話題の韓国コスメ「ウォンジョンヨ」。データから見えてきた綿密なマーケティング戦略

話題の韓国コスメ「ウォンジョンヨ」。データから見えてきた綿密なマーケティング戦略

2022年10月に発売された韓国コスメ「ウォンジョンヨ」。ブランドの「顔」として日本人K-POPスターのTWICEモモを迎えたことで話題になりました。今回は「ウォンジョンヨ」がどのように認知を広げていったのか、どのようなマーケティング戦略をとり、どのような結果が出たのか。ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」のデータをもとに検証しました。


話題の韓国コスメ「ウォンジョンヨ」とは

「ウォンジョンヨ」は2022年10月にスタートした韓国のコスメブランドです。

「ウォンジョンヨ」コスメは比較的手に取りやすい価格帯が特徴。K-POPスターの専属メイクアップアーティストであるウォンジョンヨさんが監修するブランドということで話題を呼びました。またブランドミューズには日本人K-POPスターであるTWICEのモモさんが就任しています。

TWICEは2022年7月に9人のメンバー全員が事務所と再契約したことで注目を集めました。そんななか、モモさんが単独でコスメブランドの「顔」となったわけです。

TWICEのモモさんは「涙袋」を強調したメイクが印象的な存在。一方のウォンジョンヨさんは「涙袋メイクの第一人者」として知られていることから、双方の親和性も感じられますね。

ウォンジョンヨ_ユーザー数推移

「ウォンジョンヨ」のユーザー数推移
(集計期間:2022年1月〜12月、デバイス:PC&スマートフォン)

スタートから2ヶ月でブランド認知とファン定着に成功

「ウォンジョンヨ」を検索したユーザー数をデータから読み解いていくと、ブランドがスタートする2022年10月より1ヶ月前の2022年9月から徐々に検索数が増えていることがわかります。

ブランドスタートから1ヶ月後には大きく検索数を伸ばし、その後1ヶ月に渡っても検索数が衰えていません。ブランドスタートから2ヶ月でユーザー数が安定して高止まりしていることから、ブランドの認知が広まり、定着したといえるでしょう。

ブランドがスタートする前から話題になっていたことで、発売されてからは急激に注目が広がり、その後もユーザーの「ウォンジョンヨ」に対する興味は高まったままとなっているようです。

ユーザーの興味を喚起し続けられる魅力があったことから、ブランドのファン化に成功したと言えるかもしれませんね。

40代の関心が高い「韓国コスメ」の中でも「ウォンジョンヨ」は若年層に人気

「ウォンジョンヨ」は韓国コスメブランドです。

ここで「韓国コスメ」を検索するユーザー層と「ウォンジョンヨ」を検索するユーザーにどのような違いがあるのかをみてみましょう。

韓国コスメ_ユーザー数推移

「韓国コスメ」のユーザー数推移
(集計期間:2022年1月〜12月、デバイス:PC&スマートフォン)

「韓国コスメ」は長く安定して検索されていることが、データからわかります。ではどのようなユーザーが検索しているのでしょうか。

韓国コスメ_性別年代

「韓国コスメ」の性別年代
(集計期間:2022年1月〜12月、デバイス:PC&スマートフォン)

「韓国コスメ」を検索しているユーザーの性別は約9割が女性で、年代は40代が最多でした。30代、20代と50代がほぼ同じ割合となっています。

一方で「ウォンジョンヨ」を検索しているユーザーの年齢層は、というと20代が最多、続いて30代となっています。「韓国コスメ」の検索ユーザーでは最多で4割ほどだった40代は「ウォンジョンヨ」では10%台前半です。

ウォンジョンヨ_性別年代

「ウォンジョンヨ」の性別年代
(集計期間:2022年1月〜12月、デバイス:PC&スマートフォン)

これらのデータから「ウォンジョンヨ」の検索ユーザーは「韓国コスメ」の検索ユーザーに比べて若い世代の興味関心を集めていることがわかります。

ブランドミューズがブランド認知に貢献している

では続いて「TWICE」の検索ユーザーをみてみましょう。

TWICE_性別年代

「TWICE」の性別年代
(集計期間:2022年1月〜12月、デバイス:PC&スマートフォン)

「TWICE」の検索ユーザーで最多の年代は20代、続いてほぼ同じ割合で30代と40代が入っています。

「ウォンジョンヨ」を検索したユーザーの年齢層と「TWICE」を検索したユーザーの年齢層と比較してみると、以下の2点において相関がみられました。
• 20代が最多
• 30代が次点に入っている

ウォンジョンヨ_年代

「ウォンジョンヨ」の年代
(集計期間:2022年1月〜12月、デバイス:PC&スマートフォン)

このデータからブランドの「顔」となったTWICEとモモさんのファンを「ウォンジョンヨ」が取り込めている、といえそうです。

ブランドのペルソナを日本の20代や若い世代に設定していたと仮定すると、韓国コスメながら日本人をブランドの顔に選んだことや、アーティストのファン層をそのままブランドのファンにしようとした戦略は、一定の成果を上げたようです。

