中国でもミニマリストが増加。その理由とは|中国トレンド調査

中国でもミニマリストが増加。その理由とは|中国トレンド調査

「ミニマリスト」とは最小限(ミニマル)の物で暮らす人を意味しますが、アートトレンドの一つとして、必要不可欠な要素も含め全てを剥ぎ取る「ミニマリストデザイン」と呼ばれるものが存在します。禅と簡素さに満ちた日本のデザインやホワイトインテリアが有名な北欧がその代表例として挙げられます。中国でも、日本と北欧からの影響を受け、シンプルなデザインに憧れ、「モノを手放そう」というミニマリスト志向を持つ人が増えてきています。ここでは、衣食住の観点から中国の「ミニマリスト」について考察していきたいと思います。


中国人ミニマリストの暮らし方

ミニマリストの暮らし方といえば、まずキャッシュレスが挙げられます。

中国ではアリペイやウィーチャットペイなどキャッシュレスサービスが瞬く間に普及し、急速なキャッシュレス社会の到来によって持ち歩く荷物の断捨離を目指すミニマリストが増えてきました。

現在、アリペイには、配車サービスや出前、金融、医療といった生活全般のミニアプリがあるため、今後、持ち物は「スマホ一台」のみのミニマリストが増加していくだろうと考えられます。

持ち荷物だけでなく、最近、中国の人々も、家庭の中の整理整頓に目覚めつつあります。そのため、日本人整理収納アドバイザーの著書や日本で発売されているミニマリスト暮らし向けの収納グッズが中国で大人気となり、富裕層を中心に、片づいた部屋でミニマリストの生活を送りたいと考える人が増えてきました。

これに伴い、整理収納アドバイザーと片付け代行業が大いに活躍しており、彼らのサービスの値段はなんと平均して1時間当たり日本円で1万円を超える高額となっています。

ホテルとインテリアの選び方にも、中国人のミニマリスト志向が現れています。「極簡江南風」と呼ばれるデザインスタイルの流行はその一例として挙げられます。

中国では、浙江・江蘇・安徽三省にまたがる長江デルタを「江南」と言います。水辺の自然環境を利用して形づくられた中国江南の都市空間構造に、ミニマリストのデザイン志向が反映されています。例えば、「極簡江南風」のインテリアデザインを取り入れた浙江烏鎮(うちん)のAlilaホテルが最近人気のホテルです。

浙江烏鎮(うちん)のAlilaホテル

浙江烏鎮(うちん)のAlilaホテル

ホテルだけでなく、「極簡江南風」は、一般家庭向けのインテリアデザインプランの一つとしても、人気を得ています。

「極簡江南風」の他に、ミニマリストのデザイン思考に「胡同(フートン)」と「四合院」という2つの北京の伝統的建築様式を合わせた嵯峨館も人気な宿泊施設です。「胡同(フートン)」とは東西に走る幅員9mあまりの道路のことです。

一方、典型的な「四合院」とは長方形に区画された敷地の四方を壁で囲ったうえ、中庭を囲んで四方(東西南北)に建物を配置する建築様式を指します。

北京の嵯峨館

北京の嵯峨館

嵯峨館は、「胡同(フートン)」と「四合院」(しごういん)」の建築様式を生かし、静寂に包まれた施設であり、落ち着いたミニマリストな雰囲気を作り出しています。

中国人ミニマリストに人気の日本ブランドは?

「Uniqlo U」は中国のミニマリストにも人気

日本のミニマリストに人気な、「無印良品」や「ユニクロ」も中国に進出しており、中国人消費者への認知度が高くなっています。

所得が増えれば、消費への志向が高くなり、良質かつシンプルなデザインの服や小物ブランドに、大きな商機が訪れます。最近、ユニクロの特別コレクションUniqlo Uの試着動画も中国最大級の動画プラットフォーム「bilibili」とショートムービープラットフォーム「TikTok(ティックトック)」で何十万人もの視聴数を得ました。

Uniqlo Uの試着動画

近年、ミニマリスト的ベーシックなデザインが有名な海外ブランドAcne Studios 、EverlaneやCOSなどもこの商機を利用し、アリババグループのECサイト「天猫(Tmall)」に出店しました。

