■スピーカー紹介
図:スピーカー紹介
スピード感をもって課題解決を導く、仮説の重要性
電通 山本俊氏(以下、山本):「私自身、これからの分析に求められる要件は「Solo・Speed・Story」の3つの「S」だと考えています。「1人で(Solo)、スピードをもって(Speed)、課題解決への仮説が導ける(Story)」です。今回は、この3つを実現できるDockpitを用いて、高速に仮説の精度を上げるために共通して重要なポイントからご紹介したいと思います。
1つ目は、「まずはDockpitを使わずに仮説を立てる」ということです。
とりあえずツールを触って、目的がないまま分析結果を沢山出してから、考えるというやり方をしがちですが、多くのデータから何かを見つけようと模索し続けた結果、迷子になるという、悪いパターンに陥りがちです。
そうならないように「まずは何も使わず一人で仮説を立てる」ということが大事です。そうして立てた仮説とストーリーを持ち寄り、グループで議論してから、Dockpitで“答え合わせをする”使い方を心がけることで、一段階上の仮説を見つけることにつながると考えています。」
図:仮説を一段上げていくために
山本:「上記のように仮説を設定すると、仮説の確からしさが確認できたり、人の仮説に納得したり、思いもよらない発見をしたり、あるいは意外な事実が判明したりすることもあり、議論が前進します。」
図:「答え合わせ」として会議共有するから議論が前進する
コロナの影響が見える、経年変化分析
山本:「「最新期間のみにフォーカスして詳細を分析する」ということも、やりがちなパターンの一つです。例えば直近一年だけ見ても、コロナ禍以前との比較視点は入ってきません。
Dockpitは3年以上前のデータまで遡って見ることが出来るので、経年変化を掴むことで状況がどのように変わってきたのか、マクロ視点で現在地をクリアに把握できます。」
図:ピンポイントの期間ではなく、経年での変化を確認できる
山本:「上記はクライアントを「学習塾」と仮定して、「個別指導」の検索について、同時期の経年変化を調査した、という想定で見てください。
2019年~2021年の各4月~7月の夏期講習が意識される時期に調査したもので、2019年はコロナ前にあたり、2020年はコロナ禍、2021年はコロナ禍が下火になった頃に相当しています。
この経年変化を見ると、3年とも掛け合わせ検索されている「トライ」が目指すべき競合であること、コロナ禍を経て台頭してきている「スタディサプリ」が今後警戒すべき競合であることがわかります。
このように経年での状況を知ることができ、具体的にどのように対策すべきかという議論の“出発点”を見出すことができます。」
電通 福田博史氏(以下、福田):「クライアント様が元々考えていた視点とは実際は異なるということがわかり、なおかつリアルな生活者視点があぶり出せるというのは、Dockpitならではの機能だと思います。」
“鳥の目”で見る業界トレンド
福田:「業界単位の経年変化を“鳥の目”視点で見ることができるというのもDockpitの強みだと思っています。これは仮説を一段階上げられるための視点だと思っております。
例えば下図をご覧ください。これはある業界を時系列で分析した例で、サイトシェア推移にどのような変化があったのかを示しています。
この図を見て、お二人はどんな印象を持たれますか?」
図:業界サイトシェア移行
山本:「B社が圧倒的なシェアを占めていますね。」
ヴァリューズ 松前薫(以下、松前):「私は突然台頭してきたC社が気になりました。直近のみを見ると、C社のシェアが高いことはわかりますが、年単位で推移を見ることによって、ある時期から突然、業界シェアを伸ばしてきていることがわかります。」
福田:「おっしゃる通りです。ここで、“鳥の目”で経年変化を俯瞰することが必要になってきます。
B社を直近期間だけにフォーカスして見ると、確かに高いシェアを占めております。ただ、経年推移で見ると実はダウントレンド傾向かもしれないという見方もできます。
このように推移を見ていくことで、2020年末に台頭してきたC社というのは軽視できない存在であることが読み取れます。そこから急成長中のC社の戦略を深堀りすることに、これからの顧客ニーズを考えるヒントがあるのではないかという仮説を立てることが出来ます。」
回答負荷を下げたシンプルな意識調査も可能に
福田:「次はアスキング調査時に役立つちょっとしたTIPSをお話します。
やりがちなパターンとして、設計時に「できるだけ沢山のファインディングスを求めるあまり、とりあえず選択肢を増やしすぎてしまう」ということがあります。
選択肢が増えると回答負荷が上がってしまい、クリアな調査結果が出ない傾向があります。そのため、“意識データ”の調査では、回答負荷を上げないシンプルな調査設計が重要です。
Dockpitを活用すると、感覚的に選択肢に含めていた競合候補を定量的な視点で絞ることができます。」
