パリオリンピックで活躍する中国AI
複数の競技種目の事前準備において、中国のAI技術は選手のトレーニングに大いに貢献しています。百度は中国国家飛び込みチームのためにWenxin Yiyanなどの大規模言語モデル技術に基づくAI支援トレーニングシステムを開発しました。このシステムはコーチや選手の複雑な指示を理解し実行することができ、適時に正確な情報を提供できます。また、飛び込みの動作をリアルタイムで採点し、正確な分析を行った上での指導も提供できます。オリンピックチャンピオンの全紅婵は日々のトレーニングで百度のAI飛び込み支援トレーニングシステムを使って動作を修正しているそうです。
また、アリババのTongyi大規模言語モデルはオリンピック初のAI大規模モデルアプリケーションの技術提供者となりました。アリババのTongyi Qianwenが技術を提供し、国際オリンピック委員会の公式解説者の各種競技の解説をサポートしているのです。
このTongyiアプリの新機能「翻訳アシスタント」は中仏の相互翻訳ができ、スポーツファンはパリでの競技をリアルタイムで楽しめます。この機能はTongyi大規模モデルに基づいており、ユーザーが中国語を話すとTongyiアプリがリアルタイムでフランス語に翻訳して読み上げます。従来の翻訳アプリと比較して、大規模言語モデルの翻訳はユーザーの使用シーンをよりよく理解し、文脈に基づいたより正確な翻訳結果を提供でき、その翻訳スピードは同時通訳よりも速いです。「翻訳アシスタント」がリリースされてから、毎日のユーザー増加率は100%を超えています。中仏の相互翻訳に加えて、現在は中英、中日、中韓の相互翻訳にも対応しており、8月には10カ国語のリアルタイム相互翻訳が導入される予定です。
競技場の外ではTongyiアプリの「競技百科通」がユーザーの24時間解説アシスタントになります。さらに、「競技百科通」は複数の端末での記録同期をサポートしており、スマートフォンやパソコンを問わずシームレスに切り替えることができます。ユーザーはTongyiを用いることでオリンピック関連の最新情報や観戦ガイドをリアルタイムで入手できます。
通義千問はアリババグループ開発したチャットボットであり、人と対話し、質問に答え、共同創作することができます。
AI面接技術の普及
2017年には早くも中国においてAI面接が登場しました。ここ数年のAI技術の急速な発展とともに、中国のAI面接はさまざまな業界に浸透し始めました。データによると、2024年には中国の大学学部卒業生数は1,179万人に達する見込みで、前年比で21万人増加します。就職市場の競争がますます激しくなり、特にP&G(The Procter & Gamble Company)のように5000分の:1という低い採用率の大企業では、AI面接が企業の初期選考の重要な手段となっています。
現在AI面接技術の発展に伴い、ますます多くの企業がコストを削減し効率を高めるためにAI面接を試しています。ユニリーバ(Unilever plc)はAIシステムを通じて10万時間の面接時間を節約し、年間100万元の採用コストを削減できるというデータを発表しています。
例えば、ある企業の新卒採用では、従来の5分間の対面面接を採用した場合、20人のHR(Human Resources)が3日間かけて5000件の面接を完了する必要があります。しかしAIデジタル面接官を使用すれば、48時間で5000件の面接を完了し、20人のHRが3日間で行う仕事量を、デジタル面接官1人であれば2日間で全てを対応することができます。
現在中国にはAI面接サービスを提供する企業が多数存在します。効率を第一にする中国ではAI面接には一定の不公平や誤差の問題があるものの、大企業は引き続きAI面接を採用しています。
Hainaは北京群星闪耀科技有限公司の子会社であり、企業にAI面接サービスを提供しています。
ますます重要視されるAI人材育成
ChatGPTの登場後、中国ではAI人材争奪戦が繰り広げられました。多くの企業が中国国内の大規模言語モデルの開発に積極的に取り組んでおり、優れたAIGC(AI-Generated Content)人材が急務となっています。パンデミックの影響で求職難に陥った中国ではAI人材のニーズは増え続けています。
