Googleフォームでつくる「利用者アンケート」テンプレート(BtoB編)|きほんのアンケートフォーム

Googleフォームでつくる「利用者アンケート」テンプレート(BtoB編)|きほんのアンケートフォーム

リサーチャーの菅原大介さんが、ウェブ担当者が業務の中でよく使うアンケートフォーム作成のコツを解説してくれます。今回のテーマは「利用者アンケート」(BtoB編)です。フォームに入れておきたい基本項目+ビジネスをドライブする発展項目=計7つの質問を紹介します。ご自身のスキルアップ用や、社内の担当者教育用に、ぜひご活用ください。記事の最後には、エクセルのチェックリストのダウンロードリンク+Googleフォームのサンプルを含むYouTubeの解説動画へのリンクもあります。


こんにちは、リサーチャーの菅原です。私は調査会社を経たのち、国内大手の総合EC企業で物販とサービス両方のビジネスの中期経営計画やカテゴリ戦略を担当しており、個人でもリサーチのノウハウを普及させるための書籍執筆や寄稿などに取り組んでいます。

菅原大介 プロフィールページ|菅原大介|リサーチャー|note

https://note.com/diisuket/n/n0cde498ca01e

初めましての方向けの自己紹介&活動紹介ページです。 リサーチャー 菅原大介を何卒よろしくお願いします! (※2021年5月13日更新) ▼ プロフィール リサーチャー 菅原大介 リサーチャー。上智大学文学部新聞学科卒業。新卒で株式会社学研ホールディングスを経て、株式会社マクロミルで月次500問以上の調査を運用するリサーチ業務に従事。現在は国内通信最大手のグループ企業でマーケティング戦略・中期経営計画の立案を担当する。 会社では小売・サービスの分野を中心に年間1,000ページ超のレポートを作成しており、従業員数100名~1,000名の企業におけるリサーチ組織の立ち上げ経験が

ウェブサービスの運営において、アンケートフォームの作成は職種を問わず今や必須のスキルです。しかし、なかなか周りの誰かからやり方を教わる機会は少なく、ウェブ上のテンプレートを使用しようにも、たいていテーマを変えても同じ質問が並んでいます。

実はこうしたアンケートフォームは、用途に合った質問と選択肢を用意することができてはじめて高いパフォーマンスを得られます。このコラムでは、誰もが自分の業務目的に合ったアンケートを作成できるよう、「基本の型」となるフォーム作成法を解説します。

今回のテーマは「利用者アンケート」(BtoB編)。ウェブ・アプリのサービス運営において、契約者・運用者、その他利用者に簡単なアンケートを行う時に役立つ質問と選択肢をご紹介します。最もベーシックな内容だけに、差がつくポイントにご注目ください。

※隣接するテーマ領域である、会員属性調査、満足度調査、ブランド調査、企画用調査などの内容は今回含みません。

BtoB編〜利用者アンケートで聞くべき基本4項目

まず、利用者アンケートにおいて必ず設定すべき基本の4質問を解説します。それぞれについて質問のねらいと、選択肢設計のポイントを記載していますので、自社のサービスを念頭に置きながら見てみてください。

Q1:認知経路(複数回答)

[○○](サービス名称)のことをどのようにして知りましたか。

あてはまるものをすべてお選びください。


メルマガ(当社のもの)

メルマガ(パートナー会社のもの)

セミナー・イベント(当社のもの)

セミナー・イベント(パートナー会社のもの)

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公式SNS

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Google・Yahoo!などでの検索

社内(同僚・上司)からの紹介

お知り合いからの紹介

当社担当者からの紹介

その他

ねらい

  1. サービスの認知活動の有効性を検証する (特に自社の認知施策で筋がいい項目を把握する)

質問文

  1. 単一回答になっている場合がよくあるので複数回答にする (単一回答にすると、回答母数が極端に少なくなるので注意)

選択肢

  1. 注力している施策で細かく経路を提示する (特にBtoBモデルで経路の種類が多い項目は、「メルマガ」「セミナー/イベント」「紹介」など)
  2. エリアビジネスの場合は「導入実績」系統の選択肢も検討する (「競合他社の導入実績を見て」「近隣店舗の導入実績を見て」「系列店舗の導入実績を見て」など)
  3. 選択肢数は8~12個程度で構成する (10個前後が適量)

