セミナー概要
■話者紹介
図:話者紹介
■Agenda
⚫︎Withコロナで大きく変化した消費者トレンド
⚫︎デジタルシフトが加速するコロナ時代の消費者像を理解する
⚫︎カスタマージャーニーの必要性と把握方法
withコロナで大きく変化した消費者トレンド
株式会社ヴァリューズ 子安 亜紀子(以下、子安):「コロナ禍で消費活動が大きく変化したという話題は皆様もよくご存知かと思います。こちらは購買意欲に関する日経新聞からの抜粋記事ですが、「家庭における預金は平時より25兆円多い状態」とされ、今年、この過剰貯蓄が消費に回ることが一部の投資家に期待されているとあります。これは一部投資家だけでなく、広く業界を横断して様々な企業様にも言えることだと思います。」
図:コロナ以降の消費への意欲
子安:「コロナ以降の消費への意欲について、アンケートデータをご用意しました。
まず、『2020年に消費を見送った』というデータを見てみると、見送った商材で多かったのは、49.1%を占めた「旅行」となりました。加えて、『2021年に消費を検討したい』というデータでも、「旅行」は43.7%と首位に挙がっています。」
図:コロナ以降の消費への意欲アンケート(2020)
子安:「先のアンケートで購入意欲の上位に挙がった「旅行」に関して、消費者の関心がどのように動いているのかを見るため、ヴァリューズのログ解析データの一部をご紹介します。
上方のグラフが「旅行」に関する検索数推移となっており、下方では、実際にどのような「ワード」でWeb検索を行われたのかを可視化しています。
これらを見ると、緊急事態宣言によって検索の急激な減少が見られるも、GoToトラベルキャンペーンの期間で検索数が盛り返していたことや、国内旅行に関しては「半額補助」、海外旅行に関しては「いつから」と言った検索ワードが検索されていたということがわかり、消費者がどのような意識を持っているかを垣間見ることができます。」
図:ログ分析で可視化する、コロナ以降の関心の移り変わり
デジタルシフトが加速するコロナ時代の消費者像を理解する
■2つのトレンド
子安:「デジタル時代、消費に行動に大きく2つのトレンドが関わっていると考えます。
「Filter bubbleによるタコツボ化」と、「Pulse消費、消費行動の刹那化」です。
図:2つのトレンド
■タコツボ化とは?
子安:「まず、「Filter bubbleによるタコツボ化」について解説します。
スマートフォンの普及からおよそ10年が経とうとしている中、個人のデバイスという性質から、各個人の見たい情報に最適化された情報が送られてくるという環境(Filter bubble)が整ってきました。
そのため、消費者は色々な情報を見ているつもりでも、実は各個人の興味の範囲、周辺情報しか見えていないことで、マスメディアと違って非常にタコツボ化が進みやすい環境になっているのがこの10年、と言えるのではないでしょうか。
タコツボ化され、各個人にパーソナライズされた情報の中だけで過ごしていくと、段々と情報は狭まっていくと考えられますが、そのような中で突如、bubbleを飛び出して気になった事を検索してみるというような行動も見られます。
このような例からも、情報の探索行動が、マスメディアの時代から大きく変わって来ていると言えるでしょう。」
図:タコツボ化とは?
図:データでみるタコツボ化
■消費行動の刹那化とは?
子安:「もう1点のトレンドが「pulse消費、消費行動の刹那化」です。
通常、消費行動にはAIDMAといったように順番に検討しながら購入まで至るという説がマーケティング手法的によく聞かれると思います。しかしこのデジタル時代では、AIDMAはあるけれど、そのタイムスパンが刹那的になって来ているのではないかと言われています。
本来であれば、Awareness、Interest、Consider…と、順番に検討、消費行動に繋がってほしいところですが、実際の行動はそうでもなく、いいなと思いついてすぐに行動に繋がるケース、幾度も検討を繰り返すも行動を中断するケースなど、右左に激しくぶれながら何かの瞬間に消費行動に至るという動きが多く、なかなか本来のAIDMAのセオリー通りの時系列や、予測できるスピード感で購買行動に繋がらないという行動が多く起きています。
この、突如購買行動が起きる様子を、パルスが跳ねる様子に擬えて「pulse消費」と呼んでいます。」
図:消費行動の刹那化とは?