図:アスキング調査設計時にDockpitで「その他」を決める
感応度分析で、目標達成の手段を数値化
福田:「続いて、目標達成するための計画にDockpitを活用していくケースです。これが全体のケースで1番重要な活用法になるのではないかと思っています。
まず、陥りやすいパターンとしては、コンバージョンを最大化させるために、サイト集客を増加させることだけを考えたり、詳細な箇所を細かく分析してしまうということが挙げられます。
課題解決の仮説を一段上げていくために重要なのは、目標達成への計画です。例えば目標コンバージョン数達成のためにどれだけのサイト来訪数が必要なのか、大きく方針を計画することではないかと思っております。この場面でも、Dockpitが有効活用できます。
URL単位の集計ができるDockpitであれば、ディレクトリ・ページ単位で指定して分析可能です。従って、サイト全体からコンバージョンまでの各地点での歩留まり率も計算でき、どれだけ来訪数を伸ばせば目標達成できるかといったKPI設計が可能になります。
Dockpitでできることは以下の3つだと思っております」
⚫︎URL単位の集計が可能なため、任意のファネル分析もスピーディーにできる
⚫︎競合サイトとの歩留まりも同様に比較し、改善ポイントの洗い出しも可能
⚫︎購入者属性を揃えることで、注力すべきターゲット間で比較することが可能
福田:「今回は、サイト来訪ボリューム(量)を横軸、歩留まり(質)を縦軸とした「感応度分析(※)」のアプローチをご紹介します。
下図をご覧ください。超訳すると、サイト訪問者のうち25人に1人がコンバージョンに至ることがわかります。また、「サイト来訪ボリューム」と「歩留まり」の軸のどちらかが楽観的もしくは悲観的だった場合に、どのような量と質の組み合わせが目標達成のための計画として現実的であるかを考慮して分解できるようになります。
完全に正確な分析はできなくとも、数値化して見通しを作ることで、目標達成に向けた計画が立てられるようになります。」
※感応度分析とは:数値目標の計画を立てる際に、ある要素(変数)が計画から変動したとき、目標数字にどの程度影響を与えるかを把握していくための分析手法です。
プランが予想通りの結果には進まない前提で、楽観・基本・悲観的ケースの複数パターンを想定して計画を立てることで、現実的なパフォーマンス改善を議論しながら目標値を目指していくことが出来ます。
松前:「このシートはまだDockpit上で自動生成されないものなので、新機能として開発を進めていきたいと考えております。」
(時期は未定で、調整中)
図:Dockpit活用した目的プランニングの1アプローチ
“意識データ”と“行動データ”の相関関係分析へ
松前:「ここまでお二人とお話しさせていただき、“意識データ”と“行動データ”を掛け合わせると様々な分析ができるのではないかということがわかってきました。」
福田:「“意識データ”だけでも人の一部ですし、同じく“行動データ”だけでも人の一部ですよね。電通では意識データ×行動データ=人起点の分析だと考えており、人起点の精緻な分析ができるよう日々進化させていこうと取り組んでいるところです。
もちろん今でも時間と労力をかければある程度は精緻に分析が出来ますが、クイックに分析する手法というのは、中々難しいのが現状です。これをDockpitでも出来たら様々なマーケターが、より活用していくのではないでしょうか。
例えば「認知指標(純粋想起)を上げたら、どのくらいサイト来訪がリフトアップし、さらにどのくらいの人たちがコンバージョンに至るのか」というプロセスをしっかりと「線」でつなぐことができると、もっとマーケティング提案の解像度はクリアになっていくのではないでしょうか?」
松前:「ヴァリーズではアンケート調査も実施可能なので、助成想起や純粋想起などの意識データと行動ログデータをセットで統合分析ができます。
よって、想起された際にサイト来訪にはどのように寄与するのか、というデータもお出しできると良いかと思っております。
Dockpitではターゲットを絞って分析することも可能なので、メインターゲットに絞って意識と行動の相関関係を明らかにしていくというテーマで挑戦を続けております。」
図:現在、VALUES社が考えている分析アプローチ方法
まとめ
松前:「本日はDockpit活用でクイックに3C分析ができるという実際の活用法から、新機能の開発という展望まで、有意義なお話を伺うことができました。山本さん、福田さん、ありがとうございました。」
図:Dockpit活用事例 まとめ
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マナミナ 編集部 編集兼ライター。
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