マナミナではこれまで、作品名を検索した人のデータをもとに、「鬼滅の刃」に関する調査を複数回行ってきました。今回は、過去記事にて参照したデータを再び用いながら、トレンドの変遷を追っていきます。過去の調査については、以下をご参照ください。
「鬼滅の刃」はいつからバズった!?止まない鬼滅旋風を検索データで徹底分析!
https://manamina.valuesccg.com/articles/112310月16日に公開されたアニメ映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の興行収入が約205億円を記録し、『ハリーポッターと賢者の石(2001年)』の約203億円を超えたと発表されました(興行通信社調べ)。漫画「鬼滅の刃」の累計発行部数も最新22巻で1億部を突破。そんなヒット作「鬼滅の刃」は一体いつからバズったのでしょうか。そのきっかけは?今回は止まらない鬼滅旋風について検索データを中心に徹底分析してみました。(分析にはヴァリューズが提供する市場分析ツール「Dockpit」を使用しています)
呪術廻戦は「鬼滅超え」なるか!?TVアニメ開始前後の検索データから止まらない人気ぶりを徹底分析
https://manamina.valuesccg.com/articles/1318映画化も決定した人気作品の「呪術廻戦」。その人気ぶりは、社会現象ともなった「鬼滅の刃」(著:吾峠呼世晴/集英社)と似ることから、最近ではメディアから“ポスト鬼滅”として取り上げられることも。今回はそんな「呪術廻戦」について、ヴァリューズが提供する市場分析ツール「<a href="https://www.valuesccg.com/dockpit/" target="_blank">Dockpit</a>」を用いて、検索データを分析しました。
世間の関心の移り変わりを振り返る
■①漫画連載~TVアニメ「竈門炭治郎 立志編」放送
まずは、「鬼滅」と検索した人の、2018年11月〜2020年10月における人数の推移です。なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を使用します。
「鬼滅の刃」の原作漫画は、「週刊少年ジャンプ」にて2016年2月~2020年5月にわたって連載されていました。その後、2019年4月~9月にかけて、TVアニメ「竈門炭治郎 立志編」が放送されました。
検索者数は、TVアニメが放送開始されてから少し経った2019年7月以降、伸びを見せ始めていることがわかります。アニメ放送後も概ね右肩上がりを続け、漫画の連載が終了した2020年5月に一度ピークを迎えています。原作の最終章に向けて、世間の熱量が高まっていることが見て取れます。TVアニメをきっかけに作品を認知し、ファン化した人が、漫画で物語を先取りしに行った結果、大きな伸びを見せているのかもしれません。
「鬼滅」検索者数の推移
期間:2018年11月〜2020年10月
デバイス:PC&スマートフォン
※データはこちらの記事を参照
■②『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』上映
上のグラフでは、最終月の2020年10月に大きく検索者数が跳ね、90万人超えを達成しています。これは大ヒット映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が公開されたのと同月です。これまで本作を認知していなかった人や、検索するまでのモチベーションには至っていなかった人も含め、非常に多くの人が興味を持ったタイミングであることがうかがえます。
好調な興行収入を受け、数か月にわたって上映されていた「無限列車編」。下のグラフを見ると、2020年10月をピークに、10月~12月の3カ月間は高水準の検索者数を維持しており、新年以降落ち着きを見せていることがわかります。
(過去記事で参照したグラフを用いているため、「呪術廻戦」検索者数の推移も含まれます。また、「鬼滅」から「鬼滅の刃」という検索ワードの若干の違いがございます。)
「鬼滅の刃」検索者数の推移
期間:2019年3月〜2021年2月
デバイス:PC&スマートフォン
※データはこちらの記事を参照
■③「無限列車編」地上波初放送~TVアニメ「遊郭編」放送
映画公開の翌年となる2021年には、映画の前日譚が描かれるTVアニメ「無限列車編」が10月より放送されました。その後12月から、TVアニメ「遊郭編」が放送されています。
下グラフを見ると、たしかにこの2作品が放送されていた期間に検索者数の水準が高まっています。一方、検索者数がこの期間でピークを迎えていたのは、TVアニメが放送開始される前月の2021年9月。この月に何があったのでしょうか。
「鬼滅」検索者数の推移
期間:2021年4月〜2023年5月
デバイス:PC&スマートフォン
2021年9月は、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が地上波初放送され、さらにそれに先駆けて、「『鬼滅の刃』竈門炭治郎 立志編 特別編集版」が5日にわたって放送されていました。このことが世間的な期待感を醸成し、「いつ公開されるのか」といったモチベーションでの情報収集も増えたものと思われます。なお、2021年9月の検索者数は55万人ほどとなっています。新作アニメに向け、積極的な話題作りがされていたことがわかります。
■④TVアニメ「刀鍛冶の里編」~TVアニメ「柱稽古編」放送
TVアニメ「遊郭編」の放送終了から約1年後の2023年4月からは、TVアニメ「刀鍛冶の里編」が放送され、さらにその1年後の2024年5月からは、TVアニメ「柱稽古編」が放送中です。
「刀鍛冶の里編」放送中の検索者数のピークは、放送初月の約25万人。最新作「柱稽古編」は、5月時点では15万人超となっています。『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』上映時は90万人超えしていたことを考えると、映画の大ヒットによって一時は爆発的に認知が高まったものの、シリーズを追い続けるほどのモチベーションはないライト層が離れてしまったことや、逆にTVアニメを毎シリーズ追っているファンではあるけれど、作品に詳しいがために「特にブラウザで調べることはない」という人が増えてきていることなどが考えられそうです。
「鬼滅」検索者数の推移
期間:2023年1月〜2024年5月
デバイス:PC&スマートフォン
こうしたファン層は、約300万フォロワーを抱える「鬼滅の刃」公式X(旧Twitter)などのSNSで、最新の公開情報などが受動的に入ってくるようにしているのかもしれません(2024年6月18日時点)。
いずれにせよ、TVアニメ第一期が放送された2019年以降、毎年何らかの作品が公開されており、TVアニメ公開前にはワールドツアーを上映していたりと、「鬼滅の刃」の話題作りや熱量の維持に向けた施策には目を見張るものがあります。
ファン層は初期から変わっていったのか?
