キリン晴れ風、好調の背景にエコ志向の取り組みが Web行動データから人気の理由を考察!

キリン晴れ風、好調の背景にエコ志向の取り組みが Web行動データから人気の理由を考察!

これからの時代のスタンダードビールとして、「キリンラガー」や「キリン一番搾り生ビール」に続く、新たな定番となりつつある「キリンビール 晴れ風」。2023年4月に販売開始されて以来、ヒット商品として多数のメディアで取り上げられています。日々、続々と各ビールメーカーから新商品が登場するなかで、「晴れ風」はどのように人気を集めたのでしょうか。「晴れ風」の成功要因をデータから考察します。


SNSキャンペーンで注目を集めた「晴れ風」

キリンビールは4月に発売した「キリンビール 晴れ風」の販売が11月13日時点で500万ケース(1ケース=大瓶20本換算)を突破したと発表しました。晴れ風は、「ビールとしてのうまみ」と「飲みやすさ」が両立した味わい。飲みごたえを残しながら雑味や苦みを抑えることで、ビール好きな人だけでなく、普段ビールを飲まない層にも飲みやすい味わいを提供しています。

参考:「キリンビール 晴れ風」 絶好調!

「晴れ風」ブランドサイト

本記事では、「晴れ風」が高い注目を集めた理由を分析するために「晴れ風」に関心をもった人の特徴などをWeb行動ログデータで分析していきます。

なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行える株式会社ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用います。

早速、「晴れ風」の公式Webサイト訪問者の推移を見ていきます。

「晴れ風」公式Webサイト訪問者数推移

キリン「晴れ風」公式Webサイト訪問者数推移
期間:2023年11月~2024年10月
デバイス:PC、スマートフォン

2024年3月に発売された「晴れ風」は、発売当初に大きな注目を集めたことがわかります。

Webマーケティングでは、販売開始から2か月はソーシャル(YouTube、Facebook、Xなど)での集客に力を入れていたようです。該当時期に実施されていたキャンペーンとして、Xにおいて「キリンのアカウントをフォロー、投稿をリポストで、抽選により3000名に晴れ風350ml缶2本をお届けする」というものがありました。新商品発売時のSNSを用いた知名度向上は、効果的な施策であると考えられます。

晴れ風キャンペーンサイト

「晴れ風」は特に60代以上のサイト訪問者割合が高い

「晴れ風」の強みを知るために、市場で高い人気を集めている「キリン一番搾り」「サントリーのザプレミアムモルツ」「アサヒスーパードライ」「サッポロ黒ラベル」と比較していきます。

分析するサイトは以下の通りです。
キリン/晴れ風(www.kirin.co.jp/alcohol/beer/harekaze/
キリン/一番搾り(www.kirin.co.jp/alcohol/beer/ichiban/
サントリー/ザ・プレミアム・モルツ(www.suntory.co.jp/beer/thepremiummalts/
アサヒ/スーパードライ(www.asahibeer.co.jp/superdry/
サッポロ/黒ラベル(https://c-kurolabel.jp

「晴れ風」はどのような層からの支持を集めているのでしょうか。Dockpitを使って、サイト訪問者の男女割合と年代別割合を見ていきます。初めにサイト訪問者の男女割合です。

各サイト訪問者数の男女割合

各サイト訪問者数の男女割合
期間:2023年11月~2024年10月
デバイス:PC、スマートフォン

男女比はブランドごとに比べても大きく差はありませんが、「晴れ風」が最も女性の割合が高く、約44%を占めていることがわかりました。

続いて、各サイト訪問者の年代別割合を見ていきます。

各サイト訪問者の年代別割合

各サイト訪問者の年代別割合
期間:2023年11月~2024年10月
デバイス:PC、スマートフォン

「晴れ風」は、“ビールが好きではない若い世代”に加えて、“年齢とともにビールが飲みづらくなってチューハイやハイボールなどに移行した、中高年の旧ビール愛飲層”の2軸をターゲットにしています。他のブランドと比較してみると確かに、60代以上のサイト訪問者割合は一番搾りに次いで多いことがわかりました。特に中高年層向けに関してはマーケティングが狙い通りに機能していると言えそうです。

【関連記事】成長市場のクラフトビール、大手メーカーのWeb集客戦略は?キリン「スプリングバレー」が人気か

https://manamina.valuesccg.com/articles/1510

マイナス基調にあるビール市場のなかで成長を続けるクラフトビール市場。近頃は大手メーカーの参入が続き、競争が激化しています。そんななかで各社はどのような戦略を取っているのか。本記事では、大手ビールメーカーのクラフトビールに加え、Amazonで人気の定番クラフトビールをピックアップ。各ブランドのWeb集客の特徴や強みを分析していきます。

