調査の概要
2022年最新のトレンドアプリを、データから紐解いていくこの企画。定量的なデータからトレンドを読み解いた前回に引き続き、今回は定性的なアンケート調査を実施しました。前回の記事でご紹介したアプリの中から3つのアプリに焦点を当て、注目を集めた理由をアンケートの自由回答から紐解いていきます。
※トレンドアプリは、2022年2~7月の半年間で利用ユーザー数の伸び率が高い順に集計
いま、あの年代でウケているアプリは?2022年のトレンドアプリを年代別で調査してみた
https://manamina.valuesccg.com/articles/1976我々の生活に必要不可欠なスマホアプリ。今回は、2022年最新のトレンドアプリを年代別で調査しました。コロナ禍の影響が強く見られたり、同カテゴリのアプリであっても年代により使用するアプリに違いがあったりと、興味深い傾向が多く見られる結果となっています。
トレンドアプリのアンケート調査結果
■ローチケ・チケットぴあ|電子チケットは紙チケットの代わりになれるか?
前回の調査から、特に20代で注目を集めていることが判明した「ローチケ」や「チケットぴあ」といったライブ・イベント関連アプリ。
アンケートでは、20代の回答者から、アプリの魅力点として以下のような回答が得られました。
・入場チケットを忘れることがない
・チケットが見やすい、反映が早い
・チケットリセールの機能がある点
チケットの予約・購入から、イベント当日のオンラインチケットの使用までをアプリ内で完結できる点が、魅力と感じられているようです。
一方、30代以上の電子チケットの利用状況はどのようになっているのでしょうか?
こちらはローチケのユーザー数を年代別に示したものです。
ローチケ 年代別ユーザー数(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2022年2月〜2022年7月
デバイス:スマートフォン
30代以上のユーザー数は、20代のおよそ半数、またはそれ以下となっていることが分かります。
また下のグラフは、2019年に消費者庁から発表された電子チケットの使用状況を、年代別で示したものです。
インターネット消費者取引連絡会「オンラインチケットサービスの動向整理」
調査期間:2019年2月19日(火)~2月20日(水)
回答人数:520名
「使ったことがある」と回答した割合は、20代・30代で60%超、50歳以上で約27%と、世代間で利用率に大きな違いがあることがわかります。また、50歳以上は「電子チケットについてよくわからない」と回答した割合が約27%と、そもそも電子チケットというサービスのイメージが湧いていないという様子も見受けられます。
また、下のグラフは電子チケットを利用する際、不安に感じる点を示したグラフです。
インターネット消費者取引連絡会「オンラインチケットサービスの動向整理」
調査期間:2019年2月19日(火)~2月20日(水)
回答人数:520名
入場時のスマートフォンの不調に対する不安に続き、「サービスの誤操作」「ツールや使い方に感じる難しさ」といった点が続いています。
以上を踏まえると、現時点で「全てをオンラインで完結できる」という電子チケットの利点を魅力として感じているのは、スマートフォンやアプリに対して抵抗感のない方々、特に若年層が中心であると考えられるのではないでしょうか。
一方で、株式会社テスティーとCNET Japanが行った、10代・20代を対象とした電子チケットに関する調査によれば、回答者の4割が「紙チケットを希望する」と回答。「スマートフォンのトラブルが心配」「チケットを紙で保管しておきたい」といった点が、理由として挙げられました。電子チケットと紙チケットの選択式や、紙チケットに代わる記念品のプレゼント配布など、オンラインとオフラインの掛け合わせが、今後のイベント・ライブ業界の形態の1つとして考えられそうです。
■楽天西友アプリ|ネットスーパーと実店舗の使い分け、基準は『時間』と『何を買うか』
ヴァリューズのログデータに基づいた2022年2月~7月のトレンドアプリランキングに、全世代でTOP10入りを果たした楽天西友アプリ。商品購入の際に楽天ポイントを貯める・使う機能に加えて、ネットスーパーの利用や店舗チラシ・おすすめレシピなどの閲覧機能が備わっています。
「楽天西友」アプリキャプチャ画面
また、楽天が提供するキャッシュレス決済アプリ「楽天ペイ」を、楽天西友アプリから直接起動できることも、このアプリの特徴の1つです。
「楽天西友」アプリキャプチャ画面
アンケートでは、アプリの使い方として以下のような点が挙げられました。
・ネットスーパーを日常的に利用している(20代)
・店に行く前に値段を調べたりする(30代)
・買い物に行く時間がないときや重たいものを買うときに使う(30代)
・ポイント増量期間中のポイ活に使用(40代)
・買い物したい時にどんな商品があるか見るために使う(50代)
・ネットスーパー注文時に利用した(70代以上)
ネットスーパーや、チラシ閲覧機能を活用するという回答が目立つ結果となりました。
一方で、「買い物に行く時間がないときや重たいものを買うときに使う」という回答は、それ以外の状況では実店舗を利用する、という使い分けが起こっているのかが気になります。
2020年実施のマイボイスコム株式会社によるネットスーパーに関する調査では、「ネットスーパーを利用したい」と思う理由として、「時間が無いときに活用出来る」「買いすぎを防げる」といった点が挙げられています。一方で「ネットスーパーを利用したくない」と思う理由として、配送にかかる時間への不満が挙げられました。また、「商品群の中から購入するものを自分で選べない」という点も挙げられ、商品によってばらつきがあるもの、特に生鮮食品については、やはりオンラインではなく、自身の目で直接確認したいという需要が存在するようです。
以上より、時間に余裕がない場合や重いものを購入する際にはネットスーパーを活用、一方で時間に余裕がある場合や、生鮮食品をはじめとした比較的軽い商品を購入する際には実店舗を利用するといった使い分けの様子が推測できます。
また、商品価格やキャンペーン情報を比較できるチラシ閲覧機能は、店舗にとっても新聞を購読していない層にアプローチできるなどメリットもある一方で、他店に顧客が流れてしまう恐れも。「Shufoo!」や「トクバイ」といった、チラシ閲覧に特化したアプリも注目を集める中、価格競争を避けるためには、スーパーも品質やサービスの質・内容といった点で自店舗の独自性を確立していく必要がありそうです。
