Zenly利用者はどこにいった?位置情報共有アプリの利用動向

Zenly利用者はどこにいった?位置情報共有アプリの利用動向

2023年2月にサービス終了を迎えた大人気アプリのZenly。友人や家族と位置情報を共有する便利さをユーザーに伝え、位置情報共有アプリの需要を高めました。Zenlyがなくなった今、その需要の受け皿はどのアプリが担うのでしょうか。ということで今回は、「whoo」、「NauNau(ナウナウ)」、「友どこ」をZenlyに代わる位置情報共有アプリとして取り上げ、ユーザー層やZenlyとの併用率などから、実際に乗り換えは進んでいるのか、どのアプリが優勢なのか、調査していきます。


大人気を博したZenlyがサービス終了

2023年2月3日に、代表的な位置情報共有アプリであったZenlyがサービスを終了しました。皆さんの中にもZenlyを利用していた人は多いのではないでしょうか。Zenlyがなくなったとしても、位置情報を友だちや家族と共有したいというニーズはなくならないでしょう。

そこで今回は、Zenlyに代わる位置情報共有アプリをいくつかピックアップし、それぞれのアプリの特徴や利用者層などを分析し、位置情報共有アプリの市場動向について調査をします。なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を使用します。

Zenlyとは?

まず、Zenlyはどのようなアプリなのかを簡単に紹介します。Zenlyは、スマートフォン上で友達や家族などと位置情報をリアルタイムで共有できるアプリです。相手の位置を地図上で確認したり、自分の位置情報を相手に共有したりすることができます。また、グループチャット機能があり、友達とのコミュニケーションも円滑に行えます。

20代だけでなく、40代の「見守り」利用も

では、Zenly利用者の年代を見てみます。

Zenly利用者の年代
期間:2022年11月~2023年2月
デバイス:スマートフォン

20代が40%以上で群を抜いて多くなっています。若年層に人気のアプリであったことがわかります。また、40代の割合も比較的高くなっています。おそらく、子どもの位置を確認するために親が利用していたのだと考えられます。

Zenlyを利用する目的は?

次に、Zenlyの利用目的を調べます。若年層を対象にマイナビティーンズラボが行った調査によると、「友達、家族がどこにいるか確認するため」が最多となっており、「待ち合わせのため」がそれに続きます。

調査期間:2022/11/30~2022/12/20、
対象:13-22歳のマイナビティーンズ会員/外部調査会社パネル(女子)
回答数:358件(内訳:中学生15件、高校生274件、大学・専門学生63件、フリーター1件、社会人5件)

また、同調査によると、位置情報の共有相手は友人(親友を含む)が最多で、第3位が「両親」となっていました。

これらのことから、Zenlyの利用者には若年層が多く、彼らは主に友人がどこにいるかを確認するためにZenlyを使っていたことがわかりました。また、友人以外にも家族間での利用も見受けられました。

では、Zenlyのサービスが終了した今、これらのユーザーは代わりにどのアプリを利用しているのでしょうか。

代替アプリのwhoo、NauNau、友どこを分析

位置情報を共有できるアプリは数多くあるのですが、今回は以下の点を重視して、whooNauNau友どこの3つの位置情報共有アプリをZenlyの代替アプリとして取り上げます。

・位置情報共有の機能がメインであること
・子どもの安全確認など特定の目的のためのアプリではなく、あくまで汎用的な位置情報共有アプリであること
・直近1か月のユーザー数の上昇率が高いこと(=サービス終了のZenlyから乗り換えているユーザーが多いと考えられる)

whoo、NauNau、友どこの主な機能・使い方はほぼ同じで、Zenlyと非常に似たものとなっています。

・IDやQRコードなどから位置情報を共有する相手を追加する
・マップ上に相手の位置が表示される
・チャットもできる

またこれらの代替アプリは、Dockpitにおけるソーシャルネットワークのカテゴリ内で、2023年2月の前月比上昇率がそれぞれ1位(whoo)、8位(友どこ)、12位(NauNau)となっています。

アプリトレンド:2023年2月の前月比上昇(アプリカテゴリ:ソーシャルネットワーク)
デバイス:スマートフォン

では、Dockpitを用いてこれらの代替アプリをZenlyとともに詳しく分析していきます。

ユーザー数推移から見る乗り換えの流れ

まずは、各アプリのユーザー数推移です。

「Zenly」「whoo」「NauNau」「友どこ」のユーザー数推移
期間:2022年11月~2023年2月
デバイス:スマートフォン

Zenlyのサービスが終了する2023年2月に向かって各アプリのユーザー数が近づいていっていることから、Zenlyから代替アプリへの乗り換えが進んでいると考えられます。代替アプリの中では、2022年12月にNauNauが他の2つの代替アプリよりも早くユーザー数を伸ばしていますが、これはwhooと友どこのリリースが2022年12月なのに対し、NauNauのリリースが2022年10月と、一足早くリリースしたことが関係しているのでしょう。その証拠に、whooと友どこもそれぞれ2023年1月、2月にユーザー数を伸ばしています。そして、whooと友どこのユーザー数が増えた時期にNauNauのユーザー数が少し落ちていることから、以下のような流れが考えられます。