ここまで、「鬼滅の刃」に対する世の中の関心度の移り変わりについて見てきました。では、検索者層には、TVアニメ放送開始前から変化があったのでしょうか。
まず、漫画連載から映画公開までの、検索者の性別・年代割合の変遷を見ていきます。
「鬼滅」検索者属性の変化
期間:2018年11月〜2020年10月
デバイス:PC&スマートフォン
※データはこちらの記事を参照
この期間では、男女比率には大きな変化はなく、男性が約4割、女性が約6割でした。
一方で年代については変化が見られます。TVアニメ化前までは20代・30代がそれぞれ30%近くを占めており、ボリュームゾーンであったのに対し、TVアニメ第一期の公開を境に、20代メインの構造となっています。その後、40代の割合が大きく伸び、「無限列車編」上映開始の2020年10月にかけて、30代・40代がそれぞれ30%を占めるようになりました。
TVアニメはAmazonプライムなどのVODサービスでも視聴することができ、新しいものに敏感な20代がVODをメイン媒体として視聴を始めた結果、TVアニメ初期の段階では20代の割合が高まったのかもしれません。その後、映画化をきっかけに他の年代にも認知が進んだ結果、30代・40代の割合が高まっていったと考えられます。
また、子供が「鬼滅の刃」のファンで、その影響で親も観るようになってハマった、というパターンも考えられるかもしれません。実際筆者の場合も、まずは当時大学生の筆者がハマり、親におすすめした結果、一緒に漫画も読破しながら全シーズン追うようになったという経緯があります。
では、2021年から現在にかけてはどうでしょうか。
「鬼滅」検索者属性の変化
期間:2021年4月〜2024年5月
デバイス:PC&スマートフォン
※Dockpitで遡れるデータの都合上、2021年は4月以降のデータとなっています
見ると、男女比がおよそ4:6、年代は30代・40代がボリュームゾーン、という構造は変わっていないことがわかります。映画をきっかけに世間的な認知が広がり切った結果、検索者はこの層に落ち着いたものと思われます。
「鬼滅」関心層が気になっている他の作品は?
最後に、「刀鍛冶編」「柱稽古編」が放送されたこの1年間(2023年6月~2024年5月)における、「鬼滅」検索者の関心ワードを見ていくことで、検索者が本作品以外に関心の高いトピックを分析していきます。
「鬼滅」検索者の関心ワード
期間:2023年6月~2024年5月
デバイス:PC&スマートフォン
「呪術(廻戦)」「アンデッドアンラック」「アーニャ(SPY×FAMILY)」「ヒロアカ」「ラグナクリムゾン」「鬼太郎」「フリーレン」といった、漫画やTVアニメ、映画作品に関するワードが上位を占めていることがわかります。「鬼滅」ファンは、こうした作品との親和性が高いのかもしれません。
その他、「内田雄馬」「種﨑敦美」「早見沙織」といった声優の名前もランクイン。前述の「呪術廻戦」や「SPY×FAMILY」「葬送のフリーレン」「鬼滅の刃」といった作品の声優を務めている方々であることから、「鬼滅」検索者は気になる声優を調べるほどアニメに対する熱量が高く、かつやはりこれらの作品との親和性が高い層であることがうかがえます。
「鬼滅の刃」に関する検索者分析、いかがだったでしょうか。
これから最終章に突入していくと思われる「鬼滅の刃」、今後の話題作りや関心の高まりにも注目です。
1997年生まれ、大阪大学卒。データアナリストを経て、Webマーケティング・リサーチを軸に、コンテンツディレクション、SNS運用、デジタル広告運用などを担当。現在はフリーで活動しています。