新型コロナでお酒の購買行動はどう変わったか?大手ECサイト「カクヤス」のデータから考察

新型コロナでお酒の購買行動はどう変わったか?大手ECサイト「カクヤス」のデータから考察

新型コロナウイルスの流行に伴い、お酒の個人消費が増えていると見られています。実際にどれほど進んでいるのでしょうか。本記事では市場分析サービス「eMark+(イーマークプラス)」を用いて、お酒の大手ECサイト「カクヤス」の利用状況を調査し、消費マインド変化の考察を試みます。


ECサイト「カクヤス」でユーザー数が1.5倍に

新型コロナウイルスの流行に伴い、テレワークやオンライン飲み会などの新しい習慣が誕生しました。一方で、店での外食は現在でも自粛傾向が続き、代わりに自宅でのお酒の個人消費が増えていると見られています。

では、お酒の個人消費は実際にどれほど進んでいるのでしょうか。特に、お酒に対する消費者の意識の変化や、購買チャネル利用実態の変化が気になるところだと思います。

そこで本記事では、お酒の大手ECサイト「カクヤス」の利用状況を調査することで、消費マインド変化の簡易的な考察を試みます。使用するのはネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「eMark+(イーマークプラス)」。ユーザー数や利用者属性の変化から見えてくるのは一体どのようなことでしょうか。

カクヤスは「なんでも酒や」を掲げるお酒の大手ECサイト。あらゆる種類の酒類を販売しているほかソフトドリンクや食品・雑貨なども取り扱っており、toC、toBを問わず利用されています。

新型コロナウイルスの流行に伴う自粛要請、緊急事態宣言の発令など、いわゆるロックダウンのなかカクヤスのユーザー数はどのように変化したのでしょうか。パンデミック前夜の2019年12月からのユーザー数の変化を確認してみましょう。

eMark+画面より(分析期間:2019年12月-2020年5月、対象デバイス:PC&スマートフォン)

ユーザー数変化のグラフを見てみると、右肩上がりにユーザー数が増えていることがわかります。20年5月のデータを3ヶ月前と比べると、ユーザー数はおよそ1.5倍に。特に、初めて「3密」を避ける等の対策が示された3月、また、緊急事態宣言が発令された4月はユーザー数を大きく伸ばしています。

お酒をECで購入するとなると、他のチャネルとしてはAmazonや楽天などが考えられます。それら大手ECモール内の検索・購入数は今回は調査していませんが、カクヤスがお酒の大手ECサイトであることから、国内全体の傾向を一部反映していると想定できるでしょう。

ヴァリューズが実施したアフターコロナの消費者動向調査では、「新型コロナウイルスの影響拡大後、インターネットで購入・契約したものは何か」という項目で、アルコール飲料は全体回答者の2.3%を占めていました。どのような理由で態度変容が起こったかははっきりとしませんが、カクヤスなどのECサイトを使ってインターネットでのお酒の購入を行ったユーザーは一定数いたと言えるでしょう。

コロナ影響下での消費者動向、アフターコロナへの展望を調査 ~ 収束後も日用品・食材・化粧品などのネット購入は継続傾向に

https://manamina.valuesccg.com/articles/885

インターネット行動ログ分析によるマーケティング調査・コンサルティングサービスを提供する株式会社ヴァリューズは、国内の20歳以上の男女25,884人を対象に、新型コロナウイルスの感染拡大によって変化した働き方や消費意識に関するアンケート調査を実施しました。また、一般ユーザーの行動ログとデモグラフィック(属性)情報を用いたマーケティング分析サービス「VALUES eMark+」を使用して、感染拡大前後のネット行動ログから消費者動向実態を調査しました。

カクヤスで関東地方ユーザーが増加。高所得者層も?

では、具体的にどのような人がカクヤスを利用してお酒を購入するようになったのでしょうか?

