動画配信サービス最新動向!コロナ初期~現在までの利用実態を調査

動画配信サービス最新動向!コロナ初期~現在までの利用実態を調査

東京オリンピックの延期など、世界的に大きな影響を及ぼしたコロナは、3年の時を経てようやく収束の気配を見せ始めました。 そんな、コロナ禍の生活に適応を見せたのが「動画配信サービス」です。果たしてコロナ収束は動画配信サービスのユーザー数に影響を与えたのでしょうか。本稿では、Amazon Prime Video、Netflix、U-NEXT、Hulu、Disney+の5サービスについて、消費者のアプリ利用動向を調査します。


主要VODアプリユーザー数の推移

国内VODはprime videoが圧倒的

まずは国内の主要動画配信サービス各社のアプリユーザー数を見てみましょう。なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を用います。

各社それぞれのベネフィットがありますが、中でもamazonユーザーの中で、お急ぎ便などの利便性目的でamazon prime会員となったユーザーは、必然的にprime videoも利用可能ユーザーとなり、その結果amazon primeユーザーが圧倒的に多くなっていることが見て取れます。
また、prime videoは月額500円というリーズナブルな料金も支持されている一因と考えられます。

VOD各社のアプリ起動ユーザー数推移
調査期間:2020年5月、2021年5月、2022年5月、2023年5月
デバイス:スマートフォン


なお、Disney+は2021年10月に日本版アプリとグローバル版の統合があり、正確な統計開始がサービス開始の2020年6月より後にずれ込んでいます。

2023年5月時点では、前述のように amazon primeが独走状態ですが、その後ろをNetflixが追いかける形となっています。amazon primeは唯一ユーザー数の減少が見られますが、Netflixは統計開始の2020年5月より増加を続け、amazon primeとの差を縮めています。

U-NEXTもまた大きくユーザー数を伸ばしており、2023年5月時点で第二位につけるNetflixに追随する勢いです。さらにその後をHuluが、そのすぐ後をDisney+が追う形となっています。

コロナ収束も、VODユーザー数は増加傾向にある

2023年1月27日、岸田総理は「5月8日」と日付を明確にした上で、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけを5類に引き下げると発表しました。国内でも、これでやっと以前の生活に戻れると一気に色めき立ちましたが、VODアプリユーザー数のデータを見ると、prime video以外のサービスでは総じてユーザー数が増加していることがわかります。

Disney+も先行のVODサービスが乱立する中で、好調に伸長していることがうかがえます。物価上昇が続く中ですが、コロナ禍でVODの利便性を知ったユーザーは、コロナが収束しても引き続き利用を選んでいると言えそうです。

VOD市場の活気の一方、レンタルビデオ店は衰退傾向に

人々が動画配信サービスで映画やドラマ、テレビ放送などを視聴するようになり、動画配信サービス市場はこのところ活気に満ちています。自宅やカフェなど、自分の好きなところで手間をかけず、ゆっくりと動画を楽しむことができる。それは、時間的価値を追求する現代の我々にはうってつけのサービスと言えるわけですから、市場が賑わうのも頷けます。

一方、その影響を大きく受けているのが「レンタルビデオ店」です。
動画配信サービスにおけるユーザー数増加は、レンタルビデオ市場へどれほどの打撃を与えているのでしょうか。数値で見てみましょう。

レンタルビデオ店舗数推移
日本映像ソフト協会HP「JVAレンタルシステム加盟店数推移」より出典


グラフを見てわかるように、コロナ感染拡大開始の前年2019年時点では2841店舗あったレンタルビデオ店が、2023年6月時点では2455店舗まで減少しています。
※JVAレンタルシステム加盟店のみの集計のため、実際のレンタルビデオ店舗の数とは異なります

このように、レンタルビデオ店の店舗数を見ても、やはり人々は動画配信サービスへ流入していることがうかがえます。
筆者はよく近くのレンタルビデオ店へ出向きますが、最近のレンタルビデオ店は以前と様相が異なり、DVDや漫画のレンタルのみならず、同じ店舗内で日用品や食料品まで販売するようになっています。生き残りをかけたレンタルビデオ店の企業努力が垣間見えますね。

