マーケターの方に取材します
こんにちは、おばたです! 私は大学でマーケティングを勉強しながら、データマーケティングの会社、ヴァリューズでインターンとして働いています。いまは大学4年生で、来年の春からはヴァリューズに入社する予定です。
就活のタイミングで将来何になりたいかと考えたときに、マーケターになりたい!と思いました。でも、営業職や事務職は大体イメージできるけれど、マーケターの普段の業務はいまいち分からなかったんです。新商品の企画・プロモーションなどは目立つ仕事ですが、マーケターの仕事はそれだけではないはず。
そこで「マーケターは何をしているのか」「どうやってマーケターになったのか」を明らかにするため、いま活躍されている現役のマーケターのキャリアについてお話しを聞いていきます。そうすれば、マーケターになりたい!と思っている、昔の私のような方々のためになるのではないでしょうか。
前回はヴァリューズのマーケティングコンサルタント、とらさんにインタビューしました。取材ではマーケティングに興味を持った経緯や学生時代に経験しておくべきことなど、想像していたものとは違う話ばかりでした。
そして今回は、同じくヴァリューズのマーケティングコンサルタントである岩村大輝(いわむらだいき)さんにお話しを聞いていきたいと思います。学生時代~現在のお仕事までお話を聞く中で、学生である私たちに必要なことをもっと発見していきたいです!
マーケティング職を目指したきっかけは
おばた 「本日は宜しくお願いします!まず、岩村さんがマーケティングを面白いと思った最初のきっかけを教えていただけますか?」
岩村さん 「よろしくお願いします!最初にマーケティングが面白いなと思ったのは、大学生のときでしたね」
岩村大輝(いわむら・だいき)
一橋大学在学中から創業初期の株式会社ヴァリューズでアルバイトとして勤務し、卒業後2015年に入社。業界最大手のメーカーや広告代理店の大規模なプロモーションから、新規事業立ち上げにおける市場調査など大小様々なフェーズのマーケティングリサーチを経験し、現在はデータマーケティングの部署にてマネジャーを務める。
岩村さん 「実は父が日用品メーカーのマーケティング職をしていて、中学生の頃からマーケティングの話をずっと聞いていたんですよ。例えば『あの洗剤のCMにはこんな法則や、こういう狙いがある』といったことを話してくれていました。ただ、そのときはそれがマーケティングだとはあまり意識していませんでした。
その後一橋大学の商学部に進学し、実際にマーケティングを勉強すると、『あれ、この法則は聞いたことあるぞ』と思いました。そして『父に教わっていたのはマーケティングだったのか』と気付き、興味を持ったのがそもそものきっかけです。また、自分は電車に乗っていてもテレビを見ていても『その広告はどういう狙いで作っているんだろう?』と自然に考えていることに気付きました。それからマーケティングの本を読むようになり、自分が考えていたことが想像以上に理論化されていることを知って、どんどん面白さに気付いていきましたね」
おばた 「では大学時代からマーケティングに興味が出てきたんですね。私も少し似ているなと思っています。理論として理解をする前から『何か法則があるな』というふうにずっと考えていて、大学に入って学んだとき、それまで漠然と考えていた法則に”名前”が付いた、というイメージを持っていました」
岩村さん 「似てますね。マーケティングには完璧な正解がなくて、後付けで理論を作れる点が面白いなと思っています」
■人と同じことはやりたくなかった学生時代
おばた 「学生時代からヴァリューズでアルバイトをされていたとのことですが、会社でのアルバイトって今でも珍しいものだと思っていて。始めたきっかけは何だったんですか?」
岩村さん 「きっかけは、変わったアルバイトをしようと思ったことです(笑)。大学では文化祭実行委員を務めていて、1年生のときはアルバイトをしていませんでした。2年生の夏頃になってそろそろ始めようと思ったときに、周りのみんながやっているようなアルバイトは嫌だなと思ったんです。
だから、ちょっと変わったアルバイトを探していました。そして大学の掲示板サイトでヴァリューズが掲載していた、マーケティングに携わるアルバイトの求人を見つけたのです。マーケティングのアルバイトをしている人なんてなかなかいないだろうと思いましたし、マーケティングの勉強もしているからちょうどいいだろうと思って応募しました」
おばた 「変わったバイトですか(笑)。人と同じバイトをやりたくなかった理由ってあるのですか?」