また、ミニマリストに人気なハイブランドCelineやJil Sanderは、実店舗でのみ販売を行っており、ECサイト上に一切公式ショップを開設していませんが、代行サービスやSSENSE(エッセンス)などの海外通販サイトを利用して購入する人が多くいます。

筆者の観察によると、いま中国で流行っているミニマリストの「大人コーデ」は、フランス、韓国、日本のそれぞれの流行を取り入れたものであり、海外ブランドの中国市場進出への影響とともに、ミニマリストの考え方はサブカルチャーの一つとして中国の人々に受け入れられ、消費者の意識に変化をもたらしたと考えられます。

Acne Studiosの天猫(Tmall)公式ショップ

SNS型ECアプリ小紅書(RED)でレシピをシェア

さらに、ミニマリストたちは、シンプルなデザインに憧れるだけでなく、質素な食生活も送っています。

ミニマリストとして、自分の食生活を記録する人々は、よくSNS型ECアプリ小紅書(RED)を活用し、日記の形で食生活の記録を残したり、レシピをシェアしたりしています。

このような料理や食生活に関連するコンテンツは、利用者にとって人気のジャンルとなっており、企業がREDをマーケティングの場として活用し、人気アカウントと提携し、自社の商品PRを行うことも多いです。

ミニマリストレシピの人気小紅書(RED)アカウント

まとめ

なぜミニマリストを目指すのか?その答えは人によって違いますが、ミニマリズムの人生を豊かにするための価値観は、多くの国に大きな影響を与えることが予想されます。

このような価値観に基づき、「物をたくさん所有しなくても暮らせる」、「シンプルなデザインでメッセージ性を強く打ち出せる」など、ミニマリストの定義が多様化しています。そして、高度経済成長とともに、商品・モノが溢れる中で、「爆買い」がひと段落し、モノへの捉え方を見直し、様々な体験を楽しむ「コト消費」へ転換していく中国人ミニマリストが増えていくことが考えられます。

<参考文献>
整理师,正在崛起的“钻石职业”
https://www.huxiu.com/article/336045.html

阿丽拉乌镇:极简江南风,冷淡却不冷漠
https://www.sohu.com/a/280258618_99951071

一座落入院落中的山景,嵯峨馆
http://www.tpc-sd.com.cn/cn/wordtxt.asp?wnum=2824

嵯峨馆:北京四合院角落的空间把戏 / 神奇建筑研究室
https://www.archiposition.com/items/20180525112844

爱上了“极简主义”的中国人?
http://wap.art.ifeng.com/?app=system&controller=artmobile&action=content&contentid=3486931

この記事のライター

中国出身の留学生。慶應義塾大学に在学中。

関連するキーワード


中国市場 中国トレンド調査

関連する投稿


中国で抹茶が若者を中心に人気拡大。その魅力は?

中国で抹茶が若者を中心に人気拡大。その魅力は?

近年、中国の抹茶人気が高まっています。抹茶飲料だけでなく、アイス、ジェラート、チョコ、ラテ、お酒など数えきれないほどの抹茶商品が登場しており、「万物皆可抹茶(なんでも抹茶味にできる)」という言葉ができるほどです。この記事では、このような抹茶人気の背景にある要因を紹介します。


中国の犬猫3000万匹がシニア期へ、進化するペット終活最新事情

中国の犬猫3000万匹がシニア期へ、進化するペット終活最新事情

今、中国ではペットの老いが大きなテーマになっています。たくさんの犬や猫がシニア期を迎え、ペット業界もかわいがるだけのフェーズから、最期まで寄り添うケアへと変わってきました。ペット保険、フードと健康管理、そしてペット葬儀。広がり続けるこの市場で、今最も注目されている変化をレポートします。


