2021年、異例の「独身の日/W11」商戦。中国EC通販はどのように変わった?|中国トレンド調査

2021年、異例の「独身の日/W11」商戦。中国EC通販はどのように変わった?|中国トレンド調査

世界的なコンサルティング会社であるAlixPartnersが発表した「2021年ダブル・イレブン予測レポート」によると、調査対象となった消費者の半数が、今年の「W11(ダブルイレブン)」で3,000元以上の買い物をすると予想しています。本調査では今年W11の実態やトレンドをデータから説明します。


2021年「独身の日/W11」商戦の結果

「W11(ダブルイレブン)」とは、中国で毎年11月11日の「独身の日」に行われる年間最大のECセールイベント。

データによると、W11の初日に天猫(Tmall)では64のブランドが1億元の売上高を突破し、販売開始から1時間で2,600個以上のブランドの売上高が昨年の全日を上回りました

2021年11月12日0時までに、天猫(Tmall)と京東(Jingdong)の2つのプラットフォームでの売上総額が8,894億元(約15.9兆円)を超えました。

昨年との比較では、天猫(Tmall)が421億元(約7,493億円)、京東(Jingdong)が776億元(約13,860億円)、合わせて売上が1,197億元(約2.1兆円)に増加しました。

天猫(Tmall)が有するビューティー、メンズケア、フレグランス&アロマテラピー、児童用品、パーソナルケア、ホームクリーニング、ペット用品、玩具という 8つの商品カテゴリーの売上が爆発的な伸び率を見せています。

天猫売上高データ

一方で、京東(Jingdong)は10月31日午後8時からの4時間で商品の累積販売数を1億9000万個超え、その4時間後、中国国内の100万人以上の消費者が既に京東11.11の荷物を受け取りました。

11月11日23時59分まで、京東(Jingdong)の累計発注額は3,491億元を超え、新記録を達成しました。 そのうち、31個のブランドが10億元、中でもApple社が100億元を突破しました。

京東売上高データ

2020年「独身の日/W11」商戦との違い

「独身の日/W11」商戦は13年を経て、盛大なイベントとなってきましたが、今年は特別の意味を持つようです。

独占禁止法の後、中国のインターネット業界は新たな変化に直面し、EC通販間の競合にも新たな期待が寄せられているからです。そんな中で今年のW11では何が変わったのでしょうか?

①個人消費のハードル軽減

今年のW11では、消費者向けの新機能を継続的に導入しており、「拼単」(まとめ買い値引き)の基準値を200元までに下げただけでなく、ワンクリック共有カートを開始したり、高齢者のための専用コーナーを設置するなどの変化がありました。

また今年は、11月1日から3日までの第1波と11月11日の第2波の2回に分けて購入することができるような形になっています。 第1波でご注文いただいたお客様には、10日も早く商品をお届けすることができます。

②ライブ・ストリーミング・プラットフォームで活躍するインフルエンサー

プラットフォームのインフルエンサーは特に活躍し、とりわけ李佳琦と薇娅のライブストリーミングルームは、10月20日のプレセール初日にそれぞれ2億人以上の視聴者を獲得し、合計売上は200億元(約3,572億円)を超えているようです。

インフルエンサーの売上高データ

③「独身の日/W11」商戦の「社会的責任」

アリババは、W11が商業的価値を生み出すだけでなく、社会的変革に付加価値を提供すべきだという企業パーパスを掲げています。

今年のW11の決起会でアリババのCMOである董本洪氏は、今年のW11への期待を語りました。その中には、市場の結果や競争のパフォーマンスを重視するのではなく、省エネや二酸化炭素の削減、グリーン消費、共同繁栄などの社会的責任の概念を大きく取り上げるという重要な変更点が含まれています。

それと同時に、アリババ社は一連の社会福祉措置を発表しました。例えば、天猫(Tmall)と9つのスポーツブランドが共同で「ワン・シュー・プロジェクト」を発表しました。 他にも天猫は、今回W11の期間中、聴覚障害者用のリップシンク・マスクや視覚障害者用の炊飯器など、特別な商品のための会場も設置すると発表しました。これらの商品は、売上高に占める割合は大きくありませんが、企業の焦点の変化を反映しています。

ワン・シュー・プロジェクト

2021の「独身の日/W11」商戦の注目カテゴリー

①メンズケア

11月1日の0時の販売開始から10時間後の時点で、ロレアルメンズの売上高は昨年の全日を上回りました。

今年、天猫では、メンズメイクアップとメンズボディケアの2つのカテゴリーが3桁以上の伸び率を示しているようです。

また11月4日、天猫(Tmall)はW11で「爱我所好,就这YOUNG」(Love what I love, that's all)というプロモーションを発表しました。このプロモーションではメンズケア、ペット、フレグランス・アロマの3つのカテゴリーをフィーチャーし、ユーザーの感情移入を刺激し、ソーシャルプラットフォームで話題になりました。

