検索者急増のライスペーパーとは
ライスペーパーは、もともとお米を原料として作られていたベトナムの食材であり、ベトナム料理の代表格である生春巻きなどで使用されることで知られています。ライスペーパーで作る生春巻きは、中国料理の春巻きとは異なりモチモチとした食感が楽しめるうえに、中身が透けて見えることで目でも楽しむことが出来る料理です。
市販のライスペーパーは乾燥した状態で保存されているため、使用時には40℃程度のぬるま湯または水で戻す必要があります。20〜30秒程度で柔らかくモチモチした状態になるため、食材を包むために自由に折り曲げたり、好みのサイズにカットしたり出来るようになります。
そんなライスペーパーですが、いつごろから注目されるようになったのでしょうか。毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用いて分析します。
下記グラフは、2022年9月から2023年8月までの「ライスペーパー」の検索者数の推移を表しています。ライスペーパーの検索者数は2023年2月ごろから急激に増加し、2023年3月でピークを迎え、その後は50,000人前後で推移しています。現在は検索者数の伸びは止まっていますが、依然として人気が衰えたわけではなさそうです。
「ライスペーパー」検索者数の推移
集計期間:2022年9月~2023年8月
デバイス:PC、スマートフォン
ライスペーパーが注目され出したのは2023年3月ごろからのようです。実際にSNSを振り返ってみても、ライスペーパー関連の投稿は2023年に入ってから増加しています。例えばTikTokでは、2023年上半期のトレンド大賞ヒットアイテム部門にライスペーパーが選ばれています。
ライスペーパーのトレンドは1人の女子大生から⁉
さらに、ライスペーパーがトレンドになったきっかけを探っていきましょう。ライスペーパーには、SNS上でその人気に火をつけた先駆者といえる人物が存在します。それが、先ほどのTikTok上半期トレンド大賞で受賞していた「ライスペーパーネキ」こと「女子大生ザッパーみか」というアカウントです。ライスペーパーネキは22歳の女子大学生で主にTikTok、Instagram、YouTubeなどで活動するインフルエンサーです。
彼女が活動を始めたきっかけは、彼女自身がダイエットを経験して得た知見をシェアしたいと感じたことでした。もともと無理なダイエットをしていたライスペーパーネキですが、スポーツクラブRIZAPに通い始めてから、食事管理などで健康的に楽しくダイエットが出来ることを学びました。「女子大生ザッパーみか」の「ザッパー」はRIZAPに通っていることに由来する彼女の造語のようです。
それからの彼女は、自分が好きな食べ物を我慢するのではなく、自分が好きな食べ物を使った健康的なレシピを考えるようになり、SNSでオリジナルのダイエットレシピを公開するようになりました。
ライスペーパーネキの過去の動画を振り返ってみると、活動を開始した2021年10月ごろは、「RIZAP女子が教える低糖質メニュー」というタイトルで多くの動画を出しており、ライスペーパーはあまり登場していませんでした。その後、2022年12月ごろに「時間がない時の〇〇」シリーズが人気になりました。そこで頻繁に使われたライスペーパーに徐々に動画を絞るようになり、現在のライスペーパーネキが誕生しました。
下記の画像では、2022年11月から2022年12月ごろの動画が表示されています。もともと4桁代だった高評価数が、「時間がない時の〇〇」から跳ね上がっていることが分かります。
特に、水を溜めたお皿を持っているライスペーパー関連の動画は安定して高評価を稼いでいます。
ライスペーパーネキは最初からライスペーパーを押し出していたのではなく、紹介した数あるダイエットレシピの中から特にヒットしたライスペーパーに狙いを定め、トレンドを作ることに成功しました。美味しいお店紹介やレシピ紹介などのグルメ系は、TikTokにおける人気コンテンツの一つですが、ただダイエットレシピを紹介するだけでは大きくバズることは出来ませんでした。
ライスペーパーがヒットしたのは、ライスペーパーという発想の独自性と、時短レシピとしての手軽さが相まって、「自分も真似してみたい」と思わせることに成功したからという可能性が考えられます。
ダイエット食品として若い女性の心を掴むライスペーパー
では、ライスペーパーを利用している層にはどのような特徴があるのでしょうか。下記グラフはそれぞれ、「ライスペーパー」と検索した人の性別割合と年代割合を表しています。
まず性別から見てみると、女性が8割以上と圧倒的に多いことが分かります。日常的に料理をしていて、レシピ系のコンテンツに関心がある人は女性の方が多いのかもしれません。他にも、ライスペーパーネキが紹介していたように、ライスペーパーはダイエットにも効果的なヘルシー食材なので、美容意識の高い女性の目を惹いた影響も考えられます。
つづいて年代割合も見ていきましょう。ネット利用者全体と比較すると、20〜40代の割合が高く、特に20代は注目度が高いようです。新しい料理を試してみたいというニーズは20〜40代に多く、SNSのトレンドに敏感な20代は特にその傾向が顕著に表れたと考えられます。
「ライスペーパー」検索者の性別・年代割合
集計期間:2022年9月~2023年8月
デバイス:PC、スマートフォン
ライスペーパーに興味があるのは20〜40代の女性で、ダイエットに関心があり、普段から料理をする人という人物像が浮かび上がってきました。ここで、Web行動データとアンケートデータを用いて、ターゲットユーザーにおける特定の Web 行動の前後の動きと属性を集計できる、ヴァリューズの分析ツール「story bank(ストーリーバンク)」を用いてさらに詳しく分析します。