岩村さん 「大学で分かったのが、みんな本当に優秀だということでした。特に文化祭実行委員のメンバーは際立っていて、企画書はとてもきれいに作るし、副学長へのプレゼンも堂々と行っていました。それを見て、『地元では通用するかもしれないが、東京では勝てない』と感じたんです。そこで、『他の人がやっていないことをしよう』と考えました。誰もやっていないことをすれば、それはきっと価値になるはずだと考えたのです」
おばた 「アルバイトやインターンをしていた会社に就職するという選択はよく聞く話ですが、実際は勇気ある決断なのでは思っています。何年もアルバイトをしていたヴァリューズに入社を決めた要因って何だったのですか?」
岩村さん 「入社を決めた要因は、純粋に『あの人たちと働きたい』と思えたことがひとつ。周りからは反対されたこともありました。でも最後は『働くのは自分だ』と思って入社を決めました。
もうひとつは、ヴァリューズに投資をしたいと思ったことです。学生時代からいろんな個人投資家の方と会って話をする中で、『ヴァリューズはいい会社らしい』と分かってきました。今後、ヴァリューズの領域であるデータマーケティングの市場は大きくなっていくだろうと予想されています。そして社内のメンバーも熱量を持っている人たちが集まっていて、投資先として間違いないのではないかと思いました。
ただ当然、自分には投資できるほどのお金はなかった(笑)。そこでどうするかと考えたときに、当時自分が持っていた一番の資本は”自分の体”だと気付きました。『10年後でも5年後でもなく、いま投資がしたい』と思って入社を決めた部分もありますね」
■情報収集は古典と最新を両側から行っていた
おばた 「学生時代はもうマーケティングにどっぷり浸かっていらっしゃったと思うのですが、最新のマーケティング情報やビジネス動向に関する情報収集はどのように行っていましたか?」
岩村さん 「とにかくたくさん本を買っていました。いつもリュックには本が3冊ぐらい入っていましたね」
おばた 「えっ、常に本が3冊……!」
驚くおばた
岩村さん 「雑誌・ムック本から古典的な本までを同時並行で読んでいたので、常に重いリュックを背負って歩いていました(笑)。マーケティングは実学なので、新しい考え方やフレームワークだと銘打っていても、実は過去の理論の焼き直しであることもあります。また当時、学生ながらに『これは少し違うんじゃないか』と感じる理論もありました。だから現代のマーケティングを深く理解するためにも、古典の知識はあった方が良いのではないかと思いますね。
当時はWebメディアもそれほど発達していなかったので最新情報は雑誌から収集していましたが、今だったら僕はWebメディアを読むと思います。それに今は気軽にSNSなどで学生がマーケターとつながれるので、情報を得るために連絡を取ってみるのも良いかもしれませんね」
おばた 「なるほど。では、本を選ぶ基準はありますか?」
岩村さん 「ひとつは王道を読むということです。例えばフィリップ・コトラーの『マーケティング3.0』やジェフリー・ムーアの『キャズム』などでしょうか。これらは読んだ方がいいと思います。ただ、こうした王道の本は難しいので、読み通せない場合はそれらを解釈した本をまず読んでみればよいでしょう。
もうひとつ僕が実践していたのは、本屋さんのマーケティング書籍のところに行って、タイトルで面白そうと思ったものをパッと選んで買ってみることです。理解を深めるためには、とにかくたくさんの考え方に触れるのが大切だと思います。面白そうだと思える本を見つけたら『なんで面白そうだと思ったんだろう?』といったことも考えながら、まず目次を読んでみると良いでしょうね」
おばた 「たしかに、買いたくなるタイトルはもうマーケティングが成功していると言えますよね。では、本の価格はなるべく気にせず、広く読んでいくことが大切ということでしょうか?」
岩村さん 「そうですね。近年はデジタルマーケティングの進歩もあり、数年単位であっという間に注目されるテーマが移り変わっていますが、残っていく理論は残る。だから学生のときに買った本は未だに読めるんです。本を買うことは、投資としていつか効くだろうとも思いますね」
おばた 「なるほど。ありがとうございます」
「マーケター」の仕事とは
おばた 「学生が思い描くマーケターの仕事ってブランドの商品開発・販売促進が多いと思うんです。実際私もそうでした。ただ実際、マーケティングの仕事はとても幅広く、いろんな領域がありますよね。そこで、『マーケターとは?』と聞かれたら岩村さんならどういうふうに説明されますか?」
