確証バイアスとは
確証バイアスとは、深く意識せずに自分の考えや仮説にフィットした情報を優先してしまう傾向のことです。バイアス(Bias)とは偏見を意味し、自分が正しいと考えるバイアスが、前述のような認知傾向を起こします。
人はとかく自らが持つ考えで物事を判断しがちなため、例えば、業務でデータ収集する場合に自分の考えや仮説に合致する、もしくはそれを補完するものばかりを集めてしまいがちです。また、自分の考えに当てはまらない結果に対しては疑問を感じがちです。
有名な確証バイアスの例として、血液型占いがあります。「A型は几帳面」「O型はおおらか」など、血液型と性格の傾向をリンクさせたものです。
科学的に血液型と性格は関係ないとされていますが、特に日本人には血液型占いが浸透していて、実際は大雑把な性格でも、たまたま几帳面なシーンを捉えて「やっぱりA型は几帳面だね」などと相手を評価してしまいがちです。
確証バイアスは「認知バイアス(思い込み、環境などの要因によって合理的ではない判断をする現象)」という認知心理学のひとつで、ほかにいくつかの「バイアス」があります。
・正常性バイアス:自分にとって都合の悪い情報は聞き入れない現象
・自己奉仕バイアス:物事を遂げた際、成功すれば自分のおかげ、失敗したら他人のせいとする現象
・内集団バイアス:自分が属する集団はほかの人(集団)よりも優秀だと考える現象
・後知恵バイアス:発生した事案に対し、それを予測できたと思ってしまう現象
なお、リサーチの現場においても、無意識にバイアスが入り込んでいないか意識しながらすすめることが重要です。「ユーザー調査」の分析フェーズで注意すべきバイアスについては、以下の記事をご確認ください。
いよいよ実査!ユーザー調査のありがちな落とし穴(後編)|『ユーザーの「心の声」を聴く技術』著者が解説
https://manamina.valuesccg.com/articles/1404企業が製品やサービスを企画・開発する際には、ユーザーの声を聞くことが大事と言われます。その声から、ユーザーがどんな課題を抱えていて、どのようなユーザー体験(UX)を提供すれば解決できるかまで導き出せればベストです。「ユーザー調査」を行い、対話や観察を通じて得られたデータを読み解くことで、ユーザー自身意識していなかった心理や、言葉にできなかったニーズを捉えることができます。
人の認識がバイアスに左右されてしまうということは、経済学における自己利益を合理的に追求する合理的経済人の前提と異なっているように見えます。この一見不合理な意思決定を、心理学的アプローチも交えて分析・理論化した分野が「行動経済学」です。
経済学や経済行動に心理学を交えて分析する「行動経済学」。サンクコストや現状維持バイアスなど有名な理論も含まれ、2017年にリチャード・セイラー教授がノーベル経済学賞を受賞し、さらに注目を集めるようになりました。今回は、行動経済学と経済学の違いから行動経済学をビジネスやマーケティングにどのように落とし込んで実践するかを解説します。
■確証バイアスの科学的実験方法
確証バイアスを科学的に検証する有名な方法として、1996年にイギリスの認知心理学者であるペーター・カスカート・ウェイソン(Peter Cathcart Wason)が行った「ウェイソン選択課題」があります。
「A」「K」「4」「7」と書かれた4枚のカードを用意し「片方が母音となっている場合、そのカードの反対面は偶数でなければならない」という仮説が成立しているかを、最小の枚数で証明する場合、どのカードをめくればよいでしょうか?