このような人材市場の変化に直面して中国の大学も迅速に対応しました。人民網の報道によると、上海の復旦大学は2024-2025学年度にAI分野のコースを開設し、AI+融合イノベーション人材の育成に力を入れる予定です。復旦大学は高レベルの人材に向けた学士・修士一体化の「AI-BEST」カリキュラム体系を構築する計画を立てています。学生は学部、学科、学年を超えてコースを選択することができます。
中国復旦大学キャンパス
具体的には「AI-BEST」カリキュラム体系には次のようなコースがあります。
AI-Bコース(AI-Basic Courses):AIの一般基礎コースであり、全ての学生を対象とし、AI初心者でもすぐに知識を習得できます。B1コースは主に理工医科の計算機応用基礎を持つ学生向けです。B2コースは主に人文社会科学専攻の学生向けです。
AI-Eコース(AI-Essential Courses):AI専門のコアコースです。これらのコースを履修する学生は、AI専門の基礎知識を持っている必要があります。AI-Sコース(AI-Subject Courses):AI学科の高度なコースであり、学際的な背景を持つ学生に適しています。
AI-Tコース(AI-Thematic Courses):応用と研究を対象としたコースであり、AI垂直領域での発展を目指す教師と学生に適しています。
また、2024年から復旦大学のすべての学位プログラムの履修計画には、AIの素養と能力の育成要件が明確に示されます。復旦大学は中国内外で優れた大学であり、復旦大学を先頭にして、中国のAI教育重視の教育体制が注目されています。
まとめ
2022年末にアメリカの生成型AIであるChatGPTが登場し、中国でも広く注目を集めました。その後中国の多くのテクノロジー企業が様々な大規模言語モデルを発表しました。統計によれば2024年3月現在、中国には117種類の大規模言語モデルが開発されています。
しかし、OpenAIは今年6月末に中国などの地域の使用を禁止すると発表しました。これによりAI応用分野での米中競争がますます激化することが予想されます。この事件に対して、百度、テンセント、アリババなどの中国の大規模言語モデルメーカーは相次いで声明を発表し、影響を受ける企業や開発者に無料の移行プランを提供し、一部のサービスでは価格を引き下げて使用のハードルを下げました。
中国のAIはアメリカと比較してまだ一定の差がありますが、さまざまな政策の影響を受け、ローカリゼーションには大きな利点があります。OpenAIのモデルは欧米に偏りがちですが、中国のモデルはローカルの文化的規範と価値観に基づいてカスタマイズされています。それにより、多くの中国のAI企業がOpenAIから中国のモデルへと転向するにつれ、AIのローカリゼーションの傾向はますます顕著になるでしょう。
疑いなく、未来はAIの時代になるでしょう。二度の産業革命で遅れを取った中国がその後の科学技術革命で急速に成長したように、今回のAIによる技術変革を重要視することは間違いありません。米中の競争が加速する時代において中国がアメリカを超える成果を出せるかどうか、今後も注目です。
参考資料
参考文献:
特稿:中国AI行业“大洗牌”迈向本土化
https://www.zaobao.com.sg/news/china/story20240707-4074279
阿里通义千问AI大模型将亮相巴黎奥运会
http://stcn.com/article/detail/1267537.html
中国黑科技,占领巴黎奥运,赢麻了!
https://36kr.com/p/2743922113964295
复旦大学全面开启“AI大课”计划
http://edu.people.com.cn/n1/2024/0619/c1006-40259506.html
复旦将在2024-2025学年推出至少100门AI领域课程
https://iso.fudan.edu.cn/63/44/c16057a680772/page.htm
爆火的AI面试,逼疯打工人
https://new.qq.com/rain/a/20240726A0A8BC00
広東省出身の中国人留学生。現在は名古屋大学でメディアを専攻している。