消費者の広告に抱く本音とは?「広告」検索者からポジティブ層とネガティブ層を分析

消費者の広告に抱く本音とは?「広告」検索者からポジティブ層とネガティブ層を分析

広告に対して消費者がどんな本音を抱いているのか、また、広告に対してポジティブ・ネガティブな層はどういったユーザーなのか分析します。最近ではCookie問題や行政によるインターネット広告の規制強化が進み、不適切なメッセージによる炎上も度々起こるなど、消費者にとって広告はネガティブなものだと思われがちです。調査にあたっては直近1年間での「広告」関連の検索キーワードや、実際の流入ページに注目しました。


「広告」検索のランキング上位には「広告 ブロック」などが多い

本記事では消費者が広告に抱く本音を調べるため、「広告」検索者の属性や閲覧コンテンツを調査します。分析にはヴァリューズが提供するWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を使用。特定ワードの検索者属性や流入先コンテンツが分析できるほか、業界分析や競合サイト分析、自社サイトのGAによる分析などがひとつのツールで行えます。

まずは検索数の推移に注目してみます。「広告」検索者の1年間の検索数推移をまとめたものが下記のグラフです。

「広告」検索者のユーザー数推移

「広告」検索者のユーザー数推移
(集計期間:2020年10月〜2021年9月、デバイス:PC&スマートフォン)

時期によりやや変動はありますが、基本的には月間で40万人程度の検索数となっていました。

続いて、「広告」を含む検索キーワードのランキングの上位10キーワードが下記の表になります。

「広告」検索での検索キーワード数ランキング

「広告」検索での検索キーワード数ランキング
(集計期間:2020年10月〜2021年9月、デバイス:PC&スマートフォン)

ランキングでは「YOUTUBE 広告 消す」「広告 ブロック」といった検索キーワードがそれぞれ3位、4位にランクインしています。「広告」を検索するユーザーには、YouTubeなどで表示される広告を消したいというニーズを抱えるユーザーが多いようです。

他にもGoogleやYouTube、インスタなどのプラットフォームの名前と掛け合わせて広告について検索しているユーザーが多いほか、商品ブランド名では唯一「ユニクロ」がランキング上位にランクインしていました。

広告にネガティブな印象を抱くユーザー層を調査

次に、広告にネガティブな印象を抱くユーザー層を分析するために、「広告」検索者のワードネットワークに注目してみます。

「広告」検索のワードネットワーク

「広告」検索のワードネットワーク
(集計期間:2020年10月〜2021年9月、デバイス:PC&スマートフォン)

このワードネットワークでは集計対象キーワードの「掛け合わせワード」の大まかなパターンを確認できます。最頻出のワードを中心(1階層目)に置き、そのワードと共起(掛け合わせ)関係にあるワードを2階層目に、さらに2階層目のワードと共起関係にあるワードを3階層目に、というようにネットワーク図で配置しています。

まず2階層目の「Google」「YouTube」に注目すると、「消す」「非表示」「ブロック」などのワードが検索されています。特にこの2つの広告についてネガティブな印象を抱いているユーザーは多いようです。

また、「消す」「ブロック」に注目すると、「Chrome」「Edge」などが検索されており、ブラウザベースで広告ブロックを試みるユーザーも多いと言えそうです。

これらの特徴は、「広告」検索者の流入ページのデータからもうかがえました。下記が流入ページの上位10ページをまとめたものになります。

「広告」検索での流入ページランキング

「広告」検索での流入ページランキング
(集計期間:2020年10月〜2021年9月、デバイス:PC&スマートフォン)

YouTubeで広告ブロックできる方法、Chromeで広告を消すための方法といったノウハウ記事にユーザーが多く訪問しているようです。広告をネガティブに捉えるユーザー層は、広告を消すためのWeb行動を積極的に行っていることがわかりました。

広告をポジティブに捉える層はいるのか?インスタとユニクロを分析

逆に、広告をポジティブに捉えている層はどのような層なのでしょうか。検索キーワード上位にあった「インスタ 広告」と「ユニクロ 広告」について分析してみます。

まず、「インスタ 広告」についてです。このキーワードで検索を行ったユーザーの流入ページランキングが次のようになります。

「インスタ 広告」検索者の流入ページランキング

「インスタ 広告」検索者の流入ページランキング
(集計期間:2020年10月〜2021年9月、デバイス:PC&スマートフォン)

