中国人のリアルな購買行動の実態をオンラインでインタビュー調査!安全な日本製品はパッケージを重視。コロナ後はEC利用が9割に

中国人のリアルな購買行動の実態をオンラインでインタビュー調査!安全な日本製品はパッケージを重視。コロナ後はEC利用が9割に

新型コロナにより日本経済は甚大な打撃を受け、感染拡大も油断ならない状況が続く一方、中国は収束に向かい、経済の活性化が予想されています。国内の経済状況が不安定な中、中国マーケットへの進出を検討する企業も増えているのではないでしょうか。しかし、中国人の嗜好や効果的なマーケティング手法が分からなければ、手探り状態に陥るリスクもあります。 それらの大きな手助けとなるのが、どのような商品が現地で好まれるのか?どのような購買行動を取るのか?などのリアルな声(データ)です。本稿では、ヴァリューズが開催した中国市場調査セミナーをご紹介。中国でのビジネス展開に役立つ定性調査として、現地人を対象にしたインタビュー調査の模様をお届けするセミナーです。


今回のテーマは、「スキンケアや日用品に関する購買行動およびコロナ後の変化」。日本商品に対するイメージや購入時のポイント、情報収集元など、中国消費者のリアルな声をご紹介します。

実査スペックとチャットインタビュー調査の実践法

今回のオンラインセミナーは、チャットツールを活用したリアルタイム・同時通訳のインタビュー調査です。モデレーターがチャット型式で対象者へ質問を投げかけ、リアルタイムで回答をもらうスタイル。以下のようなイメージでインタビューが進行されます。

オンラインセミナーはYouTube動画での配信のため、このように会話のやり取りが表示されました。左側が対象者の回答、右側がモデレーターからの質問です。モデレーターがリアルタイムで翻訳し、対象者の回答を視聴者へお伝えしました。

インタビュー調査の実査スペックおよびモデレーターのプロフィールは次のとおりです。

また、事前に行われたヒアリングによると、今回の対象者の職業は会社員で、比較的高収入。EC・越境ECは、Tモール(天猫)、ジンドン(JD.com)、タオバオ(淘宝)などのサービスを主に利用するとのことです。


解説:中国のEC事情


Taobao(タオバオ):アリババグループの提供するECサイト。CtoCを基本とし、日本のYahoo!オークションに類似する。


Tmall(天猫):アリババグループの提供するECサイト。事業者がサイト内に店舗を構え個人向けに販売する、日本の楽天市場に近いサービス。出店までの審査基準が厳しく、その分ユーザーからの信頼が厚いとされる。


Jingdong(京東):チャットアプリWeChatを運営するテンセントグループが提供するECサービス。独自の物流システムを保有し、配送スピードが早い点が強みの一つ。近年急成長する中国のオンライン市場において、BtoCのECプラットフォームのシェアでは、1位がTmall、2位がJindongとなっている。

それでは、インタビュー本編に入っていきます。

スキンケアの実態 化粧品選定時の重視点

まずは、肌の悩みやスキンケア化粧品選定時の重視点についてヒアリングしました。

対象者は、「自身の肌に対し、くすみやニキビ、乾燥などの悩みを抱えており、洗顔や化粧水、乳液などの基礎ケアに加え、朝は朝用美容液や日焼け止め、夜はアイクリームを使用してケアをしている」と回答。比較的スキンケアに気を使っている印象を受けます。

スキンケア化粧品選定時に重視している点は、成分と効果効能、ブランドの3点。肌の老化を意識し、保湿や肌を安定させることを大切にしているといいます。好きなブランドは日本の資生堂で、理由は「ブランドの歴史が長いところ」とコメント。「初めて購入したときからどの商品も使いやすく、資生堂の中にも各年代に向けた色々なブランドがあるので、親子で愛用している」とのことでした。

ここで、実際に使用している化粧台の写真を送っていただきました。このように、写真をリアルタイムで送っていただけるのもこのオンラインインタビューの特徴です。

細かいブランドの認識は難しいですが、メイクアップ用品は欧米ブランドが多く、基礎化粧品は日本製品も並んでいることが分かります。海外の商品もチェックして、お気に入りのアイテムを購入しているのでしょう。