Q1は認知経路についての質問です。

この質問のねらいは、「サービスの認知活動の有効性を検証する」ことにあります。 サービスのことを知るきっかけとなる情報源のうち、自社でコントロールしている認知施策を中心に、筋がいい項目を把握します。

質問文は、質問タイプが単一回答になっている場合がよくあるので、複数回答にします。単一回答でも設計上誤りではないものの、質問の回答母数が極端に少なくなります。ただでさえ選択肢数が多く、回答が散るタイプの質問なので注意しましょう。

選択肢の構成では、「注力している施策で細かく経路を提示する」ことがポイントです。特にBtoBモデルで経路の種類が多い項目は、「メルマガ」「セミナー/イベント」「紹介」などが該当します。同一施策でも種別が細かい方が参考になるので、適宜書き分けてみてください。

エリアビジネス色が強いビジネスモデルの場合は、「導入実績」系統の選択肢を入れることも検討します。たとえば、「競合他社の導入実績を見て」「近隣店舗の導入実績を見て」「系列店舗の導入実績を見て」という選択肢がふさわしいでしょう。

選択肢数は8~12個程度で構成します(10個前後が適量)。コンパクトにまとめるコツは、注力していない施策のところで細かくならないようにすることです。

Q2:利用ステータス(単一回答)

[○○](サービス名称)の利用ステータスについて、あなたの状況にあてはまるものをお選びください。

a.利用ステータス別


【無料プラン】1年未満           

【無料プラン】1年以上

【有料プラン】1年未満

【有料プラン】1年以上

わからない

b.会員ステータス別


現在会員である           

以前会員だったが、現在は退会している

会員になったことはない

わからない

ねらい

  1. ユーザーの利用ステータス別に回答状況を把握する (利用プラン・会員種別・契約内容などに基づく分類)

選択肢

  1. 利用ステータスは1年を境に利用期間を区切る (1年以内に利用メリットを訴求できているかを検証する)
  2. 会員ステータスは現会員・退会者を区分する (退会者を含むサービス運営形態の場合に使用する)
  3. ステータスを把握していない人向けの選択肢→「わからない」

Q2は利用ステータスについての質問です。

この質問のねらいは、「ユーザーの利用ステータス別に回答状況を把握する」ことにあります。利用プラン・会員種別・契約内容などに基づく分類により、前後の回答背景の理解に役立てます。

利用ステータスの選択肢は、「1年を境に利用期間を区切る」ことがポイントです。ウェブサービスでは、1年以内に利用メリットを訴求できているかがヤマになるので、無料プラン・有料プランに分けて、それぞれ1年を境に選択肢を構成します。

選択肢の構成法にはこの他、「会員ステータス」により組み立てていく方法もあります。会員ステータスの選択肢は、「現会員・退会者を区分する」ことがポイントです。退会者を含むサービス運営形態の場合に、使用を検討してみてください。

また、選択肢の一番最後には、自分のステータスを把握していない人向けの選択肢「わからない」を入れておきます。細かく自分または自社の利用・契約状況を覚えていない回答者も想定されるので、念のため入れておきます。

Q3:利用理由(複数回答)

[○○](サービス名称)をご利用いただいているのは、どのような理由からですか。

あてはまるものをすべてお選びください。


サイト・アプリにブランド力がある

サイト・アプリのデザインが良い

サイト・アプリが使いやすい

新規のユーザーにリーチできる

ターゲットとユーザーの属性がマッチしている

ユーザーのクオリティが高い

料金がリーズナブルである

費用に見合った成果を得られる

申込から開始までのスピードが早い

担当者の対応が良い

その他

ねらい

  1. サービスの主だった強みを把握する (BtoBモデルの場合は特にトップ1~2の項目の力強さが重要) (併せて、それぞれの顧客窓口別に評価される点を確認する)

選択肢

  1. 選択肢の項目は同系統の中でも寄与する事柄を書き分ける (例:エンドユーザーの寄与するもの→新規リーチ・属性マッチ・クオリティなど)
  2. 選択肢数は6~10個程度で構成する (BtoBモデルの利用理由は、あまり多くない方が選びやすく、分析もしやすい)

