ARPUとは?客単価との違いや計算方法・向上のための6つの施策

ARPUとは?客単価との違いや計算方法・向上のための6つの施策

ARPU(アープ)とは、ユーザー一人当たりの平均収益・売上を示す指標です。 もともとは携帯電話等の一契約当たりの売り上げを表す際に用いられていましたが、Saasや課金制のビジネスモデルでもARPUが活用されています。ARPUを用いることで、「優良顧客の選定」や「事業の成長性や収益性の判断」といった経営判断を行えます。本記事では、ARPUの計算方法に加え、ほかの関連指標との違い、ARPUを向上させる施策について解説します。SaaSの運営や、課金のあるサービスの運営をしている方や、ARPUの数値を改善したい方は参考にしてください。


ARPUとは1ユーザーあたりの平均収益・売上を示す指標

ARPUは、特定の期間内における総収益をアクティブユーザー数で割ることで算出されます。例えば、月間収益が100万円でアクティブユーザーが1,000人の場合、ARPUは1,000円となります。

ARPUを分析すれば、各ユーザーが平均してどれだけの収益をもたらしているかを把握できます。

ARPUが重要視されている理由

ARPUは、企業の収益構造やユーザーの価値を評価する上で不可欠な指標です。事業収益を増加させるためには、「新規加入者の増加」だけでなく「ARPUの向上」を目指す必要があります。

特にSaaSや課金型のビジネスモデルは、一定の顧客を獲得すると新規顧客の獲得が伸び悩むことから、ARPUをより向上できるかが重要です。また、ARPUはユーザー数の増減だけでなく、各ユーザーから得られる収益の変動を把握できるので、ビジネスモデルの健全性や成長性を分析することもできます。

ARPUの活用方法

冒頭でも解説しましたが、ARPUには主に2つの活用方法があります。

・優良顧客の選定:顧客ごとのARPUを分析することで優良顧客を見つけられる
・事業の成長性や収益性の判断:ARPUを知ることで高いARPUを目指すか、低価格で顧客を増やすかなどの戦略を立てられる


顧客ごとのARPUを分析することで、収益の貢献度が高いユーザー(優良顧客)を見つけることができます。優良顧客を深く分析することでアップセルやクロスセルに繋がる商品やサービスが見つかることもあります。

また、ARPUの分析は事業を成長させるための攻めた価格調整やプラン内容、パッケージの改善にも役立てられます。例えば、プランの追加やパッケージ価格を値上げすることでARPUを向上させることも可能です。

ARPUと関連指標との違い

ARPUに類似した指標として、ARPPU(Average Revenue Per Paying User)、客単価、LTV(顧客生涯価値)などがあります。

これらの指標について詳しく解説します。

ARPUとARPPUとの違い

ARPPUは、有料ユーザー1人あたりの平均収益を示す指標です。無料ユーザーを含む全ユーザーを対象とするARPUとは異なり、課金ユーザーに限定して収益性を評価します。

例えば、全ユーザーのうち20%が課金ユーザーで、総収益が100万円、課金ユーザー数が200人の場合、ARPUは1,000円、ARPPUは5,000円となります。

ARPUと客単価の違い

客単価は、1回の購入あたりの平均金額を示す指標です。主に小売業や飲食業で用いられます。

一方、ARPUは一定期間内のユーザー1人あたりの平均収益を示すため、一回きりの顧客の平均金額を表す客単価とAPRUでは、抽出できる数値が異なります。

ARPUとLTVとの違い

LTV(Lifetime Value)は、顧客が生涯にわたって企業にもたらす総収益を示す指標です。ARPUが短期間の平均収益を測定するのに対し、LTVは長期的な顧客価値を評価します。

例えば、月間ARPUが1,000円で、平均顧客継続期間が24ヶ月の場合、LTVは24,000円となります。ARPUとLTVは似たような指標ではありますが、ARPUは四半期・月間ごとに計測するのに対し、LTVはユーザーのライフサイクル全体(ブランド接触から継続利用し続ける期間)を対象に計測します。

