中国マーケティングの最新トレンドと有効なプロモーションとは?|セミナーレポート

中国マーケティングの最新トレンドと有効なプロモーションとは?|セミナーレポート

2019年の訪日中国人数は959.4万人。この膨大な窓口の先にある未知数の市場、中国市場。そんな中国市場向けにプロモーションを行なってみたものの、上手く成果に結びつかないという方も多いのではないでしょうか?1月28日に開催された「ヴァリューズ×バイドゥ×フルスピード共催セミナー」では、中国での豊富な調査データをもとにした分析に強みを持つ株式会社ヴァリューズが、最新のインバウンド事情と成功に必要なマーケティング手法を紹介しました。


中国マーケティングってどこから着手すればいいの?

ひとくちに「中国マーケティング」といっても、まだ戸惑う方が多いのではないでしょうか。そこで、今回のセミナーでは下記を対象に開催されました。

・中国マーケティングに課題感をお持ちの方
・中国で勝てるプロモーションの考え方や、成功事例を知りたい方
・中国マーケティングの設計手法や調査事例を知りたい方


ここでは、株式会社ヴァリューズ執行役員の子安が語った中国市場のデータマーケティングについて、実際のセミナー資料をもとにレポートします。

子安の写真

株式会社ヴァリューズ 執行役員 子安 亜紀子(こやす あきこ)

慶應義塾大学 環境情報学部卒。システムエンジニア・Webコンサルタントを経て、(株)マクロミルに入社。マクロミルのベンチャー時代から、商品開発、事業企画、営業企画などを手掛ける。2011年よりヴァリューズに参画。現在は執行役員として、事業企画やマーケティング部門の統括などを担当している。

データでみる中国人の購買カスタマージャーニーとは?

まず、アンケートリサーチをベースにしたデータをもとに、今の中国の越境ECやインバウンドでの購買ジャーニーがどのようになっているかが語られました。

①中国人が日本の商品を購入する理想的なサイクルをうまく回す

中国人の日本商品購入の第一歩、その窓口はやはり訪日からとのこと。
インバウンドで購入した物を、帰国後、越境ECでリピートするんです」と子安。

中国ではクチコミ文化がとても発達しており、越境ECでリピートされて良いクチコミが増えると途端に人気が急上昇するそうです。するとそれを見た他の人が「日本に行ったらこれを買おう!」と感化される、そしてさらに売れてゆく…

こういった「くるくるとインバウンドと越境ECが相関しながら市場が大きくなっていくという流れが理想的なサイクル」と子安は言います。

中国人の購買最大化サイクル

中国人の購買最大化サイクル

②『日本で購入』〜訪日中に中国人が購入していく物とは?

では、訪日中に中国人が購入していく物はどんなジャンルなのでしょうか。実際にアンケートデータで見てみましょう。

下図の通り、1位「化粧品」、2位「お菓子」、3位「医療品」となっています。
購入した物がランキングされていますが、皆さんの想像通りでしょうか。

訪日中に買ったもの

訪日中に買ったもの

さらに、このように購入されることが多い品目について、どういったタイミングで購入の意思決定しているのかを、「旅マエ」「旅ナカ」とタイミングを分けて比較しています。

購入を決めるタイミング

購入を決めるタイミング

緑色の折れ線が「訪日前(旅マエ)」、オレンジ色の折れ線が「訪日中(旅ナカ)」となっています。

訪日前検討率が高い物から見ていくと、「化粧品、家電、医薬品、食品、宝飾品」が高く、これらはクチコミなどで人気が出た化粧品日本でしか買えない物と位置付けられていそうだと推測されます。

一方で「訪日中(旅ナカ)」で検討されている商品もあり、例えば「工芸品、お菓子」などが良い例です。旅に来てみたらこんな物あるんだという偶然の出会いで購入というストーリーが想起され、「旅ナカ」スタートでも十分チャンスがある商材と思われます。

そんな中、「訪日前(旅マエ)」に自分用の買い物リストを作って来る人は76.5%という興味深い数字も紹介されました(家族・友人に頼まれたリストは67.1%)。この数字から、やはり「訪日前(旅マエ)」から購入に前向きな人が多数であることも分かります。

続いて、それら買い物リスト作成に繋がるまでの行動としての、情報収集の方法を見てみましょう。

買い物についての情報収集サイト・アプリTOP10

買い物についての情報収集サイト・アプリTOP10

情報収集媒体をアンケートでたずねたところ、一番値が高いのは旅行サイトのCtripで32.2%、続いて小紅書(RED)、T-mall、Jingdong、Amazon(日本)、baiduという順になっています。

検索サイトや、旅行の情報サイトで情報収集をしながら、その商品の評判を確かめる時にはECサイトのクチコミを見る、といったように、色々な情報を用途に応じて使い分けているのではと推測されます。

③『越境ECでリピート』〜どれくらいの人がリピートする?