化粧品の購入チャネルはECサイトのTモールが主で、海外旅行の際は免税店やドラッグストアで購入していると回答しました。

EC、越境ECでの日用品の購入実態

続いて、ECや越境ECでの購入行動についてです。

「普段ECで購入するカテゴリーは、日用品、食品、服、家電、デジタル製品など多岐にわたり、購入チャネルはTモールを利用することが多い。越境ECではマスクや化粧品を購入したことがあり、Tモールで扱われていない化粧品等を購入したい場合に越境ECを利用する」と回答しました。

日本メーカーの日用品も越境ECで購入した経験があり、日本の日用品に対しては「どのブランドを選んでも安全な印象がある」とした上で、「それに加え、パッケージや香りにポイントを置いて選んでいる」とコメント。日本の日用品はパッケージに心がこもっている印象があり、可愛らしいパッケージに惹かれるようです。

新しい日用品を購入する際の情報収集は、「周囲の友人からのオススメのほか、インターネット検索も実施する」とのこと。彼女の場合、まずRed(小紅書)やWeibo(微博)で商品を探し、いい商品があれば商品に関するキーワードを検索。タオバオで販売店舗の紹介をチェックし、最終的にTモールにあれば購入。というステップを踏むとのことでした。

1つのサイトの情報を参考にするのではなく複数を閲覧し、情報を見極める点が印象的です。


解説:中国のSNS事情


Red(小紅書):化粧品関連の口コミが豊富に紹介されている中国人女性に人気の口コミアプリです。日本のアットコスメのイメージに近い一方で、インスタグラムのようにSNSの面も持ちます。


Weibo(微博):「中国版Twitter」とも言われるSNS。中国ではTwitterやFacebookなどのサービスが国の規定で使用できないため、ウェイボーが主要SNSとして浸透しています。

対象者は、「レッドは、大袈裟な表現でプロモーションの要素が入っている印象がある。タオバオは、購入者の口コミがリアルだから信頼している」と言及。また、開封直後の写真をつけている口コミよりも、2週間後1カ月後など、使用後の口コミを参考にしているとのことでした。

タオバオアプリイメージ

SNSが発展し多様化してきたことで、同じ商品に対する口コミでも、サービスによって異なる印象を受けることもあるでしょう。対象者のコメントからも分かるように、情報を受け取る側は、それぞれのサービス特性を踏まえて独自基準を設け、取捨選択をしていると考えられます。広告要素を感じる内容よりも、リアルな声を重視するユーザーが増えているのかもしれません。

コロナ前後の行動の変化

最後に、コロナ前後の行動の変化についてです。

対象者は、「コロナ以前はオンライン消費が60%程度だったが、コロナ後は90%に増している。ECの利用頻度が高まった一方で、Tモール国際を含む越境ECはあまり使わなくなった」と回答しました。越境ECの利用が減った理由は、「物流に時間がかかるため。保税区に在庫があるものは、鮮度が保たれていない」と言及。コロナの影響で通常以上に発送時間がかかるようになったことが原因と考えられます。

また、日常生活における変化は、「在宅時間が多くなり、家でヨガをしたりして過ごしている。手を洗う頻度が高くなり、配達が来たらドアの前で消毒している」と回答。中国は収束に向かっていると報道されていますが、まだまだ危機意識は強いと考えられます。

海外旅行の意向については、「今年は海外には行きたくない。元々予定していた韓国旅行を来年に変更した」と回答。コロナが世界中で流行し、警戒心を持っていることを考えると、インバウンド消費の回復には時間がかかるかもしれません。日本への印象は「コロナ前後で変わらず、良いい印象を持っている」とコメント。旅行には行けないとしても、日本製品に対しては信頼を寄せていると述べ、インタビューが締めくくられました。

まとめ

今回のインタビューから、
・化粧品は成分や効果効能に加え、ブランドも重視。
・化粧品など、国内のECモールで手に入らない時に越境ECを利用する
・日本の日用品は安全という前提で、パッケージを重視
・インターネットの口コミは、サービスを使い分けて情報を取捨選択
・コロナ後はオンライン消費が9割を占め、物流に時間がかかる越境ECの頻度は減少
という要素が見えてきました。