下記グラフは、「ライスペーパー」と検索した人の興味/関心について、縦軸をリーチ率(※1)、横軸を特徴値(※2)とした散布図です。
※1リーチ率:対象者のうち、アンケートで当該項目に回答した人数の比率
※2特徴値:対象者のリーチ率からネット人口全体のリーチ率を引いた値
「ライスペーパー」検索者の興味/関心
集計期間:2022年9月~2023年8月
デバイス:PC、スマートフォン
「ライスペーパー」という食品の名称で検索している人なので、散布図からも料理への関心が圧倒的に高いことが分かります。次いで特徴的だった項目は、「コスメ、化粧品」「ヘアケア、ヘアサロン」「ダイエット」などでした。やはり「ライスペーパー」の検索者は美容への意識が高い人が多いと言えそうです。
アレンジレシピの多様化も加速している
ライスペーパー検索者のニーズについて、さらに深堀してみましょう。下記表は、「ライスペーパー」検索者が流入したページのTOP5です。流入ページから、検索者が具体的にどんな情報を求めているのか探っていきましょう。
実際にランキングを見ていくと、1位から5位までの全てが「レシピ紹介」のページでした。ライスペーパーと検索した人のほとんどが、生春巻き以外の新しいアレンジレシピを探しているようです。
特に注目すべきなのは、5位にランクインした「韓国風ライスペーパー料理」の記事です。実は、韓国では日本よりも早い2021年〜2022年の間にライスペーパーが話題となる時期がありました。ドラマやアイドルをはじめとした韓国コンテンツは、日本でも人気が急上昇しており、日本人が認知している韓国人インフルエンサーも増えてきています。こうした背景もあり、韓国発のSNSの流行が日本にも流れてくるケースが、今後もさらに増加していくかもしれません。
「ライスペーパー」検索者の流入サイト ランキング
集計期間:2022年9月~2023年8月
デバイス:PC、スマートフォン
では、具体的にどのようなアレンジレシピが登場しているのか、いくつか例を見てみましょう。
まずは定番の生春巻きですが、一口に生春巻きと言っても中身の具を何にするかによって全く違う料理のように感じられます。エビをメインにしてプリプリ食感を楽しめるレシピや、サラダチキンをメインにしてボリュームのあるレシピなど、豊富なバリエーションがあります。そして生春巻きの派生として、餃子や饅頭など、焼く工程を加えることで新たなレシピが生まれました。
また、先ほど触れた韓国料理のトッポギや、イタリアンのピザなど、一目見ただけではライスペーパーが使われていることに気づけないようなレシピも存在します。
意外なレシピもご紹介します。ライスペーパーはそのモチモチとした食感から、スイーツとの相性もいいようです。例えば、フルーツやカスタード、あんこなどと組み合わせて大福風の和菓子として生まれ変わっています。
ライスペーパーを用いたスイーツは、ダイエット中だけど好きなものを食べたいという需要に見事に応えています。また、ライスペーパーを用いることで料理としての難易度も下がるため、より手軽に調理することが出来ます。ライスペーパースイーツは若い女性だけでなく、子供のちょっとしたおやつとして、ファミリー層にも注目されているようです。
このように、ライスペーパーには多種多様なレシピが存在しています。ライスペーパーは米粉を原料としているため様々な食材に合わせやすく、サイズや形の調整も簡単な食材です。自由にアレンジできるという汎用性の高さもライスペーパーの魅力の一つなのではないでしょうか。
数あるレシピ紹介コンテンツの中でもライスペーパーが注目を集めたのは、ベースとなるレシピが存在しつつも、自分のオリジナリティを表現できる余白が流行を加速させたからなのかもしれません。
まとめ
今回は話題のライスペーパーについて、話題となった背景や利用者の人物像に着目しつつ、トレンドの要因を分析しました。まとめると、以下のようなことが分かりました。
・ライスペーパーは、斬新なアイデアと調理の手軽さで「真似してみたい」と思わせることに成功し、流行したと考えられる。
・ライスペーパーはダイエット食品としても効果的だったため、美意識の高い若い女性に刺さった。
・ライスペーパーは汎用性の高い食材で、多くのアレンジレシピが登場している。
動画系のSNSでは、グルメ以外にもダンスやコスメなどの人気コンテンツが存在します。例えば2023年には、オトナブルーの「首振りダンス」が流行しました。いずれのジャンルにも共通するのは、「真似しやすさ」や「アレンジの自由度」が高いコンテンツであることが挙げられるのではないでしょうか。
今回のライスペーパーも、これらのヒットする条件を満たしていたように感じます。「新しくコンテンツを作りたい」、「流行をいち早くキャッチしたい」という方は、参考にされてみてはいかがでしょうか。
▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。
▼Web行動データとアンケートデータを用いて、ターゲットユーザーにおける特定の Web 行動の前後の動きと属性を集計できる、ヴァリューズの分析ツール「story bank」の詳細は以下からご覧ください。
storybank|データインテリジェンス×マーケティングで価値創造をともに
https://www.valuesccg.com/storybank/VALUES(ヴァリューズ)は国内最大規模のWeb行動ログのデータベースを活用し、データインテリジェンス×マーケティングで新たな市場価値の創造をサポートする、事業成長支援企業です。
大学では経済学部で主に会計学を学び、2024年に新卒でヴァリューズに入社しました。現在はデータプロモーション局にて、弊社プロモーション事業のフロントを担当しています。