冬だけでなく夏にも検索されている「冷え性」
「冷え性」といえば寒い時期に関心が高まると考えられるため、まずは気温との相関を確認しましょう。
2017年秋-2018年夏シーズンは、東京の月間平均気温が10度を下回った12月から翌2018年1月の検索ユーザーが最多で、気温の上昇につれ減っていく傾向。5月が若干増えていますが、ほぼ気温と反比例といえそうです。
しかし2018年秋-2019年夏シーズンは、冬のさなかにも前年ほど検索ボリュームが伸びませんでした。そもそも10度以下の日が少なく、「冷え」を意識する機会が減ったのでしょうか。逆に、夏日が増え平均気温が24.1度をマークした7月に「冷え性」検索ユーザーが増え、5.6度だった1月に迫る勢いです。オフィスなどの冷房が影響しているのか、温活など健康意識が高まったのか定かではありませんが、「冷え性」は冬だけの問題ではなくなっているのかもしれません。
「冷え性」検索ユーザー数と月間平均気温の推移
ユーザー数はeMark+ Keyword Finder、
月間平均気温は気象庁「東京 日平均気温の月平均値」(http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/monthly_s3.php?prec_no=44&block_no=47662)
より作成
オフィスアワーと就寝前が気にかかる時間帯
冷え性といえば女性が多そうですが、「冷え性」コンテンツ閲覧ユーザーは意外なことに男性が43%。
年代は20~30代合計で半数を占め、若いユーザーの関心が高いことがわかりました。
「冷え性」コンテンツ閲覧ユーザーの属性
「冷え性」コンテンツを閲覧するのは、休日より平日の方がやや多く、お昼頃から夜にかけて増加傾向です。平日お昼から夕方17時にかけては、冷えがちなオフィス内で過ごす時間帯でしょうか。通勤や夕食時間帯と考えられる18時~20時にいったん下がって、平日の21時から24時、おそらく入浴前後や就寝前を想起させる時間帯に最もセッションが増えています。
「冷え性」コンテンツ閲覧セッション数(時間帯別)
冷え性対策グッズ専門店や健康情報のオウンドメディアが人気
「冷え性」コンテンツで一番人気だったのは、所ジョージさんがテレビ番組でとりあげ2018年春頃から注目されたフットマッサージャー「フットグルーマーグラン」を提供する「株式会社サンパック」。3位「ミーテぽっかぽかショップ」や5位「もちはだ本店」は腹巻きやレッグウォーマーなどの対策商品専門店です。
ほかに体温をキーワードに新しい健康生活を提案する4位「テルモ体温研究所」や血行促進情報が充実の7位「養命酒製造」、女性のための健康情報を提供する8位「ウェルラボ」、近畿・東海地方のドラッグストアで「ゆたか倶楽部」を運営する9位「ドラッグユタカ」などの情報提供サイトが閲覧されています。みんなが気になる「冷え性」だけに、オウンドメディアが奏功しやすいのかもしれません。
2位「石割の湯」、6位「紅富士の湯」は、いずれも山中湖の温泉で、とくに男性の関心を集めています。最近「やまなし立寄り百名湯」にも選ばれました。10位「ウォーカープラス」は温泉情報も多くとりあげていて、こちらも男性に人気です。
「冷え性」コンテンツ閲覧ユーザーの接触サイト上位10
検索を行って「冷え性」コンテンツを閲覧したユーザーの検索キーワードからは、「効果」「効能」や「おすすめ」「口コミ」など、冷え性をなんとか改善したいニーズが浮き彫りに。
「漢方」「生姜」やそれらを入手する手段と考えられるECサイト名も多く検索されています。
「冷え性」コンテンツ閲覧ユーザーの検索キーワードクラウド
冷え性の対策は外から? 中から?
