中国マーケティングの5つのポイント
今回のセミナー『これから始める中国・越境EC ~重要ポイントを徹底解説~』は3部で構成され、それぞれ以下のテーマが解説されました。
・第1部
事例と調査結果を解説! 中国越境ECの特性と中国マーケティングのポイント(株式会社ヴァリューズ)
・第2部
中国・越境ECで失敗しない為の施策とは(株式会社ACD)
・第3部
越境ECにおける戦略的プロモーションの立て方(株式会社サイバー・コミュニケーションズ)
本レポートでは、ヴァリューズが担当した第1部の内容をピックアップしてお届けします。
第1部では、「調査実績や事例から見る中国マーケティングのポイント」を、ヴァリューズで越境ECマーケティング支援を行う向井が解説。まず向井は、中国マーケティングにおいて重要な5つのポイントを挙げました。
① エリア毎でニーズが違う
② メディアの顔ぶれが違う
③ 購買行動が違う
④ 刺さる要素が違う(クリエイティブ、商品特性)
⑤ アフターコロナで市場環境が違う
ここからは、これらのポイントを深堀していきます。
■ポイント①エリア毎でニーズが違う
中国は日本に比べて人口・国土ともにはるかに規模が大きく、地域によって気候や文化、生活習慣が大きく異なります。また、「1級都市」と呼ばれる大都市から開発途上のエリアまで、経済状況も様々。このような激しい都市階級の差も消費者のニーズに影響するといいます。
「気候の他にも、都市や年代によってニーズの違いがある。ターゲットにする層によってプロモーション内容が変わるため、自社の商品を好み、施策に反応する人をよく見極めることが重要」と向井はコメントしました。
■ポイント②メディアの顔ぶれが違う
中国では日本とは媒体が全く異なり、中国特有のデジタル環境です。これらの環境において、どこで売り、プロモーションを実施するべきなのか。それぞれファネルが異なる中で、どのようなメディアを使って、どんなメッセージを訴求するのかを考えなければなりません。
また、中国のデジタル市場は年々拡大しており、2016年の中国のネット広告費は9兆496億円。これは日本のネット広告費の約10~11倍で、中国進出している日本のメーカーでも、デジタルシフトがテーマになっているといいます。
■ポイント③購買行動が違う
中国の方の購買行動は、「口コミの文化が強い」という特徴があります。購入のきっかけに関するアンケート調査では、半数以上の方が「家族・親戚・友人のお勧め」を選択。また、「以前訪日した際の購入」も一定数決め手になっていました。
「インバウンドで購入してもらい、口コミを増やしていくのがビフォアコロナの中国マーケティングの王道だった。コロナ禍の今はインバウンドへの期待は難しいが、買ったものに対して口コミが広がる構図は変わらない。越境ECやデジタルマーケティング、オフラインイベントを活用していくのが、中国においては特に重要。」と向井は解説しました。
■ポイント④刺さる要素が違う
クリエイティブやパッケージデザインもマーケティングのポイントですが、好まれるカラーやデザイン、商品特性は、国によって異なります。
中国最大級のショッピングイベント「W11(ダブルイレブン)」の動画広告を見てみると、育児向け商品の広告が、赤を基調にした背景に金色の文字で描かれています。中国では賑やかで派手なクリエイティブが好まれると言われており、この広告からもその傾向が見て取れます。
また、中国で最近人気の無糖飲料「元気森林」は、簡体字ではなく「気」を用いて和風のデザインが採用されています。中国ではこれまで甘い飲料が多く、無糖のものは希少でしたが、昨今の健康意識の高まりで無糖系飲料の注目も上昇。和風のパッケージデザインには、日本の健康的なイメージと結び付ける狙いがあるといいます。
■ポイント⑤アフターコロナで市場環境が違う
新型コロナによる環境変化はどうでしょうか。こちらは、中国の方に向けて「コロナを機に新しく使い始めたもの」について年齢・性別ごとに行ったアンケートの結果です。
これによると、zhihu(Yahoo!知恵袋のようなQ&Aサイト)や抖音(ドウイン/TickTock)、快手(Kuaishou)といった動画系サービスの利用頻度が高まり、特に40代男性は快手(Kuaishou)、40代女性は抖音(ドウイン/TickTock)を、2割近くが使い始めています。
