『Pokémon Trading Card Game Pocket』(ポケポケ)とは
『Pokémon Trading Card Game Pocket』(以下ポケポケ)とは、2024年10月30日にリリースされた、トレーディングカードゲーム(TCG)アプリです。AppMediaが公表したセルラン(セールスランキング)推移においては、リリース直後の11月は全日1位を獲得するなど初動の大きさがうかがえます。また、App Storeの最新のランキング(2024年1月20日現在)においても無料ゲームアプリ内で1位を獲得するなど、リリースから3ヶ月経った今でも人気は健在であることが分かります。
「ポケポケ」App Store画面
■「ポケポケ」人気を紐解く2つのポイント
「ポケポケ」が人気になっている背景として、主に次の2点が挙げられます。
1点目は、トレーディングカードゲーム・アプリの様々な課題を解決している点です。トレーディングカードには、必要なカードの多さによるコストの高さや、ルールの複雑さといった課題がありました。そのなかで「ポケポケ」は無料での拡張パック提供(12時間ごと)や独自のシンプルな対戦ルールなどによって、これまでの課題を解決し、誰でも手軽にトレーディングカードゲームを始められるような環境を整えています。

「ポケポケ」アプリ画面
左:無料の拡張パック提供
中・右:「ひとりで」モードでルールを簡単に身につけられる
2点目は、収集にも重きを置いたという新規性です。従来のトレーディングカードゲームアプリでは対戦がメインとなっていますが、「ポケポケ」では収集もメインコンテンツとなっています。
「ポケモンをゲットするときの喜び」や「カードパックを開封するときのワクワク感」、「レアリティごとの豪華なイラスト」など、アナログのポケモンカードの良さがアプリで再現されています。最近ではポケモンカード自体も価格が高騰していましたが、その背景にはカード自体の性能よりイラストが重視されていた面もありました。収集欲を満たすアプリ設計も非常に魅力的といえるでしょう。

「ポケポケ」アプリ画面。コレクション欲をかき立てる設計になっている。右側の2枚はカードパックを開封するときの様子で、ワクワク感がデジタルでも再現されている
以上のように、「ポケポケ」は対戦のハードルを下げると同時に、コレクションとしての価値を提供することでカードゲームを始めるきっかけを与え、多くのユーザーに受け入れられているのです。
「ポケポケ」流行の実態を3つのカテゴリで探る
ここからは、ポケポケの人気の実態を他アプリのユーザーと比較して調べていきます。分析対象は、「ポケポケ」と共通の要素を持つ、「ポケモン系アプリ」「トレーディングカードアプリ」「コレクションアプリ」の3つのカテゴリです。なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用います。
■ポケモン系アプリとの比較
ここでは、「ポケポケ」を他のポケモン系アプリと比較していきます。比較対象は「ポケモンGO」「ポケモンスリープ」「ポケモンユナイト」「ポケモンマスターズEX」です。
まず、ユーザーの推移から各ポケモン系アプリの規模感を見ていきます。下のグラフを見ると、「ポケポケ」がリリース直後から爆発的にユーザーを獲得し、リリースから2ヶ月後の12月には「ポケモンGO」の2倍ほどの規模になっていることが分かります。「ポケポケ」がポケモン系アプリの中でも特に勢いがあることがうかがえます。

「ポケポケ」、「ポケモンGO」、「ポケモンスリープ」、「ポケモンユナイト」、「ポケモンマスターズEX」月間起動ユーザー数の推移
集計期間:2024年1月~2024年12月
集計デバイス:スマートフォン
次に、ユーザーの属性を見ていきます。下のグラフは、各ポケモン系アプリの男女比を示したものです。

「ポケポケ」、「ポケモンGO」、「ポケモンスリープ」、「ポケモンユナイト」、「ポケモンマスターズEX」ユーザーの男女比
集計期間:2024年1月~2024年12月
集計デバイス:スマートフォン
上のグラフを見ると、「ポケポケ」、「ポケモンGO」、「ポケモンユナイト」は比較的男性ユーザーが多く、対照的に「ポケモンスリープ」は女性ユーザーが多く占めていることが分かります。ポケモン系のアプリは基本的に男女どちらにも人気があり、どのようなコンテンツを扱うかによって人気の男女差が変動するのかもしれません。
同様に、年代割合も見ていきます。下のグラフを見ると、ポケモン系のアプリは基本的に若年層の人気が高いことが分かります。ですが、「ポケモンGO」や「ポケモンスリープ」のように生活と結びついているようなゲームアプリにおいては、50代・60代の割合が他のポケモン系アプリよりも高くなっています。

「ポケポケ」、「ポケモンGO」、「ポケモンスリープ」、「ポケモンユナイト」、「ポケモンマスターズEX」ユーザーの年代割合
集計期間:2024年1月~2024年12月
集計デバイス:スマートフォン
また、アプリの併用状況からもユーザー像を把握していきます。下のグラフは「ポケポケ」利用者が、ほかのポケモン系アプリをどの程度併用しているかという割合の推移を示しています。