「冷え性」ユーザーのニーズを深堀りするため、「冷え性」コンテンツ閲覧の前後3時間のネット行動ログから、ユーザーをクラスタ分類してみました。浮かび上がったのは、「寒さ対策」、「末端冷え性」、「高カカオチョコレート」、「漢方」、「冷え」の5クラスタです。
クラスタごとにキーワードクラウドを見ると、「寒さ対策」クラスタは手足やお腹の冷えを気にしつつ、対策キーワードとしてはオーバーソックスや防寒グッズを使っています。同様に手足の冷えが気になる「末端冷え性」クラスタでは自律神経や足のつり、しびれなど、対策以上に症状や原因が気になる様子。対策キーワードは少なめですが、「体を温める食べ物」や「鍼」「お灸」があがっています。
「高カカオチョコレート」、「漢方」クラスタは、より具体的な冷え体質の改善ニーズと見られ、とくに「漢方」では「低血圧」「内臓」といった原因キーワード、効能のある薬名が多く使われていました。
「冷え」クラスタが多用する対策キーワードは「カイロ」や「ソックス」「湯たんぽ」などで、グッズによる冷え解決に関心が高い様子。体の外から働きかける対策はほかに「マッサージ」、食べ物では「あずき」が検索されています。
「冷え性」コンテンツ閲覧ユーザーのクラスタ
※( )内は各クラスタの出現人数
5つのクラスタは、大きくグッズやウェアで外側の対策を講じる派(寒さ対策、冷え)と、摂取するもので自分の内側から対策を講じる派(末端冷え性、高カカオチョコレート、漢方)に分類できるかもしれません。
クラスタに関わらず人気の「フットグルーマーグラン」と「VENEX」
5つのクラスタのうち、症状が気になる「末端冷え性」クラスタ、対策が気になる「冷え」クラスタの関心を、閲覧上位サイトから詳しく見てみます。
自律神経や足の冷え、つり、しびれ、熱がこもるなど、体内の悩みが深刻そうな「末端冷え性」クラスタでは、「冷え性」コンテンツ閲覧ユーザー全体と同じく、「フットグルーマーグラン」の株式会社サンパックや「ミーテぽっかぽかショップ」、「ドラッグユタカ」のサイトが上位に。休養サポートウェア「VENEX」もランクインしました。
製品サイトやECのほかは健康情報サイトが多く、「日本生活病予防協会」や「ウェルラボ」のほか、「久光製薬」、「エステー」、健康食品の「ビタリア製薬」などオウンドメディアが充実するサイトが上位です。奈良県生駒市の「かわたペインクリニック」は神経ブロック療法や心理療法、リハビリテーションの治療法を組み合わせた痛み軽減専門院。公式ブログや会報も提供しています。
「末端冷え性」クラスタの閲覧上位サイト
次に、対策が気になる「冷え」クラスタの閲覧上位サイトを見ていきます。
「フットグルーマーグラン」の株式会社サンパックは、カイロや湯たんぽに関心の高い「冷え」クラスタでも一番人気。「VENEX」サイトも「末端冷え性」と同じラインナップで、これら2製品は幅広いユーザーにリーチできているといえそうです。
2サイト以外は「末端冷え性」クラスタと顔ぶれが変わります。「冷え」クラスタで2番目に利用が多いのは「養命酒製造」。温熱ピロー「あずきのチカラ」などが人気の「桐灰化学」や温活・冷えとり特化EC「てくてくネット」が上位です。
「冷え」クラスタではほかに人気海外旅行ブログ「天国に一番近い海外旅行」、日常生活の知恵を綴る「ぷちはぴ」ブログ、女性のための肌情報「日本すっぴん協会」といった、「冷え性」そのものに限らない読み物が閲覧されています。同じ病院でも人気は福岡県飯塚市の総合病院「飯塚病院」で、"ピカリと輝く健康なカラダをサポート"するオウンドメディア「ぴカラダ」が充実しています。「末端冷え性」クラスタに比べると、冷え性切実度はやや低く、幅広い関心があるのかもしれません。
「冷え」クラスタの上位閲覧サイト
まとめ
今回は「冷え性」に関連するコンテンツを見ているユーザーのクラスタ分析から、冷え性にまつわる興味関心を探りました。調査結果からも「冷え性」は男女や年代を問わず幅広い層で関心を集めているトピックであることがわかりますが、クラスタに分類すると、グッズやウェアで対策を講じる派(寒さ対策、冷え)と、体に摂取するもので自分の内側から対策を講じる派(末端冷え性、高カカオチョコレート、漢方)の特徴が見えてきました。それぞれのターゲットを意識することで、よりニーズに即したコンテンツを作成できるのではないでしょうか。
【調査概要】
株式会社ヴァリューズが、全国のモニターパネル(20歳以上男女)を対象として調査・分析を実施。
・ネット行動ログ分析対象期間:2018年9月~2019年8月
・分析対象者:ページタイトルに 「冷え性」を含むページを閲覧したユーザー
※ネット行動ログは「冷え性」関連コンテンツ閲覧前後180分の行動ログを抽出して分析を行った
法政大学院イノベーション・マネジメント専攻MBA、WACA上級ウェブ解析士。
CRMソフトのマーケティングや公共機関向けコンサルタント等を経て、現在は「データ流通市場の歩き方」やオープンデータ関連の活動を通じデータ流通の基盤整備、活性化を目指している。