2023年「おすすめ」検索の需要3選
まず、2022年と比較したときの2023年の「おすすめ」検索の特徴をみてみましょう。
下記の図は、「おすすめ」の掛け合わせワードを、検索者の多い順に示したものです。
「おすすめ」検索の掛け合わせワードランキング2022・2023(Dockpitデータをもとに作成)
集計期間:(左)2023年1月〜12月 (右)2022年1月〜12月
デバイス:スマートフォンおよびPC
2022年と比較すると、2023年では下記3点の特徴がみられます。
①アフターコロナによる外出需要
「ランチ」「ホテル」「旅行」(2022年では40位)がランクアップしていることから、アフターコロナに伴い、外出前の事前準備としておすすめ検索をする様子がうかがえます(ただし、以上3ワードの検索者数自体は減少しており、あくまでランキング上の順位が上がったということになります)。
②デバイスの比較検討需要
2022年に引き続き、「タブレット」「IPHONE」「PC」「ノートパソコン」がランクインしており、高額な電子機器を購入する際の比較検討の材料としておすすめ検索をすると考えられます。
③金銭周りの銘柄選択需要
2022年に引き続き「ふるさと納税」「クレジットカード」、2023年では「株主優待」がランクインしていることから、お金の管理・利用・投資で銘柄選択する際におすすめ検索をすると考えられます。
続いて、2023年の「おすすめ」検索の需要3点について、その関心を持っている人の特徴と共に詳しくみていきましょう。
■需要①アフターコロナ
まず、アフターコロナ関連の掛け合わせワードでおすすめ検索をしている人がどんな人なのかみてみましょう。
下の図は、アフターコロナ関連の需要と思われる掛け合わせワード「ホテル」「旅行」「ランチ」の男女比・年代割合を表したものです。
男女比ではやや女性が多く、年代では、「ホテル」「旅行」では20・30代が、「ランチ」では40・50代がボリュームゾーンとなっていることがわかります。
「おすすめ」の掛け合わせワード「ホテル」「ランチ」「旅行」の男女比(Dockpit)
集計期間:2023年1月〜12月
デバイス:スマートフォンおよびPC
「おすすめ」の掛け合わせワード「ホテル」「ランチ」「旅行」の年代割合(Dockpit)
集計期間:2023年1月〜12月
デバイス:スマートフォンおよびPC
次に、「ホテル」「ランチ」「旅行」の流入ページから、おすすめ検索者の関心を読み解いてみましょう。
「ホテル」検索者の関心
下記の図は、「おすすめ」の掛け合わせワード「ホテル」の流入ページTOP20です。
京都・大阪・名古屋・札幌といった国内の人気観光地のほか、台北・ソウル・バンコク・シンガポールといった飛行機で6時間以内に行けるアジア圏の観光地、東京ディズニーリゾートやユニバーサルスタジオジャパンといった国内テーマパークを行き先としたコンテンツが上位を占めています。
「おすすめ」の掛け合わせワード「ホテル」の流入ページTOP20(Dockpit)
集計期間:2023年1月〜12月
デバイス:スマートフォンおよびPC
ここから、2023年の「ホテル」検索者は、移動面・金銭面ともに負担が少ない近場での旅行を好む傾向があるといえそうです。
「旅行」検索者の関心
下記の図は、「おすすめ」の掛け合わせワード「旅行」の流入ページTOP20です。
