デザイナーの落合宏理氏によるファミマ発の衣料ブランド
2021年3月ファミリーマートは、デザイナーの落合宏理氏によるファミマ発の衣料ブランド「コンビニエンス ウェア」の販売をスタートさせました。「コンビニ衣料」という新たなカテゴリは、コンビニでおにぎりを買うのと同じように、「緊急対応の衣類」ではなく「日常着」が買える文化を創りたい、という想いから誕生したものです。
商品ラインナップの中でも印象的なのは、明るいブルーとグリーンのいわゆる「ファミマカラー」を施したデザインの靴下。「シンボリックなものを」という落合氏の想いが込められた靴下は、日本最大級のファッションコーディネートサイトWEARでも911件の投稿がされるほど(2022年10月17日現在)。「ファミマ」の「靴下」はなぜ消費者に受け入れられたのか、その理由を探っていきます。
ファミマの「靴下」人気
まずは「ファミマ」と「靴下」のワードがどのくらいのユーザーに検索されているのか、ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」でみてみましょう。
直近半年(2022年4月〜9月)では、「靴下」のキーワードにおいて「ファミマ」と掛け合わせて検索したユーザーは、ユニクロを抜いて2番目に多いことがわかりました。
「靴下」の検索者数
(集計期間:2022年4月〜9月、デバイス:PC&スマートフォン)
この結果から、半年余りで3万人近いユーザーがファミマの靴下に興味を持ち、検索するまでに至ったことがわかります。靴下は毎日着用するものであり、サイズや質感、デザインなど個人の好みに差が出るもの。実際に販売店舗も多いことから、専門店ではない特定のブランドに注目が集まることは珍しいのかもしれません。
続いて消費者のリアルなWeb行動が分かるヴァリューズの「story bank」を使用し、ユーザー層についてさらに深掘りしていきます。
性別問わない幅広い年代のユーザーが関心を示す
「ファミマ」か「ファミリーマート」と、「ウェア」か「ファッション」がタイトルにあるページを閲覧したユーザーの性年代割合
(集計期間:2021年10月~2022年9月、デバイス:PC&スマートフォン)
story bankでは、「ファミマ」か「ファミリーマート」と、「ウェア」か「ファッション」がタイトルにあるページについて、それを閲覧したユーザーの人となりを分析します。
まずは性年代の特徴を見ていきましょう。ネット利用者全体と対象ユーザーの割合に明らかな差はみられず、性別を問わず幅広い年代のユーザーが興味を持ったことがわかります。SNSで注目されているということから、若年層の関心が高いイメージですが、ブラウザで情報を見に行く人は特別若者に寄っているわけではないようです。
いずれの性別、年代においてもコンビニを日常的に利用するユーザーは多く、コロナ禍でお買物ルーティンに変化のあった消費者にとって、コンビニアイテムは実際に購入しやすい商品であることも影響しているのかもしれません。 幅広い関心層の存在が、上記の「ファミマ 靴下」検索の多さにもつながっていると考えられます。
価格より利便性を優先する未婚者からの支持が厚い?
「ファミマ」か「ファミリーマート」と、「ウェア」か「ファッション」がタイトルにあるページを閲覧したユーザーの未既婚割合
(集計期間:2021年10月~2022年9月、デバイス:PC&スマートフォン)
ネット利用者全体における未婚者の割合が約40%であるのに対し、対象者の未婚者の割合は約55%でした。対象者に未婚者の割合が多いことを考えると「ファミマ」の「ウェア・ファッション」 に興味があるのは未婚ユーザーがやや多いことがわかります。
未婚者の場合は、自分の収入をどのように使うかを自分で決められるため、価格よりも利便性を優先し、コンビニを利用する頻度が多いのかもしれません。そのため一人分の食事を買うために寄ったコンビニで、ついでに買えることに大きなメリットを感じているケースもありそうです。
ファミマウェアはファッション好きにも注目される
「ファミマ」か「ファミリーマート」と、「ウェア」か「ファッション」がタイトルにあるページを閲覧したユーザーの興味関心
(集計期間:2021年10月~2022年9月、デバイス:PC&スマートフォン)
ファミマファッションのよさは、利便性だけではありません。
対象者はネット人口全体と比べて特徴的に、ファッションへの関心が高いことがわかります。 もともとファッションへの感度の高いユーザーに「デザイン性の高いアイテムの購入ができる」という新しい体験が評価された、といえそうです。
関心層はTwitterの利用時間が長い傾向
「ファミマ」か「ファミリーマート」と、「ウェア」か「ファッション」がタイトルにあるページを閲覧したユーザーのTwitter利用時間割合
(集計期間:2021年10月~2022年9月、デバイス:PC&スマートフォン)
Twitterの利用時間について、ネット利用者全体と対象者を比較すると、対象者のほうがTwitterの利用率・利用時間が多い傾向がみられました。Twitterで情報収集をしている中で、ファミマファッションについて認知するケースが多そうです。
このようにしてSNSで新しい情報を仕入れたときに、「もっと詳しく知りたい」「自分に必要かどうか判断する情報が欲しい」と感じて、ブラウザで調べる行動にうつる人も多いのではないでしょうか。
■SNSの声
実際にTwitterではファミマの靴下を高く評価しているユーザーが少なくないことがわかります。白地にブルーとグリーンをあしらった「ファミマカラー」の靴下だけでなく、子ども用に投入されたインパクトのある色味の靴下の評価も高いようです。
ファミマの靴下案外よくて、こども用の派手な色もあるというので明日の運動会用に買ってきました
ファミマの靴下良過ぎる。
ファミマカラーのライン入ってるの普通に可愛いし、なんなら生地が好きだから無地の白靴下も買ってる。
毎日履きたい。
ファミマの靴下をウチにも出荷してくれ
ファミマで発見!衝動買いしました!撥水パーカーこの時期ブロちゃんのマストアイテムかも!靴下もタオルも色デザイン好きです。
明日さっそく使ってみます!
