主要VODアプリユーザー数の推移
■国内VODはprime videoが圧倒的
まずは国内の主要動画配信サービス各社のアプリユーザー数を見てみましょう。なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を用います。
各社それぞれのベネフィットがありますが、中でもamazonユーザーの中で、お急ぎ便などの利便性目的でamazon prime会員となったユーザーは、必然的にprime videoも利用可能ユーザーとなり、その結果amazon primeユーザーが圧倒的に多くなっていることが見て取れます。
また、prime videoは月額500円というリーズナブルな料金も支持されている一因と考えられます。
VOD各社のアプリ起動ユーザー数推移
調査期間:2020年5月、2021年5月、2022年5月、2023年5月
デバイス:スマートフォン
なお、Disney+は2021年10月に日本版アプリとグローバル版の統合があり、正確な統計開始がサービス開始の2020年6月より後にずれ込んでいます。
2023年5月時点では、前述のように amazon primeが独走状態ですが、その後ろをNetflixが追いかける形となっています。amazon primeは唯一ユーザー数の減少が見られますが、Netflixは統計開始の2020年5月より増加を続け、amazon primeとの差を縮めています。
U-NEXTもまた大きくユーザー数を伸ばしており、2023年5月時点で第二位につけるNetflixに追随する勢いです。さらにその後をHuluが、そのすぐ後をDisney+が追う形となっています。
■コロナ収束も、VODユーザー数は増加傾向にある
2023年1月27日、岸田総理は「5月8日」と日付を明確にした上で、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけを5類に引き下げると発表しました。国内でも、これでやっと以前の生活に戻れると一気に色めき立ちましたが、VODアプリユーザー数のデータを見ると、prime video以外のサービスでは総じてユーザー数が増加していることがわかります。
Disney+も先行のVODサービスが乱立する中で、好調に伸長していることがうかがえます。物価上昇が続く中ですが、コロナ禍でVODの利便性を知ったユーザーは、コロナが収束しても引き続き利用を選んでいると言えそうです。
VOD市場の活気の一方、レンタルビデオ店は衰退傾向に
人々が動画配信サービスで映画やドラマ、テレビ放送などを視聴するようになり、動画配信サービス市場はこのところ活気に満ちています。自宅やカフェなど、自分の好きなところで手間をかけず、ゆっくりと動画を楽しむことができる。それは、時間的価値を追求する現代の我々にはうってつけのサービスと言えるわけですから、市場が賑わうのも頷けます。
一方、その影響を大きく受けているのが「レンタルビデオ店」です。
動画配信サービスにおけるユーザー数増加は、レンタルビデオ市場へどれほどの打撃を与えているのでしょうか。数値で見てみましょう。
レンタルビデオ店舗数推移
日本映像ソフト協会HP「JVAレンタルシステム加盟店数推移」より出典
グラフを見てわかるように、コロナ感染拡大開始の前年2019年時点では2841店舗あったレンタルビデオ店が、2023年6月時点では2455店舗まで減少しています。
※JVAレンタルシステム加盟店のみの集計のため、実際のレンタルビデオ店舗の数とは異なります
このように、レンタルビデオ店の店舗数を見ても、やはり人々は動画配信サービスへ流入していることがうかがえます。
筆者はよく近くのレンタルビデオ店へ出向きますが、最近のレンタルビデオ店は以前と様相が異なり、DVDや漫画のレンタルのみならず、同じ店舗内で日用品や食料品まで販売するようになっています。生き残りをかけたレンタルビデオ店の企業努力が垣間見えますね。
各種VODユーザー比率から見える各社の傾向
■U-NEXTは20代、Disney+は30代、Huluは40代
最近では年代を問わずネットユーザーは増えていますが、各年代を見てみると、それぞれの動画配信サービス利用者の特徴が見えてきます。
サービス間で比較すると、U-NEXTは20代の割合が高く、30代ではDisney+、40代ではHuluといった具合に、サービスごとにユーザー像が異なっています。
U-NEXT:他にはない、雑誌の閲覧が可能。動画だけではなく、20代向けの雑誌などがユーザー数増加を牽引している可能性も。
Hulu:ドラマが充実。海外のドラマなどもリアルタイムで視聴が可能。日本テレビ系のドラマも見逃し配信があり、ドラマ世代には人気がある可能性も。
VODアプリユーザーの年代割合
調査期間:2023年5月
デバイス:スマートフォン
※紫はDisney+を表す
■Huluの女性比率の高さが目立つ
コロナ初期(2020年5月)における各社男女別ユーザー比率を見てみると、HuluとNetflixは女性が半数以上を占め、prime videoとU-NEXTでは男性が半数以上を占めていました。特にHuluの女性比率の高さが目立ちますね。
VODアプリユーザーの男女比
調査期間:2020年5月
デバイス:スマートフォン
男女比については、コロナ収束後の2023年5月でも同様の傾向にあります。しかし、prime videoやU-NEXTにおいても女性の比率がじわりと増加しており、半数に迫る勢いでもあります。新しく参入したDisney+は、Huluの次に女性の割合が高くなっています。
VODアプリユーザーの男女比
調査期間:2023年5月
デバイス:スマートフォン
VODは複数利用ユーザーも
それぞれのアプリから見た併用利用状況において、prime videoではなんと7割を超えるユーザーが「併用なし」という結果が出ています。
その反面prime video以外の全てのアプリにおいて、「併用なし」の次にprime videoとの併用が最も多くなっています。Amazon本体のprime会員の多さがうかがえますね。
続いて「併用なし」の割合が高いのはU-NEXTで、一方最も「併用なし」の割合が低いのはDisney+という結果に。市場参入が最近であることが影響していそうです。
VODアプリユーザーの併用率
調査期間:2023年5月
デバイス:スマートフォン
まとめ
コロナという全世界の社会的大混乱の中、私たちはいかに充実させて生き抜くかを考え、その中で動画配信サービス市場は大きく成長を遂げました。
そしてその利便性を充分に理解した私たちは、コロナが収束した今も変わらず動画配信サービスでさまざまなコンテンツを楽しんでいます。
私たちの生活に、安らぎや潤い、活力などを与えてくれる動画配信サービスが、今後どのように変化していくか、楽しみに見守っていきましょう。
▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。
会社員兼ライター。長年スポーツインストラクターとして従事、トレーニングジムトレーナーや水泳指導に当たる。引退後は美容機器メーカーにて新商品開発に携わり、現在は食品会社のメニュー開発を担当。会社員として働く傍ら、創作活動にも取り組む。
第5回東京新聞300文字小説最優秀賞受賞。