▼調査・分析概要
株式会社ヴァリューズの全国のモニターを対象として、2023年5月26日〜2023年6月2日にアンケート調査を実施(回答者24,450人)。本記事では、このうち20代以上の男性(n=11,639)の回答を用いて、メンズコスメの最新動向を分析しました。
メンズコスメとは?
「メンズコスメ」とは、男性用化粧品のことです。「化粧品」には、メイクアップ化粧品はもちろん、洗顔料や化粧水などのスキンケア化粧品、シャンプー・整髪剤などのヘアケア化粧品も含みます。
「メンズコスメ」というと、若いほど関心が強いというイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。今回の分析では、メンズ美容に関するアンケート調査の回答を年代でセグメンテーションし、メンズコスメ購買、男性の美容モチベーションのリアルに迫ります。
メンズコスメの購入実態
■購入経験
下記の表は、アンケート回答者に身だしなみ・美容アイテムの購入経験についてたずね、各年代で1位から5位の回答をまとめたものです。
アンケート調査「身だしなみ・美容アイテムの購入経験」(複数回答)
調査期間:2023/5/26(金)~2023/6/2(金)
調査デバイス:スマートフォンおよびPC
サンプル数:11,640
20代・30代の若年層男性は購入経験が多い順に「ヘアケア」「スキンケア」「ボディケア」「シェービング・ムダ毛処理」用品、40代以上の中高年層男性は「ヘアケア」「シェービング・ムダ毛処理」「オーラルケア」「ボディケア」用品となっており、若年層では肌トラブル、中高年層では頭髪・口臭といった、年代ならではの悩みに合わせた購買傾向がうかがえます。「購入したものはない」の回答割合は年代が上がるほど高くなっており、20代と60歳以上での開きは5ポイントに満たないものの、若年層ほど身だしなみ・美容アイテムを購買する傾向にあるといえそうです。
また、どの年代でも25〜30%が「購入したものはない」と回答しており、購入している人でも身だしなみアイテムが中心となっています。女性と比較して、身だしなみ以上のおしゃれアイテム(メイクアップ用品や各種サロン利用)がTOP5にランクインしていないのも男性の特徴です。
アンケート調査「身だしなみ・美容アイテムの購入経験」(複数回答)
調査期間:2023/5/26(金)~2023/6/2(金)
調査デバイス:スマートフォンおよびPC
サンプル数:11,548
身だしなみを意識するなかでも、特に若年層男性は「スキンケア」への関心が高いようです。「スキンケア」検索者の年代割合を見てみると、男性は20代の割合が最も高くなっており、やはり男性のなかでも特に若年層が「スキンケア」に関する情報収集を積極的に行っていることがわかります。
検索キーワード「スキンケア」の年代割合(男女別)
集計期間:2022年7月~2023年6月
デバイス:スマートフォン
以上から、化粧品を購入する男性は、人それぞれ・年代ならではの悩みに合わせて、「美容」というよりも「身だしなみ」という認識で購入していると考えられます。
■情報収集媒体と購入経路
[情報収集媒体]
下記の表は、アンケート回答者に身だしなみ・美容関連の情報収集媒体について複数選択形式でたずね、各年代で1位から5位の回答をまとめたものです。
アンケート調査「身だしなみ・美容関連の情報収集媒体」
調査期間:2023/5/26(金)~2023/6/2(金)
調査デバイス:スマートフォンおよびPC
サンプル数:7,682
20代・30代の若年層ではAmazonが、40代以上の中高年層では店頭の商品展示・店頭POPが1位と、年代間の違いが情報収集媒体に現れているのが特徴的です。
年代特徴とそこから予想される情報探索行動は以下の通りです。
20代 | 「YouTubeなど動画サイト」「Twitter」といったSNSが特徴的で、美容系インフルエンサーのおすすめを参考に情報収集をしていると考えられる |
30・40代 | 「Amazon」「楽天市場」といった総合インターネット通販サイトが特徴的で、商品画像・不特定多数による口コミ・価格を軸として自ら商品を比較していると考えられる |
50代以上 | 「店頭の商品展示・店頭POP」「テレビCM・テレビ番組」が特徴的で、メーカーやバイヤーといった売り手による宣伝広告に影響を受けていると考えられる |
[購入経路]
続いて購入経路を見ていきます。下記の表は、アンケート回答者にメイクアップ用品の購入経路を複数選択形式でたずね、各年代で1位から5位の回答をまとめたものです。
アンケート調査「購入経路(メイクアップ用品)」
調査期間:2023/5/26(金)~2023/6/2(金)
調査デバイス:スマートフォンおよびPC
サンプル数:690
メイクアップ用品では、どの年代でも「ドラッグストア」が1位であり、年代が上がるほどその回答割合が高くなっています。また、「総合インターネット通販サイト」も購入経路の上位に入っています。
ランキング全体では、「100円ショップ・ディスカウントストア」「スーパー・ショッピングモール」「コンビニエンスストア」といった日常的な買い物の場がランクインする傾向が見られます。こうした全体傾向の一方で、20代の3位に「専門店」、60歳以上の5位に「百貨店・デパート」もランクインしており、安心感・納得感・こだわりをもってメイクアップ用品を比較・購入しようとする層もいるようです。
また、20代〜40代で「メーカー公式インターネット通販サイト」がランクインしていることから、ブランド公式に対する安心感を重視する購買行動がうかがえます。デジタルでの情報収集やECでの買い物に慣れており、オンラインショッピングおける失敗経験が豊富な20〜40代だからこそ、「安さを重視して総合ECで買うと本物か怪しいものが届くことがある」という考えからこのような購買行動を見せるのかもしれません。
アンケート調査「購入経路(スキンケア用品)」
調査期間:2023/5/26(金)~2023/6/2(金)
調査デバイス:スマートフォンおよびPC
サンプル数:2,285
続いて同様の質問をスキンケア用品について行ったところ、どの年代でも1位から順に「ドラッグストア」「総合インターネット通販サイト」「スーパー・ショッピングモール」「100円ショップ・ディスカウントストア」がランクインしています。特に1位の「ドラッグストア」の回答割合はどの年代でも60%以上であって、男性のスキンケア用品購入において最も一般的な購入経路だとわかります。
■購入時に重視するポイントは?