日本製品に対しては安心安全なイメージが定着しており、信頼性が築かれている一方で、物流システムをはじめ、越境ECには課題があることが分かります。また越境ECでの購入に至るまでのカスタマージャーニーでは、ECの外でも様々な行動を行っている事が分かりました。

今回のように、消費者のリアルな声が聞ける定性調査(インタビュー調査)は、消費者との接点を持ちづらい海外進出において、実態把握や仮説検証に役立ちます。また、記事内では割愛しましたが、追加質問を対象者へ投げかけることも可能です。コロナの影響で現地に赴くことも難しい今、チャットインタビューが今後の中国ビジネスに貢献することを期待します。

調査データのお問い合わせはこちら

関連記事

ライオンが中国の生活者の意外なインサイトを掴んだオンラインチャット調査とは? 越境ECの取り組みを聞いてみた

https://manamina.valuesccg.com/articles/927

伸長する中国市場への越境ECを伸ばしていきたい国内各社ですが、中国消費者の購買行動や嗜好をつかむのに手間取り、適切な商品開発やマーケティングができていない場合も多い状況。そこでライオン株式会社ではヴァリューズの中国オンラインチャット調査を使用し中国の生活者の実態把握を行いました。ライオンでリサーチ業務に携わる高木優さん、ヴァリューズの姜に取材します。

ロックダウン前後の中国人の行動・消費意識変化を調査 ~ 休日の過ごし方は“ネットショッピング”が継続1位

https://manamina.valuesccg.com/articles/969

インターネット行動ログ分析によるマーケティング調査・コンサルティングサービスを提供する株式会社ヴァリューズは、中国の20~40代の男女1,071人を対象に、新型コロナウイルス感染拡大およびロックダウンによって中国人の消費意識がどのように変化したのかアンケート調査を実施しました。

中国におけるアフターコロナのネット利用・購買行動を探る|中国市場セミナーレポート

https://manamina.valuesccg.com/articles/957

日本国内では、依然として感染拡大の収束が見えない新型コロナウイルス。第3波が懸念されている中国では一定の収束が見られるものの、局地的に感染が発生したケースもあるようです。生活様式の変化だけでなく、経済活動にまで甚大な影響をもたらし続けている今、中国市場でもどのような変化があったのでしょうか。今回はロックダウン前後の中国人のネット利用や購買行動などの変化に焦点を当て、株式会社ヴァリューズがアンケート調査にもとづき開催したオンラインセミナーをレポートします。

この記事のライター

フリーランスPRおよびライターとして活動中。二児の母。

関連するキーワード


中国市場 セミナー

関連する投稿


中国で勢いを見せる「氷雪経済」を最新調査

中国で勢いを見せる「氷雪経済」を最新調査

2022年に開催された北京冬季オリンピックの「オリンピック効果」によって、中国では「氷雪経済」の成長が加速しています。アイススポーツを中心にレジャー、文化などを総合的に巻き込むこの経済システムは、広いサプライチェーンと高い集客効果を持っています。本記事では、氷雪経済が中国にどのような変化をもたらしているのかを調査しました。


2025年の中国春節消費の新トレンド 〜 Z世代が牽引する新年の風潮

2025年の中国春節消費の新トレンド 〜 Z世代が牽引する新年の風潮

2025年の春節(旧正月)が終わり、中国の都市や農村の至るところで、まだ新年の余韻が感じられます。しかし、例年と異なり、今年の中国の春節消費はより個性的でデジタル化が進んでいます。Z世代(1990年代後半から2010年代初頭に生まれた世代)が春節消費市場の中心となりつつあり、年貨(春節用の買い物)や贈り物の選び方、そして春節文化の楽しみ方において新たな価値観を生み出しています。本記事では2025年中国の春節の消費トレンドを詳しく分析します。