では実際に訪日後に越境ECでリピート購入する人はどのくらいいるのでしょうか。

ヴァリューズ社の調査データによると、訪日経験者の85%が、帰国後に越境ECでリピート購入しているという結果に。特に訪日リピーターでは越境ECの利用率が高く、4回以上の訪日経験者においては95%と、驚異のリピート率になっています。

次に、越境ECでの商品探しで利用した方法をみてみましょう。下図の通り、一番値が高いのが「ECサイトアプリ内でブランド名・商品名を検索」です。「この商品良かったからまた買おう」だとか「クチコミが良いからこの商品を探そう」というように、ほしい商品が決まった状態で検索する人が多いことが分かります。

どうやらリピート率と「商品認知」には深い関わりがあるようです。

商品探しで利用した方法

商品探しで利用した方法

各種興味深いデータを検証し、購買最大化には冒頭の「サイクル」が大事と強調する子安。さらにその「サイクル」には「ブランドが指定される状態をつくる(ブランド理解・認知)」がキーであることが分かりました。

ブランド理解促進のためのプロモーションの考え方

では「ブランドの理解、認知」はどうやって促進していけばいいのか、子安はまず2つの提言から始めました。

①「中国のプロモーションは短期視野になりやすい」

「中国市場へのプロモーションは、入ったことのない市場に長期視点で戦略を立てて攻めていくことが難しいという事と、ゴールの設定が難しく『とりあえず3ヶ月で売り上げ立ててみようか』と始まる事が多いようです。でも、短期売り上げでゴールを目指してちょっとやってみただけでは上手くいかない、継続的にやっても無理だろう、結局中国難しかったねと終わってしまう。でも、本来はそうではなくて、もうちょっと長い視野で踏み込めば、すごく大きな市場ですし、機会が得られると思うのです。」(子安)

②「施策ありきになりやすい」

「『とりあえずKOL(Key Opinion Leader)』そう言った形でKOLを試すのですが、やった結果が不明瞭。売上があまり上がらなかったね、何故だろう、となるケースが多くあります。要は決め打ちと、ここでも短期視点になりやすいのです。きちんと戦略立ててやってみて、結果が出たのか出なかったのか、次に何をやればいいのか、そうやってきちんと回せば結果は違ってくると思います。」(子安)

短期視野で結果を求め、見えにくい市場でとりあえず始めると、結局成果も出ず、CHECKする方法も解決する方法も分からず、改善プロセスも回らないというのが、中国マーケティングで多いという事です。

だからこそ「PLAN・DO・CHECK・ADJUST」に重心をおいて、その成功例をベースにし「PDCAマーケティング」を回していくサイクルが重要だと子安は繰り返しました。

有効的なPDCAマーケティングの回し方

有効的なPDCAマーケティングの回し方

③実際に仮説を立てて PLAN→CHECKを設計してみる

「当たり前だよねと言われますが」と前置きしつつも子安がやはり重要だと伝えるのは、STP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)を整理する事が第一歩であるということでした。

ここで架空のサプリを例としたプロモーション設計を実際に想定していきましょう。

まずは仮説を立てる(乳酸菌サプリの例)

まずは仮説を立てる(乳酸菌サプリの例)

「(仮)腸まで届く乳酸菌サプリ」

さて、この商品のSTPをどう考えますか?
訪日経験のある20代から30代の女性で、北京・上海在住?、美容にかけるお金は月どれくらい?といった些細なことや簡単な事からでも良いから、想定し書き出してみる。それを元に社内でディスカッションしながら戦略立てていくというところから始めるのが良いとすすめます。

そして次には、その仮説モデルが実際にイメージと合っているかという確認が必要となってくるのですが、ここでぜひヴァリューズのデータを活用して欲しいと紹介にあがったのは、「ブランドポジショニングマップ」です。

これはそれぞれのこのジャンルの商品が、どういうイメージと距離が近いのかというのことを可視化して理解できるデータです。

例えば自社の商品が本当は便秘改善に効く商品なのに、なぜか便秘改善のイメージは全然伝わっておらず、肌荒れを抑えると思われているなど、実態と違うということが分かったりします。

