春節で売れ行きが良かったもの
■若者による氷雪消費ブーム
近年、中国でもスキーブームが訪れました。智研コンサルティングのデータによると、2020年の中国のスキー人口は約1,724万人、中国人スキーヤーは約1,051万人になるそうです。そして、ただでさえ熱い氷雪スポーツと氷雪観光は、特に北京冬季オリンピックの開幕で春節の間に急速に流行っているようです。
中国の大晦日から正月4日までにTmallのスキー用品の売上は前年比180%を超え、アイスホッケー関連の売上も300%以上伸びました。Z世代が氷雪消費ブームの新たな勢力となり、氷雪観光の人気は上昇を続け、スキーや温泉は若者の氷雪観光の新たな消費スタイルとなっています。
「Fliggy(フリギー、中国語:飞猪)」のデータによると、春節に氷雪観光を予約した若年層は前年に比べ、80%以上増加し、他の年齢層を大きく上回っています。 春節に向けた「氷雪+温泉」の組み合わせ商品の受注が前年比40%以上増加しました。
今、多くの若者が求める氷雪スポーツ・観光体験は、スキー、アイススケート、氷像鑑賞、雪見、雪遊びといった基本的なスポーツ・観光項目のレベルだけでなく、アイスクライミング、カーリング、エクストリーム・スノー・スポーツといった新しいサブセグメントでも若者から注目されているのです。
2022年春節のもう一つのトレンドは、「冬季オリンピックブーム」です。世界経済の低迷を背景に、北京冬季オリンピックの開催が中国経済に活力を与えていることは間違いないでしょう。
氷雪消費ブームの解説
■ペット消費
近年では、ペット用お正月商品という概念の誕生により、ペット消費における新たな消費トレンドが生まれました。ペット経済の急速な発展の背景として、若者の消費スタイルの変化が挙げられますが、こうした変化も更なるペット経済のブームに影響を与えていると専門家も指摘しています。
今、若年層はすでにペットを家族の一員と考え、「ペットの正月料理」「新しい正月服」「手入れと美容」にまで力を入れています。
Taobaoライブは「2022年年越し祭:新年生活消費動向報告」を発表し、年越し祭期間中、ライブ配信でペットアパレル消費量が65%増加したことを明らかにしました。
さらに注目すべきなのは、2022年春節のペット消費の新たな動向も生まれたということです。例えば、ペットの宿泊がグレードアップし、「ペットホテル」「ペットロッジ」「ペット保育園」「ペットリゾート」といった新しい用語や概念が登場していることです。上海では春節の時期、ペットの預け入れは1日200元前後が平均ですが、中には1日600元、700元もする「豪華な部屋」もあるそうです。
■中国ブランドと老舗ブランド消費
今年のタオバオ年越し祭では、中華老舗ブランド商会の老舗ブランド認定を受けた400以上の老舗ブランドが参加しました。その中で、「陶陶居」の旗艦店は生放送中に18,431%、西凤の公式旗艦店は生放送中に2,611%、「秋林里道斯」の旗艦店は生放送中に1,513%も売上高が増加しました。
また、「レディース服」部門は、ライブコマースやネットでの売上が全体的に良く、「チャイナドレス」「漢服」がハイライトとなり、これらの伝統衣装や「中国風」の中国ブランドの服が、若者の「正月衣」「正月戦服」となることが多くなりました。
ライブコマースデータ
新たな消費スタイル
■年貨節とEコマース消費
日本でも年末年始にセールを行う習慣がありますが、中国でも春節前に購入する年越し関連グッズを「年貸」と呼んでおり、EC業界では「年貨節」というセールイベントが作られています。
2016年以降、年貨節は徐々にダブル11、ダブル12に次ぐ重要なショッピングフェスティバルとなった一方で、Tmall、Taobao、Jingdong、拼多多、Douyin、快手などのEコマースプラットフォームや、ショートビデオのプラットフォームでも重要視されており、そのIP価値も高まっています。
2022年の旧正月も、コロナウィルス感染症につれ、北京、上海など多くの場所で「年越しを地元やその場で過ごす」ことが提唱されています。若年層の消費者にとって、ネットショッピングは日常的な習慣になりつつある中で、感染症の予防と対策という背景から、春節商品を購入するためにネットというチャネルを選ぶ若者がさらに増えていくでしょう。
