2021年3月26日より提供が開始される、NTTドコモの新料金プラン「ahamo」。 月額2,700円(税抜)という非常に安価な料金とシンプルな契約条件により、ahamoの事前エントリーは2月上旬時点で100万人を突破したとの報道もされています。
内閣からの携帯会社に対する値下げ要求から始まり、大手3キャリアや各MVNOの一挙手一投足に注目が集まる中、ahamoにはどのようなユーザーが関心を寄せているのでしょうか。
今回は、ヴァリューズの提供する分析ツールである「Dockpit」を用いて、ahamo公式サイトに訪れているユーザーのデータから、そのインサイトを探っていきます。
ドコモの新料金プラン「ahamo」とは
「ahamo」は2020年12月に発表された、NTTドコモが提供する携帯電話向けの新料金プランです。 サービスの提供開始は2021年3月26日となっており、本記事の執筆段階では、プランの事前エントリーを募っている状況です。
ahamoは「20GBのデータ通信容量/月額2,700円(税抜)」という安価な料金設定が、無条件かつ半永久的に提供されることが最大の特徴です。 これまでの大手携帯会社の料金プランで主流であった、「○か月目までの割引」や「複数人での契約」といった条件が無い点が革新的です。
なお、プラン申し込みはahamo公式サイトや専用アプリからの受付のみに限定されており、現状ではドコモショップ等の実店舗での対応はできません。
ahamoリリースの背景のひとつには、2020年4月に楽天が、データ容量の上限なしで月額2,980円(限定エリア内のみ)という低価格でMNOに参入したことがあります。加えて、同年9月に菅内閣が発足し、携帯電話各社への料金値下げを強く要求したことから、大手3キャリアが政府の要求に応える必要に迫られ、ドコモが口火を切る形となったことが大まかな流れとなっています。
なお、ahamoの発表を受け、2020年12月下旬にはSoftbankから「LINEMO(ラインモ)」、2021年1月にはauから「povo(ポヴォ)」、楽天モバイルから「Rakuten UN-LIMIT Ⅵ」という新プランの発表が続き、追従する競合とドコモの熾烈な争いが始まっています。
ahamo公式サイトユーザー数は右肩上がりで急増
ahamoに関心を寄せるユーザーがどれぐらいいるのか、分析ツールである「Dockpit」を用いて、ahamo公式サイトの訪問者数を見てみましょう。
「Dockpit」で抽出した「ahamo」公式サイトの訪問ユーザー数の推移データ
期間:2020年11月〜2021年2月
デバイス: PC・スマートフォン
1月中旬にリリースされたahamo公式サイト。1月は半月の間に約23万人がサイトを訪れていました。さらに、直近の2月UU数は約200万人まで急増。ahamoに対する世間の関心が非常に高いことが、本データからも窺い知れるのではないでしょうか。
30~40代の収入安定層が特徴的にahamoに関心を寄せる
ahamoにリリース当初の早い段階から関心を持っていたユーザーは、どのような層なのでしょうか?2021年1月のデータに絞って、Dockpitを用いてahamo公式サイトの訪問者のユーザー属性を見てみましょう。
まずは、性別と年齢のデータからです。
「Dockpit」で抽出した「ahamo」公式サイトの訪問ユーザーの「性別」と「年代」データ
期間:2021年1月
デバイス: PC・スマートフォン
公式サイトの訪問ユーザーの性別は、男性65.9%:女性34.1%と、男性のほうが比率として大きいというデータになりました。また、訪問者の年代別では、最も割合として大きいのは40代の約30%、つづいて30代が28%ほどとなっており、30~40代のミドル層が訪問者の中心であることがわかります。
続いて、訪問者の世帯年収に関するデータです。
「Dockpit」で抽出した「ahamo」公式サイトの訪問ユーザーの「世帯年収」データ
期間:2021年1月
デバイス: PC・スマートフォン
こちらのデータを見ると、ahamo公式サイトの接触者はネット利用者の全体と比較した場合に世帯年収600万円~800万円の人が多く、富裕層の関心が高いことがわかります。
以上を総合的に見て、早くからahamoに関心を寄せていたユーザーは、「30~40代の"収入の安定している"男性」が主体であると考えられます。安価な料金プランであるため、「若年層の訪問が多かったのでは」と筆者は勘ぐっていましたが、結果はまったく異なるデータとなりました。
「なぜ30~40代の富裕層が中心なのか」ということを少し推察してみると、そもそも格安SIM・格安スマホの利用ユーザーはミドル層の男性が中心である、という特徴が根底にあるようです。