また、使用目的も異なり、ARPUは短期的な収益性を把握するのに用いますが、LTVは長期的に計測し、事業の改善点を見つけるのに用います。

ARPUの計算方法

ARPUの計算方法はビジネスモデルによって異なります。以下では、主なビジネスモデル別のARPUの計算方法を紹介します。

サブスクリプションビジネスの場合

サブスクリプションモデルでは、ARPUは以下の式で計算されます。

ARPU = 総収益 ÷ アクティブユーザー数

例えば、月間収益が500万円でアクティブユーザーが5,000人の場合、ARPUは1,000円となります。

広告表示で収益を得るビジネスの場合

広告表示で収益を得るビジネスの場合、ユーザー1人あたりの広告表示回数(インプレッション)と広告単価CPM (cost per mille / 1,000インプレッションあたりのコスト)を用いてARPUを計算します。

CPMは広告の表示回数1000回ごとに課金されるため、1000で割ることでARPUを算出することができます。

ARPU = (インプレッション数 ÷ 1,000) × CPM

例えば、ユーザー1人あたりの月間インプレッションが2,000回、CPMが200円の場合、ARPUは400円となります。

クリック・インストールで収益を得るビジネスの場合

クリック・インストールで収益を得るビジネスの場合、クリック単価(CPC:Cost Per Click)やインストール単価(CPI:Cost Per Install)とクリック率(CTR:Click Through Rate)を用いてARPUを計算します。

ARPU = CPC × CTR × インプレッション数

例えば、CPCが50円、CTRが2%、ユーザー1人あたりの月間インプレッションが1,000回の場合、ARPUは1,000円となります。

ARPUを向上させるための施策

ARPUを向上させるための施策は以下の通りです。

・価格設定の見直し
・顧客ロイヤルティ・顧客満足度の向上
・ユーザーニーズの把握と機能改善
・ユーザーサポート・カスタマーサクセスの強化
・無料ユーザーと有料ユーザーの差別化
・アップセルやクロスセルの実施


それでは詳しく解説します。

価格設定の見直し

適切な価格設定は、収益に直結する重要な要素です。市場動向や競合他社の価格を分析し、自社サービスの価値に見合った価格を設定することで、収益の最大化を図ることができます。

また、価格帯の多様化やプレミアムプランの導入も効果的です。ユーザーの選択肢を広げるための料金プランの追加はARPUの向上に寄与します。

ただし、プランを複雑にすると新規顧客が契約までに至らない可能性があるので、なるべくプラン内容はシンプルにするよう心がけてください。

顧客ロイヤルティ・顧客満足度の向上

顧客の忠誠心や満足度を高めることも、ARPU向上につながります。

顧客との関係を強化することは、継続的な利用を促すことに繋がるのです。

顧客ロイヤルティや顧客満足度の向上を目指す際には、以下の施策が効果的です。

・ロイヤルティプログラムの導入
・ユーザーごとにパーソナライズされた広告を表示する機能
・ファンコミュニティの導入
・SNSの活用


例えば、ロイヤルティプログラムの導入や、個々のユーザーに合わせたパーソナライズされたサービスの提供は、顧客との関係を強化し、継続的な利用を促進します。

他にも、特典やポイント制度を活用することで、顧客のリピート率を高めることが可能です。

ユーザーニーズの把握と機能改善

ユーザーのニーズを正確に把握し、それに応じた機能改善を行うことは、顧客満足度の向上につながります。

顧客満足度が向上すると、リピート率や購入単価も上昇する可能性があり、ARPU向上にもつながります。

アンケートやフィードバックの収集、データ分析によるインサイトの活用などを通じて、ユーザーの要望や課題を明確にし、サービスの質を高める施策を実施することが重要です。アンケートには以下のような方法があります。

・インセンティブ型アンケート
・インターネット調査
・対面インタビュー
・電話インタビュー
・メール・郵送調査


中でも利用しやすいのが、アンケートに答えることで特典がもらえる「インセンティブ型アンケート」です。例えば、「アンケートに答えるだけで割引クーポンをプレゼント」「アンケートに答えると抽選〇名様に〇円相当にギフト券をプレゼント」などです。

このように特典を用意する形でアンケートを促すことで、利用客の生の声を集められます。アンケートや市場調査については以下の記事で解説しています。

市場調査の基本!アンケートを使う調査方法 | [マナミナ]まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン

https://manamina.valuesccg.com/articles/628

市場調査には様々な手法がありますが、定量調査でよく使われるのがアンケートです。アンケートにも回収方法が色々あり、違いや使い分けを理解することで目的に合った調査が可能になります。アンケートの主な回収方法にはインターネット調査、電話調査、郵送調査、街頭調査、訪問調査があります。