中国の健康消費の新トレンド ~ 若者に人気の「中式養生水」

中国の健康消費の新トレンド ~ 若者に人気の「中式養生水」

中国の経済発展につれ、飲料の選択にも変化が見られるようになりました。かつては、炭酸飲料が売上ランキングを独占していましたが、中国人の健康意識の高まりとともに、高糖分の飲料が体に与える負担が認識されるようになり、無糖茶飲料が新たな市場の主役となりました。無糖茶は、さっぱりとした味わいと低カロリーという特徴を持ち、健康志向の消費者のニーズを満たしてきましたが、過去には味わいと機能性の両面で十分に満足させるものではありませんでした。こうした中、さまざまな改良が加えられ、伝統的な養生理念と現代的な飲料の形態を融合させた新カテゴリー「中式養生水」が登場し、注目を集めています。


【2025年3月24日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

【2025年3月24日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

編集部がピックアップしたマーケティングセミナー・勉強会・イベントを一覧化してお届けします。


スマート家電は生活の質を向上させる?中国におけるスマート家電の利用実態を調査

スマート家電は生活の質を向上させる?中国におけるスマート家電の利用実態を調査

近年のデジタル化や購入支援政策も相まって、中国国内でスマート家電が広く普及し始めました。スマート化によって利便性や機能性が向上すると謳われていますが、実際のところはどうなのでしょうか?ヴァリューズ独自の中国定性調査サービス「ValueQIC(ヴァリュークイック)」を用いて、ユーザーの本音を明らかにしました。


最新の投稿


ストーリーボード(体験設計のアウトプット)|現場のユーザーリサーチ全集

ストーリーボード(体験設計のアウトプット)|現場のユーザーリサーチ全集

リサーチャーの菅原大介さんが、ユーザーリサーチの運営で成果を上げるアウトプットについて解説する「現場のユーザーリサーチ全集」。今回はストーリーボード(体験設計のアウトプット)について寄稿いただきました。※本記事は菅原さんの書籍『ユーザーリサーチのすべて』(マイナビ出版)と連動した内容を掲載しています。


BizTech、最新の生成AI技術トレンドがわかる「最新生成AIツール・モデル調査レポート」を無料公開

BizTech、最新の生成AI技術トレンドがわかる「最新生成AIツール・モデル調査レポート」を無料公開

BizTech株式会社は、2025年2月25日〜2025年3月11日の最新生成AI技術トレンドをまとめたレポートを無料公開したことを発表しました。


プレスリリース配信にあたって最も負担に感じるのは"配信準備に時間や手間がかかること"【レイクルー調査】

プレスリリース配信にあたって最も負担に感じるのは"配信準備に時間や手間がかかること"【レイクルー調査】

株式会社レイクルーは、従業員数100名以下の中小企業の広報・PR担当者を対象に「プレスリリース配信の実態」に関する調査を実施し、結果を公開しました。


約8割がオタ卒・担降りを経験!推し歴が長くなると「活動の方向性・路線の変化」や「推しのライフステージの変化」がオタ卒・担降りのトリガーに【Favomatch調査】

約8割がオタ卒・担降りを経験!推し歴が長くなると「活動の方向性・路線の変化」や「推しのライフステージの変化」がオタ卒・担降りのトリガーに【Favomatch調査】

株式会社Favosiaは、同社が提供する推し活アプリ「Favomatch(ファボマッチ)」にて、大人の推し活を楽しむ女性を対象にした「オタ卒(オタクを卒業すること)」と「担降り(特定の推しから別の推しに移行すること)」に関する実態調査を実施し、結果を公開しました。


【2025年】花粉症の検索トレンド分析。近年注目されている対策は?

【2025年】花粉症の検索トレンド分析。近年注目されている対策は?

「時期が早い」「花粉飛散量が多い」と言われている2025年春、花粉症に悩まされている方々も多いのではないでしょうか。「花粉症」についての検索者はいつ多くなるのか、どのような人なのか、さらに注目の花粉症対策について調査しました。 ※本記事に掲載する医療情報や健康関連情報は一般的な参考情報を提供するものであり、内容の正確性や信頼性を担保するものではありません。個別の状況においては必ず医師や専門家に相談してください。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