仮説のレベルを一段上げる。電通の分析ツール活用法 |「VALUES Marketing Dive」レポート

仮説のレベルを一段上げる。電通の分析ツール活用法 |「VALUES Marketing Dive」レポート

ヴァリューズは、“データを通じて顧客のことを深く考える”、“マーケティングの面白さに熱中する”という意味を込め、マーケティングイベント「VALUES Marketing Dive」を5/26に開催しました。本セミナーの全体テーマは「Update Your Marketing」。これからの時代、生活者には新たな価値観や購買行動が生まれ、マーケティング戦略や施策はさらなるアップデートが求められます。本講演では電通のプランナーをお迎えし、「仮説のレベルを一段上げる Dockpit活用法」と題して、リアルな声をふまえたツール活用法をご紹介いただきました。


スピーカー紹介

図:スピーカー紹介

図:スピーカー紹介

スピード感をもって課題解決を導く、仮説の重要性

電通 山本俊氏(以下、山本):「私自身、これからの分析に求められる要件は「Solo・Speed・Story」の3つの「S」だと考えています。「1人で(Solo)、スピードをもって(Speed)、課題解決への仮説が導ける(Story)」です。今回は、この3つを実現できるDockpitを用いて、高速に仮説の精度を上げるために共通して重要なポイントからご紹介したいと思います。

1つ目は、「まずはDockpitを使わずに仮説を立てる」ということです。
とりあえずツールを触って、目的がないまま分析結果を沢山出してから、考えるというやり方をしがちですが、多くのデータから何かを見つけようと模索し続けた結果、迷子になるという、悪いパターンに陥りがちです。

そうならないように「まずは何も使わず一人で仮説を立てる」ということが大事です。そうして立てた仮説とストーリーを持ち寄り、グループで議論してから、Dockpitで“答え合わせをする”使い方を心がけることで、一段階上の仮説を見つけることにつながると考えています。」

図:仮説を一段上げていくために

図:仮説を一段上げていくために

山本:「上記のように仮説を設定すると、仮説の確からしさが確認できたり、人の仮説に納得したり、思いもよらない発見をしたり、あるいは意外な事実が判明したりすることもあり、議論が前進します。」

図:「答え合わせ」として会議共有するから議論が前進する

図:「答え合わせ」として会議共有するから議論が前進する

コロナの影響が見える、経年変化分析

山本:「「最新期間のみにフォーカスして詳細を分析する」ということも、やりがちなパターンの一つです。例えば直近一年だけ見ても、コロナ禍以前との比較視点は入ってきません。
Dockpitは3年以上前のデータまで遡って見ることが出来るので、経年変化を掴むことで状況がどのように変わってきたのか、マクロ視点で現在地をクリアに把握できます。」

図:ピンポイントの期間ではなく、経年での変化を確認できる

図:ピンポイントの期間ではなく、経年での変化を確認できる

山本:「上記はクライアントを「学習塾」と仮定して、「個別指導」の検索について、同時期の経年変化を調査した、という想定で見てください。
2019年~2021年の各4月~7月の夏期講習が意識される時期に調査したもので、2019年はコロナ前にあたり、2020年はコロナ禍、2021年はコロナ禍が下火になった頃に相当しています。

この経年変化を見ると、3年とも掛け合わせ検索されている「トライ」が目指すべき競合であること、コロナ禍を経て台頭してきている「スタディサプリ」が今後警戒すべき競合であることがわかります。
このように経年での状況を知ることができ、具体的にどのように対策すべきかという議論の“出発点”を見出すことができます。」

電通 福田博史氏(以下、福田):「クライアント様が元々考えていた視点とは実際は異なるということがわかり、なおかつリアルな生活者視点があぶり出せるというのは、Dockpitならではの機能だと思います。」

“鳥の目”で見る業界トレンド

福田:「業界単位の経年変化を“鳥の目”視点で見ることができるというのもDockpitの強みだと思っています。これは仮説を一段階上げられるための視点だと思っております。

例えば下図をご覧ください。これはある業界を時系列で分析した例で、サイトシェア推移にどのような変化があったのかを示しています。
この図を見て、お二人はどんな印象を持たれますか?」

図:業界サイトシェア移行

図:業界サイトシェア移行

山本:「B社が圧倒的なシェアを占めていますね。」

ヴァリューズ 松前薫(以下、松前):「私は突然台頭してきたC社が気になりました。直近のみを見ると、C社のシェアが高いことはわかりますが、年単位で推移を見ることによって、ある時期から突然、業界シェアを伸ばしてきていることがわかります。」

