「移住」トレンドを検索キーワードから調査。2021年は移住元年となるのか

「移住」トレンドを検索キーワードから調査。2021年は移住元年となるのか

新型コロナ禍以降、主に都市部から地方への移住に関心を持つ人が増えているようです。もともと多くの地方自治体が移住者の誘致に積極的だったところ、長引くwithコロナ生活の中でテレワークがすっかり浸透したことが重なり、ユーザーの「移住」に関する検索行動も増えています。今回は「移住」に関連する検索キーワードに着目し、検索トレンドや検索ユーザーの属性などについて調査・分析します。


高まる「移住」への関心

移住とは、他の場所に移り住むこと。新型コロナ禍で頻繁取り上げられるようになりましたが、それ以前にもセカンドライフ移住や起業移住、芸能人が海外へ移住したりなど、政府や地方自治体も積極的に誘致や支援を行うなど、生き方の選択肢としては広く根付きつつありました。

「移住」検索ユーザー数は増加傾向

まずはネットで「移住」と検索したユーザー数をみていきましょう。下グラフのように、2018年12月〜2020年11月の2年間でユーザー数は増加傾向にあることがわかります。

特に伸びたのは2020年4月で、ちょうど外出自粛要請による休校、テレワークが推奨された時期と重なっています。

「移住」検索ユーザー数推移

「移住」検索ユーザー数推移

期間:2018年12月〜2020年11月
デバイス:PCおよびスマホ

移住に興味があるのは30代が最多

続いて、「移住」を検索するユーザーの属性をみていきます。

男女比は若干男性が多く53.2%。年代は30代が最多、30代・40代だけで半数を占め、次いで20代が続き、若い世代を中心に関心が集まっていることがわかります。「50代、60代がセカンドライフを過ごすための移住」というよりは「働き盛りの人たちの移住」がトレンドと言えそうです。

移住に関心があるのは東京居住者が圧倒的に多いこともわかります。

「移住」検索ユーザー属性

「移住」検索ユーザー属性

期間:2019年12月〜2020年11月
デバイス:PCおよびスマホ

男性は移住先の場所、女性は移住先の暮らし

「移住」検索ユーザーを属性別マップで見ると、男女で興味関心に差があることがわかります。

男性は移住先の地名がよく検索されるのに対し、女性は「家」「子育て」「古民家」など暮らし方について興味があるようです。

「移住」検索ユーザー属性別マップ

「移住」検索ユーザー属性別マップ

期間:2019年12月〜2020年11月
デバイス:PCおよびスマホ

沖縄、マレーシアなど人気移住先と「仕事」

移住について、具体的にはどんな情報を検索しているのでしょうか。「移住」と掛け合わせで検索されたキーワードから考察していきます。

掛け合わせワードのランキングが以下の表です。「沖縄」「マレーシア」「北海道」「タイ」など人気の移住先がランクインしました。同時に「仕事」が3位に入りました。

「補助金」「支援」もランクインしていることから、昨今政府や地方自治体が力を入れている地方移住に関する支援情報にも関心が集まっていると推測されます。

「移住」掛け合わせワードランキング

「移住」掛け合わせワードランキング

期間:2019年12月〜2020年11月
デバイス:PCおよびスマホ

移住ポータルサイトが人気

「移住」検索後の流入サイトは、移住ポータルサイトが人気です。
流入ユーザー数1位は国内の移住ポータルサイト「ニッポン移住・交流ナビ JOIN」、2位は世界の移住情報が集まった「せかいじゅう」でした。

「移住」検索後流入ページランキング

「移住」検索後流入ページランキング

期間:2019年12月〜2020年11月
デバイス:PCおよびスマホ

ニッポン移住・交流ナビ JOIN

せかいじゅう

新型コロナと「地方移住」

これまで「移住」という広義な検索キーワードで分析しましたが、「地方移住」となるとユーザー動向に変化が見られるようです。詳しく見ていきましょう。

新型コロナ禍で「地方移住」に関心が集まる

検索ワードを「地方移住」とすると、そのユーザー数推移に大きな変化が見られました。

以下のグラフのように、外出自粛要請期間中の2020年4月から徐々にユーザーが増え始め、6月にはピークに。6月と言えば、6/1に東京・神奈川・埼玉・千葉・北海道以外の地域では移動制限が緩和された時期。孤立した都心部に住む人が「地方移住」を検討し始めたことも頷けます。