岩村さん 「『マーケターとは』と聞かれたら、やはりそのイメージ通り、ブランド・商品の販売促進を行う仕事をする人だと説明するでしょう。マーケターとして一般的に思い浮かべるのはBtoC企業のマーケターだと思いますが、BtoB企業にもマーケターはいます。違いはターゲットが消費者であるか企業であるか、という点だけです。ただ、ターゲットは消費者の方が性別や年代、興味関心も多様で、それに応じてBtoC企業の方が考えるべきシーンも多くなります。そのためにBtoC企業のブランド担当の人がいわゆる『マーケター』と言われるケースが多いです。
一方で、僕はマーケティングコンサルタントという仕事をしています。ヴァリューズは『データを使ってクライアントのマーケティングを支援するビジネス』を行っています。そこで、マーケティングコンサルタントがどんな仕事かと言うと『マーケターのコンサルタント』なんですよ。つまり、僕は『マーケター』としてマーケティングに携わっているというよりは、いろんな会社のマーケティングを疑似体験しているという説明が近いと思います。いろんな業界のクライアントがいるので、例えば消費財を売るマーケターを体験できるし、車を売るマーケターの話も聞けます。それがヴァリューズのマーケティングコンサルタントであり、良いところですね」
おばた 「両者に良い点がある中で、『自分はどちらが向いているのか?』を選ぶのはすごく難しいです。その判断基準には何があると思いますか?」
岩村さん 「どちらにも共通していえるのは、仕掛けることが好きな人や、いたずら好きな人、企画系の考え方が好きな人は面白いと思います。その中で、あるものに愛情が強い人はブランドのマーケターが向いているのではないでしょうか。対してコンサルティングする側は、1つの商材というよりはいろんな業界のマーケティングに興味がある人が、相性が良いと思いますね」
おばた 「なるほど……。マーケティングコンサルタントの位置づけと近いものに、広告代理店の仕事があると思います。クライアントにどれだけ深く関われるのかは、会社次第というよりその人次第になりますか?」
岩村さん 「その人次第でもありますが、会社のキャパシティも関係すると思いますね。一番広く深く関われるのはやっぱり総合代理店でしょう。テレビCMや雑誌からデジタルまで、総合的なマーケティングに携われるからです。
ただ、総合代理店では全員が広告のプランナーになれるわけではないと思います。1ブランドに対してプランナーを目指す人はたくさんいるので、ブランド担当を任されるまでにはそれなりの時間がかかるでしょう。経験できる機会をいかに早く獲得するかを考えると、デジタル領域に限定はされますが、ヴァリューズくらいのサイズ感では確率が高いかもしれないです」
■大切なのは課題の設定
おばた 「では実際に、マーケティングコンサルタントとして普段はどういったお仕事をされているのですか?」
岩村さん 「クライアントに会いに行って課題を聞き、『こういったデータを使って調査を行えば、課題をこんなふうに解決できるんじゃないですか?』といった提案をするのが中心です。その提案をするためにはまず、必要な材料となる情報をクライアントから聞き出します。その上で、クライアントが欲しいのは80枚のレポートではなく課題を解決できる『答え』です。そこで、課題を細分化して考え、クライアントが欲しい部分、空欄になっている『答え』を探していく。それが分かれば提案資料を作成できます。
また、マーケティングはいろいろな場面で使えます。営業戦略を考えるにも、または人材戦略にもマーケティングという言葉は使えるんです。どんな課題を聞いたとしても何らかのアドバイスはできるので、仲が良いクライアントだといったん会いに行って雑談し、その中から課題を見つけたりもします。これがもはや今の仕事になってきてもいますね」
おばた 「いかに課題を聞き出すかが一番重要、ということですか?」
岩村さん 「それがポイントですね。クライアントも『これを知りたい』が分かっている人と『とにかく助けて!』という人の2種類がいて、後者の方がスキルは要しますね。前者はどちらかというと『これが知りたいならこうですね』と要件を詰めるだけ。それは正直コンサルタントでなくてもできるかもしれません。
コンサルタントで一番重要なのは『具体的には何が分かったら課題を解決できるのか』や『そもそもその課題は氷山の一角であって、本当の根っこはそれじゃないですよね』といった整理する部分です。聞き出して整理をして、『ここで合ってますか?』としっかりクライアントと目線合わせをするのがコンサルタントの一番の仕事。コンサルタントの仕事はカッコイイ解を出すことではなく、その手前の問題設定です。これはヴァリューズのマーケティングコンサルタントという観点からお話ししていますが、課題をきれいに整理できるスキルを持っていることが、卓越したコンサルタントの素養のひとつだと思います」
