コンテンツはどう作っていく?
前回の記事でお伝えしたコンテンツ企画ワークショップを経て、ヴァリューズ社員から多くのコンテンツ企画のアイデアをもらうことができたマナミナ編集チーム。
左はマナミナ編集長の星、右は編集部員の弥富
これらのアイデアを元に、リサーチとプランニングのメディア「マナミナ」を形づくるコンテンツを制作していくことになります。
ではどのようにコンテンツ制作を行っていけばいいのでしょうか。そこでまずは一般的なコンテンツづくりの流れを考えます。おそらくそれは次のようなものでしょう。
1.企画づくり
2.ラフ構成案づくり
3.ライターへの依頼・執筆
4.校正
この4つが基本的なステップですが、それぞれのステップでどのように考えるかにメディアごとの特徴があるのだと思います。そのため、当然「マナミナではどう進めるか?」を考える必要がありました。さて、私たちはどう考えていったのでしょうか。
1.アイデアを企画の形に落とす
まず、アイデアを企画の形にするところから始めます。
ワークショップではコンテンツのアイデアをたくさんもらいましたが、これはまだ企画のタネのようなもの。記事にして面白いのか?やるべきか?ということを考えて、いけそうなものを実際の企画の形に落としていきます。
その際、編集部では次のような3つのポイントを考えました。
つまり「誰に、何を、どう伝えるか」ということ。
このうち一番最初に考えるべきは「誰に」、つまり読者です。最初に読者のことを考えなければ、次の「何を伝えればいいか」という問いに答えられません。
では「読者のことを考える」とはどういうことなのでしょうか。これは2つあると思います。
まずはもちろん、読者は誰かということです。
例えばマナミナでは、想定読者はブランド企業のマーケターの方なのか、あるいは広告代理店のマーケターの方なのかと大きく2つに分けて考えます。そこからさらに、◯◯業界の方といったふうに細かく設定したりしていきます。
こうして読者を想定したら、そのあと読者の課題は何かと考えます。
ビジネスメディアであれば、記事を読む動機は「それが役に立ちそうだから」のはず。役に立つということを裏返せば、それは何かの悩みが読者にあるということです。
このように想定読者とその課題の2つを考えることが、「誰に伝えるか」を考えることと捉えています。
そして次に、読者の課題が分かれば何を伝えるべきかが分かります。つまり、課題の解決策を伝えることになるでしょう。そしてここまで考えれば、企画の大まかな部分が決定します。
ここで本連載の第1回目、『オウンドメディア戦略はデータで決める。リサーチ会社がメディアを作るときの調査手法とは』を例に挙げましょう。
この記事では、想定読者を「オウンドメディアを立ち上げたいと思っている/運営しているマーケター」としました。
こうした方々は、そもそも戦略をどう考えたらいいか、特にデータ分析の活用法に課題を持っているのではないかと考えました。そこで、データ分析を活用したオウンドメディア戦略策定の方法を伝える企画にしてみたのです。
往々にして、このような仮説は当たることもあれば外れることもあります。幸いこの記事はマナミナのコンテンツで比較的多く読まれたものになりました。ただ、大事なのは結果でなく、それを次に活かすことだと思います。当たったら「なぜ当たったのか」を考え、外れたら「なぜ外れたのか」を考える。
「PDCAを回す」という古典的なやり方を愚直に守ることが、成功に近づくためにはやはりもっとも大事なのではないかと考えています。
2.構成案とは?
まずは「誰に、何を、どう伝えるか」を考えると先ほど言いました。そして「誰に、何を」までで企画概要が決まります。最後のひとつ、「どう伝えるか」を考えていくのが構成案を作ることでしょう。
「誰に、何を伝えるか」はタイトルやリード文に反映され、おそらくPV数に直結することになると思います。うまく読者の課題をつかむことができれば、読者はこの記事を読んでみたいなと思い、クリックにつながる。
一方、どう伝えるか=記事構成は、記事の滞在時間や離脱率といった指標につながるのではないでしょうか。
クリックしたとしても途中でつまらなくなり離脱してしまう、ということはよく起こるはず。そうではなく論理的に分かりやすい流れになっていれば、読者はスラスラと最後まで読み進めることができます。
その結果として滞在時間も必然的に伸びるでしょうし、「面白かったから他の記事を読んでみようかな」と思う気持ちも湧きやすいのではないでしょうか。とすれば、構成に関しては「分かりやすく、読者を引きつけるような流れを」という点が大事でしょう。
ではここでも例を挙げましょう。マナミナは「リサーチとプランニング」のメディアで、カテゴリも大きくこの2つに分かれています。記事の作り方はこの2つでやや異なるので、それぞれの例を取り上げました。
まずリサーチに関しては、『「イチロー引退」でもっとも検索流入を得たコンテンツは何か?訪問ユーザー数とその性年代を調査』を挙げます。
「イチロー引退」でもっとも検索流入を得たコンテンツは何か?訪問ユーザー数とその性年代を調査
https://manamina.valuesccg.com/articles/417「イチロー」コンテンツ、引退会見の全編動画掲載が強かった
リサーチ記事では、全体概要→詳細情報の順に伝えることを意識しています。全体感を最初につかんだあと、詳細へと進む流れが分かりやすいからです。