「地方移住」検索ユーザー数推移

「地方移住」検索ユーザー数推移

期間:2018年12月〜2020年11月
デバイス:PCおよびスマホ

地方移住に興味があるのは20代が最多

「地方移住」に興味があるのは「移住」より若年層で、20代が最多の35%でした。30代、40代と続き、まさに働き盛り層が多く見られました。

ユーザーの居住地は「移住」と同様、東京が1位でした。

「地方移住」検索ユーザー属性

「地方移住」検索ユーザー属性

期間:2019年12月〜2020年11月
デバイス:PCおよびスマホ

地方移住とコロナ

では「地方移住」との掛け合わせワードを見てみましょう。
「移住」と比べて1年間の検索ユーザー数が少ないため、上位4件を表示します。
下の表のように、「コロナ」「テレワーク」など、脱コロナ目的で地方移住を検討していることがわかります。

「地方移住」掛け合わせワードランキング

「地方移住」掛け合わせワードランキング

期間:2019年12月〜2020年11月
デバイス:PCおよびスマホ

「地方移住」参考サイトは首相官邸ホームページ?

「地方移住」検索後の流入サイトは、首相官邸ホームページが人気でした。2020年5月に内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部事務局が発表した「東京圏在住者の約半数が、地方圏での暮らしに関心あり 」のレポートが複数のメディアで取り上げられたことによるものだと思われます。

首相官邸ホームページ内には地方創生の情報サイトがあり、地方移住について支援内容や事例などの情報を発信しています。

「地方移住」検索後流入ページランキング

「地方移住」検索後流入ページランキング

期間:2019年12月〜2020年11月
デバイス:PCおよびスマホ

まち・ひと・しごと創生 - 地方創生/内閣官房・内閣府 総合サイト

まち・ひと・しごと創生 - 地方創生/内閣官房・内閣府 総合サイト

まとめ

新型コロナ禍でますます注目されるようになった「移住」について、検索トレンドや検索ユーザー属性などについて分析しました。

「移住」は新型コロナ禍以前から注目されつつありましたが、2020年4月にユーザー数が増加、ちょうど外出自粛要請による休校、テレワークが推奨された時期と重なることがわかりました。

「移住」に興味を持っているのは30代が最多。30代・40代だけで半数を占め、次いで20代が続きました。「セカンドライフを過ごすための移住」というよりは「働き盛りの人たちの移住」がトレンドと言えそうです。

属性別に検索動向を見ると、男性は移住先の地名がよく検索されるのに対し、女性は「家」「子育て」「古民家」など暮らし方について興味があるようです。

また、移住に関心があるのは東京居住者が圧倒的に多いこともわかりました。
「移住」検索後の流入サイトは、「ニッポン移住・交流ナビ JOIN」「せかいじゅう」など移住ポータルサイトが人気でした。

一方で、検索キーワードが「地方移住」の場合、新型コロナ影響が強く出ることがわかりました。外出自粛要請期間中の2020年4月から徐々にユーザーが増え始め、6月にはピークに。6月は東京・神奈川・埼玉・千葉・北海道以外の地域で移動制限が緩和された時期であり、孤立した都心部に住む人が「地方移住」を検討し始めたと思われます。

また、「地方移住」に興味があるのは20代が最多でした。掛け合わせワードも「コロナ」「テレワーク」があがるなど、今後「地方で働く」という形がスタンダードになるのかもしれません。

分析概要

全国のモニター会員の協力により、インターネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析ツール『Dockpit』を使用し、2018年12月~2020年11月におけるユーザーの行動を分析しました。
「Dockpit」は、消費者のトレンド調査にとても役立ちます。もし宜しければ、下記より無料版をお試しください。

dockpit 無料版の登録はこちら

この記事のライター

フリーライター。大手キャリア系企業で編集の仕事に出会い、その後、3つのメディアの立ち上げなど行い、2014年にフリーランスに。医療系、就活系、教育系、結婚系のサイトで執筆中。

関連する投稿


Marketing strategy of three Chinese & Taiwanese home appliance manufacturers: HUAWEI, Xiaomi, & ASUS

Marketing strategy of three Chinese & Taiwanese home appliance manufacturers: HUAWEI, Xiaomi, & ASUS

Chinese and Taiwanese manufacturers have been growing their market share and number of users, and they are expected to compete with Japanese companies. We will analyze the current sales trends of HUAWEI, Xiaomi, and ASUS in Japan and predict their future while comparing with Japanese brands.