■バタフライサーキット型検討
子安:「「pulse消費」に付随しますが、先の右左にぶれる検討行動の動きは「バタフライサーキット型検討」と言われてます。まさにバタフライ(蝶々)が、サーキットを描くように飛ぶさまを、検討行動の様子に例えられているのですが、気になったものを検索しながら一歩一歩丁寧に詰めていくというより、前述の例にもあったように、検討と選択の裏付けを固める作業を、ぐるぐると蝶々が舞うように回って行くこの動きのことを指します。
ここまでの、「タコツボ化」と、「バタフライサーキット型検討」を踏まえた上での「pulse消費」。
こういった2つの流れが、このネット時代の消費者行動にはとても増えてきてるのではないかと考えられます。
さらに、コロナ以降の消費者の大きなマインドの変化が加わることで、より消費者意識は複雑化しているとも考えています。」
図:バタフライサーキット型検討
図:デジタル時代のコンシューマー特徴
カスタマージャーニーの必要性と把握方法
子安:「デジタル時代のコンシューマーの2つのトレンドに掛け合わせて、コロナ禍による消費マインドの変動という、マーケティングにおいてとても難しい現状にあるいま、改めてカスタマージャーニーをしっかりと把握する重要性が問われています。
本当の消費者の姿が理解できないといった多くの悩みを解決するため、現在、「消費者のアクチュアルなデータからカスタマージャーニーを把握する」という取り組みが、マーケティング先進企業から広がっています。」
図:いま、マーケティング業界で増している課題感
子安:「カスタマージャーニーを作成するメリットとして、2点整理します。
⚫︎企業目線ではなく顧客目線のマーケティングができる
カスタマージャーニーを作成する過程で、顧客との接点やその際の心理の分析をしていくと、顧客になりきって客観的に自社の商品・サービスを考えられる。
⚫︎社内関係者で共通認識をもてる
複数のメンバーや部署が関わる組織においても現状と課題を把握でき、意思決定がスムーズになる。社内の各部署が共通認識を持つことで、より最適化されたマーケティングが可能になる。
このようなことから、顧客目線で心理・行動や顧客との接点を理解し、社内の意識統一を図るために、カスタマージャーニーを活用する企業が増えています。」
■消費者理解のためのリサーチ手法
子安:「アクチュアルなデータからカスタマージャーニーを作ることが大切とお話しましが、そのための有効なリサーチ手法について考えていきたいと思います。
私達は、消費者理解をするためのリサーチの手法、お客様の情報の集め方を、Asking型とListening型と呼び、ご説明しています。
Asking型は質問するタイプのリサーチ手法です。アンケートやインタビューが該当します。強みとして、聞きたいことをピンポイントに聞けるといったことや、意識のデータ取得ができることが挙げられますが、弱みとしては、忘却や無意識といったことも挙げられ、見えることに限界があるとも言えるところです。
そこでビッグデータを活用し、様々なデータが取れるようになってきているいま、Listening型と呼ばれる調査手法も流行ってきています。
Listening型はエスノグラフィや、ヴァリューズが取り扱っているWeb行動ログなどが当たります。これは消費者に「聞く」のではなく、消費者の行動(の履歴)などを「見て」考える手法です。
無意識の行動や、記憶に残らない行動を把握することが可能なことが強みとなりますが、一方では、Asking型で拾える、消費者の能動的な意識は見えづらいという点もあります。」
図:消費者理解のためのリサーチ手法
■ヴァリューズの持つモニター・ログデータによる解決策
子安:「両者の強みは、いずれも不可欠な要素です。そこで、Asking型とListening型の両者の掛け合わせが、消費者への深い理解に繋がるのではないかと考えています。
実際に最近私達が実施している手法も、「アンケート×(かける)行動ログデータによる購入購買プロセス調査」が多く、この手法を活用することで、より消費者の実像に近づきたいというクライアント様の問題解決に役立てています。」
図:ヴァリューズの持つモニター・ログデータによる解決策
まとめ
子安:「デジタルシフトされてからおよそ10年経ちます。消費者の得る情報は、マスメディアから広く拾う過去のスタイルから、現在はfilter bubbleなどによって各個人に最適化された「タコツボ化に遷移」し始めたと考えられます。そして、安易かつ即座に情報検索ができるようになったという背景から、「今まで把握していた消費者行動のセオリーとは外れたpulseが生まれる」ようになって来ているのが現在の消費者行動のトレンドと言えるでしょう。
このような背景の下で多様化してしまった消費者心理。この理解が難しい今こそ、カスタマージャーニーをきちんと整備し有用することで、理解を深めることが出来るのではないかと考えます。
また、カスタマージャーニー分析をよりアクチュアルなデータを用い、精度の高いものにするためには、リサーチ手法の見直しも必要です。そこで、「アンケート×行動ログデータ」を活用することで、より消費者意識の深層に近づくことができると考え、私達自身も日々実施しています。実際のデータにご興味あれば、ぜひお声がけください。」
図:まとめ
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■意識&行動の両面から明らかにする真のカスタマージャーニーとは?|日経クロストレンドFORUMセミナーレポート
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マナミナ 編集部 編集兼ライター。
金融・通信・メディア業界を経て現職。
趣味は食と旅行。