Googleが新たに提唱する「肯定度」。継続購入は初回購入前に決まる?消費行動の最新トレンドと広告への活用法

Googleが新たに提唱する「肯定度」。継続購入は初回購入前に決まる?消費行動の最新トレンドと広告への活用法

情報過多な中、自分の選択に満足がいくまで商品の検討を続けていると起こりがちな「買い物疲れ」。だからこそ、苦労して情報探索を終えた末に購入した商品を、継続購入する行動パターンが増えてきているようです。そのような探索を経た商品に対しては、「肯定度」が高まりやすいといいます。「肯定度」が高い商品がリピートされるのであれば、消費者の「肯定度」を高める方法が気になるところ。今回は、「肯定度」の解説から広告施策への落とし込み方まで、事例を交えてご紹介します。


スピーカー紹介

図:スピーカー紹介

図:スピーカー紹介

Google新たに着目した継続購入のカギ「肯定度」

「買い物疲れ」が誘う「継続購入」

株式会社ヴァリューズ 岩村大輝(以下、岩村):現代の情報社会に生きる消費者の多くは、何かを購入する際に、あらかじめ情報探索を通して商品やサービスの情報を把握をしています。
その背景には、情報探索を通じて、自身の選択に自信をもちたいという心理が強く働いています。

図:生活者は自分の選択に自信を持ちたい

図:生活者は自分の選択に自信を持ちたい

岩村:しかしながら、昨今の消費者は情報過多の中でそうした探索を行うため、実は毎回の選択に疲れている人が多いのではないでしょうか。その結果、検討を回避して同じものを購入し続ける、継続購入が起きやすいと考えられます。継続購入は意図的な行動であるというよりも、情報量の増大に対する結果起こる“反応”としての適応行動であると言えます。

そして、継続購入するユーザーは、初回購入時よりも自分の選択への自信が高いのが特徴です。それは一体なぜなのでしょうか。

図:継続購入の深層心理:初回購入と再購入における自信の持ち方の違い

図:継続購入の深層心理:初回購入と再購入における自信の持ち方の違い

初回購入前の「肯定度」が「継続購入」に貢献

岩村「肯定度」とは「選択に対する自信の強度」です。「肯定度」が高いと、「満足度」も高まります。購入後の「満足度」に関する調査によると、購入前の「肯定度」が高かったグループは、購入後の商品・サービスの利用体験で、より満足しているという傾向があるということがわかりました。

このことから、「肯定度」が高いとその商品に満足し、次回の購入にも繋がりやすいということが言えます。そう考えると、次回購入の可能性は「初回購入前の肯定度」が密接に関係しているとも考えられます。

図:「肯定度」が「次回購入意向」に及ぼす影響は?

図:「肯定度」が「次回購入意向」に及ぼす影響は?

岩村:では、どの様な情報検索行動が「肯定度」を高めるのでしょうか。

下図によると、自ら求めに行った情報(能動的情報探索)から大きく影響を受けていることがわかります。また、自身の中の「肯定度」が低い状態では情報収集に積極的になり、逆に「もう調べ切った!」というような「肯定度」の高い状態では、情報収集に消極的になることもわかってきました。

図:肯定度を高める情報探索とは

図:肯定度を高める情報探索とは

購買行動を「点」ではなく「線」で考えるマーケティング施策が必要

岩村:では企業はどのように肯定度を高める情報収集を促せば良いのでしょうか。

前述のように、消費者の「肯定度」を高めるような情報収集を促すために、企業は常に新しい情報を発信することで、消費者の能動的探索行動を刺激し続け、購買意欲を高めることができます。

このようにして消費者をより強い「肯定度」に導くことで、消費者の「満足度」が高まり、「次回購入」意向を醸成します。

そして、このような購買行動は「点」では起こらないことを知るべきです。商品購入前の時点で、次回購入の可能性が醸成されるとお話したように、商品と生活者の間に長期的な関係を構築するためには、初回購入前の接点にも注意を向けることが重要です。「点」ではなく一連の行動を通じての「線」であると考え、各フェーズにおける情報接点を考慮したメディアプランニングをすることで、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の最大化を図ることができると考えます。