#ブロンプトン
#BROMPTON
#ファミマ
手持ちの靴下がどんどんファミマのものになっていく
生活者のリアルな声を聞いてみた!
今回ヴァリューズ社内でも、ファミリーマートの衣料ブランド「コンビニエンスウェア」を知っているか、聞いてまわりました。
Q:ファミリーマートのオリジナルブランド「コンビニエンスウェア」について知っている?
A:聞いたこと・見たことがある(14人)、買ったことがある(14人)、初耳(32人)
60人中「聞いたこと・見たことがある」と回答したのは14人、「買ったことがある」と回答したのは14人でした。約半数が認知していることがわかります。
■キッカケは旅行中の出会い やSNS。社会運動に貢献できる取り組みへの評価も高い
20代
大雨の日に旅行先でずぶ濡れになってしまい、靴下やTシャツを買いました。田舎でファミマ以外に服を買う場所がなかったのでめちゃくちゃ助かりました。
20代
友人と日帰り旅行中、急遽温泉に行くことになり、下着と靴下を買いました。旅先が田舎で夜遅かったこともあり、コンビニくらいしか空いているところがなく、とても助かりました!
20代
旅先で温泉に行こうとした際に着替えとして一式購入した
ユーザーがファミマの「コンビニエンスウェア」に触れたキッカケのひとつに「旅行」があるようです。47都道府県すべてに出店している ため、国内の旅行先でファミリーマートを目にする機会は少なくありません。
旅行先でも地元と変わらない「風景」のひとつであり、緊急時にフォローしてくれる「心のよりどころ」としてもファミマと「コンビニエンスウェア」は機能しているといえるでしょう。
20代
靴下を持っています。店舗で見て気になり、SNSでも見て後押しされ、買いました!レインボーカラーの靴下を買うとLGBTQ支援団体に寄付される、という仕組みも良いなと思ったポイントでした。
LGBTQの活動のシンボルであるレインボーカラーの靴下を購入することで、団体をサポートできる仕組みを評価する声もありました。世間と同様、SNSを見て注目している社員も。
20代
去年からめちゃくちゃ愛用しており、今年の黒白Tはすべてコンビニエンスウェアでした(黒6白3くらいあります)。長袖もすでに購入しました。ソックス、インナーシャツも愛用しています。キムタクがラインソックスの着用画をインスタに載せてバズッたタイミングがあり、そこで認知しました。値段の割に質が高い(めっちゃ洗濯しても首元がよれない、生地が擦れない)、シンプルで着やすい、パッケージがおしゃれ、サイズ展開豊富、いつでもコンビニで買えて楽、などたくさん魅力あります。
社内では普段着をすべて「コンビニエンスウェア」で揃えているヘビーユーザーもいました。ファッションにこだわりのある芸能人の方が「コンビニエンスウェア」を高く評価していたことや、虜になったヘビーユーザーの口コミによってさらに「コンビニエンスウェア」のファンが広まっているようです。実際に、上の愛用者から猛烈に推されたことによって、ブランドを認知・商品購入に至ったという社員も複数人見られました。
まとめ
今回はファミマファッションの関心ユーザーついて 分析しました。その結果、
・性別問わず幅広い年代のユーザーが関心を示している
・購入のきっかけは「利便性の高さ」という人が多い
・SNSで情報収集を行い、購入の参考にすることが多い
・興味を示すのは、もともとファッションへの関心が高い人が多い
といったことがわかってきました。
このように、コンビニ×ファッションに興味を持つ検索者の属性や行動には、一定のパターンがあることがわかりました。広く商品が認知されるにはまず、コアユーザーの認知や評価を高めることが必要です。このデータを、商品づくりやマーケティングに役立ててみてはいかがでしょうか。
1978年長崎県生まれ。1男の母。プログラマを経て現在フリーランスのライターとして活動中。不惑の年齢にしてK-popにハマり、韓国語勉強中。食育アドバイザー、薬膳コーディネーター、野菜スペシャリスト。