2021年3月、Twitter社の共同創業者で現CEOを務めるジャック・ドーシー氏が、Twitterにおける最初のツイートである自身のツイートのNFTをおよそ291万ドル(約3億1500万円)で販売しました。他にも、7月にはコカ・コーラ社が初のNFTコレクションを発表したり、ヤフー社が「ヤフオク!」でのNFTアイテムの取引を始めることを発表したりとNFT市場へ大手事業者が続々と参入しています。
▼ジャック・ドーシー氏が自身のツイートのNFTを販売したスレッド
では「NFT」とはなんでしょうか? NFTとはNon-Fungible Tokenの略で、ブロックチェーン技術を活用した、偽造が不可能な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータのことです。この技術を活用することで、デジタルアートやゲーム、データなどの作品・商品の所有権や真贋といった、今まで証明しにくかったものが証明できるようになります。
現在はまだ知名度が高くないため、NFTを通して商品や作品を保有することに興味を持った一部のユーザーが、NFTオークションなどで商品や作品を購入しているといった状態です。しかし、今後NFT市場が拡大することで、アーティスト・クリエイターをはじめ個人・法人問わず作品や商品を販売する市場や、それをユーザー同士で売買する二次流通市場が拡大すると言われています。
実際、日本でもVRアーティストせきぐちあいみさんの作品が1,300万円の価格で落札されています。
今回はそんなNFTの関心層について分析していきます。
「NFT」検索者のユーザー数が急増
まずはユーザー数の1年間での推移をまとめたものが下図になります。なお、分析にはヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を使用しました。
利用ツール:Dockpit、期間:2020年7月~2021年6月 デバイス:PC&スマートフォン
以前は月間1万人以下とほとんど検索ユーザーがいなかったところから、2021年の3月には月間約13万人と大きくユーザー数を伸ばしています。2021年の3月はジャック・ドーシー氏が自身のツイートのNFTを販売したタイミングと一致しています。販売金額の大きさの面でも話題性もあるため、Twitterをきっかけに話題が広まり、NFTというワードを検索したユーザーが大きく増加したと考えられます。
続いて検索ユーザーの属性について見てみます。
利用ツール:Dockpit、期間:2020年7月~2021年6月 デバイス:PC&スマートフォン
利用ツール:Dockpit、期間:2020年7月~2021年6月 デバイス:PC&スマートフォン
性年代で見ると男性が8割弱、20代〜30代で50%弱とネット利用者全体よりも大きな割合を示していることが分かります。
利用ツール:Dockpit、期間:2020年7月~2021年6月 デバイス:PC&スマートフォン
また、世帯年収データでは、1,000万円以上のユーザー比がネット利用者全体を超えており、平均よりもやや世帯年収の高いユーザーからの関心が高いことがうかがえます。
検索ワードから読み取る3タイプのNFT関心層とは
続いて、「NFT」の検索に使われているキーワードに注目してみましょう。ユーザー数での上位20キーワードは下図のようになっています。
利用ツール:Dockpit、期間:2020年7月~2021年6月 デバイス:PC&スマートフォン
また、検索ワードをワードネットワーク化したものが下図になります。
利用ツール:Dockpit、期間:2020年7月~2021年6月 デバイス:PC&スマートフォン
この2つの図に注目すると、「NFT」の検索者には大きく3つのタイプがあることが分かります。
■1.流行に敏感な情報収集タイプ
検索キーワードのユーザー数ランキングを見ると、「NFT」単一での検索を除けば「NFT とは」というキーワードでが最もユーザー数が多くなっています。NFTとは何かに興味を持ち、調べているユーザーの姿が浮かび上がります。これらのユーザーは流行に敏感で、自ら情報収集を行う層だと考えられます。
■2.NFTの販売・購入を検討している利用者タイプ
「NFT」とかけあわせて検索されているキーワードに、「アート」「ゲーム」「購入」「作り方」といった検索ワードがあります。また、「コインチェック NFT」での検索については、コインチェック社が立ち上げたユーザー同士でNFTと暗号資産を交換できるプラットフォームに関連した検索だと考えられます。
これらの検索ワードから、NFTを販売したいアーティスト・事業者や、それらを購入しNFTを保有することに関心を持つNFT利用者の初期層も一定数いると考えられます。
■3.NFT関連企業を投資対象と見る投資家タイプ
検索ワードの3、7、18番目には「NFT 銘柄」「NFT 関連銘柄」「NFT 関連株」というキーワードがあります。これらの検索ワードからは、NFTの今後の発展を見込んで関連する企業・仮想通貨を見つけ、投資したいというニーズがうかがえ、投資家層による検索だと考えられます。
では、それぞれのユーザーがNFTに関心を持ち始めたのはどのタイミングなのでしょうか。検索キーワードの時期変化をまとめたものが下図になります。
利用ツール:Dockpit、期間:2020年7月~2021年6月 デバイス:PC&スマートフォン
2020年12月まではNFTの単ワードや仮想通貨の盛り上がりの一貫としてやや注目されていた程度のようです。2021年1月-3月の期間には「関連」「銘柄」といった主に投資関連の検索キーワードが増加し、「やり方」「コインチェック」といった利用目的の検索もやや増加しています。その後、4月-6月には「出品」「デジタルアート」「わかりやすく」といった利用・情報収集関連のキーワードが大幅に増加しています。
一連の流れを見ると、まずNFTには投資家タイプの関心が集まり、それに続く形で利用者タイプ、情報収集タイプの関心が集まったと言えそうです。
「NFT」検索者の閲覧サイト・ページ
最後に「NFT」検索者の閲覧サイト・ページをまとめてみました。閲覧サイト・ページの上位20は以下のようになっています。
利用ツール:Dockpit、期間:2020年7月~2021年6月 デバイス:PC&スマートフォン
閲覧サイトで見ると、「CNET Japan」などニュースメディア、「coindesk JAPAN」など金融メディア、「ビジネス+IT」や「Wired」「ITmedia」などのビジネスメディアが上位にランクインしています。
一方、閲覧ページでは、1位のページが「10分で分かるNFT」というPDFのダウンロードページとなっているほか、上位4記事はNFTに関する初学者向けのページになっています。それ以外にも、活用方法や始め方・投資関連のページも上位にランクインしていました。
デジタル資産を活用したビジネスの種であるNFTについて、主要メディアが今後の成長の可能性を探っている様子がうかがえます。
まとめ
今回はブロックチェーンを活用したデジタルデータであるNFTとその関心層について分析してみました。現在のNFT関心層は、検索キーワードから①情報収集タイプ、②利用者タイプ、③投資家タイプの3つに大きく分けられ、それぞれに特徴的な検索ワードや閲覧サイト・ページが見られました。
しかし、ジャック・ド―シー氏のツイート販売をはじめとした話題によりユーザー数が伸びたのは2021年の3月に入ってからで、今後大手企業の参入も見込まれるNFT関連市場はますます注目を集めていくと考えられます。NFT関連ビジネスの盛り上がりに期待です。
2022年の春から、新卒としてヴァリューズに入社。