ギャップがなく、ターゲットに対してきちんと訴求が届いているのかという実状を確認しながら進められるのは心強いですね。

ブランドポジショニングマップの例

ブランドポジショニングマップの例

「もう一つ、プロモーションのKPIをきちんと決めることが大切。何となく売上の目標を立てたけど届かなかったから終わり、とならないように、ゴールまでの道のりに中間指標をステップ的に作っていけると良い」と子安は語ります。

プロモーションのKPIを決める

プロモーションのKPIを決める

そしてファネル分析を活用するのも一手です。

アンケートで、商品認知、購買意欲、リピートの有無などを聞き出し、それぞれ何%くらいあるのか見ていくと、各項目のどこに問題があるのかを数値化できるので、問題を浮き彫りにしやすいでしょう。

加えて、業界大手などでベンチマークのブランドを作って比較してみると、認知の差があぶり出されて見えてくるそうです。

購買ファネルの現状を把握する

購買ファネルの現状を把握する

このように、現象の課題を数値化してゆくことで、議論が空転せず、前に進むようになりますと付け加えました。

「ターゲットが決まってくると媒体も手法も決まってくる」

基本的にはマーケティングは中国でも日本でも考え方に大きな違いはないので、きちんとSTPを定義して、PLANを立て、施策をしたら必ずCHECKをしてみて欲しいと、子安は語ります。

そのための有効なデータとして、ヴァリューズではPLANのためのデータやCHECKのためのデータ、アンケートや、行動ログなどのビッグデータから発見や解釈を得る多数の実績とノウハウを有しています。

特にアンケートに関しては北京・上海だけでなく幅広い地域、訪日が急増している内陸部の情報収集も出来るようになったそうです。

まとめ

具体的かつ多様なデータ資料を使った説明から、今の中国マーケティングがぐっと身近に感じられたセミナーでした。

未知数の中国市場へのマーケティング。しかしそれは恐れることはなく、基本をおさえ、良質なデータを用い、やるべきことをきちんと回すというシンプルな考え方で良いのだという結論に、心強ささえ感じました。時には最新トレンドに耳を傾け、ナレッジを深めていくのも重要ですし、頼れるノウハウのあるパートナーの存在も必要ですね。

今後ますます中国マーケティングが面白くなりそうです。

ヴァリューズの「中国市場調査サービス」とは

海外市場データ | ビッグデータ×マーケティングで事業の成長を支援|株式会社ヴァリューズ

https://www.valuesccg.com/service/omd/

国内30万人規模の消費者行動から 確実に成果につながるデータ マーケティングを導き出すSaaS、eMark+(イーマークプラス)を提供する企業 VALUES。無料から有料アップグレードで ネット広告の市場+効果、キーワード調査、集客施策などの分析も可能。今すぐOODAを実現させましょう。

関連記事

中国人のリアルな購買行動の実態をオンラインでインタビュー!安全な日本製品はパッケージを重視。コロナ後はEC利用が9割に

https://manamina.valuesccg.com/articles/892

新型コロナにより日本経済は甚大な打撃を受け、感染拡大も油断ならない状況が続く一方、中国は収束に向かい、経済の活性化が予想されています。国内の経済状況が不安定な中、中国マーケットへの進出を検討する企業も増えているのではないでしょうか。しかし、中国人の嗜好や効果的なマーケティング手法が分からなければ、手探り状態に陥るリスクもあります。 それらの大きな手助けとなるのが、どのような商品が現地で好まれるのか?どのような購買行動を取るのか?などのリアルな声(データ)です。本稿では、ヴァリューズが開催した中国市場オンラインセミナーをご紹介。中国でのビジネス展開に役立つ定性調査として、現地人を対象にしたインタビュー模様をお届けするセミナーです。

発展要因や業界モデルを解説!「中国におけるソーシャルコマース業界調査」レポート

https://manamina.valuesccg.com/articles/665

拡大を続ける中国のソーシャルコマース業界。その発展要因と市場動向、代表的企業や業界モデルなどを調査レポートにまとめました。(ページ数|20p)

この記事のライター

マナミナは" まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン "。
市場の動向や消費者の気持ちをデータを調査して伝えます。

編集部は、メディア出身者やデータ分析プロジェクト経験者、マーケティングコンサルタント、広告代理店出身者まで、様々なバックグラウンドのメンバーが集まりました。イメージは「仲の良いパートナー会社の人」。難しいことも簡単に、「みんながまなべる」メディアをめざして、日々情報を発信しています。