三連休・GW・春休み・夏休み・秋などの季節からおすすめ検索をする様子や、「赤ちゃん・子連れ」「ファミリー」といった家族旅行先のおすすめを検索する様子がうかがえます。
「おすすめ」の掛け合わせワード「旅行」の流入ページTOP20(Dockpit)
集計期間:2023年1月〜12月
デバイス:スマートフォンおよびPC
ここから、2023年の「旅行」検索者は、子連れファミリーが子供の予定に合わせたり、家族全員が過ごしやすい環境を求めたりすることで、より楽しめる旅行プランを立てようとする傾向があるといえそうです。
「ランチ」検索者の関心
下記の図は、「おすすめ」の掛け合わせワード「ランチ」の流入ページTOP20です。
「ランチ」検索者の流入ページランキングをみると、横浜中華街・京都・名駅(名古屋駅)・東京駅・広島市・梅田・池袋といった、都道府県の中心地に出かける際のお店選びのためにおすすめ検索をする様子がうかがえます。
「おすすめ」の掛け合わせワード「ランチ」の流入ページTOP20(Dockpit)
集計期間:2023年1月〜12月
デバイス:スマートフォンおよびPC
ここから、2023年の「ランチ」検索者は、人と会う場所を先に決め、その後お店を探す傾向があるといえそうです。
■需要②デバイスの購入
まず、デバイス関連の掛け合わせワードでおすすめ検索をしている人がどんな人なのかみてみましょう。
下の図は、「おすすめ」の掛け合わせワード「スマホ」「IPHONE」「タブレット」「ノートパソコン」の検索者の男女比・年代割合を表したものです。
男女比は概ね6:4となっています。年代比は基本的に30〜40代をボリュームゾーンとして山形となっています。なかでも「IPHONE」はボリュームゾーンに加えて20代の割合も高くなっています。
「おすすめ」の掛け合わせワード「スマホ」「IPHONE」「タブレット」「ノートパソコン」検索者の男女比(Dockpit)
集計期間:2023年1月〜12月
デバイス:スマートフォンおよびPC
「おすすめ」の掛け合わせワード「スマホ」「IPHONE」「タブレット」「ノートパソコン」検索者の年代割合(Dockpit)
集計期間:2023年1月〜12月
デバイス:スマートフォンおよびPC
デバイスの「おすすめ」検索者の関心
前掲4ワードの掛け合わせ検索者の流入ページランキング1〜20位を眺めてみると、様々な機種を価格帯・用途・性能から比較するサイトがほとんどとなっています。
「おすすめ」の掛け合わせワード「スマホ」(左上)「タブレット」(右上)「PC」(左下)「ノートパソコン」(右下)の流入ページランキングTOP20(Dockpit)
集計期間:2023年1月〜12月
デバイス:スマートフォンおよびPC
個別でみると、「スマホ」では「SIMフリースマホ」の解説ページが多くみられることから価格の安さが重視されている一方で、「ミドルレンジクラス」である程度の機能性を求める人もいることがわかります。「タブレット」では価格帯・用途・性能に加えて大きさも重視されているようです。
ここから、生活や仕事でデバイスを必需とする20代〜40代を中心に、デバイスを購入するにあたって、様々な観点から比較検討して、より自分の求める条件にあったものを選択しようとする様子がうかがえます。
デバイスのおすすめ検索では「安さ」が重要?