■自分の環境をフル活用する
おばた 「入社後に、『自分1人で仕事が出来るようになったな』と感じたタイミングはいつ頃でしたか?」
岩村さん 「1人で仕事をまわせるようになろうと決心したのが1年目の冬です。そこで”独立宣言”をして頼らないと決めましたが、それが実際にまわるようになったのは2年目の夏ぐらいですね。下の代の新卒が入社して、頼りになる先輩にならなければと考えて3か月ぐらい無理をし、9月や10月頃にようやくまわっていることを実感しました」
おばた 「1人で仕事がまわせるようになった要因は何だったのでしょうか?」
岩村さん 「ひとつは頼らないと決めたこと。もうひとつは、後輩が入ってきたことによって『先輩としてしっかりしなければ』と背伸びをしたこと。この2つが大きいと思います」
おばた 「2年目の頃から後輩への指導もされていたのですか?」
岩村さん 「していました。みんな優秀で、自分よりも頭の回転の速い人が多かったです(笑)。だから、『この先輩には頼れない』と思われないように、気を張って必死に取り組んでいましたね」
おばた 「周りの状況に自分を無理やり合わせようとする、その姿勢が成長を早める要因になるということでしょうか?」
岩村さん 「そうかもしれません。個人的には、自分が良い環境に入ることはそんなに大切ではないと思っています。どんなに素晴らしい環境であろうと、逆に何もない環境であろうと、自分の今いる環境をどう捉えるかが重要なのではないでしょうか。僕の場合は『教えないといけないからチャンス!』というふうに捉えることができたのが大きかったと思います。高い環境に身を置いて満足してしまうのは一番危ないので、今の環境がどうであれ、その環境をどう使おうか?と考えるのがとても重要だと思います」
おばた 「では、岩村さんが若手時代にマインドセットとして持っていたことはありますか?」
岩村さん 「『楽しめているかどうか』ということです。楽しもうと思って仕事していると楽しくなると思います。楽しくないという状況は、何かが間違っているはずだと考えていましたね。それは今でも変わっていないです。楽しめていないときは、単純に楽しめる機会を作っていないということでしょう。だからそんなときは、いま何をやりたいんだろうか、どのように楽しむ機会を作ろうかと考えています。
たぶん誰でも、一緒に仕事していて楽しい人と働きたいですよね。実際に、自分が面白いと思っていたアイデアをクライアントに話したら、『面白いですね、やりましょう』と言ってもらい、仕事になったりもしました。例えば新しい商品を作るきっかけも、楽しんでやることによって生まれるのではないでしょうか」
おばた 「なるほど、新しい商品のきっかけもですね。楽しんで仕事ができていれば、クライアントの課題解決のヒントが日常生活から生まれる、といったこともあるのでしょうか?」
岩村さん 「あると思いますね。だから『情報感度高くあれ』とメンバーにはよく言っています。『誰よりもCMを見よう』『誰よりも新商品を買おう』とか。そこにお金をかけてサービス体験を得ることは、ある意味投資であると思います」
■すごいマーケターは自分の意思を語る人
おばた 「普段事業会社のマーケターの方と一緒に仕事をされる機会が多いと思うのですが、すごいと思う方っていらっしゃいますか?」
岩村さん 「たくさんいますね!」
おばた 「やっぱりそうなんですね。その方々のどんな部分がすごいと思いますか?」
岩村さん 「事業会社ですごいのは、やりたいことが言える人だと思います。『会社をこうしていきたい』『この施策をこうしたい』というような意思を強く持っている方には圧倒されますね。マーケターの方々は常にたくさんのことを考えているので、思い描いている仮説や、正解に至るまでの論理をしっかりと持っています。その考えに説得力を持たせるために、ヴァリューズのようなコンサルタントの手を借りる、といったスタンスを取る方はすごいと感じます。
同世代でマーケターをしている友人は、情報感度の高さとコミュニティの広さが突出しています。いろんな情報をたくさん収集して、日々の業務に活かそうというハングリー精神がうかがえます。それが強い意思を持つことにもつながっていると思いますね」
学生には”心”が動いた経験を大切にしてほしい
おばた 「これからマーケティングを仕事にしたいと思っている学生に、覚えておいてほしいことはありますか?」
