7nowが宅配ピザに参入、その狙いと展開をアプリ利用者のデータから考察

7nowが宅配ピザに参入、その狙いと展開をアプリ利用者のデータから考察

セブンイレブンの商品を宅配するアプリ「7now」が先日、宅配ピザのサービスを開始したことで注目を集めています。本稿では、セブンイレブンが宅配ピザ業界に参入した狙いや今後想定される展開を、7nowアプリの利用者や購入商品、競合比較などの観点から分析していきます。


注目のデリバリーアプリ7nowとは

7nowはセブンイレブンが2023年9月にリリースしたデリバリーアプリです。セブンイレブン内で販売している商品を注文することができ、コンビニならではの商品の多様さや身近さ、「リアルタイム在庫連携」を駆使した配送の速さ(最短20分)が大きな魅力となっています。

2024年7月(全国展開は8月)には宅配ピザサービス「お店で焼いたピザ」を開始し、宅配ピザ業界に新たに参入しました。近年不調が続いている宅配ピザ業界でどのようなポジションを築いていくのか、注目を集めています。

本稿では、そんな7nowについて、アプリ利用者データを使いながら深掘りを行っていきます。なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用います。

宅配ピザ業界参入で新規ユーザーを獲得

まずは、7nowアプリの起動ユーザー数から、7nowの注目度を調べていきます。下のグラフは、7nowがリリースされた2023年9月から、宅配ピザの全国展開が始まった2024年8月までのアプリユーザー数の推移を示しています。

「7now」月間起動ユーザー数の推移
集計期間:2023年9月~2024年8月
集計デバイス:スマートフォン

グラフを見ると、ユーザー数はリリースされてから右肩上がりで増え続けています。特に、宅配ピザが全国展開された2024年8月は60万人増加(前月比約1.5倍)しており、その注目度の高さがうかがえます。宅配ピザの開始によって新たなユーザーを多く獲得したといえるでしょう。

50代~60代の女性に人気?

続いて、アプリユーザーの性年代を調べていきます。まずは、男女比からです。下のグラフを見ると、7nowユーザーの6割近くが女性であることが分かります。

「7now」ユーザーの男女比
集計期間:2023年9月~2024年8月
集計デバイス:スマートフォン

次に、ユーザーの年齢層を調べていきます。下のグラフは7nowユーザーの年代割合を示したものです。

「7now」ユーザーの男女比
集計期間:2023年9月~2024年8月
集計デバイス:スマートフォン

上のグラフを見ると、7nowはネット利用者全体と比較して50代・60代の割合が高くなっています。家にいながらも利用できる点で、中高年世代のニーズが高いのかもしれません。

日用品をネットで購入する層が利用

ここからは、7nowのユーザーが実際にどのような消費行動を行っているのかを調べていきます。対象者はユーザー数の多い中高年代女性とします。なお分析には、Web行動データとアンケートデータを用いて、ターゲットユーザーにおける特定の Web 行動の前後の動きと属性を集計できる、ヴァリューズの分析ツール「story bank(ストーリーバンク)」を使用します。

まずは、どこで商品を買っているのかを見ていきます。下の表は、7nowユーザー(50代以上女性)の購入チャネルを示しています。「対象者(アプリユーザー)の回答率とネット利用者全体の回答率の差」をスコアで示しており、赤くなるほど特徴的に利用されているチャネルとなります。

「7now」ユーザー(50代以上女性)の購入チャネル
「スコア = 対象者(アプリユーザー)の回答率 ー ネット利用者全体の回答率の差」
集計期間:2023年9月~2024年8月
集計デバイス:スマートフォン

上の表を見ると、スーパーマーケット・100円ショップなど日用品を購入する場所と、ネットショッピング・通信販売などウェブ上で購入する場所の利用率が高いことが分かります。

次に、50代以上女性ユーザーの購入商品カテゴリと、その平均支出を調べていきます。下の表は、「7now」ユーザー(50代以上女性)について各カテゴリの支出額と、ネット利用者平均との乖離を示しています。

「7now」ユーザー(50代以上女性)の一人あたり平均支出
「特徴値 = 対象者のリーチ率 ー ネット人口全体のリーチ率」
集計期間:2023年9月~2024年8月
集計デバイス:スマートフォン

上の表を見ると、食費、服・靴・カバン、化粧品などの日用品の消費額が多くなっていることが分かります。50代以上女性ユーザーの購入チャネルにおいて、日用品を購入する場所・ウェブ上で購入する場所の利用率がコンビニ利用率よりも高かったこともふまえると、「普段コンビニに積極的に行くわけではないものの、家にいながら日用品を買いたいときに7nowを利用する」といったユーザーも一定数いるのかもしれません。

宅配ピザ業界参入でどうなる?