基礎からわかる!アンケート調査の方法と進め方 | [マナミナ]まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン

https://manamina.valuesccg.com/articles/583

マーケティングの一環として行われるアンケート調査。調査対象の嗜好や行動を把握するため、一定期間の間に質問に対する回答を求め、データを収集します。アンケート調査の手法にはネットリサーチ、電話調査、会場調査などがあります。

ユーザーサポート・カスタマーサクセスの強化

ユーザーサポートやカスタマーサクセスの強化もARPUの向上につながります。ブランド全体で質の高いサポート体制を構築することで、顧客満足度を高め、結果としてARPUの向上につなげられるのです。

例えば、問い合わせしなくてもトラブルや疑問を解決できるFAQの充実や、カスタマーサクセスチームを強化し、顧客の疑問にすぐに対応できる体制を整えます。

これにより、ユーザーの疑問や問題を迅速に解決できるようになり、信頼関係の構築につながります。価格設定の見直しやアップセルやクロスセルほどの即効性はないものの、顧客満足度は確実に向上するはずです。

以下の記事では、カスタマーサクセスについて解説しているので、より詳しく知りたい方は参考にしてください。

カスタマーサクセスとは?注目されている理由【CSの新しい考え方】 | [マナミナ]まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン

https://manamina.valuesccg.com/articles/311#outline0

日本においてはカスタマーサポートを中心に考えられてきていましたが、海外では「カスタマーサクセス」という概念が浸透し、日本でも取り入れられてきています。 なぜ今日本でもカスタマーサクセスが注目されているのでしょうか? 顧客を成功に導くためのカスタマーサクセスのビジネスモデルとどんな役割を担っているのか解説します。

無料ユーザーと有料ユーザーの差別化

無料プランと有料プランの差別化を明確にし、有料プランへの誘導を促す戦略も効果的です。有料プランの特典や価値を強調し、無料ユーザーに対して適切な制限を設定することで、アップグレードの動機付けを行います。

例えば、有料プランでのみ利用可能な機能やコンテンツを提供することで、ユーザーの移行を促進します。その他にも、動画配信サービスのNetflixが行っているような「高額プランにすることで広告が非表示になる」などの特典をつけることで、明確な差別化を図ることも可能です。

ただし、無料プランの制限を大きくしてしまうと、ユーザーニーズとのバランスが取れなくなり、無料プランのユーザーが離れてしまう可能性があるため、注意が必要です。

アップセルやクロスセルの実施

既存ユーザーに対して追加の価値を提供し、収益を増加させる手法として、アップセルやクロスセルの実施が挙げられます。

ユーザーの購買履歴や行動データを分析し、関連性の高い商品やサービスを提案することで、ARPUの向上を図ることができます。

ただし、アップセル・クロスセルを行う際には押し売りにならないように注意が必要です。というのも、無理な提案は信頼関係を損ねるだけでなく、ユーザーの離脱につながりかねません。

Amazonやマクドナルドのように購入した商品やプランに合わせて、利用者にとって最適な商品の追加を提案することがアップセル・クロスセルの成功の秘訣です。

まとめ

この記事では、ARPUの概要や計算方法、ARPUを向上させる施策について解説しました。

ARPUは、企業の収益性を評価する上で重要な指標です。ARPUを分析することで、優良顧客の選定や事業の成長性や収益性の判断を迅速に行えます。

また、以下の施策を実施すれば、ARPU向上につながり、結果的に事業収益を増やすことにもつながります。

・価格設定の見直し
・顧客ロイヤルティ・顧客満足度の向上
・ユーザーニーズの把握と機能改善
・ユーザーサポート・カスタマーサクセスの強化
・無料ユーザーと有料ユーザーの差別化
・アップセルやクロスセルの実施


これらの施策を継続的に実施し、ユーザーとの信頼関係を築くことで、長期的な収益増加につなげられるでしょう。

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この記事のライター

Webライター。BtoB系の案件メイン担当。主に上位表示を目指したSEO記事の作成を担当。これまでに、コーポレーションサイトやオウンドメディア、求人広告など2,000記事以上を執筆。

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