることは当たり前の習慣で特別新しいことでもないため、代わりに「ノーマル・コンサンプション・コア」と呼ぶべきだという声もあがっています。SNS上には商品の購入を促すようなコンテンツが多いことから、むしろ一般的な消費のあり方が目新しく見えるという現象が起こっています。

従来のミニマリズムやディインフルエンシングとどう違う?

アンダーコンサンプション・コアに似た価値観に「ミニマリズム」があります。ミニマリズムとは、身の回りのものを必要最小限に減らすことでシンプルな暮らしを目指すことを指します。多くのものを持つことが生活の満足度や心地良さに繋がるわけではない、という考えがどちらにも共通しています。アンダーコンサンプション・コアは、消費主義的なインフルエンサー文化を踏まえた上で、今の若い世代に刺さるコンセプトとして生まれ変わった新世代のミニマリズムと言えるでしょう。

また、2023年には「ディインフルエンシング(deinfluencing)」という、買わない方が良い商品を呼びかける投稿がトレンドになりました。買うべき商品をおすすめするインフルエンサーとはまさに逆を行くムーブメントです。

ディインフルエンシングがある特定の物を買わないように呼びかける一方で、アンダーコンサンプションはすでに持っているものを大切に使うという意味合いがプラスされています。このように形を変えながら、過剰消費に対抗するような価値観が共感を呼び、広がり続けています。

【参考】
https://theconversation.com/understanding-underconsumption-core-how-a-new-trend-is-challenging-consumer-culture-235417
https://www.theguardian.com/fashion/article/2024/aug/07/it-is-ok-to-be-content-with-your-simple-life-is-underconsumption-core-the-answer-to-too-much-shopping
https://www.cnbc.com/2024/08/19/what-tiktoks-underconsumption-core-trend-means-for-your-money.html
https://sustainablyinfluenced.com/2024/07/22/what-is-underconsumption-and-why-is-it-trending/

この記事のライター

大学ではポルトガル語と言語学を専攻していました。
趣味は、海外エンタメ情報の追っかけとおうちでラテアート修行をすることです。

関連するキーワード


海外トレンド Z世代

関連する投稿


タイパとは言わないZ世代 効率化した先にもとめる"非効率"【SHIBUYA109エンタテイメント調査】

タイパとは言わないZ世代 効率化した先にもとめる"非効率"【SHIBUYA109エンタテイメント調査】

株式会社SHIBUYA109エンタテイメントは、同社運営する『SHIBUYA109 lab.(シブヤイチマルキュウラボ)』にて、15~24歳のZ世代を対象に「Z世代の時間の使い方に関する意識調査」を実施し、結果を公開しました。


Z世代は約4割がスマホのみで業務用の資料を作成!内2割弱が"ほぼ毎日"の頻度で【アデコ株式会社調べ】

Z世代は約4割がスマホのみで業務用の資料を作成!内2割弱が"ほぼ毎日"の頻度で【アデコ株式会社調べ】

アデコ株式会社は、全国のX世代・Y世代・Z世代の3世代の働き手を対象に、働き方や仕事に対する考え方についての比較調査を実施し、結果を公開しました。


Will TikTok Lite & its point system revolutionize social media business? Comparative study with TikTok user data

Will TikTok Lite & its point system revolutionize social media business? Comparative study with TikTok user data

TikTok Lite, an app that allows users to engage in Poi-katsu by watching videos, has been attracting attention. Although a slightly modified version of TikTok, it is just as popular as TikTok. We will analyze and compare data from TikTok Lite and TikTok users to uncover the factors behind TikTok Lite’s popularity.


副業をしているZ世代は約1割!副業内容ではサービス業(接客・販売)が最多【僕と私と調査】

副業をしているZ世代は約1割!副業内容ではサービス業(接客・販売)が最多【僕と私と調査】

僕と私と株式会社は、全国のZ世代・ミレニアル世代を対象に、「マルチワークと幸福度」に関する意識調査を実施し、結果を公開しました。


Z世代の25%は間食が主食?NEW STANDARD、Z世代&ミレニアルズの食習慣に関する意識調査を実施

Z世代の25%は間食が主食?NEW STANDARD、Z世代&ミレニアルズの食習慣に関する意識調査を実施

NEW STANDARD株式会社が運営するシンクタンク「NEW STANDARD THINK TANK」は、全国の10代〜50代以上の男女を対象に、食習慣に関する意識調査を実施し、結果を公開しました。


最新の投稿


取り上げられるプレスリリースは「内容の興味深さ」!共感を呼ぶストーリーや他社と異なる独自性が重要【PRIZMA調査】

取り上げられるプレスリリースは「内容の興味深さ」!共感を呼ぶストーリーや他社と異なる独自性が重要【PRIZMA調査】

株式会社PRIZMAは、メディア関係者を対象に、「プレスリリースに関する調査」を実施し、結果を公開しました。


宅配サービスの直近の利用率は約4割でコロナ禍であった2年前より低下 受け取り方は「自宅で手渡し」が依然として高い傾向【クロス・マーケティング調査】

宅配サービスの直近の利用率は約4割でコロナ禍であった2年前より低下 受け取り方は「自宅で手渡し」が依然として高い傾向【クロス・マーケティング調査】

株式会社クロス・マーケティングは、「宅配」に関わる利用実態や意識・行動に関する調査として、全国47都道府県に在住する20~69歳の男女を対象に「宅配に関する調査(2024年)」を実施し、結果を公開しました。


博報堂DYホールディングスと博報堂テクノロジーズ、デジタルクリエイティブ制作における戦略や企画の効率化・高度化を行う「CREATIVE BLOOM PLANNING」を開発

博報堂DYホールディングスと博報堂テクノロジーズ、デジタルクリエイティブ制作における戦略や企画の効率化・高度化を行う「CREATIVE BLOOM PLANNING」を開発

株式会社博報堂DYホールディングスと株式会社博報堂テクノロジーズは、統合マーケティングプラットフォーム「CREATIVITY ENGINE BLOOM (クリエイティビティ エンジン ブルーム)」に、デジタルクリエイティブ制作における戦略や企画の効率化、高度化を行う「CREATIVE BLOOM PLANNING」を開発し、社内での利用を開始したことを発表しました。


約6割がタレント起用の広告を見てブランドをより好きになった経験あり!消費者の購入意欲度を高めることや購買行動を促す効果も【エイスリーグループ調査】

約6割がタレント起用の広告を見てブランドをより好きになった経験あり!消費者の購入意欲度を高めることや購買行動を促す効果も【エイスリーグループ調査】

エイスリーグループは、Z世代・Y世代の男女を対象に、タレント起用の広告が消費者に与える影響を調査し、結果を公開しました。


電通デジタルと電通、SmartNewsアプリ内「記事閲読行動データ」の活用で、生活者のモーメントを捉えたアプローチを実現

電通デジタルと電通、SmartNewsアプリ内「記事閲読行動データ」の活用で、生活者のモーメントを捉えたアプローチを実現

株式会社電通デジタルと株式会社電通は、スマートニュース株式会社と共同で、ユーザーのプライバシーを保護しながら安全にデータ分析ができるデータクリーンルーム「SmartNews Ads Data Pot」を構築。スマートニュース株式会社が運営するニュースアプリ「SmartNews」の記事閲読行動データなどを活用し、生活者のモーメントを捉えたマーケティング支援を開始したことを発表しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