下記の表は、アンケート回答者にメイクアップ用品購入時の重視点を複数選択形式でたずね、各年代で1位から5位の回答をまとめたものです。
アンケート調査「メイクアップ用品購入時の重視点」
調査期間:2023/5/26(金)~2023/6/2(金)
調査デバイス:スマートフォンおよびPC
サンプル数:690
メイクアップ用品では、どの年代でも「価格の安さ」「肌への優しさ」が1位または2位にランクインしています。年代別では、20代において「自分に似合う色があること」「自分が好きな色であること」のような自分軸でこだわる商品選択が、30・40代において「すぐ手に入れられること」「ポイント等でお得に購入できること」のようなハードルの低さを軸とした商品選択が特徴的です。
アンケート調査「スキンケア用品購入時の重視点」
調査期間:2023/5/26(金)~2023/6/2(金)
調査デバイス:スマートフォンおよびPC
サンプル数:2,285
続いてスキンケア用品では、どの年代でも1位または2位にランクインした「価格の安さ」「自分の肌に合っていること」の回答割合は概ね40%〜55%であり、両者はスキンケア用品購入者の2大関心であるとわかります。次いで3〜5位には「肌に優しいこと」「お手入れが簡単なこと」「保湿効果が高いこと」がランクインする傾向にあり、質と手軽さも重視されていることがわかります。
また、年代間でランクイン項目や順位が似通っていることから、男性がスキンケア用品に求めることは年齢にあまり影響されず共通しているといえそうです。
身だしなみや美容へのモチベーション
男性の身だしなみや美容へのモチベーションとは、どんなものなのでしょうか。
下記の表は、アンケート回答者に身だしなみや美容の意識に関する項目について段階評価でたずね、「あてはまる・ややあてはまる」という回答が多い項目についてまとめたものです。
アンケート調査「身だしなみや美容は「清潔感」が第一だ」「見た目は最低限整っていればいいと思う方だ」「顔や肌のお手入れは簡単に済ませたい方だ」
調査期間:2023/5/26(金)~2023/6/2(金)
調査デバイス:スマートフォンおよびPC
サンプル数:11,639
「身だしなみや美容は「清潔感」が第一だ」「見た目は最低限整っていればいいと思う方だ」「顔や肌のお手入れは簡単に済ませたい方だ」という質問項目において、「あてはまる」「ややあてはまる」と回答したのはどの年代でも半数を超えています。また、以上3つの質問項目では、どの年代でも「あまりあてはまらない」「あてはまらない」と回答したのは20%以下となっています。
男性の身だしなみや美容では、①清潔感、②最低限整える、③簡単さが重視されているようです。
■“男の美意識”の動機は?