福田:「おっしゃる通りです。ここで、“鳥の目”で経年変化を俯瞰することが必要になってきます。
B社を直近期間だけにフォーカスして見ると、確かに高いシェアを占めております。ただ、経年推移で見ると実はダウントレンド傾向かもしれないという見方もできます。
このように推移を見ていくことで、2020年末に台頭してきたC社というのは軽視できない存在であることが読み取れます。そこから急成長中のC社の戦略を深堀りすることに、これからの顧客ニーズを考えるヒントがあるのではないかという仮説を立てることが出来ます。」

回答負荷を下げたシンプルな意識調査も可能に

福田:「次はアスキング調査時に役立つちょっとしたTIPSをお話します。
やりがちなパターンとして、設計時に「できるだけ沢山のファインディングスを求めるあまり、とりあえず選択肢を増やしすぎてしまう」ということがあります。

選択肢が増えると回答負荷が上がってしまい、クリアな調査結果が出ない傾向があります。そのため、“意識データ”の調査では、回答負荷を上げないシンプルな調査設計が重要です。

Dockpitを活用すると、感覚的に選択肢に含めていた競合候補を定量的な視点で絞ることができます。」

図:アスキング調査設計時にDockpitで「その他」を決める

図:アスキング調査設計時にDockpitで「その他」を決める

感応度分析で、目標達成の手段を数値化

福田:「続いて、目標達成するための計画にDockpitを活用していくケースです。これが全体のケースで1番重要な活用法になるのではないかと思っています。
まず、陥りやすいパターンとしては、コンバージョンを最大化させるために、サイト集客を増加させることだけを考えたり、詳細な箇所を細かく分析してしまうということが挙げられます。

課題解決の仮説を一段上げていくために重要なのは、目標達成への計画です。例えば目標コンバージョン数達成のためにどれだけのサイト来訪数が必要なのか、大きく方針を計画することではないかと思っております。この場面でも、Dockpitが有効活用できます。

URL単位の集計ができるDockpitであれば、ディレクトリ・ページ単位で指定して分析可能です。従って、サイト全体からコンバージョンまでの各地点での歩留まり率も計算でき、どれだけ来訪数を伸ばせば目標達成できるかといったKPI設計が可能になります。
Dockpitでできることは以下の3つだと思っております」

⚫︎URL単位の集計が可能なため、任意のファネル分析もスピーディーにできる
⚫︎競合サイトとの歩留まりも同様に比較し、改善ポイントの洗い出しも可能
⚫︎購入者属性を揃えることで、注力すべきターゲット間で比較することが可能

福田:「今回は、サイト来訪ボリューム(量)を横軸、歩留まり(質)を縦軸とした「感応度分析(※)」のアプローチをご紹介します。
下図をご覧ください。超訳すると、サイト訪問者のうち25人に1人がコンバージョンに至ることがわかります。また、「サイト来訪ボリューム」と「歩留まり」の軸のどちらかが楽観的もしくは悲観的だった場合に、どのような量と質の組み合わせが目標達成のための計画として現実的であるかを考慮して分解できるようになります。
完全に正確な分析はできなくとも、数値化して見通しを作ることで、目標達成に向けた計画が立てられるようになります。」

※感応度分析とは:数値目標の計画を立てる際に、ある要素(変数)が計画から変動したとき、目標数字にどの程度影響を与えるかを把握していくための分析手法です。
プランが予想通りの結果には進まない前提で、楽観・基本・悲観的ケースの複数パターンを想定して計画を立てることで、現実的なパフォーマンス改善を議論しながら目標値を目指していくことが出来ます。

松前:「このシートはまだDockpit上で自動生成されないものなので、新機能として開発を進めていきたいと考えております。」
(時期は未定で、調整中)

図:Dockpit活用した目的プランニングの1アプローチ

図:Dockpit活用した目的プランニングの1アプローチ

“意識データ”と“行動データ”の相関関係分析へ

松前:「ここまでお二人とお話しさせていただき、“意識データ”と“行動データ”を掛け合わせると様々な分析ができるのではないかということがわかってきました。」

福田:「“意識データ”だけでも人の一部ですし、同じく“行動データ”だけでも人の一部ですよね。電通では意識データ×行動データ=人起点の分析だと考えており、人起点の精緻な分析ができるよう日々進化させていこうと取り組んでいるところです。
もちろん今でも時間と労力をかければある程度は精緻に分析が出来ますが、クイックに分析する手法というのは、中々難しいのが現状です。これをDockpitでも出来たら様々なマーケターが、より活用していくのではないでしょうか。