おすすめ検索の掛け合わせワードで4位にランクインした「安い」検索者の流入ページをみてみると、タブレット・SIMフリースマホ・ワイヤレスイヤホン・ノートパソコン・スマートウォッチといった比較的高額なデバイスが多くを占めています。
「おすすめ」の掛け合わせワード「安い」の流入ページTOP20(Dockpit)
集計期間:2023年1月〜12月
デバイス:スマートフォンおよびPC
購入したい電子機器が高額であるからこそ、「より安い」という観点が重視されるのかもしれません。
■需要③資産活用の銘柄選択
まず、資産活用の銘柄選択関連の掛け合わせワードでおすすめ検索をしている人がどんな人なのかみてみましょう。下の図は、「おすすめ」の掛け合わせワード「クレジットカード」「ふるさと納税」「株主優待」の検索者の男女比・年代割合を表したものです。
男女比は、この3つの中では「クレジットカード」の男性割合が最も高く、女性割合では「株主優待」が最も高くなっています。年代割合は20〜40代がボリュームゾーンとなっています。なかでも、「クレジットカード」は20代が最も高く、「ふるさと納税」は30代が最も高いのが特徴的です。
「おすすめ」の掛け合わせワード「クレジットカード」「ふるさと納税」「株主優待」検索者の男女比(Dockpit)
集計期間:2023年1月〜12月
デバイス:スマートフォンおよびPC
「おすすめ」の掛け合わせワード「クレジットカード」「ふるさと納税」「株主優待」検索者の年代割合(Dockpit)
集計期間:2023年1月〜12月
デバイス:スマートフォンおよびPC
資産活用関連の「おすすめ」検索者の関心
前掲3ワードの掛け合わせ検索者の流入ページランキング1〜20位を眺めてみると、商材独自の観点から比較するものが多くなっています。
「おすすめ」の掛け合わせワード「クレジットカード」(左)「ふるさと納税」(中)「株主優待」(右)検索者の流入ページTOP20(Dockpit)
集計期間:2023年1月〜12月
デバイス:スマートフォンおよびPC
それぞれみていくと、「クレジットカード」では還元率や年会費が、「ふるさと納税」では返礼品の内容が、「株主優待」では商品・商品券の内容が重視されており、「自分にとっての見返りの大きさ」が銘柄選択の軸となっていると考えられます。
2024年にニーズが高まりそうな「おすすめ」
ここまで、2023年の「おすすめ」検索を振り返りましたが、最後に、2024年にニーズが高まりそうなおすすめを予測してみましょう。
「おすすめ」検索の掛け合わせワードについて、2023年12月と2022年12月での変化率を降順に並べたランキングがこちらです。今回は、8位の「韓国旅行」および29,31位の「新NISA」をピックアップして、2024年の「おすすめ」検索ニーズを予測します。
「おすすめ」の掛け合わせワードの変化率ランキング(Dockpit)
集計期間:2023年12月,2022年12月
デバイス:スマートフォンおよびPC
■「新NISA」「投資信託」などの投資需要
2024年にきそうな「おすすめ」検索として真っ先に挙げられるのが、投資需要です。
「新NISA」とは、2024年1月にはじまった無期限非課税の投資制度。国が利用を促したものであることや、テレビ番組やネット記事でも多く解説されていることからも、2024年2月時点で既に注目度が高いです。新NISA口座をつくるには、数え切れないほどの金融機関から1つを選ばなければならないため、「おすすめ」検索の需要が高いと考えられます。
また、2023年では「おすすめ」の掛け合わせ26位にランクインした「投資信託」もまた、投資への関心の高まりに伴ってランクを上げると予想されます。
■美容施術のための「渡韓」需要
2023年のアフターコロナ需要では、国外のなかでも比較的近いアジア圏の旅行が目立ちました。2024年では、特に若年女性層において韓国への旅行需要が高まると予測されます。
近年、国内では、韓国アイドル風メイクの体験のほか、「ポテンツァ(포텐자)」「糸リフト」韓国の最新美容施術が人気を高めています。本場の韓国では日本語対応可能な美容クリニックが増加しており、国内よりも安く美容施術を受けられることから、美容施術は韓国旅行の目的のひとつとなっているようです。
2024年の韓国アイドルメイク 体験 ソウルのアイデア20選
https://www.lemon8-app.com/discover/%E9%9F%93%E5%9B%BD%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%AB%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%82%AF%20%E4%BD%93%E9%A8%93%20%E3%82%BD%E3%82%A6%E3%83%AB?region=jp https://www.harpersbazaar.com/jp/beauty/femtech/a43015507/k-beauty-skin-clinic-230318-hb/Lemon8で6063人が「いいね」した韓国アイドルメイク 体験 ソウルに関する人気の投稿をチェックしよう。