正解は「A」と「7」です。「A」は母音なので、その反対面に偶数が書かれているかをめくって調べます。「7」は奇数なので、反対面に子音が書かれているかを確認して初めて、前述の仮説が成立すると証明できます。
しかし、実際は「A」と「4」と解答するケースが出てきます。「4」を調べても条件に当てはまっているかを確認するだけなので、仮説の証明にはなりません。
このように、母音と偶数がセットになっているという、偏った情報を積極的に収集しようとする現象が確証バイアスとなります。
よく知られた確証バイアスの例
確証バイアスの概要で血液型占いの例を挙げましたが、有名な確証バイアスの例を紹介します。
■「大企業信仰」という確証バイアス
就職・転職において、自身のやりたいことやキャリア形成ではなく、大企業への入社をゴールとするのは確証バイアスの一例です。
大企業は安定しているから生涯安泰という以前からの風潮を思考の中心としているため、大手企業でも倒産する可能性はある、という昨今の社会情勢や情報に触れても、自分とは無関係であるとして受け入れない傾向があります。
■「恋愛」における確証バイアス
さまざまな事情で交際相手との関係を終えたいと考えているものの、実行に踏み切れないケースは、確証バイアスが効いている可能性があります。
その理由として、相手の良くない面を認めつつも良い部分にばかり目が行ってしまうという点が挙げられます。自分にとって良い部分が見えると「この人はやはりいい人だ」となりがちです。こうした現象は、自分が正しいと考える偏見、つまり確証バイアスとなります。
確証バイアスをマーケティングで活用する方法
マーケティングにおいて確証バイアスを利用する場合、人々にポジティブな思い込みや偏見を持ってもらうようにします。さらに、「バーダー・マインホフ現象」を組み合わせると効果的です。
バーダー・マインホフ現象とは「注意の選択性」とも呼ばれ、あるきっかけで強く意識したものがそれ以降、急に増えたように感じてしまう心理です。なにかの拍子に気になったタレントを検索してみたら、それ以降やたらとそのタレントを目にする機会が増えた(ような気がする)と感じたことありませんか?
以下、確証バイアス+バーダー・マインホフ現象のマーケティング活用方法を紹介します。
■ディスプレイネットワーク広告(DSP)
ディスプレイネットワーク広告(DSP)とは、広告配信システムを利用して多くのサイトやスマホアプリに広告を展開するものです。ディスプレイネットワーク広告を使う意義は、不特定多数に商品・サービスを触れさせる点にあります。
ディスプレイネットワーク広告を見た人が商品やサービスが気になって検索するとします。この時点でその人は広告を目にした段階で商品やサービスを好意的に感じていた場合、確証バイアスが働いて、良い情報を中心にチェックする可能性が高くなります。
また、頻繁にその広告を目にすると「この商品やサービスは流行っているのかな?それならチェックしてみないと(手に入れてみないと)」というバーダー・マインホフ現象の働きを期待できます。
■リターゲティング広告
一度サイトに訪れたユーザーを離脱後も追跡し、同じ商品(サービス)の広告を何度も表示させる手法がリターゲティング広告です。
ユーザーは何度も同じ広告を目にするので確証バイアス、バーダー・マインホフ現象が強く働き、思わずクリックしてしまい見込み客になる、という効果を望めます。
この手法は、商品ページに到達してもすぐに購入に至らないECサイトで有効です。そのECサイトとはまったく関係のないページで商品広告が表示させると、「さっきもこの商品が表示されたけど、ひょっとして人気があるのかな?」というフックになります。
■キャッチコピーの工夫
確証バイアスを意識したキャッチコピー、例えば「〇〇に効果あり!」など、ユーザーの求めている部分に対して直接働きかける、良い情報として残るようなものにしてみます。
冒頭で確証バイアスの基本を「深く意識せずに自分の考えや仮説にフィットした情報を優先的に求めてしまう認知傾向」であると紹介しました。したがってその商品を使って実際に効果を得られた場合、これのおかげだと実感してもらえます。逆にそれほど効果がなかったとしても、それに関しては比較的スルーされる傾向にあるようです。
まとめ
人は自分にとって都合の良い情報を無意識のうちに選別して身につけようとする確証バイアス。現場では、確証バイアスとバーダー・マインホフ現象と組み合わせることで、より効果的なマーケティングを展開できます。
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