保険の見直し検討ユーザーはどこへ行っている?最適な訴求方法とは

保険の見直し検討ユーザーはどこへ行っている?最適な訴求方法とは

近年、オンライン上で保険の見積もりや見直しができるツールをテレビCMなどでよく見かけますが、保険を見直そうと考えるユーザーは実際に、ネット上でどういった行動を取っているのでしょうか?今回は、ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を用いて、保険見直しの検討ユーザーのインサイトと、興味関心を寄せているWebページを調査していきます。


まずは保険の見直しを考えているユーザーの数を見てみましょう。
Dockpit(※)にて、「保険 見直し」というキーワードで検索をしているユーザーのデータを抽出してみます。
※毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール

「保険 見直し」クエリの検索ユーザー数(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2021年8月〜2022年7月
デバイス: PC・スマートフォン

上記、直近1年のユーザー数の推移を見ると、月間の平均値は2.5万ユーザーほどです。

グラフの数値が跳ねているのは2022年10月、2022年1月・3月です。特に、2022年3月は5万ユーザー弱を記録しており、この1年間では最も検索ユーザー数が多い時期だったようです。一般的に、保険商材は企業の決算期である3月や9月、12月といったタイミングで需要期が来ると言われており、ユーザー数のグラフが伸びた時期と重なるように見て取れます。

保険見直しを検討するユーザーのインサイト

つづいて、保険の見直しを検討するユーザーはどんな人なのか、検索者の属性データを分析していきましょう。

まずは、性別と年代からです。
性別のデータ(上)から見ていくと、割合は女性が54.2%と過半数を占めています。また、年代データ(下)では40代が最も多く、続いて多いのが30代です。20代も、ネット利用者全体のグラフと比較すると大きい割合となっています。

「保険 見直し」クエリの検索ユーザー属性(性別と年代,「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2021年8月〜2022年7月
デバイス: PC・スマートフォン

保険料は家計に関する事柄なので、主婦などを中心に女性ユーザーのほうが検索しているケースが多いと考えられます。また、保険商材の特性を考えると、将来への備えが気になる世代である20~40代のユーザーが検索者の中心であるようです。20代は保険に加入するタイミングであり、他2世代と比べると見直しが起こりにくそうですが、結婚などのライフイベントをきっかけに、パートナーや親と話し合いながら保険を見直していく人が多いのかもしれません。

さらにユーザー属性を深堀りしていきましょう。
次のグラフは、世帯年収について、検索者の割合を示したものです。
グラフを見ていくと、最も割合として高いのは「400-600万円」のグループで、次いで「400万円未満」のグループとなります。世帯年収が低いほど固定費などの見直しニーズも高くなると考えられるため、この結果は妥当であると言えます。

「保険 見直し」クエリの検索ユーザー属性(世帯年収,「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2021年8月〜2022年7月
デバイス: PC・スマートフォン

ただし興味深いのは、世帯年収が低いグループだけでなく世帯年収が高いグループでも、オンラインでの保険見直しに大して一定の需要があるという点です。1つの仮説ではありますが、こういった年収の高いユーザーについては「保険料の見直し」よりも、「自身に適した商材や補償内容を選定し直したい」という文脈のニーズが大きいかもしれません。

保険見直し検討ユーザーがよく閲覧しているページは?

最後に、Dockpitにて「保険 見直し」と検索するユーザーが流入しているページを、流入数別に並べてみます。
流入ユーザー数の上位20ページをまとめると、最上部には「保険の見直しのポイント」「保険の選び方」に関するページが並ぶ印象です(図下、黄色行)。

「保険 見直し」クエリの検索流入ページ(ユーザー数TOP20,「Dockpit」抽出データ)
期間:2021年8月〜2022年7月
デバイス: PC・スマートフォン

これらのページでは、保険の見直しを行うにあたって、多角的な視点からのアドバイスが記載されています。何かの要素に偏らず、あくまで万遍なく保険商材を選定し直す機会や、見直し時の注意点について俯瞰的に紹介されているのが特徴です。

例えばランキング第2位のLikeUでは、保険の見直しが推奨されるシチュエーション例や、世代・ライフステージ別に必要となる保険のイメージを伝えたあと、以下のような見直しのチェックポイントが項目ごとに解説されています。

