グーグル・ChromebookのテレビCM事例に見る検索行動との関連とは?50代以上の検索ユーザーが増加

グーグル・ChromebookのテレビCM事例に見る検索行動との関連とは?50代以上の検索ユーザーが増加

GoogleがつくるノートPC、Chromebookは2月のテレビCM放映によって検索数が伸びていました。ユーザー属性を見ると50代以上の検索者が増加。消費者との接点づくりとして効果的なテレビCMを、その後のオンライン上のコミュニケーション戦略につなげる重要性について考察しました。


Chromebookの検索数が増加

Chromebookとは、Google社が開発したChrome OSが搭載されたコンピューターの総称です。動作の速さやサンドボックスによるセキュリティの高さ、またスペック帯での価格の安さなどが特長。

20年1月にはChromebookの新作が発売され、その後Googleは日本語版のテレビCMの放映を開始しました。PCを使っているとしばしば起こる、動作フリーズといった問題をパロディ気味に紹介する内容で、ついつい目が引き寄せられてしまいます。印象に残っている方も多いのではないでしょうか。

ついにGoogleが日本でのChromebookの販売促進に本腰を入れ始めたのではないかという指摘も出ていますが、実際に消費者の注目も集めているようです。

SaaS型の市場分析ツール「eMark+(イーマークプラス)」を使用し、Chromebookの市場への反応を見てみます。まずは2019年5月から2020年4月の1年間の「Chromebook」キーワードを用いた検索数の推移を見てみましょう。

「Chromebook」関連検索ユーザー数の2019年5月から2020年4月にかけての変遷(eMark+画面より)
※対象デバイス:PC

キーワード検索のユーザー数の推移を見ると、2020年2月に前月の3倍近くまで急増していることがわかります。前述のCM放送が効果的だったと思われます(YouTubeに上げられたCM動画は2020年2月13日アップロードとなっています)。

CM前後でユーザー層に変化は?高齢層の検索が増加

次に、どのようなユーザーが検索していたのかを見てみましょう。大きくユーザー数の上昇がみられた2020年2月以降とそれ以前について、検索ユーザー属性の違いを「年代」に着目して探ってみます。

まずは2020年1月以前の3か月のユーザー属性を見てみましょう。

「Chromebook」関連検索ユーザーの2019年11月から2020年1月における年代別割合(eMark+画面より)
※対象デバイス:PC

ユーザーの年代では30〜40代の割合が多く、全体の半数以上を占めます。20代も含めて40代以下というくくりで考えると、実に70%を超えることになります。次に多いのが50代で、16%ほどの割合です。

さて、2020年2月以降の3か月はどのようになっているでしょうか。

「Chromebook」関連検索ユーザーの2020年2月から4月における年代別割合(eMark+画面より)
※対象デバイス:PC

ユーザー数はそれぞれの年代で増えているのですが、割合には変化が見られます。

特に注目したいのが、60代以上の高齢層のユーザー数の増加。母数も大きく増えている中で、10%ほども割合が増えています。50代も含めると、1月以前は30%に満たなかったものが、2月以降は40%を超えています

高年代層の割合は軒並み増加しており、スマホ、ネット世代だけではなく、より多くの人々に訴えるテレビCMの放送の効果のほどを表していると言えるかもしれません。

検索した人はどんなページを見ている?

ここまでChromebookについて検索したユーザーの属性を見てきましたが、検索した結果ユーザーはどのようなウェブページを閲覧しているのでしょうか。早速eMark+を用いて見ていきましょう。

「Chromebook」関連検索の2019年5月から2020年4月にかけての流入LPランキング(eMark+画面より)
※対象デバイス:PC

検索ランディングページのユーザー数1位から10位までを上に抜粋してみました。このうち、1位から3位のページをピックアップして見てみましょう。

1位:Chromebook ってなに?なにが出来るの? | 日本HP

検索ユーザー数の1位は、ヒューレットパッカード社の特設ページです。HP社の製品のことだけでなく、Chromebookの特徴が一般的に分かりやすく、かつかなり詳細にまとめられています。

2位:【2020年版】Chromebookのおすすめ10選

2位は「話題の“モノ”情報をわかりやすく紹介するWebマガジン」こと「SAKIDORI」の特集記事です。

こちらの記事では、Chromebookについて各メーカーから独立して中立におすすめの機種や選び方のポイントなどが紹介されています。また、Chromebook自体についても公平にメリットだけでなく、オフライン環境での使用の難しさなどのデメリットも挙げられています。

3位:Chromebook | ノートパソコン | ASUS 日本

3位はASUSのネット通販ページ。こちらはChromebookの紹介ページではなく、メーカーのASUSによる自社製品紹介ページです。

先述のHP社では3点のみの生産販売となっているのに対して、こちらのページでは2020年5月現在、9点の製品が購入できる状態となっています。バラエティに富んでいるからか、2位のSAKIDORIの特集記事においても多くのASUS機種がおすすめされていました。SAKIDORIの記事を読み、ASUSのページに辿り着く人も多いのかもしれません。

