菓子専門商社のリーディングカンパニー「山星屋」
―― 株式会社山星屋様には、日頃からWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を活用いただいています。本日は改めてお取り組みの詳細をお伺いできればと考えていますが、まず貴社の事業内容についてお聞かせいただけますでしょうか。
山星屋 鈴木 美和氏(以下、鈴木):当社は、丸紅グループの菓子専門商社のリーディングカンパニーとして、創業以来一貫して菓子流通業界に携わっています。全国約1,100社の菓子メーカー様と約500社のお取引先様をつなぎ、お取引先様に適した商品・企画提案などのコンサルティング事業を展開しています。
株式会社山星屋 コーポレートサイトより
鈴木:私が所属しているマーケティング部には、主に4つの業務があります。
1つ目は、山星屋の一般的な取引先企業である小売業様と、商品を仕入れているメーカー様向けに、菓子市場の年次変化や売れ筋商品、トレンドといったマーケティング情報を発信しています。また、全国各拠点の営業から集めた成功事例も共有し、効果的な売り方や売り場作りの情報を案内しています。
2つ目は、リテールサポートと呼ばれる業務です。各小売業様の特性やターゲット市場を分析し、最も効果的な商品提案のタイミングや内容を営業と共に提案しています。
3つ目は、商品開発のサポートです。小売取引先のPBや企業留め型商品の開発と、当社オリジナル品にあたる株式会社モントワールの開発サポートの2軸を行っています。市場分析からヒット商品を生み出す法則を見出し、提案しています。
最後は、展示会の企画です。菓子メーカー様約160社の協力のもと、1年に1度「アリスタフェア」という国内最大級の菓子専門の展示会の他、スーパーマーケットトレードショー、ドラッグストアショーの企画~全体進行も行っております。
株式会社山星屋 マーケティング部
マーケティング2課 課長 鈴木 美和氏
潜在的なニーズの発掘も トレンド予測の精度を高められる
―― マーケティングで抱えられていた課題や、Dockpit導入の経緯をお聞かせください。
鈴木:もともと活用していたPOSデータやリサーチ企業から得ていた販売データでは、バックキャスト型(未来から逆算して計画を立てる)アプローチが難しいという課題がありました。既存のデータは過去のものであり、チャンスロスなどの分析には有効ですが、これから来るであろうトレンドの予測には限界がありました。販売後のデータでは、顕在化されたニーズしか把握できず、潜在的なニーズを捉えることが困難だったのです。
1年後や3年後のトレンドを予測できるデータはないかと探していたところ、出合ったのがヴァリューズさんのDockpitです。Dockpitなら私たちのニーズに応えてくれ、すぐに効果を出してくれそうだと導入を決めました。
―― 実際、トレンド予測にどのようにDockpitを利用されていらっしゃるか、ユースケースを教えてください。
鈴木:例えば海外で話題になっていても、日本の一般的な小売店ではまだ広く販売されていない商品があるとしましょう。広く認知されていないにもかかわらず、トレンドワードとして検索数が伸びている商品を調べるとき、Dockpitのデータを見ると、どの年齢層に検索されているか、どのような商品と一緒に検索されているかなどが分かります。このようなデータを取引先様のオリジナル商品開発に活かしたり、類似商品の仕入れ強化や売り場での訴求方法の提案につなげたりすることができます。
データによる裏付けで、説得力のある提案が可能に
鈴木:ユースケースとして多いのは、提案の説得力を高めるための裏付けデータとして活用することです。例えば夏であれば、夏祭りや屋台で喜ばれるお菓子の商品について、最も検索されているものを知るためにDockpitのデータを活用しています。20代、30代、40代の女性をターゲットとする場合、その年齢層において検索数が伸びている商品キーワードを抽出し、得られたデータを商品企画に活用しています。
Dockpitを活用して抽出した「夏祭り」ワード検索数の推移(画像提供:山星屋)
Dockpitで実現する業務革新 膨大な時間を短縮
鈴木:また、業務効率化も進めることができています。最初にお話した通り、当社のマーケティング部の業務は多岐にわたっています。加えて、取り扱う商品の数も膨大です。そのため、限られた時間の中で効率的に企画書を作り上げる必要があるのが実情です。Dockpitなら時間をかけなくても、得たいデータを簡単に出せるので助かっています。ヴァリューズさんには定期的に勉強会を開催していただき、効果的な使い方を教えていただいているので、使いこなすことができています。
Dockpitで得られるデータを自前で作成したり、それに代わるデータを作ろうとしたりすると、非常に多くの時間がかかるでしょう。例えばGoogleトレンドでも時系列での閲覧は可能ですが、性別や年代別での分析はできません。また、無料で閲覧できるデータには限りがあります。Googleでの検索件数の増加など、似たようなトレンド情報は作成できるかもしれませんが、特定のターゲットに適しているかどうかの判断は、Dockpitのデータがなければ困難です。
また、Dockpit以外の販売データでも裏付けは可能ですが、どのような人が、どの時期に何と一緒に検索しているかといった情報は、Dockpitのデータでしか得られないと考えられます。これらを自前で行おうとすると、膨大な時間がかかるでしょう。
単なる予測ではなく、確実に起こりうる未来として成立させる
―― 山星屋様は創業115年と、企業として歴史があり、データだけでなく、これまで積み重ねてきた実績や知見なども大切にされているという印象を持っています。マーケティングにおいて特に意識されていることがあれば、お聞かせいただけますでしょうか。
鈴木:卸売業の特性として、取り扱う案件が多いことが挙げられます。メーカー様が自社商品やブランドのカテゴリーを中心に分析するのに対し、私たちは菓子市場全体のマーケティングを行う必要があります。そのため、どの市場を開拓すれば最も効果的か、菓子市場全体に存在する多くのチャンスの中からどれを選ぶかという選択力も試されていると思います。しかし、膨大であるがゆえに一点集中で深く分析することは難しく、限られた時間でヒット商品を生み出すためには、経験に基づく仮説思考での分析が必要です。
つまり、私たちのように広範囲の商品を扱う中では、経験を活かしつつ、効率的にデータを活用して、最も効果的な提案を行うことが求められていると考えます。
引き続きDockpitを活用して、トレンド予測の精度をより高めていきたいです。単なる予測で終わらせるのではなく、確実に起こりうる未来として成立させることが重要だと思います。
取材協力:株式会社山星屋
IT企業でコンテンツマーケティングに従事した後、独立。現在はフリーランスのライターとして、ビジネスパーソンに向けた情報を発信しています。読んでよかったと思っていただける記事を届けたいです。