【FPさん教えて】保険の見直し7つのチェックポイントとは? | LikeU

流入上位ページの中腹に差し掛かると、今度は「損をしない」「費用を抑えたい」といった保険料に関して解説したページが並びます(図下、黄色行)。

「保険 見直し」クエリの検索流入ページ(ユーザー数TOP20,「Dockpit」抽出データ)
期間:2021年8月〜2022年7月
デバイス: PC・スマートフォン

これらのページも、前段の「保険の見直しポイント」についてのページ群と近しい内容ではありますが、より保険料の考え方や利率、商材切り替え時の戻金といった「お金で損をしない」ための内容について詳しく書かれている傾向です。「見直しポイント」=「保険料(+費用全般)」と捉えているユーザーが多いことの表れではないかと考えられます。

加えて、12位ライフネット生命のページのように、「家計の視点から保険の費用を見直そう」という内容もしばしば見受けられます。「どうして保険を見直したいのか」という潜在的な動機を考えた時に、やはり、「固定費を減らしたい」「家計を楽にしたい」と悩んでいるユーザーが多いのではと見て取れますね。

公益財団法人 生命保険文化センターの発表する「生命保険に関する全国実態調査」によれば、2021(令和3)年度の世帯年間払込保険料は平均37.1万円と調査結果が出ています。これを月平均に直すと毎月約3万円の保険料がかかっていることになり、一般的には大きな家計の支出と捉えることができるでしょう。

こういった背景もあり、特に生命保険の商材見直しについて検討するユーザーが数多くいるのではないでしょうか。

まとめ

今回の調査を経てわかったことをまとめていきます。

・保険見直し検討ユーザーは20~40代が中心で、やや女性が多い
・世帯年収600万以下のユーザーが中心だが、高収入の層にも一定の見直しニーズがある
・ユーザーは「見直しの全般的なポイント」「損をしない方法」「家計の節約」などに関心が高い
・見直し検討ユーザーの多くは生命保険の見直しを考えている

この結果から、保険の見直し検討ユーザー像と、「家計」「損をしない」といった生活支出に関する意識をどのように持っているのかを捉えられたように感じます。あくまでゴールは保険の見直しですが、そこへ意識が向く前に「固定費を抑えなければならない」だったり、「いまの自分の保険は無駄な出費になっているかもしれない」であったりという、ユーザーの潜在的な悩みにフォーカスした集客が効果的なのではと筆者は思いました。

また、世帯年収の高いユーザーが一定いたことを考慮すると、損得勘定ではなく、「どれだけ自分にマッチした保険商材を選べているのか」という点を不安に感じている層へアプローチできる集客方法も用意できることが重要そうです。お得を追求するユーザー、保険のマッチ度を追求するユーザーの双方へ最適な訴求をしていくのが、このジャンルにおける集客拡大の理想的な形式なのではないでしょうか。

本調査が、皆さんのマーケティング業務や市場調査などに役立ちますと光栄です。

【調査概要】
・全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報にもとづき分析
・行動ログ分析対象期間:2021年8月〜2022年7月
※ボリュームはヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測
※対象デバイス:PC・スマートフォンの両デバイス

この記事のライター

国内大手の採用メディア制作部を経てフリーライターとして独立。現在はWebマーケティング、就職・転職、エンタメ(ゲーム・アニメ・書籍)等の各種メディアにて記事制作を担当。「マナミナ」では一人でも多くの読者に楽しく読んでもらえるマーケティングコンテンツを提供していきます。

関連するキーワード


「金融」市場調査

関連する投稿


新NISA開始!NISAとiDeCoで検討者を比較調査

新NISA開始!NISAとiDeCoで検討者を比較調査

2024年1月から新NISAが開始されました。今回の調査では、新NISAは若年層や未婚者の関心が高く、積極的に資産の運用をしたいと考える人が多いと推測できそうです。一方のiDeCoは、40代以降の年代で新NISAよりも関心が高く、老後の資産形成を意識しているといえるでしょう。NISAを始め、iDeCoとも比較しながら、新NISAの検索者の属性や興味関心について分析しました。


