ポストコロナ時代における中国人の消費変化

ポストコロナ時代における中国人の消費変化

「コロナ時代が過ぎた後、中国は一波の消費ブームを迎えるだろう」という予測の声が上がりました。しかし、「三亜旅行ブーム」を除いて、中国人の消費ブームは現れず、その代わりに中国人はむしろ借金の返済や預金に熱心でした。新型コロナウイルスが終息した後、中国人の消費能力は本当に低下し、もはや消費に熱心ではなくなったのでしょうか?それとも、中国の消費者の消費行為にはどのような変化が起こったのでしょうか?この記事ではポストコロナ時代における中国の消費トレンドの変化を解説します。


中国ブランドの消費比率の増加

コロナの影響下、最も注目すべき変化は中国人が中国のブランドの消費量を増やしたことです。逆に中国人は過去ほど海外ブランドを購入することに熱心ではなくなったようです。Trend(知萌)の中国ブランド消費トレンド報告書によると、2023年に79.9%の消費者が中国ブランドの消費を増やしました。このデータは2020年の73.3%を上回る結果です。

中国ブランドの消費増加比率

以下のグラフでは、中国の各年齢層の消費者が中国ブランドに対する消費が大幅に増加していることを示しています。2020年と比較して、90年代生まれとZ世代は特に中国ブランドに対する消費が顕著に増加しています。

消費者の世代比率

5点を満点にする勢いで、消費者の中国ブランドに対する総合的な好感度は4.17点に達しました。消費者が好む中国ブランドの提名には、ファーウェイやシャオミ、ハイアール、アンタなど、各業界のリーディングブランドが含まれています。さらに、各業界で有名ブランドの影響力の向上も、消費者の中国ブランドへの好意度を促進しました。

この変化の背後にはコロナ禍に中国で理性的な消費観が発展したことがあります。 2023年の中国消費者インサイト・ホワイトペーパーによると、調査対象の65.2%が「自身の生活の質を向上させるためにお金を使うべきだ」と認識し、55.7%の人が「必要に応じて商品を購入すべきだ」と認識しています。

このような消費観念の変化は、国際ブランドの追求から中国ブランドの選択への消費行動の変化に影響を与えるかもしれません。
また、中国ブランドがイノベーションに重点を置いていることも重要な要因の一つかもしれません。自動車を例にすると、2023年には中国の新エネルギー車市場が急速な成長を維持しています。2023年7月には、中国の新エネルギー自動車の生産が累計で2000万台を突破し、新エネルギー産業の急速な発展が中国ブランドの市場シェアの増加を推進し、市場競争構図を変化させました。現在中国のブランドは市場の大部分を占めており、燃料車事業に依存している合弁ブランドの市場シェアは縮小し続けています。過去に中国市場で強力だった欧州系や日本系の燃料車も、価格で大幅な譲歩を余儀なくされています。

中国のブランドBYD自動車

商品のニーズにはものによって増減あり

コロナ時代後、商品ジャンル別に需要には増減があります。ロックダウン期間中にのみ需要が高まる製品の成長率が明らかに低下しています。例えば、パッケージ食品の需要の伸びが顕著に鈍化しています。インスタントラーメンの売上高は3.1%減少しました。同様に、家庭用洗剤や手洗い用品も2023年に低速成長商品カテゴリになり、成長率がそれぞれ約7%減少しました。
しかし、個人の健康や個人のケアに関連する特定の消費品は2023年には依然として良い売り上げを維持しています。その中でもティッシュペーパーは特に目立った例です。2023年に免疫力の低下や後半年にインフルエンザや支原体などのウイルスの襲来などの要因により、咳や風邪の人々が増加し、ティッシュペーパーの使用量が急増しました。消費者の買いだめの習慣は変わらず、同時に健康や衛生問題に依然として関心を持ち、家庭用品、特にトイレットペーパーやティッシュなどの生活必需品の需要を促進しています。
生活用紙のブランドは異なる消費者のニーズに基づいて、さまざまな新製品を続々と開発しています。例えば、ティッシュペーパーやトイレットペーパー、ハンカチ、乳液入りティッシュ、消毒ウェットティッシュ、キッチンウェットティッシュ、トイレウェットティッシュなどがあります。同様に高い成長を維持しているのは機能性飲料や栄養補助食品もあります。これは中国の消費者がコロナ期間に健康や衛生に対する持続的な関心に大きく関連していると考えられます。

