(左)トゥギャッター株式会社 Togetter編集部 道上菜都美さん
(右)トゥギャッター株式会社 代表取締役 吉田 俊明さん
まだTwitterが世の中に現在ほど浸透していなかった2009年にサービスを開始した「Togetter」。誰でも簡単にツイッター上のツイートをまとめられるという体験が多くの人に受け入れられ、登場から10年経った今では年間10万本以上のコンテンツが日々生み出され続けている。
最近のTwitterでは自治体アカウントが面白い
――今日はTwitterを日々見続けているTogetterのおふたりに、企業や自治体のTwitter運用についてお話をうかがえればと思います。まず、これまでTwitterの使い方が上手いと思った企業や自治体はありますか?
道上さん(以下、道上):最近は自治体のアカウントが面白いと思っています。京都府福知山市がオリンピックパラリンピックで注目されたピクトグラムをアレンジしたものを作成し、同市のPRを行いました。オリンピック後、ピクトグラムを自作するムーブメントはTwitter上で見られましたが、その流れを汲み取って上手くPRに繋げたと思います。また、ツイートだけに留まらず、Togetterを活用して更なる拡散を狙う姿勢にも感心しました。
▼京都府福知山市のTwitter
――他の自治体でも好事例はありましたか?
道上:自治体とカテゴライズして良いのかはわかりませんが、ナウル共和国の政府観光局日本事務所の公式アカウントが挙げられます。同アカウントは「日本の皆様のお陰で、フォロワー数がナウル国民の26倍に到達しました」といった同国の人口の少なさを逆手に取ったユーモラスなツイートをはじめ、ナウル共和国という日本ではあまり馴染みのない国のPRに成功しています。
▼ナウル共和国政府観光局のTwitter
道上:また、駐日ジョージア臨時代理大使を勤めるティムラズ・レジャバさんも、「仕事帰り、ジョージア大使館のメンバーでコーヒーのジョージアを飲みながらしばらく帰れていない故郷ジョージアについて想いを馳せております」とユーモアを交えながらジョージアの魅力を発信されています。
▼ティムラズ・レジャバさんのTwitter
転換点を迎えた企業のTwitter運用
――自治体の順応性の高さがうかがえましたが、一般企業ではいかがでしょうか?
道上:以前はシャープさんやタニタさんの公式アカウントが注目されていましたが、最近作られたアカウントのなかでは、印象的なものはあまりないかもしれません。昔は公式アカウントとして、砕けた内容の発信をしながら、ユーザーの共感を誘って拡散を狙う“軟式アカウント”がトレンドでした。しかし、最近は奇をてらったトリッキーな発信よりも、ユーザーが知らない専門的な情報を真摯に発信する公式アカウントが好まれるようなりましたね。
――軟式アカウントが下火になり、いわゆる「硬式」のアカウントが盛り返した要因は何ですか?
道上:様々な要因がうかがえますが、まず企業視点から話します。そもそも、企業がネタに走ったツイートは炎上リスクが高いです。昨今、働き方に対する意識が変わり、ジェンダー観もアップデートされ、保守的な運用に見直されるようになりました。
――時代の流れが影響しているのですね。
道上:はい。次にユーザー視点です。最近のTwitterは成熟期を迎え、いろいろな人がつながる空間から、特定の関心を持つ人同士が排他的に交流する“村社会”的な雰囲気がより強くなりました。軟式アカウントが目指すような不特定多数の人から注目を集めるツイートでは、拡散が難しくなり、仮にバズっても自分たちのターゲットに刺さらない可能性が高い。そのため、公式アカウントとして、自分たちを応援してくれる人・応援してくれそうな人に向けた発信にシフトしているように感じます。
――どのようなタイミングで「硬式」のアカウントが盛り返してきたと気付きましたか?
道上:明確なタイミングはわかりません。ただ、ここ最近のトレンド入りしているワードを見てみると、専門的なものが増えたと思います。以前は『トレンド入りワード=みんなが関心を抱いている物事』でしたが、一部の熱狂している人たちの手によってトレンド入りするワードが散見されるようになっています。中には全然知らないトレンドワードもあり、興味関心の細分化が進んでいると感じますね。
いいねやRTの数は意味がない?「ひとつのツイート」が重要な理由
――Twitterの流れが変わりつつある状況はわかりました。この流れを踏まえると、従来の「いいね」や「RT(リツイート)」の数追いは改めるべきですか?