ふるさと納税はどんな人が検討している?セグメントごとの特徴を調査

ふるさと納税はどんな人が検討している?セグメントごとの特徴を調査

年末が近づくにつれて注目度が高まるふるさと納税。そのユーザー像はどのようなものなのでしょうか。検討の度合いから検討者を5つのセグメントに分類し、実態を調査しました。


データ分析のヴァリューズ、「デジタル・トレンド白書2023 – 金融編」を公開

データ分析のヴァリューズ、「デジタル・トレンド白書2023 – 金融編」を公開

ヴァリューズは、国内最大規模の消費者Web行動ログパネルを保有し、データマーケティング・メディア「マナミナ」にて消費トレンドの自主調査を発信してきました。その中から注目領域の調査・コラムをピックアップし、白書として収録。2021年の発行から3回目を迎える「デジタル・トレンド白書2023」は、「金融編」についてご紹介します。※レポートは無料でダウンロード頂けます。(ページ数|134P)


7 cutting-edge marketing examples of banking apps around the world

7 cutting-edge marketing examples of banking apps around the world

For financial institutions, apps are important channels for connecting with customers. However, there are common concerns that “the number of users show little growth” or they are “not making effective use of the customer base.” We will introduce examples of how financial institutions are marketing their apps.


広がるBaaSの事例を解説「第一生命NEOBANK」の利用者数や特徴は?

広がるBaaSの事例を解説「第一生命NEOBANK」の利用者数や特徴は?

「BaaS」とは金融機関以外の企業が金融サービスを提供することを意味します。小売業がこれら決済システムを導入した結果、利便性や顧客満足度の向上が実現した事例もあります。今回は、住信SBIと第一生命が提供するスマートフォンアプリ「第一生命NEOBANK」の登録利用者について調査しました。


最新の投稿


日本テレビ、AR撮影装置を活用した「没入体験型CM」の実証実験を開始 GW期間内に大型ショッピングモール内にて

日本テレビ、AR撮影装置を活用した「没入体験型CM」の実証実験を開始 GW期間内に大型ショッピングモール内にて

日本テレビ放送網株式会社は、日本テレビが事業展開する XR分野のコンテンツ制作および開発支援サービス『日テレXR』において、新たな広告没入体験ができるサービスの実証実験を開始しました。


ギブリー、生成AIがマーケティング業務を支援するサービス「マーケGAI」の提供を開始

ギブリー、生成AIがマーケティング業務を支援するサービス「マーケGAI」の提供を開始

株式会社ギブリーは、生成AI技術を活用してマーケティング業務を自動化・効率化するAIマーケティング支援ツール「マーケGAI」の提供を開始したことを発表しました。


「○○とは」検索に見るトレンドや生活者の気になりごとは?「インボイス」「NISA」「猫ミーム」など

「○○とは」検索に見るトレンドや生活者の気になりごとは?「インボイス」「NISA」「猫ミーム」など

検索エンジンで調べ物をするときによく使われる「〇〇とは」検索。今回は、直近1年間で検索数が多かった注目ワードや、時期によって急上昇したトレンドワードをご紹介します。「とは」検索から見えてくる最新の流行りやみんなの関心事を読み解いていきます。


GWに10連休を取得する人は約2割!連休の予定はインバウンドの影響か「国内旅行」が下降し「家事」が上昇【mitoriz調査】

GWに10連休を取得する人は約2割!連休の予定はインバウンドの影響か「国内旅行」が下降し「家事」が上昇【mitoriz調査】

株式会社mitorizは、消費者購買行動データサービス「Point of Buy®」の会員に対し「大型連休に関する調査」を実施し、結果を公開しました。


Supportive fans are willing to spend money? “Oshikatsu” insights & applying it to marketing strategy

Supportive fans are willing to spend money? “Oshikatsu” insights & applying it to marketing strategy

“Oshikatsu” stimulates consumption in Japan. In fact, more than 80-90% of teens answered that they have an “Oshi.” We will deepen our understanding by investigating the current state of the “Oshikatsu” market, behaviors like time and money spent on “Oshikatsu,” and its connection with collaborations, etc. in marketing.


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