ランクインしているページのほとんどが、Instagramの広告出稿に関するページとなっています。このことから、「インスタ 広告」の検索者のほとんどが、Instagramで広告出稿の検討をしているユーザーだということがわかります。一方で、インスタ広告を消すための検索をしているユーザーは見られません

同様に「ユニクロ 広告」での流入ページランキングは以下になります。

「ユニクロ 広告」検索者の流入ページランキング

「ユニクロ 広告」検索者の流入ページランキング
(集計期間:2020年10月〜2021年9月、デバイス:PC&スマートフォン)

ユーザー数がもっとも多い1位の流入ページは下記になります。

ユニクロは折込チラシによるセール情報をWeb上にも公開しており、自ら検索してこの情報ページを訪問するユーザーが多いようです。

お得情報のような消費者にとってプラスになる情報は「うざい」「非表示にしたい」とは受け取られづらいことがうかがえるでしょう。むしろユニクロの「広告」は、積極的に見に来てもらえる「情報」になっていると言えそうです。

まとめ|文脈を阻害しない広告が重要

ここまで「広告」検索者が広告に対して持っているイメージについて、検索データから分析してきました。検索者数は月間40万人程度とかなりいるものの、その多くは広告ブロックを検討しているユーザーだったことがわかりました。

一方で、「インスタ」キーワードは広告ブロック検討者がほとんどおらず、出稿検討目的での検索行動でした。YouTubeやGoogleと比較してインスタで広告ブロック検討者が目立たないのは、強制的に広告が表示される時間が大幅に短いことや、ユーザーの情報収集を阻害しない、文脈に合った広告が多いことが関連してきそうです。

また、商品ブランドとして唯一検索キーワード上位にランクインしたのがユニクロです。セール情報の「広告」ではありつつもユーザー目線でお得になる情報として提供することで、ユーザー自らが検索してWeb上の折り込みチラシ情報にまで到達していた状況がうかがえました。

消費者にとってプラスがある情報を適切な形で広告にすることで、ネガティブな印象を持たせないどころかユーザーに興味を持たせ、積極的な行動をさせるきっかけにもなると言えそうです。

▼関連記事:文脈を阻害しない「文脈ターゲティング」の広告についてライオンの内田さん、RoomClipの川本さん、ヴァリューズの齋藤が語りました。ぜひこちらもご覧ください。

コンテンツを楽しんでいる消費者に嫌われない「文脈ターゲティング」とは?【アドテック東京2019レポート】

https://manamina.valuesccg.com/articles/690

アドテック東京2019のセッションで、「嫌われない広告とは何か」をテーマにセッションが行われました。クレディセゾンの栗田さんをモデレーターに迎え、ライオンの内田さん、RoomClipの川本さん、ヴァリューズの齋藤さんの3社が対談。事例をもとに、コンテンツを楽しんでいる消費者に嫌われない、文脈に合わせた広告手法が語られました。

dockpit 無料版の登録はこちら

この記事のライター

2022年の春から、新卒としてヴァリューズに入社。

関連する投稿


Marketing strategy of three Chinese & Taiwanese home appliance manufacturers: HUAWEI, Xiaomi, & ASUS

Marketing strategy of three Chinese & Taiwanese home appliance manufacturers: HUAWEI, Xiaomi, & ASUS

Chinese and Taiwanese manufacturers have been growing their market share and number of users, and they are expected to compete with Japanese companies. We will analyze the current sales trends of HUAWEI, Xiaomi, and ASUS in Japan and predict their future while comparing with Japanese brands.


海外家電メーカーのマーケティング戦略は?中華圏メーカーHUAWEI、Xiaomi、ASUSの3社を調査

海外家電メーカーのマーケティング戦略は?中華圏メーカーHUAWEI、Xiaomi、ASUSの3社を調査

近年、世界で着実にシェアを伸ばしつつある中華圏メーカー。日本においてもその製品の利用者は増加しており、日本企業と競合していくことが予想されます。そこで今回は日本にも進出している代表的な3つの中華圏メーカー、HUAWEI、Xiaomi、ASUSについて、日本における現時点での販売動向を分析し、国産ブランドとも比較しながら3社の今後を占っていきます。


