「スキンケア成分党」とは?中国Z世代で新型スキンケア概念が流行|中国トレンド調査

「スキンケア成分党」とは?中国Z世代で新型スキンケア概念が流行|中国トレンド調査

現代社会では、スキンケア製品に対する消費者の安全意識が高まり、製品の成分表を調べるようになり、オーガニックな食品や化粧品が注目されているようです。特に中国ではこうした現象を「スキンケア成分党」と名付けられ、流行語にもなっています。「2018 FIT Transparency Perception Assessment Survey」では、72%の消費者がブランドによる製品の成分の効果、60%以上の消費者がブランドによる成分の原産地の表記を求めているとしています。今回は、中国の「スキンケア成分党」が化粧品や美容市場に与える影響について詳しくご紹介します。


「成分党」とは?

「成分党」とは、製品の「成分」の機能について効果や濃度などを検索して研究し、それを基準に自らの購入判断につなげる「成分ファースト」な消費者層のことを指します。2016年以降、化学成分に着目した効果的なスキンケア製品が美容消費者の間で注目されるようになってきています。

アミノ酸、ナイアシンアミドなどの成分は、もともと一般消費者にはなじみのない化学用語でしたが、今では消費者の目に直接触れるようになりました。それだけでなく、美容分野のKOL(Key Opinion Leader)もコスメインフルエンサーから化学博士になり、消費者に化粧品の成分を紹介するようになりました。

その結果、一般消費者もスキンケア製品の化学成分について語るようになり、海外メディアではそうした消費者層を「Skintellectuals」(「肌」と「インテリ」を組み合わせた造語)とし、中国では「成分党」と呼ばれています。

「成分党」トレンドに対する中国化粧品ブランドの動き

ここ数年、韓束、珀薇、自然堂など、中国のほとんどの大手国産スキンケアブランドが、成分に特化したスキンケア製品のラインナップを展開 しています。

例えば、自然堂では、「ナイアシンアミドアンプルマスク」と「アスタキサンチンアンプルマスク」などを発売し、人気を集めていました。

「自然堂」マスク広告

中国の国産ブランドだけではなく、ロレアル、P&G、ユニリーバ、資生堂などのグローバルなスキンケアブランドも参入し、「ナイアシンアミド」、「スーパーAボトル」、「パウダーAボトル」、「ヒオシアミン」、「レチノール」など成分コンセプトに特化したマーケティングやプロモーションを展開しています。

資生堂クリーム広告

ベインコンサルティングが発表した「2018年ダブル11美容・パーソナルケア部門売上ランキングと消費者調査」によると、45%の消費者が化粧品成分に関する知識を持っており、17.2%の商品が成分を商品名に明記していることを明らかになりました。このレポートでは、フェイシャルスキンケア成分のトップ10として、ヒアルロン酸、ナイアシンアミド、アミノ酸、セラミド、オリゴペプチドなどを挙げています。

「成分党」に人気の成分は?

ナイアシンアミド

研究が進むにつれ、ナイアシンアミドの多種多様な効果が明らかになってきており、美白、保湿、オイルコントロール、毛穴ケア、アンチエイジング、ニキビ治療などに応用されています。

2019年に注目されている「The Ordinary Niacinamide」はその典型で、最大10%のナイアシンアミドエキスは「小紅書」で5万人近いフォロワーを持ち、多くの美容インフルエンサーがその製品を推奨しています。 また、「OLAY」や「SK-II Serum」も大人気という点から、消費者の間ではナイアシンアミドの美白・シミ取り効果が広く認識されており、ナイアシンアミドが含まれることは美白化粧品を選ぶ際の基準の一つとなっていることが読み取れるでしょう。

「The Ordinary Niacinamide」広告

レチノール

近年、ナイアシンアミドの「良きパートナー」であるレチノールは、表皮や角質層の新陳代謝を整え、アンチエイジングや表皮の色素沈着を薄くする効果があるとして、ネットで話題になり、消費者の間でも大人気を集めています。

人気のレチノール製品、「ニュートロジーナAアルコールモイスチャライジングナイトクリーム」も、OLAYの製品との相性が良いと、多くのスキンケアの専門家が推奨しています。 また、今年は「ポーラ」や「エクスリカー レチノールA アルコールエッセンス」も人気です。

「ポーラレチノール」製品

ビフィズス菌培養溶解質

ビフィズス菌培養溶解質は「エスティローダー」の「アドバンス ナイト リペア SMR コンプレックス」、ランコム、クリニークのスキンケア製品に欠かせない成分です。

主な効果は、肌の修復、美白とアンチエイジングなど。強い抗免疫抑制活性を持ち、DNA修復を促進することで、紫外線によるダメージから肌を効果的に守ります。 ビタミンB複合体、ミネラル、アミノ酸など、スキンケアに有効な低分子を配合し、角質層の新陳代謝を強化するとともに、脂質過酸化を抑制し、美白やアンチエイジングの機能を備えています。