エコ志向の消費者が「晴れ風ACTION」を支持

「日本ネーミング大賞2024」において、「キリンビール 晴れ風」が日本ネーミング大賞(最優秀賞)を受賞しました。ブランド名の「晴れ風」は、「お客様を、そして世の中を晴れやかにし、いい風を吹かせていきたい」「晴れた空の下で気持ちよく飲んでほしい」という思いで名付け、パッケージも爽やかな色味で映えるデザインに仕上げてあります。

では、「晴れ風」公式Webサイトにはどんな関心を持つ人が訪れているのでしょうか。データから考察していきます。

分析にはWeb行動データとアンケートデータを用いたペルソナ分析やクラスタ分析で、誰でも簡単に顧客理解ができる、株式会社ヴァリューズの分析ツール「Perscope(ペルスコープ)」を用います。

以下は公式Webサイト訪問者の余暇の過ごし方についてのデータです。

公式Webサイト訪問者の消費行動タイプ

キリン晴れ風公式Webサイト訪問者の消費行動タイプ
期間:2023年10月~2024年9月
デバイス:PC、スマートフォン

ネット人口全体と比較して、「晴れ風」の公式Webサイト訪問者はアウトドアやスポーツ・アクティブを好む傾向があることがわかりました。

続いて、「晴れ風」の公式Webサイト訪問者の消費行動タイプについて見ていきます。

公式Webサイト訪問者の消費行動タイプ

キリン晴れ風公式Webサイト訪問者の消費行動タイプ
期間:2023年10月~2024年9月
デバイス:PC、スマートフォン

ネット人口全体と比較して、エコ・サステナブル型(環境保護や地域社会貢献を重視し商品やサービスを選ぶ)が約20%多いことがわかりました。

これら2つのデータから「晴れ風」公式Webサイト訪問者を大まかに捉えると、“アウトドアが好きで、環境保護を重視した商品を選ぶ傾向がある”ことがわかりました。

エコ・サステナブルの文脈でいえば、「晴れ風」では「晴れ風ACTION」と題し、日本の風物詩の保全や継承を支援する取り組みを行っています。

晴れ風ACTION Webサイトより

日本にビールを飲む喜びを広げた、花見や花火といった「日本の風物詩」を守るため、売上の一部を全国の自治体に寄付するという活動です。

晴れ風ACTION Webサイトより

「晴れ風ACTION」では、350ml缶1本購入で0.5円、500ml缶1本で0.8円が各自治体に寄付されます。また、「晴れ風」の購入に関係なく、「晴れ風ACTION」のサイトを訪れることで、「晴れ風コイン」が1日1枚無料で付与されます。コイン1枚で0.5円分が溜まり、それをユーザーが寄付できるという仕掛けに。12月4日時点で、寄付総額は1億円を超えています。

このように「晴れ風」は、商品購入もしくは商品に興味を持つだけで、環境保全に貢献できるという付加価値を提供しています。

エコ・サステナブルに関心を持つ人が多く訪れていることから、「晴れ風ACTION」の環境保護への取り組みに共感して、「晴れ風」に興味を持ったユーザーもいると考えられます。ビールという飽和した市場において、「味」の面以外で時代のニーズを見据えた付加価値を付けることは、消費者を引き付ける効果的な方法だと言えるでしょう。

まとめ

本記事ではキリンビールの新商品「晴れ風」の人気の理由について調査しました。

キリンビールは、発売当初の注目を集める方法として、莫大な広告予算をかけてCMを多く打ち出し、店頭でのコミュニケーションを緻密に行っています。それに加えて、発売当初のXでのフォローキャンペーンなどWebマーケティングも積極的に活用。各チャネルの強みを効果的に活用しています。

ターゲットには、ビールが好きではない若い世代と中高年の旧ビール愛飲層の2軸に据えている中で、特に中高年代の消費者の支持を多く獲得できているようでした。また、「晴れ風ACTION」という独自の取り組みは、ビールに味以外の魅力的な価値を提供し、消費者の支持を集めていると考えられます。

今後は、どのようにして消費者からの支持を集めキリンの定番ビールとしての位置づけを獲得していくのでしょうか。今後の動きにも注目です。


▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

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▼また、生活者理解のためのリサーチエンジン『Perscope』も使用しています。『Perscope』では国内最大規模のWeb行動×アンケートデータを活用し、誰でも いつでも 簡単に"生活者起点のマーケティング活動"を実現することができます。無料デモもありますので、興味のある方は下記よりぜひお申し込みください。

Perscope 詳細はこちら

この記事のライター

2025年入社予定の大学4年生です。

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