「OMO」という概念が生まれた背景
OMO(Online Merges with Offline)は、元Google China代表の李開復(リ・カイフ)氏が2017年に提唱した「オンライン、オフラインを行き来する顧客の動向に合わせ、それぞれを融合させてよりよいUX(顧客体験)を提供する」という概念が元になっています
OMOの概念が生まれた背景にはスマホの普及やIoTの進化があります。店舗で物を買う前にネットで口コミや評判を見る消費者行動が一般的になり、購買に至るまでオフラインとオンラインを行き来するようになっているのです。また、これらの行動履歴がデータとして残り、マーケティングに活用できる環境も整ってきました。
OMOを取り入れる意義
顧客にとって、商品やサービスを購入するチャネルが「オンラインかオフラインか」は重要ではなく、その時々でもっとも便利な方法を選んでいるに過ぎません。よって、オンラインとオフラインでチャネルが分離してしまっていたり必要な情報の連携が行われていないと不便に感じられてしまいます。
たとえば、ECサイトで商品をお気に入り登録したのに、アプリと連携していない、店舗で見た商品をECサイトでチェックする際にあらためて探し直す必要がある、店舗でアプリ機能を使おうにも階層が深く使いづらい、などといった問題があるとします。こうなると顧客は不便に感じてしまい「一貫したユーザー体験」にはなりません。
このようにしないため、企業は徹底した顧客目線によるサービスを展開するために必要なのは、顧客とのタッチポイントを増やしてデータをできるかぎり収集します。そして、データをもとに商品やサービス、さらにUXを高速で改善、それを継続させられるかがOMOの成否を分けると言えます。
「O2O」や「オムニチャネル」との違いは?
■オンラインとオフライン相互の行き来を促す「O2O」
Online to Offlineの略称が「O2O」になります。オンラインとオフラインを切り分けて考え、双方間の行き来を促すというマーケティング施策を表します。別チャンネルに誘導するだけで、それぞれのユーザー体験は独立している点がOMOと異なります。
たとえばネットで割引クーポンを配布し、それを実店舗で使ってもらうという施策はO2Oにあてはまります。この効果測定は店舗で使われたクーポンをカウントするだけなので、マーケティングやITに明るくなくても行いやすいメリットがあります。
■顧客との接点を増やす「オムニチャネル」
オンラインとオフラインの区別をなくし、さらに販売と流通のチャネルも統合した上で顧客との接点をできるだけ増やそうとする施策です。オムニチャネルでは企業のバックエンドの仕組みを統合する方が主眼である点で、OMOと異なります。
顧客に誘導を意識させずに店舗でもオンラインストアでも購入できるようにした上で、どちらからも同じサービスを受けられ、かつ同じ利益を得られる仕組みづくりが必要になります。
世界のOMO事例
■スーパーマーケットの「盒馬鮮生(ファーマーションシェン)」
中国における最大級のECサイトを経営するアリババが出資するスーパーマーケットが盒馬鮮生です。
モバイルアプリを利用し、無人レジでの商品の会計ができるほか、商品に貼付するQRコードをアプリで読み取ると、産地から店舗までの履歴をチェックできるようになっています。さらにそのアプリには、食材であればそれを利用したレシピ動画、それを調理するために必要な他の材料をまとめて購入できるシステムが装備されています。
店内はほかのスーパーマーケットに比べて清潔に保たれており、食材をその場で調理するイートインスペースや生け簀での鮮魚販売、そして、店舗から3キロメートル以内の範囲ならばアプリで注文した商品をデリバリーするサービスも行っています。
盒马是阿里巴巴集团旗下,以数据和技术驱动的新零售平台。盒马希望为消费者打造社区化的一站式新零售体验中心,用科技和人情味带给人们“鲜美生活”。
■スタバに迫る勢いの「Luckin Coffee」
Luckin Coffeeは、中国の新興コーヒーチェーンで、数年でナスダック上場を果たし店舗数も数千店とスターバックスに迫る勢いを見せています。
驚異的な成長スピードは徹底したOMO戦略にもとづいています。Luckin Coffeeでのコーヒーオーダーの方法は、アプリからの注文のみ。そのため、注文待ちの列に並ばずにスムーズにコーヒーをピックアップできます。
オーダーをアプリに集約する効果はオペレーションの向上に加え、売上や顧客データをリアルタイムにデータベースへの集約によって、コスト最適化などをすばやく算出できる点にもあります。
こうしたオーダーシステムは店舗スペースの最小化にも貢献しており、1杯あたり他店に比べ日本円にしておよそ130~150円ものコストダウンにもつながっています。
■アプリから医療機関の予約を行える「平安保険(ピン アン)」
中国において著名な保険グループのひとつである平安保険は、アプリからその地域内で高品質な医療を提供する医療機関を調べて予約まで行えるサービスを提供しています。
ちなみにこのサービス、平安保険の顧客でなくても利用できます。そのほかにもウォーキングでポイントを貯め、それを使って医師との相談や質問をできるシステムも備えています。
誰にでもサービスの門戸を開けている信頼感と多くのユーザーから得たデータを個別で分析・活用し、2017年には同社の時価総額をおよそ21兆円にまで拡大しています。
■無人コンビニの「Amazon Go」
大手ECサイト・アマゾンが2018年1月にアメリカ・シアトルにオープンさせた無人コンビニがAmazon Goです。
Amazon Goアプリをスマホにインストールし、発行されたQRコードを入り口でかざすと認証され、入店。買い物は品物を手に取ると店内に設置されたセンサーが感知、退店時にゲートを通過すれば自動で決済完了となります。
レジで会計待ちをする必要がなくなるので、スピーディーな買い物体験を顧客に与えるだけではなく、ECサイトと同じアカウントを利用するためにAmazon Goでの購買データも連携します。そこで得られたデータをもとにAmazonマーケティングプレイスにもレコメンド商品を表示できるようになります。
まとめ
OMOを正しく理解する大前提として、今の時代は常時オンラインにつながっている「アフターデジタル」の状態であるとの認識が必要です。店頭での購買に先立って、ネットで商品情報を検索したり口コミを確認する消費者行動に合わせて、それらもマーケティングに取り込むような施策が企業には求められています。
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