デジタル・リアルの垣根を超える重要性

様々な独自の魅力をもつChromebook。その特長をテレビCMで大いに訴えた2020年2月以降、人々の関心が高まった様子が伺えました。それまでリーチできていなかったと思われる高年代層にもテレビCMは効果的な宣伝手段だったのではないでしょうか。

また、今回のデータからはテレビCMが消費者の検索行動につながっていることが示唆されます。そして実際に「Chromebook ってなに?なにが出来るの? | 日本HP」といったサイトで情報を得て、購買の検討後オンライン上で購入まで至ったユーザーもいるのではないでしょうか。

スマホの普及にともない消費者のメディア利用はデジタル上へ移行が進みましたが、とはいえテレビの情報拡散力はまだまだ侮れません。今回のChromebook事例では40代以上の高年代層の検索数が増加したという結果ですが、おそらく若年層に対するアプローチにおいても、一定の効果はあると示唆されています。

本サイト・マナミナで以前に取り上げましたが、カレンダー共有アプリ「タイムツリー」では、テレビCMの放映後のサイトユーザー数が1.6倍になっていました。認知度としてはF1層がもっとも高いという結果も出ています。

また、スキマバイトアプリの「Timee」でも、同様にテレビCM後のMAUが増加していました。

カレンダー共有の「タイムツリー」、夫婦共演のテレビCMで月間ユーザー数が約1.6倍に。F1層の心を掴む?

https://manamina.valuesccg.com/articles/798

中尾明慶さんと仲里依紗さんの夫婦共演CMが印象的な「タイムツリー」。アプリ内でコミュニケーションが取れるスケジュール管理アプリとして注目を集めるサービスです。本稿では、そんなタイムツリーを調査。サービスの特徴やユーザー傾向、マネタイズ方法など、サービスの実態を調べていきます。

スキマバイトアプリ「Timee」、人気女優出演のCMで 月間ユーザー数が約2倍に

https://manamina.valuesccg.com/articles/854

橋本環奈さん出演のCMが大きな話題となったスキマバイトアプリ「Timee(タイミー)」。事前登録が不要で、条件をクリアすれば好きな場所・時間・職種で働けると注目を集めています。サービスの特徴やユーザーの傾向を従来のアルバイト求人アプリと比較しながら調べていきます。

今回のChromebookも含めこれらの事例からは、メディアごとに広告施策を分けるのではなく、オフラインとオンラインを合わせた総合的なメディア戦略を練る重要性がうかがえます。例えばトヨタ自動車のオウンドメディア「トヨタイムズ」では、香川照之さんを起用したテレビCMを放映し、オンライン上でのコミュニケーションに誘導するといった施策も行われています。

テレビでは従来、その後の消費者のアクションが見えづらい点が指摘されていました。しかし、今回のような事例から、テレビCMを情報の起点としたあと、オンラインでのコミュニケーションでエンゲージメントを高め、顧客のファン化を図るといった統合型のマーケティングが魅力的に見えてくるのではないでしょうか。

テレビは大規模な広告予算が必要とされる媒体ですが、オンライン施策と合わせることでよりレバレッジの効いたマーケティングが可能になりそうです。

デジタル上の指標を競合も含めて計測できるツール・eMark+

eMark+ 無料で競合調査ができる! 無料登録はこちら

本記事へのお問い合わせはこちら | ビッグデータ×マーケティングで事業の成長を支援|株式会社ヴァリューズ

https://www.valuesccg.com/inquiry/

国内30万人規模の消費者行動から 確実に成果につながるデータ マーケティングを導き出すSaaS、eMark+(イーマークプラス)を提供する企業 VALUES。無料から有料アップグレードで ネット広告の市場+効果、キーワード調査、集客施策などの分析も可能。今すぐOODAを実現させましょう。

この記事のライター

ウィーン大学への留学を経て京都大学文学部卒業。
外資系大手ITコンサルティング会社に勤務後、フリーランスライターに転向。

関連する投稿


2024年人気アニメを振り返る!ヒットを生む「勝ちパターン」とは?

2024年人気アニメを振り返る!ヒットを生む「勝ちパターン」とは?

