イーロン・マスク氏のツイート
今を時めく、米国の起業家でありテスラ最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏は何かと注目されています。最近、日本に対するツイートが話題になりました。その内容とは、出生率が死亡率を下回る日本は将来的には存在しなくなるだろうという辛辣なものでした。スーパー経営者であり、世界をも動かす彼のツイートはその直感力の鋭さからも日本及び日本人にとっての明らかな予言です。
実際、日本の合計特殊出生率(一人の女性が生涯で出産する子供の数)が2021年は1.30となり、6年連続で低下しました。出生率は2005年の1.26が過去最低ですが、2021年は過去4番目の低さです。出生数は約81万人となり、2020年と比べても3.5%減少しました。
政府は「希望出生率1.8」を目標に少子化対策を推進してきましたが、その実現は厳しい状況です。少子化は『静かなる有事』であり、子供が生まれなければ、社会・経済を維持することは困難になります。次世代が育つことが、社会・経済における様々な役割を継続し、年金や医療をはじめとした社会保障制度を支え、来るべく多様な将来への適切な対応を可能にするのです。子供とは国にとっても家族にとっても宝であり、社会・経済の公共財(public good)です。
欧米ではコロナ禍にあっても少子化対策が功を奏して、出生率の増加につなげているスウェーデンやフランスのような成功例があります。日本では少子化対策が欧米に比べて見劣りするところがあり、既存の制度も十分に活用されず空回りする傾向で、人口減少の加速に歯止めがかからない現状です。もちろん、技術革新で人間の能力を拡張するなど、人と技術を育成し活かす対策も必要でしょう。しかし、このままでは、イーロン・マスク氏のツイートどおり、滅びゆく日本及び日本人になることは間違いありません。
少子化の原因と対策
日本では婚外出生率が諸外国に比べて低いため、婚姻率の低下は出生率にダイレクトに反映され、未婚化や晩婚化は少子化が進む一因となっています。平均初婚年齢はこのところ上昇を続け、国勢調査によると、2020年時点では男性31.0歳、女性29.4歳でした。15年前(1995年)と比べると男性で2.5歳、女性で3.1歳上昇しています。また、50歳までに一度も結婚しない人の割合である生涯未婚率では、男性が25.7%、女性が16.4%とこれも15年前と比べると男性で9.0%、女性で5.1%上昇しています。
少子化には数多くの対策が存在しますが、ここでは婚姻数を増やすという点に絞って考えてみたいと思います。少子化の最大の原因は金銭面と考えられます。バブル崩壊後、非正規雇用労働者が増加し、正規雇用労働者との間に収入の格差が生じました。結婚すると夫婦の生活費ばかりでなく子の養育費も掛かることから、経済的な不安を抱えているカップルは結婚にも前向きになれません。児童手当などの経済的支援としての現金給付と育児休業や妊娠出産支援などの現物給付、共に支援の拡大が必要です。また、国をあげての未婚者の結婚を支援する政策を進める必要があります。結婚願望という点からは、内閣府の調査でも結婚したいと回答した人は7割を超えるとのこと。多くが結婚の意思を持っています。
経済面以外にも、①結婚したい相手と出会えない、②女性の社会進出によって男女間の格差が無くなった、③独身生活を楽しみたい、などが考えられます。ただ、お見合い結婚が減少し続けているように、男女間の橋渡しをする機会や携わる人が減り、結婚相談所やマッチングアプリのようなビジネスとしての結婚促進システムが多数生まれています 。しかし、これだけではなかなか結婚に結びつけられないでしょう。そこでボランティア活動に近い、新しい形の仲人役を育成する制度を拡充することが望まれます。仲人役は尊敬され、成功時には報酬もあるといった社会的に評価を受けるポジションを作り、官民あげて育成してはどうでしょう。
結婚式の現状
コロナ禍により、感染拡大を防ぐためのイベントの人数制限や見直しの影響もあり、結婚式の披露宴の中止や延期が増えました。しかし最近ではワクチン接種も進み、延期していた披露宴を開催する運びとなったため、挙式数も増えています。感染防止の意識からか結婚式の運営は多様化し、時間の短縮や人数制限、広い会場の用意など工夫がなされています。オンラインで挙式や披露宴に参列でき、一緒に同じ食事ができるなど利用者も拡大しています。また、最近の披露宴の傾向として、招待客への料理に重点が置かれているようです。
マスク着用について
結婚式に参列する際にもマスクはまだ外せないのでしょうか?今年5月頃には新型コロナウイルスの感染拡大による外出制限が緩和し、マスクをいつ外すのかが話題になりました 。海外では既にマスクの着用義務を撤廃した国も増えています。ただ、日本ではまだほとんどの人がマスクを着用しています。マスク生活で女性は化粧を減らすようになりましたが、肌の乾燥やスキンケア に注目が集まりました。同じように男性化粧品の売り上げも増加の傾向です。多くの企業にとってもマスク着用後の消費者への提案について試行錯誤している状況ではないでしょうか。
人との距離が保てれば屋外では不要との発言もありますが、同調圧力が強い日本ではマスクを外すことはなかなか難しい状況です。行動経済学によると、ヒトは同調圧力がある限り、社会規範を破る裏切り者になりたくなく、ルールから外れると集団の中で存在することが出来ないため生き残れないと考えます。マスクを外すことで裏切り者とみなされる行為は避けたいという心理が働くのです。そのため、客観的なデータを科学的に示すことで、マスク着用のメリット、デメリットを明らかにし、影響力を持つインフルエンサーが様々な形で発信することなどによって、日本の脱マスク化も進んでいくのではないでしょうか。
マスクをめぐり、考察しました。
パンデミック、自然災害、ロシアのウクライナ侵攻など、将来を予測することが困難な状態が続き、現代はまさにVUCA(ブーカ)の時代です。これまで人類が経験したことがないような変化が起こる中、必要とされるビジネス思考法や能力とは…。広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長を務めている渡部数俊氏が、VUCA時代のビジネスと消費行動について考察します。
株式会社創造開発研究所所長、一般社団法人マーケティング共創協会理事・研究フェロー。広告・マーケティング業界に約40年従事。
日本創造学会評議員、国土交通省委員、東京富士大学経営研究所特別研究員、公益社団法人日本マーケティング協会月刊誌「ホライズン」編集委員、常任執筆者、ニューフィフティ研究会コーディネーター、CSRマーケティング会議企画委員会委員、一般社団法人日本新聞協会委員などを歴任。日本創造学会2004年第26回研究大会論文賞受賞。