CBNDataの調査データによると、幅広い商品、高いコストパフォーマンス、即時配達などのメリットから消費者の86%がオンラインEコマース、53%が「餓了么」などのライフサービスプラットフォームや出前サービスでお正月グッズを購入していることを明らかにしています。
若年層インサイト
■若年層による親孝行消費
社会人を対象に調査したデータによると、春節の年長者への親孝行の支出は30%を占めると明らかになりました。
先日、京東スーパーは「2022年正月京東スーパーギフト箱消費報告」を発表し、その中で「親孝行消費」が特に注目を集めていました。年長者向けの正月用健康ボックスの売上は153%増加し、低糖質菓子も530%増加し、新たな消費トレンドとなりました。
また、「乳糖ゼロ」の牛乳は前年比42%増、アルコールフリー・低アルコールワインの12月の売上は前年比11倍となり、年長者へのプレゼントとして「健康を贈る」ことが第一の選択肢となったようです。 北京の老舗菓子ブランド「稻香村」も、牛タン菓子、モジ菓子、妻餅など11種類の味の定番菓子が入った、高齢者に適した糖アルコール菓子のギフトボックスを発売しました。この商品は、サトウキビ糖を使用せず、糖原料にキシリトールを使用しており、特に糖尿病患者に適していると明らかになりました。
再会とシェアは春節の重要なテーマであり、若い人たちはたとえ場所が違っても家族への思いを伝えたいと考えているでしょう。約8割の消費者が、家族への旧正月用の商品を出前サービスやEコマースプラットフォームから遠隔で注文することを検討すると回答し、果物や生鮮食品、健康食品などが人気のギフト商品として挙げられています。
旧正月には、肉や魚、油や砂糖を大量に摂取することは避けられないと考えられます。しかし消費者は両親や年長者の健康のために、好みに合わせて健康的な食事に気を配るようになっています。こうした若い人たちの新しい発想、認識、態度は、従来のシニアフード市場に新鮮なエネルギーを注入するに違いないでしょう。
若年層インサイト
「稻香村」のギフトボックス
まとめ
伝統的なオフラインのスーパーマーケットから、ワンクリックネットショッピングへ、「高価なものしか贈らない」から「年長者の健康を考えたよりきめ細かい選択」へと変化しているなど、消費者の旧正月商品に対する選択の変化は、ライフスタイルや生活水準の変化後の新しい消費需要の変化も反映しているといえます。
春節の消費ブームの背景には、現在の中国国内の消費構造の変化と、Z世代の若者が消費の主役となる流れがあるとされています。そこから派生する新しい産業や経済が、2022年の消費者市場にどのような変化をもたらすでしょうか。
参考URL
「“宠物年俗”火爆春节市场,谁在为新消费宠物经济买单?」
https://m.gmw.cn/2022-02/07/content_1302793184.htm?source=sohu
「京东超市发布《2022年货节京东超市礼盒消费报告》,揭示2022年春节年货礼盒消费的趋势」
https://www.biolink.cn/article/4407_13.html
「90后接棒“年货采办权”? 最新2022年轻人过年趋势洞察 | CBNData报告」
http://ex.chinadaily.com.cn/exchange/partners/82/rss/channel/cn/columns/sz8srm/stories/WS61ef65bfa3107be497a03c0b.html
「2022年的春节假期,消费者们都在如何“花钱”」
https://www.163.com/dy/article/GVPS556C0531KBFR.html
「年轻人过年,钱都花哪儿去了?」
https://www.163.com/dy/article/GVK08P0I0539DANK.html
「淘宝直播报告:2022年货节直播间成交额同比增长20.5%」
https://www.dsb.cn/174804.html
「经济日报携手京东发布数据 冬奥会带旺冰雪消费」
http://www.ce.cn/xwzx/gnsz/gdxw/202202/09/t20220209_37314351.shtml
慶應義塾大学在学中。