「エスティローダー」の「アドバンス ナイト リペア SMR コンプレックス」

ヒアルロン酸

ヒアルロン酸は、皮膚の栄養代謝を改善し、皮膚を柔らかく滑らかにする効果があります。またシワ対策や肌の弾力性の回復、老化を防ぐこともできるとされています。

ヒアルロン酸製品

ヒオシアミン

ヒオシアミンは、肌の老化を遅らせ、輪郭を引き締めてリフトアップさせる効果があります。 ランコムの研究所で生まれ、ロレアルの特許成分となっています。

最初はランコムのゴールドピュアシリーズに加えられ、その後ランコムのクリーム、YSLの美容液、HRのクリームにも加えられました。 今日のヒオシアミン配合の美容液やロレアルのアイクリームも消費者に人気があります。

「HRのクリーム」製品

朝にC、夜にA

最近では、「朝はビタミンC、夜はビタミンA」という新しい組み合わせが、黄金の肌のリサーフェシング処方と呼ばれ、スキンケア界の新たな人気者になっています。抗シワ、抗酸化だけではなく、美白やアンチエイジングにも効果を発揮するようです。

簡単に説明すると、日中はVCの試作品やVC誘導体など、VCに特化した製品を使って効率的に美白・抗酸化作用を発揮し、夜はVAのA-アルデヒド、A-アルコール、A-脂質誘導体など、VAに着目した製品を使って抗老化・修復作用を発揮するということです。

VCとVAは、スキンケア界の2大エースとも言える成分で、強力な組み合わせで多くの肌トラブルを解決することができ、流行に敏感な消費者の需要に応えるために、成分名をそのまま冠したブランドもあります。

「朝にC、夜にA」におすすめする製品

「成分党」拡大の影響と今後

I. 成分に特化したスキンケア

消費者にとってスキンケアは非常に重要なもので、自分の肌に使う製品の成分には特に注意を払い、オイリー肌/乾燥肌/中性肌にはどのような成分が適しているのか、現在のスキンケアのニーズは何かなど、肌質の状況に合わせて調整することが大切でしょう。

II. 成分=効果的なスキンケア

スキンケア歴のある消費者にとって、「ブランド」だけ注目して購入を決定するという旧来のモデルは不十分と考えられます。そこで、消費者はどのような成分が、どのような濃度で、どのように作用するのかを自ら調べ、成分による効果を信頼するようになっていると言えるでしょう。

III.ブランド効果

The Ordinaryは、海外では先駆的な「成分党」ブランドで、中国では在庫切れになったこともあり、「成分党」というブームを起こしました。これらの専門的な製品コンセプトは、中国の消費者にスキンケアの概念を次々と変化させてきました。

IV. KOLによる購買影響が減少

KOLの影響が減少、代わりに医師や専門家、元々のスキンケアメーカーのエリートをより信頼するようになっているでしょう。

また、インターネットの時代には、これらの情報があらゆるスキンケア素人の目に触れ、「自分のやり方を変えよう」と思わせることもできます。

これからのスキンケアブランドが、成分そのものに注目し、マーケティングで「成分」に特化した宣伝を強化するということになるでしょう。

参考URL

「自然堂携手赵今麦,推出全新自然堂安瓶面膜」
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1647002360462977554&wfr=spider&for=pc
「“成分化妆品”跌下神坛? 」
https://www.sohu.com/a/398402335_329832
「“护肤品成分党”人群洞察:95后、未婚族、高知用户成主流」
https://www.sohu.com/a/373803454_717514
「科技节 | 护肤成分党,到底是真需求还是伪命题?」
https://zhuanlan.zhihu.com/p/96473957?from_voters_page=true
「盘点2019 最受 “成分党”消费者喜爱的5大化妆品成分」
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1661462842234961289&wfr=spider&for=pc
「“成分党”盛行的背后是产品力回归,消费者最爱十大成分一览」
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1655234584976351557&wfr=spider&for=pc
「护肤界又出新玩法,成分党追捧的“早C晚A”CP了解一下!」
https://www.pinguan.com/article/content/19147.html
「“早C晚A”使用注意及产品选择完全科普」
https://zhuanlan.zhihu.com/p/109428848

この記事のライター

慶應義塾大学在学中。

関連する投稿


独身者増加の中国で「一人暮らし経済」が成長中

独身者増加の中国で「一人暮らし経済」が成長中

人口抑制政策などの影響により少子化が進んでいる中国ですが、近年では結婚率も低下し独身者が増加しています。人口減少に拍車がかかる一方、このような状況によって生まれた新たな消費スタイルが「一人暮らし経済」として発展しています。本記事では、この「一人暮らし経済」において人々の間にどのようなニーズが存在するのか調査しました。


より早いスピード感で手軽に調査をスタート!中国市場Web調査ツール「ValueQIC」とは【第1回】

より早いスピード感で手軽に調査をスタート!中国市場Web調査ツール「ValueQIC」とは【第1回】

トレンドの変化が速い、と言われている中国市場。「最近、中国市場の変化が掴めない。言語の壁もあり、中国人生活者の考え方がよくわからない。」というのも多く耳にします。従来の調査には1ヶ月以上の時間が必要ですが、サブスクリプション型のWeb調査ツール「ValueQIC(ヴァリュークイック)」なら、言語の壁を感じることなく最短1週間で調査結果を確認することが可能です。第1回は、その特徴を事例とともにご紹介します。※本資料は記事末尾のフォームから無料でダウンロードいただけます。