これまで越境ECでは、高年層とはデジタルサービスで接点を持ちにくく、アプローチに苦戦していました。しかし、コロナ禍の巣ごもり消費の中で、ライブ配信サービスの利用やインターネットでの情報収集が40代以上の層でも活発化。手薄だった年代とデジタルで接触できる機会が拡大していると言えます。
「アフターコロナは、世代を問わずデジタルプロモーションが効きやすく、商機拡大のチャンス。インバウンド消費は落ち込んでも、日本商品への人気や旅行のマインドは衰えていない調査も出ており、商品販売や認知拡大に繋げられる機会が今まで以上に広がっている」と向井は、越境ECのアフターコロナの好機を強調しました。
中国マーケティングの失敗パターンとは
ここからは、中国マーケティングのポイントを押さえたうえで、効果的にマーケティング施策を行うためのコツを、事例を元に解説していきます。まず向井は、中国のマーケティングで見られる失敗例を5つ挙げました。
・誰が買っているか分からない
・KOLをしているが、砂漠に水をまく気持ち
・何がターゲットに刺さるのか分からない
・PDCAが回らない
・モールに出店したが売れない
購買者の人物像が掴めず、施策の検証が不十分なために商品が売れない失敗例は、越境ECでよく見られるといいます。「このようなケースに陥るのは、ECモールの外で既に勝負が決まっていることが影響している」と向井はコメントしました。
こちらは、越境ECで買い物をした人に対して、どこで商品を探したかをたずねたアンケート結果です。
これによると、半数以上の人が商品名やブランド名を指定して調べていることが分かります。先ほど口コミの文化が強いことにも触れましたが、人から勧められたり自分が使ったりして、知っている商品を検索し購入する流れが中国では一般的だといいます。
「つまり、どんなにいい商品でも存在が知られていなければ検索されず、売れないということになる。認知され、探していただける基盤を築くのが越境ECで販売するには大切」と向井は強調しました。
また、日本と中国では購入者像も大きく異なります。
ある化粧品メーカーでは、40代女性をターゲットにアンチエイジング効果を訴求していましたが、中国では価格帯の低さや「色々試したい」という心理から、若年層にヒット。そこでメーカーは20代女性をターゲットにコミュニケーションをガラリと転換し、男性インフルエンサーを起用したプロモーションや若年層向けの体験会などの施策を実施。これにより、見事に売り上げ増に成功したといいます。
「中国向けの施策がうまくいかない原因の多くは、短期視野に陥ることと施策ありきになること。それらをいかに解決していくかがマーケティングのポイントで、PDCAを回し、効果が出る形で長期的に施策を継続することが重要」と向井は解説しました。
中国マーケティングでPDCAを回すコツ
では、PDCAを回すうえで具体的にどのようなポイントをおさえるべきなのか。ヴァリューズでは特に「Plan」「Check」でのサポートを行っており、ここからはそこでのポイントを解説します。
まず「Plan」では、中国マーケティングは広い市場であるからこそ、S(Segmentation/市場・顧客の細分化)T(Targeting/ターゲットの明確化)P(Positioning/ポジションの明確化)をきめ細かく行うことが大切です。それらを整理したうえで、検討ファネルやカスタマージャーニーを把握し、どんなメディアでどのような接点を持つかを検討していきます。
さらに、KPIを定めて効果を検証しながら施策をブラッシュアップしていく「Check」も欠かせないパートです。「昨今は家電や化粧品、日用品などにおいて、日本メーカーの競争関係だけでなく中国国内メーカーも質が上がっており、これまでと同じ施策を打っていては中国のメーカーにシェアを奪われかねない。PDCAを回しながら、より効果的な施策を根気強く模索・実践していく動きが必要」と向井はコメントしました。
また、こちらは日本の歯磨き粉ブランドのポジショニングマップの事例です。機能が異なる歯磨き粉が中国でどう受け止められているのかを調査したもので、「それぞれのブランドにどんなイメージがあるか」「歯磨き粉に求めることは何か」などを表しています。