海外家電メーカーのマーケティング戦略は?中華圏メーカーHUAWEI、Xiaomi、ASUSの3社を調査

海外家電メーカーのマーケティング戦略は?中華圏メーカーHUAWEI、Xiaomi、ASUSの3社を調査

近年、世界で着実にシェアを伸ばしつつある中華圏メーカー。日本においてもその製品の利用者は増加しており、日本企業と競合していくことが予想されます。そこで今回は日本にも進出している代表的な3つの中華圏メーカー、HUAWEI、Xiaomi、ASUSについて、日本における現時点での販売動向を分析し、国産ブランドとも比較しながら3社の今後を占っていきます。


サービス終了から約1年…Zenly利用者はどこへ?位置情報共有アプリの現在

サービス終了から約1年…Zenly利用者はどこへ?位置情報共有アプリの現在

位置情報共有アプリ、Zenly。かつて一般的ではなかった「位置情報を共有する便利さ」をユーザーに伝え、位置情報共有アプリという新ジャンルを開拓しました。友人や家族との待ち合わせに使ったり、スマホの紛失に備えたり、災害時の安否確認として使ったり…とユーザーに様々な需要を生み出したZenlyですが、2023年2月3日にサービスを終了しました。ではその後、Zenlyユーザーはどのアプリを利用しているのでしょうか?この記事では、Zenlyに代わる位置情報共有アプリの現在を、サービス終了直後の分析結果と比較しながら考察します。


今「note」がアツい!読み物好きな若者を魅了?noteの集客動向を調査<前編>

今「note」がアツい!読み物好きな若者を魅了?noteの集客動向を調査<前編>

2023年夏頃から集客数を急激に伸ばしているメディアプラットフォーム「note」。人気を後押ししているのはどのような人々なのでしょうか?前編では、noteが集客しているユーザーの特徴を深掘り調査し、後編では、noteが規模を拡大している要因を探っていきます。


みんなの注目キーワードは?週間検索トレンドランキング(2024/03/18〜2024/03/24)

みんなの注目キーワードは?週間検索トレンドランキング(2024/03/18〜2024/03/24)

ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」をもとに、週次の検索急上昇ワードランキングを作成し、トレンドになっているキーワードを取り上げます。


最新の投稿


Z世代就活生の約7割が出社中心の働き方を希望!ある程度拘束されても手取り足取り教えてほしい【電通調査】

Z世代就活生の約7割が出社中心の働き方を希望!ある程度拘束されても手取り足取り教えてほしい【電通調査】

株式会社電通は、2024年卒または2025年卒業予定の全国の大学生・大学院生を対象に、就職活動に関する意識調査「Z世代就活生 まるわかり調査2024」を実施し、調査結果を公開しました。


データ分析のヴァリューズが「競合分析ガイドブック」を公開 ~ 商品企画からプロモーションまで、知っておきたい 6つのフレームワーク・8つの事例・19の分析ツールを徹底解説 ~

データ分析のヴァリューズが「競合分析ガイドブック」を公開 ~ 商品企画からプロモーションまで、知っておきたい 6つのフレームワーク・8つの事例・19の分析ツールを徹底解説 ~

インターネット行動ログ分析によるマーケティング調査・コンサルティングサービスを提供する株式会社ヴァリューズは、運営するデータマーケティング・メディア「マナミナ」にて公開した記事から厳選し、知っておきたい6つのマーケティング・フレームワーク、8つの事例、19の分析ツールを収録した「競合分析ガイドブック」を公開しました。


交渉学を深める ~ 英知ある交渉とは

交渉学を深める ~ 英知ある交渉とは

さまざまなビジネスシーンで見られる「交渉」。よりスマートにお互いの利益を引き出す交渉を行うにはどのような知識とスキルが必要となるのでしょうか。また、現在持ち合わせているあなたの「交渉能力」をアップデートするためには、どのような「交渉術」を備えるべきなのでしょうか。本稿では広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長を務めている渡部数俊氏が「交渉」概念の基礎から、さらに深い「交渉学」の世界まで解説します。


悩みを抱えた人の語りからこころと社会を学ぶ「夜の航海物語」のススメ〜現代社会とメンタルヘルス〜

悩みを抱えた人の語りからこころと社会を学ぶ「夜の航海物語」のススメ〜現代社会とメンタルヘルス〜

「カウンセリング」と聞いて、どんな印象を持ちますか?専門家とともに自分のこころを見つめる経験は、その後の人生の糧にもなります。臨床心理士の東畑開人氏の著書「なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない」(新潮社)は、気付かないうちにあなたも染まっているかもしれない、孤独に陥りがちな現代社会の価値観に気づかせてくれます。「読むセラピー」と称された、カウンセラーとクライアント(依頼者)の夜の航海物語を、精神保健福祉士の森本康平氏が解説します。


Twilio、「顧客エンゲージメント最新動向」を発表 データ使用状況の開示と高い透明性の重要性を明らかに

Twilio、「顧客エンゲージメント最新動向」を発表 データ使用状況の開示と高い透明性の重要性を明らかに

Twilio Japan合同会社は、「顧客エンゲージメント最新動向」の日本語版を発表しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

ページトップへ