コンテンツには事欠かない現代ですが、話題を呼ぶ人気作には、どのような「勝ちパターン」が存在するのでしょうか。2024年に放送された新規アニメ「薬屋のひとりごと」「逃げ上手の若君」「怪獣8号」「ダンジョン飯」に、11月に劇場版が公開された「進撃の巨人」を加えて、消費者の関心を調査しました。


2024年トレンド総決算!6つのテーマのマーケティング調査で振り返る

2024年トレンド総決算!6つのテーマのマーケティング調査で振り返る

マナミナでは、国内最大規模の消費者オンライン行動データを活用して、世の中のトレンドを調査しています。2024年もさまざまなトレンドを記事として取り上げてきました。今回は調査記事の総集編として、2024年のトレンドを振り返ります。


2024年のトレンドワードまとめ!新語・流行語大賞の「ふてほど」ほか、50-50、新NISAなど

2024年のトレンドワードまとめ!新語・流行語大賞の「ふてほど」ほか、50-50、新NISAなど

パリ2024オリンピックや衆議院選挙が行われた2024年は、どのような1年だったのでしょうか?2024年新語・流行語大賞の分析とヴァリューズで分析した今年1年間の週間検索キーワードランキングから2024年のトレンドを分析しました。


新時代のフランス発SNS「BeReal(ビーリアル)」MAUは過去1年で4倍に。広告にも期待感高まる

新時代のフランス発SNS「BeReal(ビーリアル)」MAUは過去1年で4倍に。広告にも期待感高まる

リリースされてから、Z世代を中心に強い支持を集めている「BeReal(ビーリアル)」。2023年初頭から人気を集め始めていますが、いまだにその人気は衰えていません。2024年7月には、日本で広告事業を本格化しはじめたことが大きな話題になりました。今回は、BeRealの最新動向をデータを用いて分析するとともに、広告ビジネスの可能性を調査していきます。


データ分析のヴァリューズ、 「デジタル・トレンド白書2024 – ライフスタイル・消費トレンド編」を公開

データ分析のヴァリューズ、 「デジタル・トレンド白書2024 – ライフスタイル・消費トレンド編」を公開

ヴァリューズは、国内最大規模の消費者Web行動ログパネルを保有し、データマーケティング・メディア「マナミナ」にて消費トレンドの自主調査を発信してきました。その中から注目領域の調査・コラムをピックアップし、白書として収録。2021年の発行から4回目を迎える「デジタル・トレンド白書2024」は、Z世代トレンド・SNS動向編、ライフスタイル・消費トレンド編の2部構成になっています。(「ライフスタイル・消費トレンド編」ページ数|153P)


最新の投稿


タイのコーヒーの特徴とは?タイのコーヒー市場の現状やショップを紹介

タイのコーヒーの特徴とは?タイのコーヒー市場の現状やショップを紹介

近年タイではコーヒーブームが起こっています。バンコクには次々と新しいカフェができており、SNS映えする店内だけではなくコーヒーの味にもこだわりを持つカフェが増えています。実際に、起業してカフェオーナー兼バリスタになるのはタイでは一つのトレンドです。 近年、タイのコーヒー市場は右肩上がりに伸びており、タイのコーヒー市場は日本円で1440億円を超えると言われています。 そこで本記事では、タイのコーヒー市場の現状を読み解くとともに、タイでなぜコーヒーの人気が高まっているのかを、タイのコーヒーブームの歴史と共に解説します。


2025年上半期Z世代トレンド予想!Trepo、「ファッション」「グルメ」「コト・モノ」の3部門のランキングを発表

2025年上半期Z世代トレンド予想!Trepo、「ファッション」「グルメ」「コト・モノ」の3部門のランキングを発表

株式会社Creative Groupは、同社が運営するメディア『トレンドメディアTrepo(トレポ)』にて、10代~20代の女性を対象に、2025年上半期のZ世代トレンド予想調査を実施し、結果を公開しました。


ADK MS、「ゲーム総合調査レポート2024」を発表!最新のゲーム市況の把握から、ゲームプレイヤーの行動・心理の分析まで網羅

ADK MS、「ゲーム総合調査レポート2024」を発表!最新のゲーム市況の把握から、ゲームプレイヤーの行動・心理の分析まで網羅

株式会社ADKマーケティング・ソリューションズは、ゲームプレイヤーの心理・行動を分析し、分かりやすく彼らの実態を可視化した「ゲーム総合調査レポート2024」を作成し、公開しました。


スリープテック ~ 睡眠の質とテクノロジー

スリープテック ~ 睡眠の質とテクノロジー

疲労回復、毎日のコンディション管理に必要不可欠な「睡眠」。その睡眠、あなたは足りていますか?最近ではニュースでも多く取り上げられた通り、日本は世界規模での「不眠大国」。実に日本人の平均睡眠時間は経済協力開発機構(OECD)の加盟国33ヵ国の中で最下位とも言われています。そして睡眠はただ眠るだけではなく、経済とも大いに関わりがあるのです。本稿では広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長、一般社団法人マーケティング共創協会理事・研究フェローを務めている渡部数俊氏が、良質な睡眠の鍵を解説します。


BtoBマーケティングの成功は"ファクトファインディング"が重要!本質的・潜在的な課題・ニーズを引き出すことが成功のカギ【PRIZMA調査】

BtoBマーケティングの成功は"ファクトファインディング"が重要!本質的・潜在的な課題・ニーズを引き出すことが成功のカギ【PRIZMA調査】

株式会社PRIZMAは、全国のマーケティングコンサルタントを対象に、「BtoBマーケターが始めた方が良いこと」に関する調査を実施し、結果を公開しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