各種VODユーザー比率から見える各社の傾向

U-NEXTは20代、Disney+は30代、Huluは40代

最近では年代を問わずネットユーザーは増えていますが、各年代を見てみると、それぞれの動画配信サービス利用者の特徴が見えてきます。

サービス間で比較すると、U-NEXTは20代の割合が高く、30代ではDisney+、40代ではHuluといった具合に、サービスごとにユーザー像が異なっています。

U-NEXT:他にはない、雑誌の閲覧が可能。動画だけではなく、20代向けの雑誌などがユーザー数増加を牽引している可能性も。

Hulu:ドラマが充実。海外のドラマなどもリアルタイムで視聴が可能。日本テレビ系のドラマも見逃し配信があり、ドラマ世代には人気がある可能性も。

VODアプリユーザーの年代割合
調査期間:2023年5月
デバイス:スマートフォン
※紫はDisney+を表す

Huluの女性比率の高さが目立つ

コロナ初期(2020年5月)における各社男女別ユーザー比率を見てみると、HuluとNetflixは女性が半数以上を占め、prime videoとU-NEXTでは男性が半数以上を占めていました。特にHuluの女性比率の高さが目立ちますね。

VODアプリユーザーの男女比
調査期間:2020年5月
デバイス:スマートフォン

男女比については、コロナ収束後の2023年5月でも同様の傾向にあります。しかし、prime videoやU-NEXTにおいても女性の比率がじわりと増加しており、半数に迫る勢いでもあります。新しく参入したDisney+は、Huluの次に女性の割合が高くなっています。

VODアプリユーザーの男女比
調査期間:2023年5月
デバイス:スマートフォン

VODは複数利用ユーザーも

それぞれのアプリから見た併用利用状況において、prime videoではなんと7割を超えるユーザーが「併用なし」という結果が出ています。
その反面prime video以外の全てのアプリにおいて、「併用なし」の次にprime videoとの併用が最も多くなっています。Amazon本体のprime会員の多さがうかがえますね。

続いて「併用なし」の割合が高いのはU-NEXTで、一方最も「併用なし」の割合が低いのはDisney+という結果に。市場参入が最近であることが影響していそうです。

VODアプリユーザーの併用率
調査期間:2023年5月
デバイス:スマートフォン

まとめ

コロナという全世界の社会的大混乱の中、私たちはいかに充実させて生き抜くかを考え、その中で動画配信サービス市場は大きく成長を遂げました。

そしてその利便性を充分に理解した私たちは、コロナが収束した今も変わらず動画配信サービスでさまざまなコンテンツを楽しんでいます。

私たちの生活に、安らぎや潤い、活力などを与えてくれる動画配信サービスが、今後どのように変化していくか、楽しみに見守っていきましょう。

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

dockpit 無料版の登録はこちら

この記事のライター

会社員兼ライター。長年スポーツインストラクターとして従事、トレーニングジムトレーナーや水泳指導に当たる。引退後は美容機器メーカーにて新商品開発に携わり、現在は食品会社のメニュー開発を担当。会社員として働く傍ら、創作活動にも取り組む。
第5回東京新聞300文字小説最優秀賞受賞。

関連する投稿


【TVドラマランキング】斬新なストーリーが話題に!若年層に人気の「ライオンの隠れ家」や熟年層が注目する「海に眠るダイヤモンド」など

【TVドラマランキング】斬新なストーリーが話題に!若年層に人気の「ライオンの隠れ家」や熟年層が注目する「海に眠るダイヤモンド」など

近年動画配信サービスが普及し、時間や場所にとらわれず様々なジャンルの動画を手軽に視聴できるようになりました。テレビ離れが幅広い年代で囁かれている時代、話題になるテレビドラマとは、どのようなものなのでしょうか。今回は、2024年10月~12月に放送されたドラマについて、認知度や視聴方法、満足度、満足理由などをランキング化。その実態を探りました。