中国の高級ティッシュブランド:可心柔

オフライン消費の回復とオンライン消費の強化

コロナ政策が緩和されるにつれて、オフラインの消費が徐々に回復しています。人々はオフライン店舗での消費に対する信頼を取り戻し、店舗での消費習慣を再び身につけ始めました。映画館やコンサート、演劇などのエンターテイメント施設が営業を再開し、ますます多くの消費者を引き付けています。
一方、コロナはデジタル化とオンライン消費の発展を加速させました。人々はますますインターネットを通じたショッピングや娯楽、仕事、ソーシャルなどに依存し、慣れてきています。例えば、叮咚買菜やTikTokのライブショッピングなどの新しい消費形式がコロナ時代に空前の人気を集めていました。

叮咚買菜はスマートフォンのアプリ経由で受注した生鮮食品を最短29分で顧客に届ける

多くの消費者が徐々にオンラインショッピングなどの消費の利便性や利点に慣れ、オンラインチャネルへの信頼もさらに高まっています。同時に多くのブランドもオンラインサービスと体験をさらに向上させており、アフターサービスの強化、ウェブサイト体験の最適化、製品品質の向上などが含まれます。
これらの取り組みは消費者の満足度を向上させるだけでなく、オンライン消費の発展トレンドを強化しています。そのため今後の中国のオンライン消費も相変わらず楽観的な発展が予想されています。

体験型消費が大人気

コロナ期間、人々は親しい友人や家族から離れ、他者との交流や対話を楽しむことができませんでした。そのためコロナ時代が終わった後に人々はより社交的で感情的な満足を求めるようになりました。消費の選択ではこれらの要素を提供するブランドや製品に支払いをすることを好む傾向にあります。

例えば一部の対面での対話型体験消費は人気を集めています。これには旅行やスポーツイベント、室内アクティビティ(ボードゲーム、脱出ゲームなど)、屋外活動(フリスビーやスケートボードなど)、店頭エンターテイメント(コメディショー、音楽フェスティバルなど)などが含まれます。一部のオフライン店舗はより対話型で社交的な体験を提供し、顧客を店舗に引き付けることがあります。これには料理教室、手工芸品制作などの活動が含まれます。

中国でも大人気の料理教室ABC Cooking studio

感情的な欲求を満たすニーズに対しては、ペット経済、IP(文学、アニメーション、映画、ゲームなどの有名な知識製品の総称)消費などが注目されています。個人の内面的な体験と自己成長に関しては、美容医療、有料知識、フィットネス、ダンス、文芸展などが人気を集めています。
旅行に関しては、コロナ禍前には「商品消費」が主流だった中国の観光客も「体験型消費」が増加し始めています。例えば、コロナウイルスの流行により人々の健康意識が高まり、中国の観光客が日本の美容や医療に関する相談が大幅に増加していると日経報道によって報じられています。

まとめ

消費観念は消費行動に大きく影響しています。中国は依然として急速でダイナミックな発展の過程にあり、人々の考え方は日々変化し、消費行動もそれに応じて変化しています。新型コロナウイルスの流行は中国に大きな影響をもたらしましたが、経済と社会は常に変化しています。誰でも中国の経済について絶対的な結論を出すことはできず、できることは常に社会の変化を観察し、適切に対応しましょう。

参考資料

趋势调查:2023中国品牌消费趋势洞察报告
https://36kr.com/p/2260225487728774
“纸巾大王”处于风口浪尖,纸品市场将迎来新变局
https://www.51zywl.com/news/69552.html
创新激发新需求,中国消费正持续回暖
https://m.yicai.com/news/101941679.html
没有疫情了,中国消费者的购物偏好变了吗?
https://new.qq.com/rain/a/20240123A01E0O0
读懂消费者 | 疫情后,消费趋势与消费心理会有哪些改变?
https://m.thepaper.cn/newsDetail_forward_21950775
访日体验型消费,日本初创企业新服务不断
https://cn.nikkei.com/industry/tradingretail/54935-2024-02-28-05-00-54.html
2023年中国消费者洞察白皮书
https://pdf.dfcfw.com/pdf/H3_AP202305121586532765_1.pdf?1683912453000.pdf

この記事のライター

広東省出身の中国人留学生。現在は名古屋大学でメディアを専攻している。

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