ここからは、男性の身だしなみ・美容の動機を探っていきます。他者軸の動機と、自分軸の動機に分けて見ていきましょう。
他者軸の動機
下記の表は、アンケート回答者に見た目を整えることに関する質問項目を5段階評価でたずね、その回答をまとめたものです。
アンケート調査「モテるために見た目や身だしなみを整えることが多い」「見た目を整える時は他人からどう見えるか意識している方だ」
※合計との差が+5%以上のものを桃色、-5%以上のものを水色で示している
調査期間:2023/5/26(金)~2023/6/2(金)
調査デバイス:スマートフォンおよびPC
サンプル数:11,639
「モテるために見た目や身だしなみを整えることが多い」という質問項目では、年代が若いほど「あてはまる」「ややあてはまる」の回答割合が高くなっています。
ただし、どの年代でも「どちらともいえない」「あまりあてはまらない」「あてはまらない」との回答が70〜80%程度を占めており、「モテること」は男性が見た目を整える動機としてあまり大きくないようです。
「見た目を整える時は他人からどう見えるか意識している方だ」という質問項目でも、概ね年代が若いほど「あてはまる」「ややあてはまる」の回答割合が高くなっています。その回答割合が最も高い20代では41.7%、その他の年代では30%前後と10ポイント前後の開きがあり、特に20代では見た目を整える時に他人からの見られ方を意識する人が多いことが伺えます。
これらのことから、他者を軸とした動機は若い年代で大きいことがわかります。
自分軸の動機
下記の表は、アンケート回答者に、身だしなみ・美容と自分の見た目に関する質問項目を5段階評価でたずね、その回答をまとめたものです。
アンケート調査「身だしなみや美容は自己表現の一種だと思う」「自分の好きな見た目の自分になりたいと思う」
※合計との差が+5%以上のものを桃色、-5%以上のものを水色で示している
調査期間:2023/5/26(金)~2023/6/2(金)
調査デバイス:スマートフォンおよびPC
サンプル数:11,639
「身だしなみや美容は自己表現の一種だと思う」という質問項目では、20代〜30代の若年層において「あてはまる」の回答割合がそれ以上の年代と比較して高く、若年層では身だしなみや美容を自己表現の一種と捉える傾向が強いとわかります。
「自分の好きな見た目になりたいと思う」という質問項目では、20代における「あてはまる」「ややあてはまる」の回答割合合計が48.4%と特に高くなっています。
これらのことから、自分自身を軸とした動機は20代で顕著に大きいことがわかります。
■なりたい自己イメージとメンズコスメ利用の関係
では、男性はどんなイメージの自分でありたいと感じているのでしょうか。
以下の表は、アンケート回答者に、憧れる雰囲気や目指す雰囲気についての質問項目について段階評価でたずね、その回答をまとめたものです。
アンケート調査「「クール」「かっこいい」雰囲気を目指している」
※合計との差が+5%以上のものを桃色、-5%以上のものを水色で示している
調査期間:2023/5/26(金)~2023/6/2(金)
調査デバイス:スマートフォンおよびPC
サンプル数:11,640
「『クール』『かっこいい』雰囲気を目指している」という質問項目では、「あてはまる」「ややあてはまる」の回答割合は年代が若いほど高くなっています。ただし、それらの回答は回答者割合が最も高い20代でさえ36.5%であり、「クール」「かっこいい」をなりたい自己イメージとする人が大多数というわけではないようです。
アンケート調査「「中性的」な雰囲気に憧れを感じる」「「優しい」「かわいい」雰囲気を目指している」
※合計との差が+5〜+10%のものを桃色、+10%以上のものを赤色、-10〜-5%のものを水色、-10%以上のものを青色で示している
調査期間:2023/5/26(金)~2023/6/2(金)
調査デバイス:スマートフォンおよびPC
サンプル数:11,639
「『中性的』な雰囲気に憧れを感じる」「『優しい』『かわいい』雰囲気を目指している」という質問項目では、「あてはまる」「ややあてはまる」の回答割合は年代が若いほど高くなっています。ここでも、最も高い20代でさえ「あてはまる」「ややあてはまる」の回答割合は30%程度です。
以上の分析・考察から、男性のなりたい自己イメージは「かっこいい」「中性的」「かわいい」にそれぞれ分散しており、若い年代であるほどなりたい自己イメージをこの3種に当てはめる傾向にあると考えられます。
ここで注目したいのが、上記2つの質問項目において「あまりあてはまらない」「あてはまらない」の回答割合が年代が上がるにつれて急激に高くなっている点です。ここから、中高年男性は、「中性的」「優しい」「かわいい」といった従来的な男性イメージから離れる自己イメージに抵抗感があるとうかがえます。
メンズコスメの「ハードル」を取り払った要因は?
最後に、男性のコスメ購入の「壁」を取り払った要因や、男性の美容モチベーションの向上の要因を考察します。
①ネットで購入できる
ネット通販であれば、「コスメ売り場は女性ばかりで、男性は立ち入りづらい」という抵抗感や「男性がコスメを買うこと」への恥じらいを感じることもありません。
②有名芸能人を起用したテレビCMの放映
下記画像のように、俳優や芸人をイメージキャラクターとして起用したメンズコスメのテレビCMが多く見られるようになりました。
③男性の美容系インフルエンサー
TikTokでは、しゅう@コスメ日記(@shushu_223)さん、オオカミくん / 男磨きマン(@kaito_wolf_512)さんなど、フォロワー数20万人ほどの男性の美容系インフルエンサーがメンズコスメに関する情報を発信しています。
SNSの存在により、「自分らしくいること」に対する自己肯定感は高まっているものと思われます。こうした流れに後押しされて、メンズコスメ市場は今後もさらなる盛り上がりを見せていくのでしょうか。引き続き動向に注目していきましょう。
【調査概要】
調査対象者:株式会社ヴァリューズのモニター 全国の15歳以上の男女
調査期間:2023/5/26(金)~2023/6/2(金)
調査デバイス:スマートフォンおよびPC
回収サンプル数:24,450ss
ウェイトバック集計:当調査では性年代別人口とネット利用割合に合わせたウェイトバック集計を行っている。掲載している数値はすべてウェイトバック後の結果となっている。
2024年春にヴァリューズに入社しました。大学では歴史学と社会学を専攻していました。