関連する投稿


【2024年4月8日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

【2024年4月8日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

編集部がピックアップしたマーケティングセミナー・勉強会・イベントを一覧化してお届けします。


ソーシャル分析で消費者のリアルな声を掴むには

ソーシャル分析で消費者のリアルな声を掴むには

近年、年齢や国籍を問わず、SNSは人々の生活に欠かせない存在となっています。SNSの口コミを活用して、マーケティング課題を解決するための調査方法は「ソーシャル分析」と呼ばれます。本記事では、ソーシャル分析の定義と事例を紹介します。 (ソーシャルメディア分析、ソーシャルリスニング、SNS分析は、本記事ではソーシャル分析と総称します。)


中国定性調査サービス“百路QIC”で見た、中国における「都市市場」VS「下沈市場」の今

中国定性調査サービス“百路QIC”で見た、中国における「都市市場」VS「下沈市場」の今

昨今の中国の購買力や経済力を押し上げる原動力となるのは、中国総人口の7割を占める「下沈市場」だと言われています。対して中国国内1級〜2級の都市からなる「都市市場」との違いはどのようなところにあるのでしょうか。ヴァリューズ独自の中国定性調査サービス「百路QIC(ヴァリュークイック)」を用いて「都市市場」と「下沈市場」のライフスタイル意識や購買チャンネルなどを比較調査しました。


【2024年4月1日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

【2024年4月1日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

編集部がピックアップしたマーケティングセミナー・勉強会・イベントを一覧化してお届けします。


【2024年3月25日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

【2024年3月25日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

編集部がピックアップしたマーケティングセミナー・勉強会・イベントを一覧化してお届けします。


最新の投稿


Z世代はYouTube、TikTokなど動画主体のSNSの利用時間が長くなる傾向【CCCMKホールディングス調査】

Z世代はYouTube、TikTokなど動画主体のSNSの利用時間が長くなる傾向【CCCMKホールディングス調査】

CCCMKホールディングス株式会社は、全国16~24歳の男女を対象に『Z世代のSNS利用実態や生活満足度との関係性』について調査を実施し、結果を公開しました。


Z世代にとってSNSは承認欲求を満たす場ではない?身近な人とのコミュニケーション手段としての利用が多数【SHIBUYA109 lab.調査】

Z世代にとってSNSは承認欲求を満たす場ではない?身近な人とのコミュニケーション手段としての利用が多数【SHIBUYA109 lab.調査】

株式会社SHIBUYA109エンタテイメントは、同社が運営する若者マーケティング機関『SHIBUYA109 lab.(読み:シブヤイチマルキュウラボ)』にて、Z世代を対象に「Z世代の承認欲求に関する意識調査」を実施し、結果を公開しました。


フリマ市場を比較調査。メルカリとYahoo!系サービス、それぞれの特徴や集客の強みとは?

フリマ市場を比較調査。メルカリとYahoo!系サービス、それぞれの特徴や集客の強みとは?

節約やお小遣い稼ぎの手段としても注目が高まるフリマ市場。「メルカリ」「Yahoo!オークション」「Yahoo!フリマ」を対象に、フリマ市場の最新動向について調査しました。各サービスのサイト・アプリについて、利用者数やユーザーの人となりに加えて、サイト集客構造の違いについても深掘りし、それぞれの特徴について明らかにしていきます。


約6割の企業が法人向けデジタルギフト利用経験あり 利用シーンは「アンケート収集施策」が最多【DIGITALIO調査】

約6割の企業が法人向けデジタルギフト利用経験あり 利用シーンは「アンケート収集施策」が最多【DIGITALIO調査】

株式会株式会社DIGITALIOが運営するデジタルギフト「デジコ」は、勤務先の業務で福利厚生やプレゼントキャンペーンなどの販促を実施する際にデジタルギフトを購入したことのある方を対象に「法人向けデジタルギフトに関する調査」を実施し、結果を公開しました。


KDDIとAIQ、バーチャル空間上でデジタルスタッフを活用したAI接客の実証実験を開始

KDDIとAIQ、バーチャル空間上でデジタルスタッフを活用したAI接客の実証実験を開始

KDDI株式会社とAIQ(アイキュー)株式会社は、KDDI株式会社が提供するαU place(アルファユープレイス)において、デジタルスタッフを活用したAI接客の実証実験を開始することを発表しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