2022年9月:Zenlyのサービス終了発表(終了日は未発表)
2022年10月:NauNauリリース
2022年12月:Zenlyのサービス終了日が2023年2月に決定→NauNauへの乗り換えが活発に
2022年12月:whoo、友どこリリース
2023年1月~2月:NauNauとZenlyからwhoo、友どこへの乗り換えが進む

各代替アプリとZenlyの併用率に違い

続いて、実際に乗り換えが進んでいるのかを確認するために、Zenlyから見た代替アプリの併用率を見てみます。

「Zenly」から見た「whoo」「NauNau」「友どこ」の併用率
期間:2022年11月~2023年2月
デバイス:スマートフォン

2022年12月から「併用なし」の割合が減り、代替アプリの併用率が伸びています。特に、2023年2月時点ではwhooの併用率がNauNauと友どこよりも高く、Zenlyからの乗り換え先として最も有力なアプリといえそうです。
一方で、友どことの併用率は低水準を維持しています。NauNauとwhooは少なくとも、ある1か月では併用率が20%を超えているのに対して、友どこは低水準のままです。

次は、各代替アプリから見たZenlyの併用率です。

「whoo」「NauNau」「友どこ」から見た「Zenly」の併用率
期間:2022年11月~2023年2月
デバイス:スマートフォン

whooとNauNauの利用者の約60%が2023年2月時点でもZenlyを併用しているのに対して、2月時点でZenlyを併用している友どこの利用者は約20%となっています。

このことからまずわかることは、whooとNauNauの利用者の多くはZenlyからの乗り換えであることです。「Zenlyのサービスが終了するから代わりのアプリを探そう」という考えのもと、Zenlyを使いながら代替アプリを試しているのではないでしょうか。

そして、友どこについては、「はじめ(2022年12月ごろ)はZenlyと併用していた乗り換えユーザーが大多数だったが、2023年1月からZenlyなどの位置情報共有アプリをそもそも使っていなかったユーザーが流れてきた可能性」が高そうです。

whoo、NauNauはZenlyと似たユーザー層、友どこは異なるユーザー層

では、各アプリのユーザー層をもう少し詳しく確認するために、ユーザーの年代を見てみましょう。

「Zenly」「whoo」「NauNau」「友どこ」利用者の年代
期間:2022年11月~2023年2月
デバイス:スマートフォン

まず、whooとNauNauのユーザーの年代はZenlyユーザーと波形が似ていることがわかります。そのうえで、whooとNauNauでは20代利用者の割合がZenlyよりも高くなっていることから、さらにユーザーが若年層に集中し、親世代が減ったと考えられます。

一方、友どこユーザーの年代は、Zenly、whoo、NauNauのすべてと異なっており、ネット利用者全体のグラフと似た形になっています。このことから、友どこにおいて、Zenlyからの乗り換えユーザーは少数であり、位置情報共有アプリとして今までリーチできていなかった層が大半を占めているのではないか、と推測できます。友どこは60代の割合が高いことを考えると、子供(40代)が親の見守りのために利用を促している、というシナリオも考えられそうです。

位置情報共有アプリは親が子どもの位置を把握するために使われることも多いため、最後に、各アプリユーザーの子どもの有無を見てみましょう。

「Zenly」「whoo」「NauNau」「友どこ」利用者の子供有無
期間:2022年11月~2023年2月
デバイス:スマートフォン

Zenlyは子どもありの割合の方が高いのに対して、その乗り換え先として有力なwhoo、そして特にNauNauは子どもなしの割合の方が高くなっています。これは、whooとNauNauのユーザーが若年層に偏っていることと関係していそうです。
一方で、友どこは子供ありの割合が高くなっています。前述のように、高齢の親を見守る目的で友どこを利用している人が一定数存在することが考えられるほか、見守りを主目的とした別の位置情報共有アプリへの乗り換えが起こった可能性もあるのではないでしょうか。

まとめ

今回は、2023年2月にサービス終了したZenlyとその代替アプリとしてwhoo、NauNau、友どこを取り上げ、各アプリを分析しながら、位置情報共有アプリの市場動向を調査しました。最後に、今回の発見をまとめます。

・Zenlyのサービス終了に向けて、whoo、NauNau、友どこのユーザー数が増加。2023年2月時点では、友どこがZenlyに次いで多くのユーザー数をもつ。
・whoo、NauNauのユーザーはZenlyとの併用率が高く、乗り換えユーザーが多いと考えられる。
・whoo、NauNauのユーザー層はZenlyと似ているが、若年層がより多くなっている。一方で友どこのユーザー層はZenlyとは異なり、今まで位置情報共有アプリがリーチできていなかった層から支持されていると考えられる。
・whoo、NauNauは子どものいるユーザーが比較的少なめ。


位置情報共有アプリの市場では、以前はZenlyの一強で、Zenlyが終了した今はいくつかの代替アプリが乱立し、競争が激化していることがわかります。今後この市場の競争はより熾烈になっていくのでしょうか。引き続き動向に注目していきましょう。




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この記事のライター

2023年4月にヴァリューズ入社予定の大学4年生です。大学では主に経済学を学んでいます。

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