Q3は利用理由についての質問です。

この質問のねらいは、「サービスの主だった強みを把握する」ことにあります。BtoBモデルの場合は、特にトップ1~2の項目の力強さが重要であり、項目の幅の広さよりも強みの偏り度合いを見ていきます。またそれと併せて、それぞれの顧客窓口別に評価される点を確認していきましょう。

選択肢の項目は、「同系統の中でも寄与する事柄を書き分ける」ことがポイントです。たとえば、「エンドユーザー」をウリとするサービスにおいて、顧客に寄与する点を「新規リーチ・属性マッチ・クオリティ」などの要素で書き分けていきます。

これと近い質問形式に「満足度調査」がありますが、満足度調査の項目名は、「会員ユーザー」「コストパフォーマンス」など単語ベースで記すことが多いので、それよりも細かいニュアンスで質問できるところが、この複数回答形式の「利用理由」の質問の良いところです。

選択肢の数は、6~10個程度で構成します。BtoBモデルの「利用理由」は、選択肢があまり多くない方が選びやすく、分析もしやすいです。

Q4:ご意見・ご感想(自由回答)

[○○](サービス名称)についてのご意見・ご感想を自由にお書きください。


[            ]

注意点

  1. 備考欄として位置づけて、問合せ受付とは区別する (マーケティング部がフォームを運用する場合は情報収集用として完結する)

Q4はご意見・ご感想についての質問です。

この質問の注意点は、「備考欄として位置づけて、問合せ受付とは区別する」ことです。「ご意見・ご感想」は、アンケートでは一番最後に置く定番の質問ですが、ここに回答者からヒアリング以外の趣旨のコメント(相談・苦情など)が入ってくる場合もあります。

そうならないよう、日頃から問合せ対応を別途受け付けられるような体制ができているとベストです。マーケティング部がアンケートフォームを運用する場合は、「情報収集用」として完結できるようにプロジェクトを設計しましょう。

BtoB編〜利用者アンケートで聞くべき応用3項目

ここまで「基本項目」を解説しました。以降の「発展項目」は、必要に応じて取り入れてみてください。質問番号は継続して付けていますが、良いと思ったものだけを前問までの質問構成の中に取り入れる形でOKです。

Q5:経験年数(単一回答)

[○○](職務内容)の業務に従事・関与している経験年数をお選びください


1年未満

1年以上             

2年以上

3年以上

4年以上

5年以上

ねらい

  1. 経験年数から回答者の立場(回答背景)を把握する (特にQ3:利用理由・Q6:利用範囲の回答を見る時の手がかりになる)

質問文

  1. 質問文の尋ね方は「従事者」「関与者」を意識する (直接的には「従事」が基本、広く回答を募るには「関与」を併記)

選択肢

  1. 選択肢の年数は技能の習熟タームに併せて構成する (1年・3年・5年の区切りは社員採用時の基本要件や人事制度の昇格要件でもある区分)

Q5は経験年数です。

この質問のねらいは、「経験年数から回答者の立場(回答背景)を把握する」ことにあります。特に同じフォーム内では、Q3:利用理由・Q6:利用範囲の回答を見る時の手がかりになります。

質問文では、経験年数を問うにあたり、「従事者」「関与者」を意識して質問文に記載します。直接的には「従事している人」という尋ね方が基本になりますが、広く回答者を募るには、「関与している人」を併せて書いておきます。この記載により、直接的にその業務を担当していたり、正式な職名が付いていなくても、「業務として関わっている人」を質問の回答対象者とすることができます。

選択肢の年数は、技能の習熟タームに併せて構成します。見本では1年ごとに構成しています。1年・3年・5年といった区切りは、社員採用時の必須要件や人事制度の昇格要件でも使われる区分であり、そういったものを目安にします。

Q6:利用範囲(複数回答)

[○○](サービス名称)では、現在どの機能を使用していますか。

あてはまるものをすべてお選びください。


基本機能A           

基本機能B

基本機能C

基本機能D

高度機能A           

高度機能B

高度機能C

高度機能D

付加機能A           

付加機能B

付加機能C

付加機能D

その他             

ねらい

  1. サービスを構成する各機能の活性度を把握する (ウリにすべきもの、実は不要なもの、対応優先度が高いものなどの判断材料になる)