例えば「認知指標(純粋想起)を上げたら、どのくらいサイト来訪がリフトアップし、さらにどのくらいの人たちがコンバージョンに至るのか」というプロセスをしっかりと「線」でつなぐことができると、もっとマーケティング提案の解像度はクリアになっていくのではないでしょうか?」

松前:「ヴァリーズではアンケート調査も実施可能なので、助成想起や純粋想起などの意識データと行動ログデータをセットで統合分析ができます。
よって、想起された際にサイト来訪にはどのように寄与するのか、というデータもお出しできると良いかと思っております。
Dockpitではターゲットを絞って分析することも可能なので、メインターゲットに絞って意識と行動の相関関係を明らかにしていくというテーマで挑戦を続けております。」

図:現在、VALUES社が考えている分析アプローチ方法

図:現在、VALUES社が考えている分析アプローチ方法

まとめ

松前:「本日はDockpit活用でクイックに3C分析ができるという実際の活用法から、新機能の開発という展望まで、有意義なお話を伺うことができました。山本さん、福田さん、ありがとうございました。」

図:Dockpit活用事例 まとめ

図:Dockpit活用事例 まとめ

【関連記事】

DX推進に潜むギャップと落とし穴。高まる「Demand」の重要性とは? | 「VALUES Marketing Dive」レポート

https://manamina.valuesccg.com/articles/1844

ヴァリューズは、“データを通じて顧客のことを深く考える”“マーケティングの面白さに熱中する”という意味を込め、新しいマーケティングイベント「VALUES Marketing Dive」を5月26日に開催しました。本セミナー全体のテーマは「Update Your Marketing」。Withコロナ時代、生活者には新たな価値観や消費行動が生まれ、マーケティング戦略や施策においては、さらなるアップデートが求められています。本講演では、『DX推進に潜むギャップと落とし穴。高まる「Demand」の重要性とは』と題し、キーノートをお届けしました。

徹底した顧客理解が起点に。ちば興銀が取り組むユーザーニーズに寄り添うコンテンツの磨き方|「VALUES Marketing Dive」レポート

https://manamina.valuesccg.com/articles/1861

「VALUES Marketing Dive」は、“データを通じて顧客のことを深く考える”、“マーケティングの面白さに熱中する”という意味を込めて、今年誕生した新しいマーケティングイベントです。今回のテーマは「Update Your Marketing ~ 顧客理解の新潮流」。本レポートでは、ちば興銀の顧客理解を起点としたコンテンツマーケティングの取組みについてお届けします。

生活者ストーリー全体を捉えるためのデータ分析、花王のツール活用事例 | 「VALUES Marketing Dive」レポート

https://manamina.valuesccg.com/articles/1871

ヴァリューズは、“データを通じて顧客のことを深く考える”、“マーケティングの面白さに熱中する”という意味を込め、マーケティングイベント「VALUES Marketing Dive」を5/26に開催しました。本セミナー全体のテーマは「Update Your Marketing」。Withコロナ時代、生活者には新たな価値観や消費行動が生まれ、マーケティング戦略や施策においては、さらなるアップデートが求められています。本講演では、『生活者ストーリー全体を捉えるためのデータ分析、花王のツール活用事例』と題し、花王の顧客分析についてお届けしました。

広島県の新たな観光構造の構築と、組織の自走化を目指したデータ活用とは|「VALUES Marketing Dive」レポート

https://manamina.valuesccg.com/articles/1888

“データを通じて顧客のことを深く考える”、“マーケティングの面白さに熱中する”という意味を込めて2022年に誕生したマーケティングイベント「VALUES Marketing Dive」。「Update Your Marketing ~ 顧客理解の新潮流」を今回のテーマに掲げ、広島県観光連盟の新たなDMP構想や自走するデータ活用組織の構築など、DX推進にてヴァリューズが伴走支援を行った事例をレポートします。