中国で大ブーム!食べて健康になる薬食同源(やくしょくどうげん)と最新トレンド

中国で大ブーム!食べて健康になる薬食同源(やくしょくどうげん)と最新トレンド

中国で今、伝統的な健康思想「薬食同源」が大ブームを巻き起こしています。急速な高齢化を背景に健康寿命を延ばしたいシニア世代だけでなく、日々の疲れやストレスを抱える若者たちの間でも、タイパ抜群の手軽な養生スタイルとして急速に浸透中。2024年には主要ECだけで1兆円を超える巨大市場へと成長しました。本記事では、老舗の若返りやヒット商品の動向など、進化を続ける中国の最新健康トレンドを解説します。


自然の中を走るトレイルランニングが中国で人気

自然の中を走るトレイルランニングが中国で人気

トレイルランニングというスポーツが中国で人気を集めています。「トレイル」とは「未舗装路」を意味し、山道など自然の中を走るスポーツです。特に30代から40代の人々の間で人気を集めるこのスポーツについて、ブームとなっている背景を紹介します。


中国「ダイエット・エコノミー2.0」 〜「体重管理年」を経て爆発する最新トレンドと消費の行方

中国「ダイエット・エコノミー2.0」 〜「体重管理年」を経て爆発する最新トレンドと消費の行方

2026年の中国では、ダイエット・エコノミーが劇的な二次進化を遂げています。2024年に始動した政府主導の「体重管理年」プロジェクトを経て、国民の意識はダイエットから全天候型のライフスタイルへと進化しています。本記事では、春節後の爆発的な需要を背景に、タイパを重視した「機能性食品のスナック化」や、小紅書(RED)等のコンテンツECが牽引する最新の消費トレンドを詳説。変容する中国若年層の心理を読み解き、日本企業が中国の巨大な健康市場を攻略するためのヒントを提示します。


最新の投稿


生成AI利用者の約7割が買い物の参考に活用。それでも22%は「最後は自分で調べ直す」【マインディア調査】

生成AI利用者の約7割が買い物の参考に活用。それでも22%は「最後は自分で調べ直す」【マインディア調査】

株式会社マインディアは、買い物の場面で生成AIを利用する全国18〜59歳の男女を対象に、購買行動における生成AIの利用実態調査を実施し、結果を公開しました。


ソフトバンク、生成AI向けデータ基盤「GaranAI」のベータ版を開始 著作物の保護と収益還元を支援

ソフトバンク、生成AI向けデータ基盤「GaranAI」のベータ版を開始 著作物の保護と収益還元を支援

ソフトバンク株式会社は、コンテンツホルダーが保有するデータを保護しながら、生成AIの開発に活用できるデータエコシステム基盤「GaranAI(ガランエーアイ)」のベータ版を提供開始しました。同日から、コンテンツホルダーとデータ利用事業者を対象に利用申し込みを受け付けています。


「好きで応援したい」のに、誰にも教えたくない?ブランドファンの複雑な心理とは【博報堂調査】

「好きで応援したい」のに、誰にも教えたくない?ブランドファンの複雑な心理とは【博報堂調査】

株式会社博報堂の生活者発想技術研究所は、東京都立大学 経済経営学部の水越康介教授との共同研究のもと、日本に住む15~74歳の男女を対象に「生活者から応援されるブランドと社会的価値に関する意識調査」を実施し、結果を公開しました。


バリューコマース、AI時代におけるブランドの「語られ方」を定量評価する新技術「Narrative Score」を開発

バリューコマース、AI時代におけるブランドの「語られ方」を定量評価する新技術「Narrative Score」を開発

バリューコマース株式会社は、AI時代におけるブランドの「語られ方(ナラティブ)」を定量的に評価する技術「Narrative Score(ナラティブスコア)」を開発したことを発表しました。


直感を「勝てる戦略仮説」へ翻訳する。積水ハウス イノコム流・理論×実践ツール活用法

直感を「勝てる戦略仮説」へ翻訳する。積水ハウス イノコム流・理論×実践ツール活用法

積水ハウス イノベーション&コミュニケーション株式会社の日ノ澤恵莉氏と株式会社ヴァリューズ取締役副社長・後藤賢治が対談。日ノ澤氏が提唱する5Sフレームワークとその実践について語り合いました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

ページトップへ