冒頭でも触れた「7nowの宅配ピザ業界参入」にも目を向けてみましょう。ここからは、宅配ピザ業界内で、ユーザー層の比較を行います。比較対象は「Domino's」、「ピザーラ」、「ピザハット」です。

7nowアプリ起動者数の規模は最大手を上回る

まずは規模を比較していきます。下の表は4つのアプリユーザー数の推移を表しています。8月のユーザー数の増加で、7nowのアプリ起動ユーザー数の規模は、宅配ピザアプリと比べてもトップクラスになっていることが分かります。

「7now」、「Domino's」、「ピザーラ」、「ピザハット」月間起動ユーザー数の推移
集計期間:2023年9月~2024年8月
集計デバイス:スマートフォン

これまでとは異なったユーザーを取り入れたい?

続いて、アプリユーザーの性年代を比較していきます。

まずは、男女比からです。下の表を見ると、7now以外の3つの宅配ピザアプリにおいては男女比がほぼ均等になっていることが分かります。

「7now」、「Domino's」、「ピザーラ」、「ピザハット」ユーザーの男女比
集計期間:2023年9月~2024年8月
集計デバイス:スマートフォン

次に、年代割合です。7nowは50代・60代の割合が高かったですが、他の3つの宅配ピザアプリにおいては30代・40代あたりの割合が高いという結果になりました。

「7now」、「Domino's」、「ピザーラ」、「ピザハット」ユーザーの年代割合
集計期間:2023年9月~2024年8月
集計デバイス:スマートフォン

以上のように、男女比、年代割合をみると、7nowのユーザー層は他の3つの宅配ピザアプリと大きく異なっていました。他の宅配ピザサービスにはないユーザー層を抱えているというのは大きな強みともいえるでしょう。宅配ピザ参入のねらいの1つには、セブンイレブンという既存のチャネルを生かし、7nowがこれまで獲得できていなかった層にアプローチするという目的もあるのかもしれません。

平日利用の多さも強みのひとつに

ここからは、各アプリの利用状況について比較していきます。

まずは、アプリの起動時間帯です。下のグラフは、各アプリがどの時間帯によく利用されるかを示しています。

「7now」、「Domino's」、「ピザーラ」、「ピザハット」のアプリ起動時間帯
集計期間:2023年9月~2024年8月
集計デバイス:スマートフォン

グラフをみると、4アプリ全てにおいて昼食・夜食あたりの10〜12時や17〜19時によくアプリが利用されていることが分かります。

次に、アプリが利用される曜日を見ていきます。下のグラフは各アプリが、それぞれの曜日にどの程度利用されているかを示しています。

「7now」、「Domino's」、「ピザーラ」、「ピザハット」のアプリ起動曜日
集計期間:2023年9月~2024年8月
集計デバイス:スマートフォン

上のグラフからは、他の3つの宅配ピザアプリは平日よりも土日の利用割合が高い一方で、7nowは平日・土日関係なく一定の利用割合を保っていることが見てとれます。ピザを食べたい人が使う他3つのアプリと違って、7nowはセブンイレブンの様々な商品を宅配してもらえるアプリなので、利用ニーズがそもそも違うことは容易に想像できますが、起動曜日からもその点が浮かび上がってきます。

最後にアプリの併用状況を調べていきます。下のグラフは7nowから見た、他の3つの宅配ピザアプリの併用状況を示しています。

「7now」から見た、「Domino's」、「ピザーラ」、「ピザハット」のアプリ併用状況
集計期間:2023年9月~2024年8月
集計デバイス:スマートフォン
※円グラフの大きさはアプリユーザー数規模を表しています

上のグラフを見ると、7now利用者の84.9%が他の3つの宅配ピザアプリを併用していないことが分かります。他の宅配ピザサービスにはないユーザー層を抱えている強みと、既存の宅配ピザユーザーを新たに獲得できるかもしれないという成長可能性がうかがえます。

まとめ

宅配ピザ業界に参入したことで話題を集めているデリバリーアプリ7nowについてユーザー層を中心に深掘りを行ってきました。ここでは、簡単なまとめと今後の展開について述べていきます。

まずは、7nowのユーザーについてのまとめです。
・7・8月の宅配ピザ業界参入で新規ユーザーを多く獲得
・主なユーザー層は50~60代の女性
・普段コンビニをあまり使わないが、家にいながら日用品を買いたいときに7nowを利用するユーザーも一定数いると考えられる

次に、宅配ピザ業界での競合比較についてのまとめです。
・参入のねらい:既存チャネルを生かした新しい価値提供としての宅配ピザ業界参入
・参入の親和性:アプリが利用される時間帯が近い(宅配の時間が変わらない)
・7now独自の強み:中高年割合の高さ、平日利用の多さ、単独利用の多さ

いずれにせよ、規模の大きな7nowが新たに参入することは、宅配ピザ業界にとって影響が大きいです。

価格帯やユーザー層が異なる7nowの参入によって、不振が続いていた宅配ピザ業界がどのように変化していくのか、注目です。

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この記事のライター

2025年4月に入社予定の大学4年生です。大学では、経済学部で計量経済学を学んでいます。

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