2019年に設立された男性用パーソナルケアブランド「理然」は、 ヘアスタイリングと男性用シャワージェルの2部門でトップ1にランクインしました。

理然の広告

②シルバー経済

中国中央テレビの報道によると、高齢者優遇改革後の最初のW11の期間に、高齢者ユーザーも買い占め合戦に積極的に参加しました。その中で購入した商品の第1位は、実はiPhoneであったようです。

また、データによると、W11の期間中、高齢者の大半が朝7時に注文をしています。これは、0時のラッシュに参加できないため、いち早く起きる必要があったからだと思われます。

これは、現在の0時ラッシュの最大の欠点を反映したものでもあり、来年のダブル11、あるいは来月のダブル12では改善されると期待されます。

iPhone以外では、高齢者ユーザーが最も多く注文したのは、ダウンジャケット、ツイードジャケット、ニットウェアで、これも若年層と同様に、現在の気候に相応しい選択でもあります。

また、若者とは異なり、高齢者はW11期間中に健康診断などへの支出が倍増しました。そのほか、家庭用の電子検査機器を多数購入したようです。その中でも特に人気が高かったのは、電子体温計、スマート血糖値測定器、スマート血圧測定器でした。

高齢者ユーザーが購入したランキング

③中国産ブランド

最近、天猫(Tmall)とトップインフルエンサーの薇娅さんがタッグを組んで、「新国産ブランドトレンド」というW11スペシャルイベントを行いました。そこでは、薇娅さんと中国産ブランドのCEOたちとが商品素材の発見やデザインの誕生などについて語りました。

例えば「AOEO」というブランドは非常に若いブランドで、創業は2019年、創業者を含め社員の平均年齢は25歳しかありません。

また昨年、AOEO社の年間商品総量(GMV)は3億元(約53億円)に達し、今年は10億元(約178億円)を目標にしています。発売から1年経過したAOEOの洗顔料が、EC通販での販売量で600万個に達しました。 今年のダブル11で販売開始から1時間で売上高が1,000万元(約1億7000万円)を突破しました。

同じく人気の国産ブランド「珂拉琪」は、オープン2時間後に昨年の予約販売のフルステージを超え、「エア・リップ・リキッド」はすでに20万個以上の予約が入ったようです。Z世代に向けて、コストパフォーマンスを重視した珂拉琪は、リップ製品で数え切れないほどの女の子の心をつかみ、競争の激しいリップ製品の分野でその地位を確立しました。

AOEOと珂拉琪の売上高データ

④文房具や文化的グッズ

今年のW11は、国産ブランドが展開した文房具や文化的グッズがヒット商品になっています。 W11セールの初日、ミュージアム文房具は前年比400%以上の伸び率を示しました。

紫禁城のカレンダー、紙彫刻の宮殿ランプ、三星山のブラインドボックスなど、新しいものを追い求める若者にとっては、歴史性のある博物館グッズにも購買意向を寄せているようです。

また、北京冬季オリンピックの開催を受けて、オリンピック景気が生まれています。 天猫(Tmall)オリンピック公式ショップは、今年のW11セールの初日に最も人気のある文化・クリエイティブショップに躍り出ました。 歴代冬季オリンピックのエンブレムバッジや北京冬季オリンピックのマスコットなど、多くの新商品が売り切れました。

まとめ

今回のW11では、数え切れないほどの新しいブランド、カテゴリー、商品が登場し、顧客ニーズの高度化に伴い、新しいサービスや体験の提供が求められます。

また、新しい消費者グループが消費の傾向をリードし、中国の消費増加に貢献しているでしょう。

参考URL

「CBNData新消费周报 | 天猫双11首小时成交额再创新高;上海咖啡馆数量全球第一;字节跳动组织调整」
https://www.163.com/dy/article/GO742AU0051998O7.html
「早资道 电商平台公布双11开场战报;个人信息保护法11月1日起实施」
https://www.163.com/dy/article/GNN74ELS0514D3UH.html
「观察阿里之变 ,双11是最佳窗口」
https://www.163.com/dy/article/GO1EEDGQ0531LYFA.html
「谁在引领“新消费”」
https://www.163.com/dy/article/GO5FRMAO05118FFD.html
「老年人网购消费排名第一是手机:iPhone还是首选」
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1715843045388711967&wfr=spider&for=pc
「消费爆发 天猫双11开场首小时超2600个品牌成交超去年全天」
https://www.chinaz.com/2021/1101/1323099.shtml
「天猫双11开售第一天,博物馆文创同比增长超400%」
http://www.eeo.com.cn/2021/1102/509754.shtml
「京东双11宠物品类成交额增长500%,有入驻商家收入增长11倍」
https://www.163.com/dy/article/GO1H0S6E0538UMCW.html
「双11落幕,“尾款人”消费力惊人,天猫5403亿,京东3491亿,再创新纪录,你贡献了多少?」
https://36kr.com/p/1481196661522821

この記事のライター

慶應義塾大学在学中。

関連する投稿


中国で抹茶が若者を中心に人気拡大。その魅力は?

中国で抹茶が若者を中心に人気拡大。その魅力は?