拡大するフリーランス市場。スキルシェア・クラウドソーシング業界の動向を調査

拡大するフリーランス市場。スキルシェア・クラウドソーシング業界の動向を調査

仕事を依頼したい人と、請け負いたい人のマッチングを行うスキルシェア、及びクラウドソーシングサービス。人材不足の解消も期待されていますが、こうしたサービスのニーズは実際に高まっているのでしょうか?今回は、ココナラ、ワークス、ランサーズの3サービスを取り上げ、市場の動向を調査していきます。


mixi2のユーザー数"143万人"は今後増えるのか。他SNSと比較して考察

mixi2のユーザー数"143万人"は今後増えるのか。他SNSと比較して考察

2024年12月16日に突如としてリリースされた「mixi2」。mixi2を使ってるという声も聞こえ始めるなか、他のSNSと比べると、どの程度のユーザー数なのでしょうか。この記事では、mixi2のユーザー数を、X、Facebookなどの主要SNSと比較。現在の立ち位置を紹介するとともに、招待制の他のSNSであるClubhouse、Blueskyと比較し、初動のユーザー数の伸びを分析しました。また、今後ユーザー数がどう推移していくのかも考察しています。


キリン晴れ風、好調の背景にエコ志向の取り組みが Web行動データから人気の理由を考察!

キリン晴れ風、好調の背景にエコ志向の取り組みが Web行動データから人気の理由を考察!

これからの時代のスタンダードビールとして、「キリンラガー」や「キリン一番搾り生ビール」に続く、新たな定番となりつつある「キリンビール 晴れ風」。2023年4月に販売開始されて以来、ヒット商品として多数のメディアで取り上げられています。日々、続々と各ビールメーカーから新商品が登場するなかで、「晴れ風」はどのように人気を集めたのでしょうか。「晴れ風」の成功要因をデータから考察します。


スマホ時代に「紙の手帳」がブーム!人気の背景を調査

スマホ時代に「紙の手帳」がブーム!人気の背景を調査

書店や文房具店にズラリと並ぶ手帳。2024年は、手帳の売り上げが前年から4割も増えた店舗もあったとか。なぜ今、紙の手帳が盛り上がりを見せているのか、どんな人が注目しているのか、ニーズや使い方とあわせて調査しました。


最新の投稿


推し活人口は1384万人、市場規模は3兆5千億円に【CDG調査】

推し活人口は1384万人、市場規模は3兆5千億円に【CDG調査】

株式会社CDGと、株式会社Oshicocoは、第2回となる推し活実態アンケート調査を実施し、調査結果を公開しました。


BPaaSの活用意向は約7割!デジタルマーケ業務での導入効果は「広告運用の効率化」が最多【バレットグループ調査】

BPaaSの活用意向は約7割!デジタルマーケ業務での導入効果は「広告運用の効率化」が最多【バレットグループ調査】

バレットグループ株式会社は、マーケティング担当者および管理者、経営層を対象に「マーケティングとBPaaSについての調査」を実施し、結果を公開しました。BPaaS(Business Process as a Service)とは、BPO(業務プロセスのアウトソーシング)とSaaS(クラウドツール)を組み合わせ、業務プロセス全体を包括的に提供するサービスのことを指します。


第2次トランプ政権が発足 日本企業への影響は

第2次トランプ政権が発足 日本企業への影響は

2025年1月20日。ついに第2次トランプ政権が発足しました。大統領選挙前後からすでにトランプ政権に対するさまざまな憶測が飛び交っており、就任式でいくつもの大統領令へ署名をする姿には大きな反響も。そのような第2次トランプ政権の大きな肝となる政策は一体何なのでしょうか。本稿ではトランプ大統領がことあるごとに強く押し出している「関税」にフォーカスし、国際政治学者としてだけでなく、地政学リスク分野で企業へ助言を行うコンサルティング会社の代表取締役でもある和田大樹氏が解説します。


Adjust、アプリの年末年始休暇に関する最新インサイトを発表

Adjust、アプリの年末年始休暇に関する最新インサイトを発表

Adjustは、2024年の年末年始休暇におけるモバイルアプリ利用のトレンドや最新のインサイトを発表しました。


LINEリサーチ、募集開始から最短当日中にオンラインインタビューができるセルフ型ツールの提供を開始

LINEリサーチ、募集開始から最短当日中にオンラインインタビューができるセルフ型ツールの提供を開始

LINEヤフー株式会社は、同社が提供するスマートフォン専用のリサーチプラットフォーム「LINEリサーチ」にて、募集開始から最短当日中にオンラインインタビューができるセルフ型ツール「Quickインタビュー」の提供を開始したことを発表しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

ページトップへ