製薬会社大手5社のオウンドメディアに注目!ユーザー属性から見えるそれぞれの特色とは

製薬会社大手5社のオウンドメディアに注目!ユーザー属性から見えるそれぞれの特色とは

オウンドメディアと言うと、日本では一般的に、企業が運営するウェブマガジンやブログなどを指す言葉ですが、持続的な集客媒体としてこれらを活用する企業が増えてきています。今回はその中でも私たちの生活において身近な製薬会社に焦点を当て、サイト分析ツールの「eMark+」を用いて分析してみました。


ユーザー数ではシオノギ製薬、大塚製薬が一歩リード

まず、2019年版国内製薬会社売上高ランキング上位10社のオウンドメディアから、「eMark+」のSite Analyzerを用いてユーザー数の多かった下記5社をピックアップしました。

シオノギ製薬:http://www.shionogi.co.jp/wellness/
大塚製薬:https://www.otsuka.co.jp/health-and-illness/
中外製薬:https://www.chugai-pharm.co.jp/ptn/medicine/
アステラス製薬:https://www.astellas.com/jp/ja/
エーザイ:https://patients.eisai.jp/

2019年7月~12月の半年間のユーザー数推移を調べると、シオノギ製薬と大塚製薬が2019年10月を境に逆転していますが、他3社と差をつける状況であることがわかります【図1】。

【図1】2019年7月~2019年12月のユーザー数推移

【図1】2019年7月~2019年12月のユーザー数推移
※デバイス:PC・スマートフォン

子育て世代に人気のシオノギ製薬

次に、各サイトのユーザーの属性について性別・年代・未既婚・子供有無の4つの観点から詳しく調べてみました【図2】【図3】【図4】【図5】。

【図2】属性情報(性別)

【図2】属性情報(性別)
※デバイス:PC・スマートフォン

【図3】属性情報(年代)

【図3】属性情報(年代)
※デバイス:PC・スマートフォン

【図4】属性情報(未既婚)

【図4】属性情報(未既婚)
※デバイス:PC・スマートフォン

【図5】属性情報(子供有無)

【図5】属性情報(子供有無)
※デバイス:PC・スマートフォン

まず、【図1】で2019年12月時点のユーザー数が一番多かったシオノギ製薬についてみてみると、【図2】の通りユーザー数に占める女性の割合が5社の中で最も高い57.1%となっていることに気がつきます。

また、【図3】からは20代~40代の年齢層が8割を占めていることがわかり、【図4】【図5】から既婚者が約7割、子供がいる方も6割を超え高い水準であることがうかがえます。これらの結果から、シオノギ製薬のオウンドメディアは子育て世代の女性が多く閲覧していると考えられます。

さらに、同じく2019年7月~12月の期間におけるコンテンツランキングを調べてみると、ページビュー数が多かった上位10トピックのうち、4つが子供の病気に関するページとなり、改めて子育て中の親世代の閲覧が多いことを裏付ける結果となりました【図6】。

オウンドメディア内には「こども感染症ナビ」というコンテンツもあり、発熱や嘔吐・咳などのそれぞれの症状から病院へ行くべきかの基準や家庭内での対処法など、たくさんの情報がわかりやすく記載されています。このことから、シオノギ製薬としても子育て世代をターゲットとし、情報発信を行っていることがわかります。

また、1位にはインフルエンザに関するトピックがランクインしており、2019年10月を境に大きくユーザー数が伸びているのは、インフルエンザの流行に起因するものではないかという予想もできます。

【図6】シオノギ製薬オウンドメディア内コンテンツランキング(2019年7月~2019年12月)

【図6】シオノギ製薬オウンドメディア内コンテンツランキング(2019年7月~2019年12月)

※デバイス:PC

健康への関心高め。若者世代の関心を集める大塚製薬

続いて、【図1】でシオノギ製薬に続いて2019年12月時点のユーザー数が多かった大塚製薬についてみてみます。

【図2】の性別については男女でほとんど差はみられませんが、【図3】の年代をみると20代・30代の比較的若い層で半数を占めていることがわかりました。

また、2019年7月~2019年12月の期間における大塚製薬オウンドメディア内のコンテンツランキングを調べてみると、「BCAA」に関するページがよく見られていることがわかりました【図7】。

BCAAとは、運動時の筋肉でエネルギー源となる必須アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)の総称ですが、これらの結果から運動能力の向上に関心を寄せる若者世代が多く閲覧していることがうかがえます。

さらに、大塚製薬のオウンドメディアでは「健康」に関する情報と「病気」に関する情報とに分かれてトピックが掲載されていますが、7位と10位以外のトピックは全て「健康」に関する情報に属します。このことからも、病の治療というよりも、日々の健康維持に注力する人々からの関心が高いことが考えられます。

【図7】大塚製薬オウンドメディア内コンテンツランキング(2019年7月~2019年12月)

【図7】大塚製薬オウンドメディア内コンテンツランキング(2019年7月~2019年12月)

※デバイス:PC

他4社とは異なるエーザイの支持層

最後に、【図1】のユーザー数推移では横這いで最もユーザー数が少なかったものの、属性情報から大きく特色が読み取れたエーザイについて考察します。

まず、【図2】からユーザー数の男女比率は男性が59.2%と約6割を占めており、エーザイは5社の中では最も男性の割合が高くなっていました。次に【図3】の年代をみてみると、他4社は比較的若い世代の割合が高いのに対し、エーザイは60才以上の割合が25.4%と他社に比べて高いことがわかります。50代と合わせると4割近くを占め、年齢が高い層からの関心が高いことがうかがえます。

エーザイのオウンドメディアでは、認知症や骨粗鬆症、腰痛など比較的年齢が高い世代に向けたコンテンツが充実しているため、このような結果になったのではないかと推測されます。腰痛予防のコンテンツ内には「腰みがき」という日々の生活の中での腰の手入れ方法が丁寧に記載されており、動画で腰痛体操も紹介されるなど、企業側も力を入れて情報を発信しているようです。

ここまで大手製薬会社のオウンドメディアを比較してきましたが、それぞれの会社がターゲットとする属性にうまく響くコンテンツを展開できていることがわかりました。製薬会社に限らず、今後もさまざまな企業でオウンドメディアの運営が広がっていくのではないかと思います。

分析概要

全国のモニター会員(20代以上)の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「eMark+」を使用し、2019年7月~2019年12月におけるユーザーの行動を分析しました。
※ユーザー数はPC+スマートフォンからのアクセスを集計し、ヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測。

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