Chromebookの検索数が増加
Chromebookとは、Google社が開発したChrome OSが搭載されたコンピューターの総称です。動作の速さやサンドボックスによるセキュリティの高さ、またスペック帯での価格の安さなどが特長。
20年1月にはChromebookの新作が発売され、その後Googleは日本語版のテレビCMの放映を開始しました。PCを使っているとしばしば起こる、動作フリーズといった問題をパロディ気味に紹介する内容で、ついつい目が引き寄せられてしまいます。印象に残っている方も多いのではないでしょうか。
ついにGoogleが日本でのChromebookの販売促進に本腰を入れ始めたのではないかという指摘も出ていますが、実際に消費者の注目も集めているようです。
SaaS型の市場分析ツール「eMark+(イーマークプラス)」を使用し、Chromebookの市場への反応を見てみます。まずは2019年5月から2020年4月の1年間の「Chromebook」キーワードを用いた検索数の推移を見てみましょう。
「Chromebook」関連検索ユーザー数の2019年5月から2020年4月にかけての変遷(eMark+画面より)
※対象デバイス:PC
キーワード検索のユーザー数の推移を見ると、2020年2月に前月の3倍近くまで急増していることがわかります。前述のCM放送が効果的だったと思われます(YouTubeに上げられたCM動画は2020年2月13日アップロードとなっています)。
CM前後でユーザー層に変化は?高齢層の検索が増加
次に、どのようなユーザーが検索していたのかを見てみましょう。大きくユーザー数の上昇がみられた2020年2月以降とそれ以前について、検索ユーザー属性の違いを「年代」に着目して探ってみます。
まずは2020年1月以前の3か月のユーザー属性を見てみましょう。
「Chromebook」関連検索ユーザーの2019年11月から2020年1月における年代別割合(eMark+画面より)
※対象デバイス:PC
ユーザーの年代では30〜40代の割合が多く、全体の半数以上を占めます。20代も含めて40代以下というくくりで考えると、実に70%を超えることになります。次に多いのが50代で、16%ほどの割合です。
さて、2020年2月以降の3か月はどのようになっているでしょうか。
「Chromebook」関連検索ユーザーの2020年2月から4月における年代別割合(eMark+画面より)
※対象デバイス:PC
ユーザー数はそれぞれの年代で増えているのですが、割合には変化が見られます。
特に注目したいのが、60代以上の高齢層のユーザー数の増加。母数も大きく増えている中で、10%ほども割合が増えています。50代も含めると、1月以前は30%に満たなかったものが、2月以降は40%を超えています。
高年代層の割合は軒並み増加しており、スマホ、ネット世代だけではなく、より多くの人々に訴えるテレビCMの放送の効果のほどを表していると言えるかもしれません。
検索した人はどんなページを見ている?
