都市型イケアが原宿にオープン、その狙いとは?【2020年トレンド予測】

都市型イケアが原宿にオープン、その狙いとは?【2020年トレンド予測】

今年話題になりそうなトピックを調査・紹介する連載企画「2020年トレンド予測」。今回のテーマは「今春原宿にオープンする都市型イケア」です。今春オープンのIKEA原宿は日本初の都市型店舗。従来店舗との違いを考察し、トレンドを探ります。


2020年のトレンド?都市型イケアとは

2020年に話題になりそうなトピックを調査・紹介する連載企画「2020年トレンド予測」。今回のテーマは「今春原宿にオープンする都市型イケア」です。

これまで郊外で展開してきたイケアが、今春原宿に出店することが決定し、”日本初のイケア都市型店舗”としてオープン前から注目を集めています。

イケアは、カラフルな色使いやアイデア豊富なデザインが人気の北欧家具ブランド。広々とした店内には、宝探しのようなマーケットホールやショールーム、巨大倉庫が広がり、時間をかけてショッピングを楽しむスタイルが定番です。また、現在展開されている国内9店舗はいずれも郊外に位置し、広大な敷地面積を活かした大型店舗。車での来店を前提とし、大型家具も持ち帰るイメージが定着しています。

一方、今春オープンのIKEA原宿は、これまでの国内店舗とは異なる、日本初の都市型店舗です。従来の店舗とは構造・狙いが異なるのでしょうか? サイト分析ツール「eMark+」を使用しながら調査しました。

イケアサイトから見えてくる課題

まずは、イケア・ジャパンのサイト訪問ユーザー数を、eMark+を使って調査しました。

(集計期間:2019年11月、デバイス:PC、スマートフォン)

家具・雑貨のジャンルでユーザー数を比較すると、イケア・ジャパンは2019年11月で6位にランクインしています。ここ数年で都市型店舗の展開をはじめたニトリが、圧倒的にユーザー数を多く集めています。

次に、イケア・ジャパンのサイトユーザー数の2年間の推移を見てみましょう。

(集計期間:2017年11月~2019年11月、デバイス:PC、スマートフォン)

ユーザー数の推移を見ると、過去2年で若干減少していることが分かります。

なお、イケア・ジャパンはここ数年業績が伸び悩んでおり、2016年8月期以降は売り上げが減少。2017年8月期の決算は売上高740億円(前期比3.5%減)、営業損益は14億円の赤字(前期は16億円の黒字)だったことを公表しています。

このような状況で都心型店舗の出店に踏み切る要因は何なのか。ひとつは、「郊外大型店中心のビジネスモデルが限界を迎えているため」と考えられます。従来の店舗では、巨大な倉庫に収められた家具を、顧客が車で持ち帰るスタイルが一般的でした。しかし、近年は車を持たない世帯や、利便性から都心部在住者が増加。売上を向上させるために、ライフスタイルの変化・多様化に応じ、取り込めていなかった層への訴求を強めることを狙いとしているのでしょう。

原宿再開発で2020年オープンの「ウィズ ハラジュク」とは

では、今春オープンのIKEA原宿は一体どんな店舗なのでしょうか。

IKEA原宿が店舗を構えるのは、2020年4月に新たにオープンする大型複合施設「ウィズ ハラジュク」内です。この施設は『未来を紡ぐ“たまり場”』がコンセプトで、JR原宿駅徒歩1分、竹下通りと表参道を繋ぐ好立地に施設を構えます。テナントにはイケアのほか、原宿初出店ブランドやかつて原宿に店舗を構えていたブランドなど、全14店舗が集結。アパレル・コスメ・雑貨などの名ブランドが、「ウィズ ハラジュク」向けのコンセプトで展開します。

ウィズ ハラジュクのイメージ図

原宿は日本を代表する観光名所として定着しつつあり、若者に限らず世界中の人々が集う街。「ウィズ ハラジュク」はそんな原宿に新しいムーブメントを起こすきっかけとして期待される施設です。

コンセプトはプランニング・スタジオ?

この「ウィズ ハラジュク」内に出店されるイケアの都市型店舗ですが、実は既にロンドンやニューヨーク・マンハッタンでは都市型店がオープンされています。おそらくIKEA原宿もその流れに似た形になるのではないでしょうか。ここでは、海外の都市型イケアを参考にIKEA原宿の店内を予測していきます。

2019年4月にオープンしたマンハッタン1号店は、デザイン会社のような内装で、平均的な店舗面積の約20分の1。デザイナーとの商談や家具組み立て・撤去の予約、オリジナルの部屋をデザインできるサービスなどを展開しています。

当日は発注や配送予約のみを受け付け、お持ち帰りは一切無し。イケアは、都市型店舗のコンセプトを「プランニング・スタジオ」と掲げ、忙しい家庭や車を持たない世帯の快適な買い物をサポートできるよう意図しています。

イケア店内の様子(Photo:Adobe Stock)

リアル店舗で商品を売る従来の小売ではなく、店舗はプランニングの場所として位置づけ、その後のデジタルでの購買を狙う。こうした「売らない」店舗のあり方は、例えば二子玉川の「蔦屋家電」や原宿の「GUスタイルスタジオ」、先日リニューアルオープンした渋谷パルコの「BOOSTER STUDIO by CAMPFIRE」などにも見られます。ネットが人々に浸透し、デジタルネイティブ世代がだんだんと社会の中核を担う時代が近づいてきた今、小売においてもデジタルとリアルの融合が進んでいくのではないでしょうか。

原宿はニューヨークやロンドンとはまた異なる、独特の文化を発信する街。IKEA原宿は先行する都市型店ともまた違った構造でベールを脱ぐかもしれません。日本初の都市型店、IKEA原宿は日本の若者世代へのアピールになるのかどうか、今春の開店が楽しみです。

分析概要

ネット行動分析サービスを提供する株式会社ヴァリューズは、全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「eMark+」を使用し、2017年11月~2019年11月の「イケア・ジャパン」サイトを分析しました。
※ユーザー数やセッション数はヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測。

本記事ではeMark+を用いて調査を行いましたが、eMark+の機能がパワーアップした新ツール「Dockpit(ドックピット)」が2020年10月にリリースされました。まずは無料版に登録して、実際にDockpitを体験してみてくださいね。



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この記事のライター

フリーランスPRおよびライターとして活動中。二児の母。

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