サービス終了から約1年…Zenly利用者はどこへ?位置情報共有アプリの現在

サービス終了から約1年…Zenly利用者はどこへ?位置情報共有アプリの現在

位置情報共有アプリ、Zenly。かつて一般的ではなかった「位置情報を共有する便利さ」をユーザーに伝え、位置情報共有アプリという新ジャンルを開拓しました。友人や家族との待ち合わせに使ったり、スマホの紛失に備えたり、災害時の安否確認として使ったり…とユーザーに様々な需要を生み出したZenlyですが、2023年2月3日にサービスを終了しました。ではその後、Zenlyユーザーはどのアプリを利用しているのでしょうか?この記事では、Zenlyに代わる位置情報共有アプリの現在を、サービス終了直後の分析結果と比較しながら考察します。


今「note」がアツい!読み物好きな若者を魅了?noteの集客動向を調査<前編>

今「note」がアツい!読み物好きな若者を魅了?noteの集客動向を調査<前編>

2023年夏頃から集客数を急激に伸ばしているメディアプラットフォーム「note」。人気を後押ししているのはどのような人々なのでしょうか?前編では、noteが集客しているユーザーの特徴を深掘り調査し、後編では、noteが規模を拡大している要因を探っていきます。


みんなの注目キーワードは?週間検索トレンドランキング(2024/03/18〜2024/03/24)

みんなの注目キーワードは?週間検索トレンドランキング(2024/03/18〜2024/03/24)

ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」をもとに、週次の検索急上昇ワードランキングを作成し、トレンドになっているキーワードを取り上げます。


最新の投稿


交渉学を深める ~ 英知ある交渉とは

交渉学を深める ~ 英知ある交渉とは

さまざまなビジネスシーンで見られる「交渉」。よりスマートにお互いの利益を引き出す交渉を行うにはどのような知識とスキルが必要となるのでしょうか。また、現在持ち合わせているあなたの「交渉能力」をアップデートするためには、どのような「交渉術」を備えるべきなのでしょうか。本稿では広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長を務めている渡部数俊氏が「交渉」概念の基礎から、さらに深い「交渉学」の世界まで解説します。


悩みを抱えた人の語りからこころと社会を学ぶ「夜の航海物語」のススメ〜現代社会とメンタルヘルス〜

悩みを抱えた人の語りからこころと社会を学ぶ「夜の航海物語」のススメ〜現代社会とメンタルヘルス〜

「カウンセリング」と聞いて、どんな印象を持ちますか?専門家とともに自分のこころを見つめる経験は、その後の人生の糧にもなります。臨床心理士の東畑開人氏の著書「なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない」(新潮社)は、気付かないうちにあなたも染まっているかもしれない、孤独に陥りがちな現代社会の価値観に気づかせてくれます。「読むセラピー」と称された、カウンセラーとクライアント(依頼者)の夜の航海物語を、精神保健福祉士の森本康平氏が解説します。


Twilio、「顧客エンゲージメント最新動向」を発表 データ使用状況の開示と高い透明性の重要性を明らかに

Twilio、「顧客エンゲージメント最新動向」を発表 データ使用状況の開示と高い透明性の重要性を明らかに

Twilio Japan合同会社は、「顧客エンゲージメント最新動向」の日本語版を発表しました。


メンズの注目高まる?「日焼け止め」ニーズを調査!2024年最新版

メンズの注目高まる?「日焼け止め」ニーズを調査!2024年最新版

メンズコスメへの注目が高まる中、生活者の日焼け止めへのニーズはどのようになっているのでしょうか。また、夏と冬、シーズンによって日焼け止めに求められるものは異なるのでしょうか。本記事では、日焼け止めの検討行動から、ニーズの移り変わりと消費者心理を紐解いていきます。


HYUNDAI(ヒョンデ)の新EV「KONA(コナ)」への関心は?サイト訪問者から分析

HYUNDAI(ヒョンデ)の新EV「KONA(コナ)」への関心は?サイト訪問者から分析

2022年に日本市場に再進出したHYUNDAI(ヒョンデ)は、2023年11月にコンパクトSUVのEV「KONA(コナ)」の販売を開始しました。SUVのEVでありながら、車体価格が399万3,000円からと、他の高額なモデルと比較して手頃な価格であることが注目されています。今回は ヒョンデKONA(コナ)Webページの訪問者の調査を行い、どのような人が関心を持っているかや比較対象となるメーカー、集客構造を調査していきます。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

ページトップへ