「ポケポケ」、「ポケモンGO」、「ポケモンスリープ」、「ポケモンユナイト」、「ポケモンマスターズEX」の、「ポケポケ」側から見た併用状況推移
集計期間:2024年1月~2024年12月
集計デバイス:スマートフォン
上のグラフを見ると、「ポケポケ」がリリースされた直後は、ポケポケユーザーは「ポケモンGO」や「ポケモンスリープ」を併用している割合が高かったようです。しかしその後は、「ポケポケ」だけを単独利用する「併用なし」ユーザー(青線)の割合が増加していることが分かります。
■TCGアプリとの比較
続いては、「ポケポケ」ユーザーを他のトレーディングカードゲーム(TCG)アプリと比較していきます。比較対象は「遊戯王 マスターデュエル」、「シャドウバース」です。
先ほどと同様、ユーザーの推移から各TCGアプリの規模感を見ていきます。下のグラフを見ると、「ポケポケ」が月間起動ユーザー数において他2アプリを大きく上回っており、TCGゲームアプリの中でも勢いがあることが分かります。

「ポケポケ」、「遊戯王 マスターデュエル」、「シャドウバース」月間起動ユーザー数の推移
集計期間:2024年1月~2024年12月
集計デバイス:スマートフォン
続いて、各TCGアプリユーザーの男女比を示した下のグラフを見ると、「ポケポケ」を除く2つのアプリは男性比率がいずれも80%を超えている一方で、「ポケポケ」は4割ほどを女性が占めていることが分かります。男性人気のTCGアプリ界で、女性のユーザーも多く獲得できたことも大ヒットの要因の1つなのかもしれません。

「ポケポケ」、「遊戯王 マスターデュエル」、「シャドウバース」ユーザーの男女比
集計期間:2024年1月~2024年12月
集計デバイス:スマートフォン
年代割合も見ていきます。下のグラフを見ると、TCGアプリ全体の傾向として、20代・30代のユーザーが特に多いことが分かります。

「ポケポケ」、「遊戯王 マスターデュエル」、「シャドウバース」ユーザーの年代割合
集計期間:2024年1月~2024年12月
集計デバイス:スマートフォン
最後に「ポケポケ」利用者の、他TCGアプリの併用状況を見ていきます。下のグラフを見ると、「ポケポケ」ユーザーの94%が他の2アプリを併用していないことが分かりました。もともとのポケカ人気に加えて、収集の楽しみなど「ポケポケ」独自の強みが発揮され、アプリでTCGをプレイしていなかった人たちも多く流入したのかもしれません。

「ポケポケ」、「遊戯王 マスターデュエル」、「シャドウバース」の「ポケポケ」側から見た併用状況
集計期間:2024年1月~2024年12月
集計デバイス:スマートフォン
■コレクションゲームアプリとの比較
加えて、「ポケポケ」ユーザーを他のコレクションゲームアプリと比較していきます。比較対象は「おさわり探偵 NEOなめこ栽培キット」、「ねこあつめ」です。
これまで同様、月間起動ユーザー数の推移から各コレクションゲームアプリの規模感を見ていきます。下のグラフを見ると、「ポケポケ」が他のコレクションゲームアプリよりもひときわ大きな規模となっていることが分かります。

「ポケポケ」、「おさわり探偵 NEOなめこ栽培キット」、「ねこあつめ」月間起動ユーザー数の推移
集計期間:2024年1月~2024年12月
集計デバイス:スマートフォン
続いて、ユーザーの男女比を確認していきます。下のグラフを見ると「ポケポケ」以外の2アプリは女性の割合が高くなっています。コレクションゲームアプリの共通の特徴であるのかもしれません。

「ポケポケ」、「おさわり探偵 NEOなめこ栽培キット」、「ねこあつめ」ユーザーの男女比
集計期間:2024年1月~2024年12月
集計デバイス:スマートフォン
最後に、ユーザーの年代割合を見ていきます。下のグラフを見ると、年代割合が比較的ネット平均と近い2アプリと比べると、「ポケポケ」は若年層を多く獲得していることが分かります。