最新スマホアプリインストール数ランキング、1位はネットスーパー好調の楽天西友アプリ!(2022年5月)
https://manamina.valuesccg.com/articles/1834毎月更新のスマートフォンアプリインストール数ランキングTop5をまとめました。2022年5月の1位は「楽天西友」という結果に。2位には「楽天ペイ」、3位には「Instagram」がランクインしました。
楽天西友アプリのユーザーが急増!OMO施策とネットスーパーの動向を探る
https://manamina.valuesccg.com/articles/1882今年4月のリニューアル以後、ユーザー数を急増させている「楽天西友ネットスーパー」のアプリ。同事業が見据えている展望や、国内のネットスーパーにおけるOMOの現状について、ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を用いて分析します。
■LEBER|コロナ禍で、特に子供を持つユーザーから注目を浴びる。学校での活用事例も。
ヴァリューズのログデータに基づいた2022年2月~7月の、30代トレンドアプリランキングにランクインしていたアプリLEBER(リーバー)は、24時間いつでもスマホで医師に相談できるドクターシェアリングプラットホームと健康観察の機能を備えています。
また、前回の記事でもご紹介した下のグラフは、30代のLEBERユーザーの子供有無情報を示したものです。
LEBER 30代ユーザーの子供有無(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2022年2月〜2022年7月
デバイス:スマートフォン
子供ありのユーザーが9割を占めていることから、小さな子供を持つ父親・母親層を中心に利用されていることが推測できます。
また、アンケートでは以下のような回答が得られました。
・毎朝このアプリを通して、娘の小学校へ体温や体調、出欠の有無などを連絡しています(30代)
保護者が子供の体調に関して学校と連絡を取り合う際に、LEBERが活用される事例があるようです。
「LEBER for School」と呼ばれるこちらのサービスは、保護者や児童側が使用するツールは通常のLEBERと変わりませんが、学校側が、毎日の生徒の体温情報を把握したり、学年やクラス・部活動といった区分で生徒の健康情報を管理できる仕組みになっているそう。LEBER公式の発表によると、2022年3月時点で全国の学校約1000校にこのアプリが導入されており、保護者からの出欠連絡や生徒の体温測定など、コロナ禍で学校教職員の大きな負担となっていた作業の数々を一挙に効率化できるツールとして、注目が集まっています。
コロナ禍において、政府が紹介する健康観察アプリはLEBERの他にも様々ある中、なぜ学校現場ではLEBERがこれほど普及しているのでしょうか。
そのポイントは、費用と、サービスの独自性にあると考えられます。LEBER for Schoolの月額料金は、生徒1名につき11円と、生徒数400名ほどの学校であれば月額約4,000円で利用可能であり、類似サービスと比較して低めのコストを実現しています。また、保護者は子供の体調に関して、自宅から医師に相談し放題のプレミアムプランを無料で利用できるため、保護者にとってもメリットの大きいサービスとなっているようです。
コロナ禍における効率的・効果的な感染予防対策をはかるためのツールとして、今後もLEBERに注目が集まりそうです。
まとめ
今回は、ログデータに基づいて2022年の最新トレンドアプリを年代別に調査した前回の記事を踏まえ、アンケートを実施。その回答をもとに、3つのアプリに注目して、ユーザーのアプリの使用法や魅力を感じているポイントをご紹介してきました。
その中でも、特に印象的だったのは以下の3点。
◆ローチケ・チケットぴあアプリを始めとし、特に若年層への電子チケット普及が顕著であるものの、紙チケットへの需要もみられた。
◆楽天西友アプリに関する回答から、時間的な余裕や購入したい商品によって、ネットスーパーと実店舗を使い分けている様子がうかがえた。
◆ドクターシェアリング・健康観察機能を備えるアプリLEBERが、低コストとドクターシェアリングという独自性により、多くの学校でも導入され一強状態に。
コロナというトレンドの影響や、サービスによるユーザー獲得施策の成功がうかがえる調査結果となりました。Dockpitによる定量データとアンケートによる定性データを掛け合わせることで、どういった用途・場面でアプリが使用されているのか・トレンドアプリのどこにユーザーが魅力を感じているのかという点が、より高い解像度で見えたのではないでしょうか。
▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。
参考情報
・チケット提示、スマホ画面よりも「紙」を望む若年層が4割--その理由は - CNET Japan
https://japan.cnet.com/article/35125195/
・【ネットスーパーに関する調査】現在利用している人は1割強。ネットスーパーのサイトを見る時間帯・場所は、「自宅で:夜(19~22時台)」が現在利用者の4割|MyVoiceのプレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000969.000007815.html
・店舗集客なら国内利用率No.1電子チラシサービス「Shufoo!(シュフー)」
https://www.shufoo.net/biz/
・トクバイ
https://tokubai.co.jp/
・健康観察アプリ「LEBER for School」、導入学校数1,000校を突破
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000132.000033619.html
・健康観察アプリ LEBER(リーバー) for School | LEBER(リーバー) いつでもどこでも医師と相談、健康観察アプリとしての機能も充実しています。
https://www.leber.jp/school/
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