お問い合わせ

本記事や弊社サービスに関するお問い合わせはこちらから
https://www.valuesccg.com/inquiry/

この記事のライター

マナミナ 編集部 編集兼ライター。
金融・通信・メディア業界を経て現職。
趣味は食と旅行。

関連する投稿


新NISA開始1年を振り返る。暴落、厚切りジェイソン、社会保険料が話題に

新NISA開始1年を振り返る。暴落、厚切りジェイソン、社会保険料が話題に

2024年1月から新NISAが始まり、資産形成が重要視される風潮も相まって高い関心を集めました。本稿では、新NISAが開始されてからの1年間をニュースやデータとともに振り返り、新NISAによって人々の関心がどのように移ろいでいったのかを調べていきます。


「趣味」検索者を分析!新たな趣味に挑戦したい若者、趣味で交流したい中高年

「趣味」検索者を分析!新たな趣味に挑戦したい若者、趣味で交流したい中高年

初対面で必ずといっていいほど話題にのぼる趣味。年代によって趣味にどのような傾向があるのでしょうか。「趣味」検索者を調査しました。また「編み物」を例とし、若者と中高年の取り組み方の違いも分析しました。


Oisixとnoshの動向を調査!新生活の忙しい若者には宅配食+αがおすすめ

Oisixとnoshの動向を調査!新生活の忙しい若者には宅配食+αがおすすめ

最近、外食やテイクアウト、簡単に調理できる食品など、新しい食事スタイルを提供するサービスが人気を集めています。本記事では多くの人に利用されているOisixとnoshに焦点をあてながら、デリバリーサービスや自炊との比較を交え、現代の人々の食生活のトレンドを分析します。


マクドナルド、バーガーキングを徹底比較。メニュー,価格,アプリ利用者数

マクドナルド、バーガーキングを徹底比較。メニュー,価格,アプリ利用者数

ファストフード市場を牽引するハンバーガー市場。主なチェーン店のうち、今回は「マクドナルド」「バーガーキング」に注目し、店舗数やメニュー・価格、アプリ利用者データから、各社の集客動向や特徴を比較調査しました。


生成AIは誰がどう使っている? ChatGPT、Gemini、Copilot、Claudeの利用データを比較調査

生成AIは誰がどう使っている? ChatGPT、Gemini、Copilot、Claudeの利用データを比較調査

ChatGPTやGeminiをはじめとした生成AIが近年急拡大しています。生成AIではテキストのみならず画像や音声など様々なものを出力できますが、実際はどのように使われているのでしょうか。本稿では、そんな生成AIを利用するユーザーの属性や関心を比較・分析し、各AIとそのユーザーの実態を明らかにしていきます。


最新の投稿


Instagram、自分と友達専用のフィードを作成できる新機能「ブレンド」を提供開始

Instagram、自分と友達専用のフィードを作成できる新機能「ブレンド」を提供開始

Instagramは、おすすめのリール動画が表示されるフィードを自分と友達専用で作成することができる新機能「ブレンド(Blend)」を提供開始したことを発表しました。本機能は、ダイレクトメッセージ(DM)から招待制で利用する仕組みで、自分や友達の興味関心に合わせておすすめされるコンテンツを通じて、友達同士で気軽につながることができます。


Z世代の8割がSNSや動画サイトで気になる飲食店に出会う!?7割がInstagram、6割がGoogleマップに飲食店の情報を保存【ファストマーケティング調査】

Z世代の8割がSNSや動画サイトで気になる飲食店に出会う!?7割がInstagram、6割がGoogleマップに飲食店の情報を保存【ファストマーケティング調査】

ファストマーケティング株式会社は、Z世代の消費行動に関するSNS利用の実態調査【2025年版】グルメ・飲食店編を実施し、結果を公開しました。


Criteo、「2025年度ゴールデンウィーク消費動向レポート」を発表

Criteo、「2025年度ゴールデンウィーク消費動向レポート」を発表

Criteoは、日本人約1,200人以上を対象に、ゴールデンウィーク(GW)の消費動向に関する調査を実施し、連休期間前後の旅行計画や購買への影響についてまとめたレポート「2025年度ゴールデンウィーク消費動向レポート」を発表しました。


【2025年5月5日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

【2025年5月5日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

編集部がピックアップしたマーケティングセミナー・勉強会・イベントを一覧化してお届けします。


GMO NIKKO、Z世代マーケティング支援サービス「Z世代トレンドラボ byGMO」提供開始

GMO NIKKO、Z世代マーケティング支援サービス「Z世代トレンドラボ byGMO」提供開始

GMO NIKKO株式会社は、Z世代とのコミュニケーションに課題を持つ企業に向けたマーケティング支援サービス「Z世代トレンドラボ byGMO」を提供開始したことを発表しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