また「ウォンジョンヨ」を購入できる店舗はPLAZA(プラザ)やLOFT(ロフト)、東急ハンズといった店舗に限られています。こういった販路の選別もまたブランドの「特別感」の演出に一役買っているのではないでしょうか。

リスティング広告や自然検索からの流入が多い

「ウォンジョンヨ」公式サイトへの流入経路をみてみると、リスティングが最多、次いで自然検索、ソーシャルとなっています。

ウォンジョンヨ_集客構造

「ウォンジョンヨ」の集客構造
(集計期間:2022年1月〜12月、デバイス:PC&スマートフォン)

リスティングのなかには「検索連動型広告」があり、ユーザーの検索履歴をもとに広告を表示させる仕組みをもっています。自然検索が増え、ユーザーにリスティング広告が表示される機会が増えたことで、リスティングから流入する割合が増加したのでしょう。

続いてどのようなワードで検索されたのち、流入したのかをみていきます。

ウォンジョンヨ_流入キーワード

「ウォンジョンヨ」の流入キーワード
(集計期間:2022年1月〜12月、デバイス:PC&スマートフォン)

上位5位までのうち、4つにブランド名が入っていました。注目したいのは4位の「モモ コスメ」です。

正確なブランド名が分からなくても、ブランドミューズを務める「モモのコスメ」と認識し、検索しているユーザーが少なくないことがわかります。

また「モモ=涙袋メイク」という印象があることと、ウォンジョンヨさんが「涙袋メイクの第一人者」として知られていることから、アイメイクのアイテムを注目しているユーザーが多いようです。

ソーシャルではメイクのやり方がわかりやすいYouTube主体

ソーシャルで注目なのは、YouTubeの割合でした。

ウォンジョンヨ_ソーシャル構成

「ウォンジョンヨ」のソーシャル構成
(集計期間:2022年1月〜12月、デバイス:PC&スマートフォン)

データをみるとYouTubeが6割を超えていることがわかります。

YouTubeで「ウォンジョンヨ」と検索すると上位にブランドがスタートしたときのモモさんの動画が表示されます。この結果からも「ウォンジョンヨ」=モモのコスメ、としての認知に成功した、といえそうです。

またウォンジョンヨさん自身にメイクしてもらった、というコスメYouTuberの動画も目立ちます。ユーザーにより近い一般人のインフルエンサーのメイク動画は、ユーザーに「ウォンジョンヨ」のコスメを「使ってみたい」「動画を見ながらメイクできそう」と思わせているのでしょうか。

日本人K-POPスターのモモを起用した戦略、動画でメイクの方法をわかりやすく伝える戦略は、ブランドの開始から一気に日本でのブランド認知を広げるマーケティング手法として、ひとつの成功例といえそうです。

「ウォンジョンヨ」を検索するユーザーは購入を決めている?店舗情報のサイトが上位に

ウォンジョンヨ_流入ページ

「ウォンジョンヨ」の流入ページ
(集計期間:2022年1月〜12月、デバイス:PC&スマートフォン)

「ウォンジョンヨ」の検索からの流入ページのデータからは、以下のような特徴が読み取れます。

•公式サイト
•プレスリリース
•コスメ取扱店サイト
•取扱店情報を掲載したまとめサイト

流入ページのデータからは「ウォンジョンヨ」を検索するユーザーが「何を目的に検索しているか」が見えてきます。それは「ウォンジョンヨをどこで買えるのか」です。

データからは「ウォンジョンヨ」で検索したユーザーのうち「どこで買えるか」という情報を求めているユーザーが多いことがわかります。

検索する時点で「ウォンジョンヨを買うことを決めている」ユーザーが少なくないのでは、と考えられます。

まとめ

データからは「ウォンジョンヨ」が行った、日本市場での展開を見据えた綿密なマーケティングが成功していることが伺えました。

「ウォンジョンヨ」が若い世代を取り込んで長くブランドのファンになってもらおうとする戦略を立てたとしたら、

• ペルソナの設定
• ブランドの「顔」の選定
• リスティング広告への投資
• YouTubeに特化したプロモーションのやり方
• コスメYouTuberとの「メイクしてもらった」動画
• 「トレンド感」を意識できる販路の設定

において、現状すべてのマーケティング戦略が成功している様子がデータから伺えました。

認知度が十分に広まったと思われる「ウォンジョンヨ」がこのあと、日本市場に対してどのようなマーケティング手法を用いてプロモーションを行うのか、注目です。

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この記事のライター

1978年長崎県生まれ。1男の母。プログラマを経て現在フリーランスのライターとして活動中。不惑の年齢にしてK-popにハマり、韓国語勉強中。食育アドバイザー、薬膳コーディネーター、野菜スペシャリスト。

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