図:LTVを最大化するためのデジタルマーケティング

図:LTVを最大化するためのデジタルマーケティング

「肯定度」を活用したWeb広告配信の2つの実例

株式会社ヴァリューズ 松尾武将(以下、松尾):「これからは、「肯定度」をキーにして展開したWeb広告事例を2パターンご紹介します。

家電メーカー編:肯定度が高まるタイミングにピンポイントで有効な広告を配信

松尾:まずは、消費者の実際の探索行動を調査して、肯定度を高める広告を配信したケース。今までお話してきた以下2点をカバーした施策です。

・生活者が自発的に探索する情報は肯定度を高めることに効果的
・肯定度を維持させるためには企業からの情報のインプットが重要

消費者の検索行動の実態が掴みきれず、適切なアプローチや他社へのスイッチングなども確認できないという家電メーカーの課題に対し、自社・他社の両方で当該製品を購入した購買者の購買前30日間のWeb検討行動をヴァリューズデータを用い、徹底分析しました。

情報検索行動が深まる様子(どの様なキーワードで、どの様な商品を見ているか、候補をどの様に絞っていくのか)を把握することで、自社製品が有効にアプローチできているかを始め、前述の「肯定度」が高まる情報検索ポイントに、どのようにターゲットが到達しているかを知ることができます。このポイントを知ることで、ターゲット層にヒットする有効なキーワードや広告内容の決定へと、施策を導くことが可能です。

図:自社・競合の検討プロセス調査(掃除機カテゴリのデータ例)

図:自社・競合の検討プロセス調査(掃除機カテゴリのデータ例)

飲料EC編:継続購入につながる良い広告と、継続購入されているかの判定を実現

松尾:続いては、継続購入につながる(=肯定度を高める)良い広告と、そうでない広告を判別できるようにしていった事例です。

下の図をご覧ください。まずGDN広告への接触から始まった検討行動が、最終的にはGoogle上での指名検索でCVにつながった様子を表しています。最初のGDN接触を起点にCVにつながっていったので、この広告は貢献度が高いと評価したいところですが、GAのような通常の計測範囲ですと、こちらのGDN広告は購入に貢献しなかったことになってしまいます。

図:CV計測の精緻化

図:CV計測の精緻化

松尾:それに加えて、この計測範囲ですと、CV以降に同じユーザーが行った検索やメールの閲覧といった行動が、別のユーザーの行動のように見えてしまい、継続購入されているのかがわからない状態になってしまいます。

そこで、顧客側の保有するデータを整理・可視化し、DX促進を行うことで、各広告の貢献度を可視化し、継続購入の判定を実現しました。

図:経路別の新規CV獲得の貢献、LTVの可視化

図:経路別の新規CV獲得の貢献、LTVの可視化

岩村:今回、初めて「肯定度」のお話をさせていただきましたが、なんとなく買い続けているもの、初回購入時の思いなど、皆さんにも思い当たる経験がある話ではないかと思います。

そういったところから想起されたこの「肯定度」という概念は、“肌感”で感じられる新たな購買行動モデルだと自負しています。まだ新しいモデルではありますが、同じくGoogleがヴァリューズのWeb行動ログデータをもとに開発した「バタフライ・サーキット」とともに思案の軸としてプランニングし、PDCAを回すことで、広告事業にさらなるバリューをもたらしていきたいと考えています。

セミナー資料の完全版は下記より無料でダウンロードできますので、是非ご活用ください。

セミナー資料ダウンロード【無料】| Googleが提唱する購買行動の最新トレンド~“肯定度”を活用した広告配信の事例紹介

セミナー資料のダウンロードURLを、ご入力いただいたメールアドレスに送付させていただきます。
ご登録頂いた方にはヴァリューズからサービスのお知らせやご案内をさせて頂く場合がございます。

この記事のライター

マナミナ 編集部 編集兼ライター。
金融・通信・メディア業界を経て現職。
趣味は食と旅行。

関連するキーワード


バタフライサーキット

関連する投稿


The Butterfly Circuit: Eight Motives for Information-Seeking and Creative Ideas that Stick with Consumers

The Butterfly Circuit: Eight Motives for Information-Seeking and Creative Ideas that Stick with Consumers

The "Butterfly Circuit," a framework developed in collaboration with Google, describes the information-seeking process that leads to a purchase. We will present the reality of information-seeking considering the "Butterfly Circuit," its application to communication strategy, and provide insightful suggestions.