これによると、クリアクリーンやシステマは虫歯予防や口臭予防、ピュオーラ、サンスターは「歯を白くする効果」の印象が強いことが分かります。一方で、「歯周病対策」という独自のポジションを取っているのは生葉でした。
「このように他の会社と近い位置にあったときには、他社ブランドの差別化や、獲得するポジションを考えていかなければいけない。まずはこれらの課題を可視化していくことが戦略検討の第一歩になる」と向井はコメントしました。
さらに、プランニングのプロセスで活躍するデータとして、中国は歯磨き粉をひとり1本使う習慣があり、購入者の男性比率が高いことや、若年層女性はSNS、中高年は検索エンジンや店員がタッチポイントに多い傾向が明らかになりました。
また、KPI設定においては「自社の認知度だけを測るのではなく、シェアの高い他社製品との認知率・検討率の差を比較して、目標値を設計することが必要」と向井は解説しました。
調査に基づく効果的プロモーション事例
ここまでPDCAのコツを解説してきましたが、事前調査を取り入れることで、より効果的に商品開発やプロモーションを行うことが可能です。
ある日用品のメーカーでは、有効なパッケージや広告クリエイティブを検証するため、画像を提示して「どれが魅力的に感じるか」のアンケートを実施。支持率によって、現地で刺さる訴求メッセージやクリエイティブを分析しました。
医薬品メーカーでは、カスタマージャーニー・購入チャネルの把握調査を実施。購買行動のプロセスAttention(注意)、Interest(興味)、Search(検索)、Action(購入)、Share(共有)に沿った、競合各社のタッチポイントを可視化しています。
「中国マーケティングでは、媒体の種類を理解し、競合プレイヤーが各媒体でとっている戦略を掴んだうえで自社はどうタッチポイントを作っていくかを考えなければいけない。事前調査によって市場の動きを捉えると、より効果的な戦略立案に繋がる」と向井はコメント。実際にこちらの医薬品メーカーでは、データをもとにしたプロモーションを実践し、越境ECを始めて1年で、売り上げが順調に伸びているといいます。
まとめ
「広大なマーケット、特殊なデジタル事情、コロナ影響による変化などの中で、データを武器にすることが中国マーケティングを成功させるために今まで以上に重要になっている。自社が所有するデータから分析できることもあれば、アンケート調査などを行い、より幅広いデータを抽出することもできる」と向井は昨今の中国マーケティングにおけるPDCAサイクルおよびデータ活用の重要性を強調し、セミナーを締めくくりました。
今回のレポートでは割愛しますが、第2部(株式会社ACD)では、「中国・越境ECで失敗しない為の施策とは」をテーマに、最新の中国デジタルマーケティング手法を紹介。今中国市場を狙う理由として、世界最大の消費市場であることや中国越境EC減税が活用できる点などを挙げ、中国で加速度的に浸透するWechatミニプログラムを活用したプロモーション事例や、ベネフィット訴求の重要性、テスト販売での見極め方などが解説されました。
第3部(株式会社サイバー・コミュニケーションズ)では、「越境ECにおける戦略的プロモーションの立て方」をテーマに、中国の検索事情を踏まえた集客手法が解説されました。特に「目的に沿った最適なコミュニケーションの組み方の重要性」が強調され、共感を得やすいKOL広告のほか、Wechatを活用したSNS広告、効率の良いディスプレイ広告を紹介。「お得感が伝わる、明るい色」など現地で人気のクリエイティブも解説されました。
セミナーでも強調された通り、アフターコロナの越境EC市場は、巣ごもり需要やデジタル接点の増加などにより、商機拡大のチャンスが広がっています。この好機を掴み、中国マーケティングで成功させるためにも、今回のセミナーで解説された「中国マーケティングのポイント」を参考にしていただけたら幸いです。
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フリーランスPRおよびライターとして活動中。二児の母。