中国で勢いを見せる「氷雪経済」を最新調査

中国で勢いを見せる「氷雪経済」を最新調査

2022年に開催された北京冬季オリンピックの「オリンピック効果」によって、中国では「氷雪経済」の成長が加速しています。アイススポーツを中心にレジャー、文化などを総合的に巻き込むこの経済システムは、広いサプライチェーンと高い集客効果を持っています。本記事では、氷雪経済が中国にどのような変化をもたらしているのかを調査しました。


2025年の中国春節消費の新トレンド 〜 Z世代が牽引する新年の風潮

2025年の中国春節消費の新トレンド 〜 Z世代が牽引する新年の風潮

2025年の春節(旧正月)が終わり、中国の都市や農村の至るところで、まだ新年の余韻が感じられます。しかし、例年と異なり、今年の中国の春節消費はより個性的でデジタル化が進んでいます。Z世代(1990年代後半から2010年代初頭に生まれた世代)が春節消費市場の中心となりつつあり、年貨(春節用の買い物)や贈り物の選び方、そして春節文化の楽しみ方において新たな価値観を生み出しています。本記事では2025年中国の春節の消費トレンドを詳しく分析します。


中国の健康消費の新トレンド ~ 若者に人気の「中式養生水」

中国の健康消費の新トレンド ~ 若者に人気の「中式養生水」

中国の経済発展につれ、飲料の選択にも変化が見られるようになりました。かつては、炭酸飲料が売上ランキングを独占していましたが、中国人の健康意識の高まりとともに、高糖分の飲料が体に与える負担が認識されるようになり、無糖茶飲料が新たな市場の主役となりました。無糖茶は、さっぱりとした味わいと低カロリーという特徴を持ち、健康志向の消費者のニーズを満たしてきましたが、過去には味わいと機能性の両面で十分に満足させるものではありませんでした。こうした中、さまざまな改良が加えられ、伝統的な養生理念と現代的な飲料の形態を融合させた新カテゴリー「中式養生水」が登場し、注目を集めています。


最新の投稿


Oisixとnoshの動向を調査!新生活の忙しい若者には宅配食+αがおすすめ

Oisixとnoshの動向を調査!新生活の忙しい若者には宅配食+αがおすすめ

最近、外食やテイクアウト、簡単に調理できる食品など、新しい食事スタイルを提供するサービスが人気を集めています。本記事では多くの人に利用されているOisixとnoshに焦点をあてながら、デリバリーサービスや自炊との比較を交え、現代の人々の食生活のトレンドを分析します。


生成AIの認知度は横ばいで推移も利用率は1年間で9.0ポイント上昇【GMOリサーチ&AI調査】

生成AIの認知度は横ばいで推移も利用率は1年間で9.0ポイント上昇【GMOリサーチ&AI調査】

GMOリサーチ&AI株式会社は、同社が保有する国内モニターパネル「JAPAN Cloud Panel(ジャパンクラウドパネル)」のモニターを対象に、「AIトレンドに関する自主調査」を実施し、結果を公開しました。


WEBマーケティング施策でAIを活用している企業は約8割!活用領域としてDM・プレスリリースの文案作成や広告クリエイティブ生成が上位に【PRIZMA調査】

WEBマーケティング施策でAIを活用している企業は約8割!活用領域としてDM・プレスリリースの文案作成や広告クリエイティブ生成が上位に【PRIZMA調査】

株式会社PRIZMAは、マーケティング担当者、広告代理店、デジタルエージェンシーを対象に「WEBマーケティングにおけるAI活用に関する調査」を実施し、結果を公開しました。


独身者増加の中国で「一人暮らし経済」が成長中

独身者増加の中国で「一人暮らし経済」が成長中

人口抑制政策などの影響により少子化が進んでいる中国ですが、近年では結婚率も低下し独身者が増加しています。人口減少に拍車がかかる一方、このような状況によって生まれた新たな消費スタイルが「一人暮らし経済」として発展しています。本記事では、この「一人暮らし経済」において人々の間にどのようなニーズが存在するのか調査しました。


弁護士ドットコム、炎上や誹謗中傷を未然に防ぐリスクチェックツール「AI 炎上チェッカー」を公開

弁護士ドットコム、炎上や誹謗中傷を未然に防ぐリスクチェックツール「AI 炎上チェッカー」を公開

弁護士ドットコム株式会社は、SNSなどをはじめとするインターネットサービス上での炎上や誹謗中傷を未然に防ぐリスクチェックツール「AI 炎上チェッカー」を発表。それに伴い、「AI 炎上チェッカー」のクローズドβテストの参加者を2025年4月7日より募集開始するとのことです。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