ここまでChromebookについて検索したユーザーの属性を見てきましたが、検索した結果ユーザーはどのようなウェブページを閲覧しているのでしょうか。早速eMark+を用いて見ていきましょう。
「Chromebook」関連検索の2019年5月から2020年4月にかけての流入LPランキング(eMark+画面より)
※対象デバイス:PC
検索ランディングページのユーザー数1位から10位までを上に抜粋してみました。このうち、1位から3位のページをピックアップして見てみましょう。
1位:Chromebook ってなに?なにが出来るの? | 日本HP
検索ユーザー数の1位は、ヒューレットパッカード社の特設ページです。HP社の製品のことだけでなく、Chromebookの特徴が一般的に分かりやすく、かつかなり詳細にまとめられています。
2位:【2020年版】Chromebookのおすすめ10選
2位は「話題の“モノ”情報をわかりやすく紹介するWebマガジン」こと「SAKIDORI」の特集記事です。
こちらの記事では、Chromebookについて各メーカーから独立して中立におすすめの機種や選び方のポイントなどが紹介されています。また、Chromebook自体についても公平にメリットだけでなく、オフライン環境での使用の難しさなどのデメリットも挙げられています。
3位:Chromebook | ノートパソコン | ASUS 日本
3位はASUSのネット通販ページ。こちらはChromebookの紹介ページではなく、メーカーのASUSによる自社製品紹介ページです。
先述のHP社では3点のみの生産販売となっているのに対して、こちらのページでは2020年5月現在、9点の製品が購入できる状態となっています。バラエティに富んでいるからか、2位のSAKIDORIの特集記事においても多くのASUS機種がおすすめされていました。SAKIDORIの記事を読み、ASUSのページに辿り着く人も多いのかもしれません。
デジタル・リアルの垣根を超える重要性
様々な独自の魅力をもつChromebook。その特長をテレビCMで大いに訴えた2020年2月以降、人々の関心が高まった様子が伺えました。それまでリーチできていなかったと思われる高年代層にもテレビCMは効果的な宣伝手段だったのではないでしょうか。
また、今回のデータからはテレビCMが消費者の検索行動につながっていることが示唆されます。そして実際に「Chromebook ってなに?なにが出来るの? | 日本HP」といったサイトで情報を得て、購買の検討後オンライン上で購入まで至ったユーザーもいるのではないでしょうか。
スマホの普及にともない消費者のメディア利用はデジタル上へ移行が進みましたが、とはいえテレビの情報拡散力はまだまだ侮れません。今回のChromebook事例では40代以上の高年代層の検索数が増加したという結果ですが、おそらく若年層に対するアプローチにおいても、一定の効果はあると示唆されています。
本サイト・マナミナで以前に取り上げましたが、カレンダー共有アプリ「タイムツリー」では、テレビCMの放映後のサイトユーザー数が1.6倍になっていました。認知度としてはF1層がもっとも高いという結果も出ています。
また、スキマバイトアプリの「Timee」でも、同様にテレビCM後のMAUが増加していました。
カレンダー共有の「タイムツリー」、夫婦共演のテレビCMで月間ユーザー数が約1.6倍に。F1層の心を掴む?
https://manamina.valuesccg.com/articles/798中尾明慶さんと仲里依紗さんの夫婦共演CMが印象的な「タイムツリー」。アプリ内でコミュニケーションが取れるスケジュール管理アプリとして注目を集めるサービスです。本稿では、そんなタイムツリーを調査。サービスの特徴やユーザー傾向、マネタイズ方法など、サービスの実態を調べていきます。
スキマバイトアプリ「Timee」、人気女優出演のCMで 月間ユーザー数が約2倍に
https://manamina.valuesccg.com/articles/854橋本環奈さん出演のCMが大きな話題となったスキマバイトアプリ「Timee(タイミー)」。事前登録が不要で、条件をクリアすれば好きな場所・時間・職種で働けると注目を集めています。サービスの特徴やユーザーの傾向を従来のアルバイト求人アプリと比較しながら調べていきます。
今回のChromebookも含めこれらの事例からは、メディアごとに広告施策を分けるのではなく、オフラインとオンラインを合わせた総合的なメディア戦略を練る重要性がうかがえます。例えばトヨタ自動車のオウンドメディア「トヨタイムズ」では、香川照之さんを起用したテレビCMを放映し、オンライン上でのコミュニケーションに誘導するといった施策も行われています。
テレビでは従来、その後の消費者のアクションが見えづらい点が指摘されていました。しかし、今回のような事例から、テレビCMを情報の起点としたあと、オンラインでのコミュニケーションでエンゲージメントを高め、顧客のファン化を図るといった統合型のマーケティングが魅力的に見えてくるのではないでしょうか。
テレビは大規模な広告予算が必要とされる媒体ですが、オンライン施策と合わせることでよりレバレッジの効いたマーケティングが可能になりそうです。
デジタル上の指標を競合も含めて計測できるツール・eMark+
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ウィーン大学への留学を経て京都大学文学部卒業。
外資系大手ITコンサルティング会社に勤務後、フリーランスライターに転向。