道上:そうですね。やはり拡散それ自体の効用が薄くなりました。いかに自分たちのターゲットを明確にして、そこに届くツイートができるかが、これからは企業のTwitter運用において重要かもしれません。ネタとして消費された1,000RTのツイートよりも、10RTでもターゲットに届いたツイートのほうに価値があります。数字は当然大切ではありますが、届けたい人に届いているかがより重要です。数字に振り回されない視点が企業には求められるのではないでしょうか。
――反響を確かめるためにはどうすれば良いですか?
道上:例えば、メーカーであれば、どういった人が購入し、どういった意見を持っているかを一つ一つ確認するしかありません。地道な作業ですが、単純な反応の数よりも、どんなツイートをされているかという定性情報に目を向けた方が分かりやすいと思います。
吉田俊明さん(以下、吉田):私も同意見です。道上が話している通り、軟式アカウントのような共感を集めるツイートは確かに爆発力があります。しかし、炎上リスクだけでなく、ターゲットに適切な情報が届かない可能性も高いです。ターゲットを意識しながら、コツコツ発信している企業の公式アカウントはやはり強いですし、効果的なやり方だと思います。
反響を確かめる方法を強いて挙げるなら、ツイートした際に一番早く反応した人のツイートに注目することですね。その人の反応次第で広まり方が大きく左右されるため、まずは一番最初に反応してくれた熱心なファンの動向を注目すると良いでしょう。
Togetterでは、Twitterユーザーの生の声を集めたツイートのみで構成する記事広告を提供している。ヤクルトの期間限定商品「カップ de ヤクルト」に対するユーザーの反応をまとめた記事広告では、「家にあったら無限個食べてしまう」「カップdeヤクルトの霊圧感じれて今年も安心」といったツイッターならではの語彙が多く使用されている
金言ツイートを見流さないためのサービス
――最近はInstagramやTikTokなど、個性豊かなSNSが台頭しています。Twitterを始め、各SNSの特徴を教えてください。
道上:先述した福知山市のツイートからもわかる通り、Twitterにはハイコンテクストな情報・ネタを好むユーザーが多いです。また、大前提ではありますが、Twitterは他のSNSと比較して、ユーザーが文章を好む傾向があり、意外と数行に渡るものでも目を通してくれます。もちろん写真も添付したほうがインプレッションは稼げますが、常にコピーライティングの視点を意識しなければいけません。
――各SNSも勢いがあり、Twitterも村社会化が進んでいるため、ユーザー離れも懸念されます。Twitterの行く末についてどのようにお考えですか?
吉田:Twitterは1ツイートのハードルが非常に低いです。広報活動の第一段階として活用し、Twitterを軸に各SNSと連携していくと良いと思います。
――今からTwitter運用を始めても遅くはない、ということでしょうか。
吉田:そもそも、Twitterで使用されている言語は日本語が2位ですので、日本人との親和性は非常に高いです。また、無理に凝ったツイートをしなくても、自社の製品やサービスの感想をリツイートするだけで、十分広報としての役割を果たせるのではないでしょうか。
▼関連記事:当メディア、マナミナではTwitterやInstagram、TikTokなど主要SNSアプリユーザーの利用実態を調査しています。ぜひ併せてお読みください。
【最新版】Twitter、Instagram、TikTokなど主要SNSアプリユーザーの利用実態を調査。シニア利用が伸びる
https://manamina.valuesccg.com/articles/1533今回は、当メディア「マナミナ」を運営するヴァリューズが<a href="https://manamina.valuesccg.com/articles/888" target="_blank">2020年6月に調査した内容</a>の最新版を作成しました。過去に調査した4つのSNS(LINE、Twitter、Facebook、Instagram)に「TikTok」を加え、アプリのユーザー数やデモグラフィックについて調査しました。一体、どんな変化がみられたのでしょうか。
――最後にTwitterを運用している企業にアドバイスなどあればお聞かせください。
道上:共感を誘うようなツイートももちろん重要ですが、バズを狙いすぎて四苦八苦し、ターゲットではない人に届いてしまったのでは元も子もありません。先述した例のように、自分のアカウントが持っている専門的知識を活かし、情報を真摯に、ときにTwitterのミームを織り交ぜながら発信するのが現在では効果的なのかなと思います。
その上で重要なのは、表面的なバズよりも、熱心なファンのツイート一つ一つに目を向けることが大切です。Togetterを活用することで、埋もれそうな金言も可視化されるため、PR施策を計画する重要なヒントが見つかります。
吉田:Togetterにそうしたツイートをまとめるだけでも効果は高いと思いますね。無料でも簡単に使用できますが、有料版であれば専門のスタッフが記事広告として、より拡散する情報を発信できます。ぜひ一度検討してみてください。
取材協力:トゥギャッター株式会社
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ライター兼動画編集者。“マーケテイング”という、よくわかりそうでよくわからない世界をわかりやすく伝えていきます。