2015年にNTTレゾナントが発表した「格安スマホの利用実態に関するアンケート調査」 においても、格安スマホの利用者は男性が66.7%の割合で多い結果が出ています。利用者の年代も40代が32.1%、続いて30代が25.3%の比率で大きいと出ており、ahamo公式サイト訪問者のユーザー像と近似していることがわかります。
また、格安SIM・格安スマホの多くは利用を始める際に、自身で契約先とプランを比較検討し、端末設定も行わなければならないという特徴を持ちます。そのため、最新情報のキャッチアップに長け、ITリテラシーの高い人の利用が中心となっているようです。
ahamo接触者は「楽天モバイル」サイトをもっとも多く訪問
ahamo発表を受け、他キャリアやMVNOが次々と対抗プランを発表しており、「どの携帯会社を選ぶべきか」と思案中のユーザーも多いことが想定されます。
そこで、ahamoの公式サイトを訪れたユーザーがその他の通信系企業サイトにどれくらい接触しているのか、Dockpitを使ってランキング化してみました。下記の表をご覧ください。
「Dockpit」で抽出した「ahamo」公式サイトと通信系企業サイトの併用率データを集計しランキング化
期間:2021年1月
デバイス: PC・スマートフォン
ランキング上位を見ると、1位は「楽天モバイル」で割合は約26%、2位・3位は「au」「Softbank」と続き、それぞれ21%ほどのユーザーがahamo公式サイトと同時期に訪問しています。
その中でもランキングのトップに位置した楽天モバイルは、2020年4月のサービス正式開始からわずか1年足らずで契約申し込み数が200万回線を突破し、破竹の勢いでシェアを拡大しています。今回ahamoが追従した「月額2,700円」という低価格プランは、元々は楽天モバイルが打ち出した方向性でもあります。また、新発表の「Rakuten UN-LIMIT Ⅵ」は、通信量によってはさらに安価な料金の利用も可能となっており、ahamoとの比較検討候補に挙げている方も多いのではないでしょうか。
2位と3位のau・Softbankもそれぞれの低価格の新料金プランを発表しており、同じくahamo公式サイトと併せて閲覧している人が多い様子です。
auの「povo」は月額2,480円とahamoより500円安い代わりに、5分以内の通話し放題オプションが有料となるプランとして提供を開始。一方、Softbankは「Y!mobile」と合わせて実質的なサブブランドとして保有していた「LINEモバイル」を吸収合併、新ブランドとして「LINEMO」をスタートと、2社ともに動きが活発です。
そして、4位・5位にはKDDIとSoftbankそれぞれのサブブランドである「UQ WiMAX(UQ mobile)」と「LINEモバイル」が続きます。
6位以降には、「mineo」「IIJmio」といった利用者数の多いMVNOもランクインしています。今回の大手キャリアの値下げ合戦により、安価な料金設定が売りであったMVNOとの金額差はかなり小さくなったことから、大手への"出戻り"することを検討している人も一定数いそうな結果となりました。
まとめ
本記事ではサービス開始まで1か月を切った「ahamo」へ関心を寄せるユーザー像を調査しました。やはり特に注目されるのは、「ahamo」対「その他の3キャリア」というシェア争いでしょう。サービスの実運用が始まった後も、各社がどのような戦略に打って出るのかに目が離せません。
また、今回の大手による新プラン発表が非常に逆境となっているのがMVNOです。格安SIMの事業者たちも、この先の市場での生き残りをかけて徹底抗戦するのか、それとも撤退するのか、という点に要注目です。
本調査が、皆さんのマーケティング業務や市場調査などに役立ちますと光栄です。
【調査概要】
・全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報にもとづき分析
・行動ログ分析対象期間:2020年12月〜2021年2月
※ボリュームはヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測
※対象デバイス:PC・スマートフォンの両デバイス
国内大手の採用メディア制作部を経てフリーライターとして独立。現在はWebマーケティング、就職・転職、エンタメ(ゲーム・アニメ・書籍)等の各種メディアにて記事制作を担当。「マナミナ」では一人でも多くの読者に楽しく読んでもらえるマーケティングコンテンツを提供していきます。