「ポケポケ」、「おさわり探偵 NEOなめこ栽培キット」、「ねこあつめ」ユーザーの年代割合
集計期間:2024年1月~2024年12月
集計デバイス:スマートフォン
ここまでの3つの市場の比較から、以下のような結果が得られました。
・「ポケポケ」は3つのカテゴリのいずれにおいてもとりわけ規模が大きい
・TCGアプリが若年男性人気、コレクションゲームアプリが女性人気という傾向があるなかで、両コンテンツの特徴を持つ「ポケポケ」は男女どちらにも人気となっている
・「ポケポケ」は、リリース直後においてはポケモン関心層によって盛り上がり、その後「ポケポケ」単独利用者が追従することで、爆発的なヒットとなった。
「ポケポケ」は「ポケモン」、「TCG」、「コレクション」という3つのコンテンツが上手く重なり合ったことで、ここまで多くの人の支持を得たのかもしれません。
人気は持続するか? 有名ゲームアプリのMAU動向と比べる
ここからは、「ポケポケ」の人気が今後どのようになっていくのかについて、近年リリースされた有名アプリの初速と、これまで人気を維持してきたアプリの特徴から考察していきます。
■リリース直後のMAUを比較
まずは、近年リリースされた有名アプリの初動を見ることで、傾向を掴んでいきます。比較対象は、「ポケモンスリープ」、「パワプロ 栄冠クロス」、「ゼンレスゾーンゼロ」です。「ポケポケ」と同様、「有名企業がリリース」、「リリース前から注目されていた」という2つの特徴を持っていたことから、これらのアプリを選定しました。
まずは、月間起動ユーザー数の推移から、リリース後の動きを見ていきましょう。

「ポケポケ」、「ポケモンスリープ」、「パワプロ 栄冠クロス」、「ゼンレスゾーンゼロ」月間起動ユーザー数の推移
集計期間:2023年1月~2024年12月
集計デバイス:スマートフォン
上のグラフを見ると、「ポケモンスリープ」、「パワプロ 栄冠クロス」、「ゼンレスゾーンゼロ」においてはリリースから2ヶ月目からユーザー数は減少傾向にあり、その後2,3ヶ月ほどで、現在のユーザー数の水準に落ち着くという傾向が見られます。一方で、「ポケポケ」はリリースから2ヶ月経っても、リリース直後のユーザー数を上回っており、他3アプリの初動傾向とは異なる結果が見られました。
また、男女比も見ていきます。下のグラフを見ると、「ポケポケ」は男女比が6:4と半々に近いのに対し、他の3アプリは男女比が異なっていることが分かります。男女比においても、「ポケポケ」は他のアプリと異なる結果となりました。

「ポケポケ」、「ポケモンスリープ」、「パワプロ 栄冠クロス」、「ゼンレスゾーンゼロ」ユーザーの男女比
集計期間:2023年1月~2024年12月
集計デバイス:スマートフォン
■「ポケポケ」はツムツムのMAUを超える規模
次に、これまで人気を維持してきたアプリを比較し、成功しているアプリの特徴を探っていきます。比較対象は「原神」、「ディズニーツムツム」、「モンスターストライク」、「プロ野球スピリッツA」です。
月間起動ユーザー数の推移から各アプリの規模を確認していきます。下のグラフを見ると、「ポケポケ」は初動で他の人気アプリに引けを取らないほどの規模に達していることが分かります。つまり、「ポケポケ」がこのままの勢いでユーザーを離さなければ、業界でもトップクラスに人気のアプリとなる可能性があります。

「ポケポケ」、「原神」、「ディズニーツムツム」、「モンスターストライク」、「プロ野球スピリッツA」月間起動ユーザー数の推移
集計期間:2024年1月~2024年12月
集計デバイス:スマートフォン
人気ゲームアプリの男女比も見てみましょう。下のグラフを見ると、「ディズニーツムツム」では女性ユーザーの比率が高く、対照的に「モンスターストライク」や「プロ野球スピリッツA」では男性ユーザーの比率が高いことが分かります。「ポケポケ」や「原神」は男女比は半々に近いという結果になりました。

「ポケポケ」、「原神」、「ディズニーツムツム」、「モンスターストライク」、「プロ野球スピリッツA」ユーザーの男女比
集計期間:2024年1月~2024年12月
集計デバイス:スマートフォン
まとめ
ここまで、リリース直後から社会現象を巻き起こしているTCGアプリ「ポケポケ」について、流行した要因やその実態の分析、今後の人気を予測してきました。ここでは、本稿の結論として、簡単なまとめを述べていきます。
・「ポケポケ」の人気の背景は、TCGの課題にアプローチする気の利いたUXや、収集という新たな楽しみを提供したことにある。
・「ポケポケ」は、リリース直後においてはポケモン関心層によって盛り上がり、それに「ポケポケ」単独利用者が追従することで、爆発的なヒットとなった。
・TCGは男性人気が高く、コレクションゲームは女性人気が高いなかで、その両面を併せ持つ「ポケポケ」は男女どちらからも支持を得ている。
「ポケポケ」は初動で人気アプリに引けをとらない規模に達しただけでなく、その翌月もユーザーを拡大させており、アプリゲームのトップを目指せるかもしれません。直近では、新弾の発表やトレード機能の解放など、目玉となるアップデートが多く実装されました。 また、公式からの言及はなかったものの、NFTと関連付けられた機能の実装なども期待されています。
「ポケポケ」もアナログなポケモンカードと同様、バブルを引き起こせるのでしょうか。今後の動向に期待しましょう。
▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。
2025年4月に入社予定の大学4年生です。大学では、経済学部で計量経済学を学んでいます。