食・美容施術・観光などの魅力であふれ、若年女性の心を掴む韓国。2024年には「渡韓」需要が高まるでしょう。
■「メンズコスメ」「メンズ美容」需要
投資の他にも、「メンズ」需要は年々注目度を増しています。
2023年の「おすすめ」検索の需要としては解説しませんでしたが、2023年は「メンズ」が8位と上位ランクインしており、2024年でもさらに注目度が高まると考えられます。
2023年データのおすすめ検索の掛け合わせワード「メンズ」の流入ページを参照すると、「シャンプー」「洗顔料」「化粧水」「リップクリーム」といったメンズコスメのほか、「ヘアアイロン」「日焼け止め」「医療脱毛」といった、従来女性が気にかけると考えられていた美髪・美肌系の美容情報をまとめたサイトが上位の多くを占めています。
メンズコスメの市場が拡大し、メンズコスメ購入のハードルが下がった結果、メンズコスメ・メンズ美容への関心が年々高まっているのかもしれません。
過去にマナミナでは、「メンズコスメの最新動向2023」について扱っています。こちらもぜひ合わせてご覧ください。
メンズコスメの最新動向2023!購入実態や美容へのモチベーションとは?年代別の違いを調査 | [マナミナ]まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン
https://manamina.valuesccg.com/articles/2553メンズコスメ市場が拡大を続ける今日。スキンケア用品・ヘアケア用品だけではなくメイクアップ用品を利用する男性も増加しているようです。そんななか、メンズコスメの購入実態には年代間で違いがあるのか、男性視点での身だしなみ・美容の動機とは何なのか、2023年の最新動向を調査・分析しました。
「おすすめ」検索の減少はSNS利用の影響?
ここまで「おすすめ」検索について扱ってきましたが、「おすすめ」検索者数は、2022年以来減少傾向にあります。下記の図にみられるように、2022年1月時点では867万人だった「おすすめ」検索者数は、2023年12月時点では560万人と大幅に減少しているのです。
「おすすめ」検索者数の推移(Dockpit)
集計期間:2022年1月〜2023年12月
デバイス:スマートフォンおよびPC
この理由は定かではありませんが、少なくともSNSの影響は大きいでしょう。
デバイス購入のような多額の出費を伴うものは検索エンジンで調べるものの、比較的安価な出費となる商品購買や、宿・観光地や食事のような画像があった方が有利な選択はSNSを利用する人も多いのではないしょうか。
特にInstagramでは、「発見タブ」探索ページで自分の関心に近い投稿がレコメンドされるため、Instagramが服やコスメなどの比較的安価な商品や、ホテル・旅館・グルメといった画像を参照したいサービスの比較検討の場になることもしばしばあると考えられます。
また、TikTokやYouTubeなどの動画媒体では、比較的安価な商品(主にコスメ)の検証動画があったり、ホテルのレビュー動画があることから、「より実体験に近い感覚で失敗なく買い物できる」ために、文字媒体で説明される検索エンジンよりもSNSでの検索を好む人も存在すると考えられます。
他にも、コロナ明けで人と会う機会が増えたことで、検索エンジンに頼らずとも人づてにおすすめを知ることができるようになったこともまた、この理由のひとつと考えられます。
まとめ
2023年に検索された「おすすめ」では、
①アフターコロナの外出需要
②デバイスの比較検討需要
③金銭周り資産活用の銘柄選択需要
が特徴的でした。
これをもとに、2024年に検索されそうな「おすすめ」を予測すると、①の関連で美容施術のための渡韓需要、③の関連で「新NISA」「投資信託」といった投資需要が挙げられます。他にも、「メンズコスメ」「メンズ美容」関連のおすすめ検索も増加が見込まれます。
「おすすめ」検索は減少傾向にありますが、人が商品・サービスを購買する際には、検索エンジン・SNS・知人の口コミなどの何らかの方法で「おすすめ」を知りたがるようです。商材ごとに、「おすすめ」検索者がどのような人で、どのようなニーズを持っているのかの解像度を上げていくことが、今後の鍵になるでしょう。
▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。
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