岩村さん 「マーケティングをやる上で考えているのは、『人の行動は何かの欲で動いている』ということ。そして『どんな価値の対価としてお金をもらえたのか』ということですね。
『施策を打つ=マーケティング』としてしまうと、やった気になって自己満足になりがちですが、大切なのは価値の対価です。買ってもらえたのはなぜかと言うと、それは人の欲を動かしたから。もっと簡単に言うと人の心が動いたからです。ということは逆に言うと、人の心を動かせないとお金を払ってもらえません。だからマーケティングは『人の心をどう動かすか考えること』と言えると思います。
自分にも心が動く瞬間がありますよね。人の心を動かすことを考えるとき、自分がどう心が動くのかを観察しておけば、ひとつの解は見つかるはず。だから、たくさん心を動かさないといけないなといつも考えています。『あ、いま心動いた。なんで動いたんだろう。そうか、”駆け抜ける喜び”っていうキャッチコピーだ』とかですね」
おばた 「自分の心が動くということは、周りの人も動く可能性が高い。だからそれは成功のひとつだ、と知見を貯めていくってことですよね」
岩村さん 「そう、心が動いた瞬間を貯めていくことです。例えば時計を誰かに売りたいとなったら、その人の心を動かせなかったら売れないですよね。となればマーケターが考えないといけないのは、『その人はどうやったら心が動くのだろうか』ということ。
もし商品が高級時計だったら、例えば透明のエレベーターを昇って店に到着するといった体験で、高揚感を作ることが大切なのかもしれない。あるいは初めて買うような人がターゲットの場合、VIPルームに通されるといった経験を提供すれば、その経験も含めて買ってくれるかもしれない。『どんな仕掛けで心を動かすか』がマーケティングなのであれば、『どうやって人は心が動くんだろう?』ということを普段から考えることが大切だと思います」
岩村さん 「最近の丸亀製麺の事例もまさにそうです。丸亀製麺はいま、”うどんは全部その店で生まれていて、このうどんはここ出身なんです”といったストーリーを『ここのうどんは、生きている』と打ち出しているんですよ。あれは間違いなく心を動かすことを考えています。(参考:『刀の卓越したマーケティング導入により、丸亀製麺の更なる成長を目指す『トリドール✕刀 共同記者発表会を実施』)
かつてはさっと早くおいしいものを食べられるという点を訴求していて、それでユーザーも心が動いていた。『こんなに安く買えるの? しかもおいしい!』という感じでしょう。でもその感動が当たり前になった今、改めて良さを見つめたときに『あんなに安くて、あんなにおいしいのに、手作り?』と、心を動かすポイントを変えたわけです。それがマーケティングだと思います。時代や背景によっていろんな心の動かし方があり、動き方があるというのを考えてほしいと思いますね」
若手時代からマーケティングの世界に飛び込むのは絶対強い
おばた 「最後に、マーケティングに興味を持っている学生に向けて一言お願いします!」
岩村さん 「今は『マーケティング=デジタルマーケティング』という時代になっています。毎日みなさんがスマホを見ているように、Webをやらずにマーケティングはできない時代になってきている。
デジタルマーケティングは本格的に言われだしたのが2000年ごろからで、まだ15年ぐらいしか経っていないような新しい業界です。ということはあまり経験者がいないから未開とも言える。しかも若い人ほど自分ゴトにしやすいでしょう。高校生のときからネットはありましたよね?」
おばた 「はい、ありました」
岩村さん 「若ければ若いほど経験できる幅が広がっているので、そこに飛び込むことは有利になるはずです。自分が今マーケティングを面白いと思っているなら、絶対やった方がいいと思います。早いうちから入れるのはチャンスだと思って、教えてもらおうというよりも自分の感覚を大切にして挑戦して下さい!」
「マーケターは人の”心”を動かす仕事である」というお話が素敵でした。「人の心を動かせるようになるために、自分の心がいつ動いたかを観察する」というのも納得です。理論の勉強はもちろん大切ですが、今、自分の周りで行われているマーケティングに目を向けることが一番の学びになるのかもしれません。
また、「仕事で最も大切にしているのは楽しむこと」というお話が印象的でした。生活のどこにでもヒントがあるマーケティングの世界だからこそ、楽しみながら仕事をする姿勢を、社会人になっても忘れずにいたいです。岩村さん、ありがとうございました!
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