「イチロー引退」に関する調査記事では、最初にまずコンテンツのランキングを示しました。「ユーザーはこんなコンテンツを見ていました」と伝えてから、その後「ユーザーはこんな人たちでした」という詳細を伝える流れです。
リサーチ記事では読者に目新しい情報を伝えることになるので、分かりやすさが第一に重要だと考えました。
一方、プランニング系の記事では『データ分析の会社がメディアを立ち上げるとき、比較した3つのCMSとは』が好例です。
プランニング系の記事では、課題→解決の流れを意識しています。この流れはビジネス系の記事では王道です。別の言い方では、問い→答えとも言えるでしょう。この構成では、問題提起から入って解決策の提示につながるので、読者を最後まで引きつけやすいという特徴もあります。
例に挙げたコンテンツでは、課題としてまず「オウンドメディアを立ち上げるときにどんなCMSを選べばいいか分からない」というものを提示します。この問題を解決するためにリサーチを行い、候補を挙げ、最終的に決定した、と解決につながってしっかりとオチがつきます。
3.ライター清水さんの執筆法
コンテンツの構成案まで決めたら、ここからはライターさんに依頼し執筆を進めてもらいます。
では、ライターさんは具体的にどのように記事を書いているのでしょうか? この点を理解しておくことは、スムーズなやり取りやクオリティの担保につながるでしょう。
そこで、マナミナでリサーチ記事を多数執筆しているライターの清水さんにお話しを聞いてみました。
ライターの清水さん。法政大学院イノベーション・マネジメント専攻MBA、WACA上級ウェブ解析士の資格も持つ。
まず、リサーチ記事を執筆するときはどのようなステップで進めているのか聞いてみます。
「企画をいただいたら、まずは世の中でそのテーマがどんなニュースになっているかをチェックします。そのあとデータを見て、またニュースを見る。これを行ったり来たりする感じですね。そうすると、書かれているニュースの裏側がデータから見えてきます」
データの集計と解釈の前に、最初にニュースを見て背景知識を仕入れるところから始めているようでした。では、具体的にどのように記事を書いていくのでしょうか。
「グラフを先に作ってから記事を書きます。グラフを作ってみて、推移の変化があるところ、波があるところがあれば掘り下げていく感じですね」
例として、清水さんが執筆したスポーツマーケティングの調査を挙げていました。
いま、スポーツマーケティングが熱い!| 第4回 エンタメ化でファン獲得 フェンシング編(2)
https://manamina.valuesccg.com/articles/476競技ごとにスポーツマーケティングの動向をとりあげます。フェンシング編(2)では、もう少し詳しく日本フェンシング協会公式サイトのユーザー像を分析してみます。
「一方で、グラフにしてみたけど変化がないこともあります。でも変化がないのも1つの事象だと思うんです。あれ?あんまり動いてないな、ということもある。色々な視点でデータを見てから、最終的に記事内で取り上げるものを決めていきます」
まとめると、清水さんは次のようなステップで執筆しているようでした。
1.ニュースを見て背景を知る
2.データを集計してグラフを作る
3.詳しく語るトピックを決め、文章を作る
では最後に、特にマナミナでリサーチ記事を執筆するときに気をつけていることはあるのでしょうか。
「マーケティングに興味があり、造詣の深い方が読者なので、その方たちにさらに役立つものをという意識で書いています。マーケティング的にロジックが破綻しないように意識するのはもちろんですし、海外のマーケティング記事を参考にしたりもします。私自身のこれまでのWebコンサル経験から、できるだけ提言なども一言入れたいなと思っていますね」
(清水さんのマナミナでの執筆記事はこちらからどうぞ)
まとめると
マナミナを支えてくれているライターさんからの原稿が上がってきたら、仕上げに校正を行います。細かい表現や流れを修正し、強調のための太字を入れ、タグ付けをする。これで記事は完成です。
コンテンツづくりでマナミナが重要視していることは「誰に、何を、どう伝えるか」でした。これはマーケティングにおける基本を踏襲しただけのシンプルなものです。しかしそれでも十分役に立つのではないでしょうか。こうした基本に則った上で初めて、今後行っていくデータ分析による改善施策が効果を発揮するはずです。
ここまで全4回に渡り、マナミナを立ち上げるまでのドキュメンタリーを連載してきました。お付き合いいただきありがとうございました。
2019年7月8日に無事オープンしたマナミナというメディアは、「まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン」というコンセプトを持っています。今後もデータマーケティングにまつわる情報を発信し、マーケターの方々のお役に立てるようなコンテンツを地道に作っていきます。ご期待ください。
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マナミナ編集部でデスクを担当しています。新卒でメディア系企業に入社後、フリーランスの編集者・ライターとして独立。マナミナでは主にデータを活用した取り組み事例の取材記事を執筆しています。