近年、中国の抹茶人気が高まっています。抹茶飲料だけでなく、アイス、ジェラート、チョコ、ラテ、お酒など数えきれないほどの抹茶商品が登場しており、「万物皆可抹茶(なんでも抹茶味にできる)」という言葉ができるほどです。この記事では、このような抹茶人気の背景にある要因を紹介します。


中国の犬猫3000万匹がシニア期へ、進化するペット終活最新事情

中国の犬猫3000万匹がシニア期へ、進化するペット終活最新事情

今、中国ではペットの老いが大きなテーマになっています。たくさんの犬や猫がシニア期を迎え、ペット業界もかわいがるだけのフェーズから、最期まで寄り添うケアへと変わってきました。ペット保険、フードと健康管理、そしてペット葬儀。広がり続けるこの市場で、今最も注目されている変化をレポートします。


中国で大ブーム!食べて健康になる薬食同源(やくしょくどうげん)と最新トレンド

中国で大ブーム!食べて健康になる薬食同源(やくしょくどうげん)と最新トレンド

中国で今、伝統的な健康思想「薬食同源」が大ブームを巻き起こしています。急速な高齢化を背景に健康寿命を延ばしたいシニア世代だけでなく、日々の疲れやストレスを抱える若者たちの間でも、タイパ抜群の手軽な養生スタイルとして急速に浸透中。2024年には主要ECだけで1兆円を超える巨大市場へと成長しました。本記事では、老舗の若返りやヒット商品の動向など、進化を続ける中国の最新健康トレンドを解説します。


自然の中を走るトレイルランニングが中国で人気

自然の中を走るトレイルランニングが中国で人気

トレイルランニングというスポーツが中国で人気を集めています。「トレイル」とは「未舗装路」を意味し、山道など自然の中を走るスポーツです。特に30代から40代の人々の間で人気を集めるこのスポーツについて、ブームとなっている背景を紹介します。


中国「ダイエット・エコノミー2.0」 〜「体重管理年」を経て爆発する最新トレンドと消費の行方

中国「ダイエット・エコノミー2.0」 〜「体重管理年」を経て爆発する最新トレンドと消費の行方

2026年の中国では、ダイエット・エコノミーが劇的な二次進化を遂げています。2024年に始動した政府主導の「体重管理年」プロジェクトを経て、国民の意識はダイエットから全天候型のライフスタイルへと進化しています。本記事では、春節後の爆発的な需要を背景に、タイパを重視した「機能性食品のスナック化」や、小紅書(RED)等のコンテンツECが牽引する最新の消費トレンドを詳説。変容する中国若年層の心理を読み解き、日本企業が中国の巨大な健康市場を攻略するためのヒントを提示します。


最新の投稿


生成AI利用者の約7割が買い物の参考に活用。それでも22%は「最後は自分で調べ直す」【マインディア調査】

生成AI利用者の約7割が買い物の参考に活用。それでも22%は「最後は自分で調べ直す」【マインディア調査】

株式会社マインディアは、買い物の場面で生成AIを利用する全国18〜59歳の男女を対象に、購買行動における生成AIの利用実態調査を実施し、結果を公開しました。


ソフトバンク、生成AI向けデータ基盤「GaranAI」のベータ版を開始 著作物の保護と収益還元を支援

ソフトバンク、生成AI向けデータ基盤「GaranAI」のベータ版を開始 著作物の保護と収益還元を支援

ソフトバンク株式会社は、コンテンツホルダーが保有するデータを保護しながら、生成AIの開発に活用できるデータエコシステム基盤「GaranAI(ガランエーアイ)」のベータ版を提供開始しました。同日から、コンテンツホルダーとデータ利用事業者を対象に利用申し込みを受け付けています。


「好きで応援したい」のに、誰にも教えたくない?ブランドファンの複雑な心理とは【博報堂調査】

「好きで応援したい」のに、誰にも教えたくない?ブランドファンの複雑な心理とは【博報堂調査】

株式会社博報堂の生活者発想技術研究所は、東京都立大学 経済経営学部の水越康介教授との共同研究のもと、日本に住む15~74歳の男女を対象に「生活者から応援されるブランドと社会的価値に関する意識調査」を実施し、結果を公開しました。


バリューコマース、AI時代におけるブランドの「語られ方」を定量評価する新技術「Narrative Score」を開発

バリューコマース、AI時代におけるブランドの「語られ方」を定量評価する新技術「Narrative Score」を開発

バリューコマース株式会社は、AI時代におけるブランドの「語られ方(ナラティブ)」を定量的に評価する技術「Narrative Score(ナラティブスコア)」を開発したことを発表しました。


直感を「勝てる戦略仮説」へ翻訳する。積水ハウス イノコム流・理論×実践ツール活用法

直感を「勝てる戦略仮説」へ翻訳する。積水ハウス イノコム流・理論×実践ツール活用法

積水ハウス イノベーション&コミュニケーション株式会社の日ノ澤恵莉氏と株式会社ヴァリューズ取締役副社長・後藤賢治が対談。日ノ澤氏が提唱する5Sフレームワークとその実践について語り合いました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

ページトップへ