「バタフライ・サーキット」が示す8つの情報探索動機と、消費者に刺さるクリエイティブとは | 日経クロストレンドフォーラム レポート

「バタフライ・サーキット」が示す8つの情報探索動機と、消費者に刺さるクリエイティブとは | 日経クロストレンドフォーラム レポート

Google社との共同研究で開発された、購買に至る情報探索プロセスを表すフレームワーク「バタフライ・サーキット」。2022年7月に開催された日経クロストレンドフォーラムでは、「バタフライ・サーキット」に照らし合わせた情報探索の実態と、消費者とのコミュニケーション施策への応用方法をご紹介。8つに分類した情報探索動機から、消費者に刺さるクリエイティブ施策のヒントをお届けしました。詳細なセミナー資料は無料でダウンロードできます。記事末尾のフォームよりお申し込みください。


「シニアマーケティング」「バタフライ・サーキット」など...ベスト記事「セミナー・イベント」編

「シニアマーケティング」「バタフライ・サーキット」など...ベスト記事「セミナー・イベント」編

今年で3周年を迎えるマナミナ。特別企画として、カテゴリごとのPV数トップ5の記事をご紹介します。 今回の記事では、第4弾として「セミナー・イベント編」をお届け。世間の関心が高いテーマについて、振り返ってみましょう。


「バタフライ・サーキット」が示す情報探索動機と、消費者に刺さるクリエイティブのつくり方とは?〜 デジタルマーケターズサミット

「バタフライ・サーキット」が示す情報探索動機と、消費者に刺さるクリエイティブのつくり方とは?〜 デジタルマーケターズサミット

ヴァリューズがGoogleと博報堂との共同研究で発案した情報探索行動モデル「バタフライ・サーキット」。2月28日に開催されたデジタルマーケターズサミットでは、「化粧品の購入」をテーマに実施したアンケート調査と消費者Web行動ログの分析から明らかにした「バタフライ・サーキット」の実態と、施策への応用方法が紹介されました。「さぐる」「かためる」それぞれに情報収集媒体が異なることや、情報探索動機によってバナー広告の反応度にも明確に違いが生じる事などを解説。詳細なセミナー資料は無料でダウンロードできます。記事末尾のフォームよりお申し込みください。


心がゆれる瞬間を捉える!新消費行動「バタフライサーキット」を活用して、化粧品の購入検討行動を徹底調査

心がゆれる瞬間を捉える!新消費行動「バタフライサーキット」を活用して、化粧品の購入検討行動を徹底調査

ヴァリューズがGoogle社と共同で研究した「バタフライサーキット」は、『さぐる』と『かためる』という2種類の動機を蝶(バタフライ)のように行き来する情報探索行動モデルです。今回は「バタフライサーキット」を用いて、化粧品の購入を例に情報探索モチベーションの具体を調査・分析しました。


最新の投稿


DB型サイトでSEO施策を実行して対策ページが上位化するまでにかかった期間は"6か月"が最多【eclore調査】

DB型サイトでSEO施策を実行して対策ページが上位化するまでにかかった期間は"6か月"が最多【eclore調査】

株式会社ecloreは、同社が運営する「ランクエスト」にて、データベース型サイト運営者を対象に、SEOの実施状況やその効果について調査を実施し、結果を公開しました。


SEOに積極的に取り組んでいるサイトの9割以上が表示速度の重要性を認識!改善に取り組む目的は「顧客体験の向上」と「リピート率の改善」が上位【Repro調査】

SEOに積極的に取り組んでいるサイトの9割以上が表示速度の重要性を認識!改善に取り組む目的は「顧客体験の向上」と「リピート率の改善」が上位【Repro調査】

Repro株式会社は、Webサイト運営・管理者を対象とした、「Webサイトの表示速度改善についての実態調査」を実施し、結果を公開しました。


感性について ~ マーケティングとハプティクス

感性について ~ マーケティングとハプティクス

人には5感が備わっています。さらに突き詰めれば第6感という感覚も。それら人の持つ感性や感覚を補うべくあらゆる技術も日々進歩していますが、人のそれらの代替となるような技術はまだ未完の途上です。それほどに他に取って代われない私たちの感性・感覚。本稿では、広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長、一般社団法人マーケティング共創協会理事・研究フェローを務めている渡部数俊氏が、広告やマーケティングを通して人の感性の深さを説き、ハプティクス(Haptics)を用いて人の感覚の重要性を解説します。


イードとガイエ、リアルとデジタルの融合でアニメファンの推し活を支援する広告パッケージを提供開始

イードとガイエ、リアルとデジタルの融合でアニメファンの推し活を支援する広告パッケージを提供開始

株式会社イードと株式会社ガイエは、全国のファミリーマート、ローソン(※一部店舗を除く)に設置されているマルチコピー機で展開するコンテンツサービス「エンタメプリント」を活用した広告パッケージ「Anime Touch Ad」を共同開発し、販売開始することを発表しました。


ネオマーケティング、ボーダーリンクとの協業で在日外国人リサーチサービスを提供開始

ネオマーケティング、ボーダーリンクとの協業で在日外国人リサーチサービスを提供開始

株式会社ネオマーケティングは、株式会社ボーダーリンクと協業し、在日外国人リサーチサービスを提供開始したことを発表しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