選択肢

  1. 選択肢は機能の種別と難易度の分類で構成する (基本機能・高度機能・付加機能の分類を意識しておくと分析効率が高まる)

Q6は利用範囲です。

この質問のねらいは、「サービスを構成する各機能の活性度を把握する」ことにあります。この質問結果は、「ウリにすべきもの、実は不要なもの、対応優先度が高いもの」などの判断材料になります。こうした情報は定量的に検証する意義が大きいので、アンケートで尋ねるのに向いています。

選択肢の構成は、サービスにおける「機能の種別とその難易度」により分類します。「基本機能・高度機能・付加機能」などの分類を意識しておくと、分析効率が高まります。

Q7:利用中のサービス(複数回答)

[○○](職務内容)の業務を行うにあたり、現在どんなサービスを利用していますか。

あてはまるものを最大3つまでお選びください。


業界サービスA           

業界サービスB

業界サービスC

業界サービスD

市販サービスA           

市販サービスB

市販サービスC

市販サービスD

無料サービスA           

無料サービスB

無料サービスC

無料サービスD

その他             

ねらい

  1. 類似サービスの併用状況を把握する (サービスの組合せ方、自社の優位性、比較検討状況を知る) (調査対象は、ツール・スキル・データなどにアレンジ可能)

選択肢

  1. 業界サービス・市販サービス・無料サービスの構成を意識する (契約ベースだけでなく使用ベースでの利用競合や併用状況を押さえる)
  2. 回答数の上限を3個までにする (回答の上限を設定して回答負荷を下げる)

Q7は利用中のサービスです。

この質問のねらいは、「類似サービスの併用状況を把握する」ことにあります。サービスの組合せ方、自社の優位性、比較検討状況などを知ることができます。

なお調査対象となる物事は、サービスというくくりでの尋ね方のほかに、「ツール・スキル・データの種類」なども向くので、様々な形にアレンジが可能です。

選択肢の構成は、「業界のサービス・市販のサービス・無料のサービス」などを意識します。契約ベースだけでなく使用ベースでの利用競合や併用状況を押さえておくと、顧客の状況をよりクリアに把握することができます。

この質問の回答は、回答数の上限を3個までに設定します。ある程度選択肢数が多くなる質問なので、回答の上限を設定することにより、選択個数を減らして回答負荷を下げます。

まとめ


今回は「利用者アンケート」のテンプレート(BtoB編)を解説しました。これから自身の業務でアンケートを作成予定の方は、Googleフォームで簡単につくることができますので、ぜひ参考にしてみてください。また、既にアンケートを運用中の方も、質問文あるいは選択肢ベースで、自社ではどういう形式がベストか、点検用に参照してみてください。

▼リサーチャーの菅原さんがアンケートフォーム設計の基礎を解説したYouTubeの動画もあります(Googleフォームのサンプル付)。ぜひ合わせてご覧ください。

Googleフォームでつくる「利用者アンケート」テンプレート(BtoB編)|きほんのアンケートフォーム # 002

https://youtu.be/OSSe9Si7YaU

■Googleフォームでつくる「利用者アンケート」テンプレート(BtoB編)今回解説する「きほんのアンケートフォーム」は、「利用者アンケート」(BtoB編)です。商品/サービス/会社の利用者・契約者向けのショートアンケートを作成する時のコツを紹介していきます。

▼「利用者アンケート」(BtoB編)を菅原さん自らが解説するウェビナーを開催決定!無料お申し込みはこちらからどうぞ

▼今回のきほんのアンケートフォーム「利用者アンケート(BtoB)」編について、実際に設計を行う際に注意すべきリストをExcel形式でまとめました。このチェックリストをダウンロードしてぜひ実務に活用してみてください。

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この記事のライター

リサーチャー。上智大学文学部新聞学科卒業。新卒で出版社の学研を経て、株式会社マクロミルで月次500問以上を運用する定量調査ディレクター業務に従事。現在は国内有数規模の総合ECサイト・アプリを運営する企業でプロダクト戦略・リサーチ全般を担当する。

デザインとマーケティングを横断するリサーチのトレンドウォッチャーとしてニュースレターの発行を行い、定量・定性の調査実務に精通したリサーチのメンターとして各種リサーチプロジェクトの監修も行う。著書『ユーザーリサーチのすべて』(マイナビ出版)

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