そこで、2月以前と3月以降のカクヤスのデモグラフィック属性を比較し、特徴的な変化が見られるかどうかをeMark+で調べてみました。項目としては、性別世帯別年収居住地域の3つを比較します。それぞれ見ていきましょう。

性別

eMark+画面より(分析期間:2019年12月-2020年2月、対象デバイス:PC&スマートフォン)

eMark+画面より(分析期間:2020年3月-2020年5月、対象デバイス:PC&スマートフォン)

まずは性別から見てみます。

グラフは上がコロナ禍以前の2019年12月〜2月、下が2020年3月〜5月のコロナ禍中のデータです。両者を比較してみると、女性ユーザーが全体のうち2%ほど増加していたという結果でした。性別では大きな変化はなかったと考えられます。

世帯別年収

eMark+より集計(コロナ禍前=2019年12月-2020年2月、コロナ禍後=2020年3月-5月、対象デバイス:PC&スマートフォン)

次に世帯年収別のユーザー数変化に注目してみましょう。上の表では世帯年収別のカクヤスユーザー割合を一覧化しています。コロナ禍以前とコロナ禍後の差分を見て、増加した年収帯を赤の矢印、減少した年収帯を青の矢印で表しました。

全体的に見てみると、どの年収帯でも増減幅は1%未満に収まっています。ただ、その中でももっとも変化幅が大きかったのは900万〜1500万までの世帯で、合計して1.7%利用者が増加しています。

これも性別と同様、有為な変化とは言い難い可能性もあります。しかし、世帯年収が900万以上の高所得者層はそもそもの絶対数が少ないため、性別の2%の変化幅よりは多少の意味を持ってくるでしょう。コロナ禍中でお酒EC利用を始めた層は、もしかするとこれらの高所得者層が一定の割合を占めていたのかもしれません。

地域

eMark+画面より(分析期間:2019年12月-2020年2月、対象デバイス:PC&スマートフォン)

eMark+画面より(分析期間:2020年3月-2020年5月、対象デバイス:PC&スマートフォン)

次に、地域別のユーザー数の増加度合いを見てみましょう。モニターの影響から2019年12月-2020年2月の時点でも関東地方の比率が高いのですが、2020年3月以降は関東地方のユーザー比率がさらに5パーセント増加しています。

関東地方の1都3県においては緊急事態宣言、自粛要請などがほかの地方より長く実施されており、これが影響している可能性があります。考えられるストーリーとしては、ほかの地方よりも外で飲める機会が減ったため、反動やストレスでお酒を飲みたくなる人が増え、EC利用に走ったというもの。

あるいは、関東地方がほかの地方よりもコロナ影響が強く、普段からスーパーなどでお酒を購入していた人が警戒を強め、EC利用に流れたという可能性もあるでしょう。

これらの態度変容の理由づけは、デモグラ属性の変化量を見る調査では仮説設定のみにとどまります。より深く知る手法としては、お酒のEC利用者の興味・関心ワードの束を集め、サイコグラフィック属性によってユーザーをクラスタリング、変化を追うというものがあります。

ヴァリューズのツール「story bank」では、Web行動ログの束を可視化することによって、ユーザーのジャーニーを理解することができます。興味のある方はぜひセミナーにご参加ください。

【6/26(金)・7/6(月)・7/14(火)・7/21(火)・7/30(木)】story bank紹介セミナー【オンライン開催】

https://manamina.valuesccg.com/articles/831

消費者ニーズやアクションに至るプロセス(story)をWeb行動ログから分析・可視化できるツール「story bank」をリリースいたしました。サービスリリースに伴いstory bankの有料機能を御覧いただけるセミナーを開催いたします。

EC利用は持続するか?ノンアル飲料のニーズも増加

ここまで、カクヤスのユーザー数や属性の変化を分析することで、お酒ECの利用にまつわる消費者行動の変化を考察してきました。

まず、カクヤスのユーザー数はコロナ渦中で1.5倍に増加していたことが分かりました。実は、酒類に限らずスーパーでの購買行動もオンラインに移行していく流れがあります。下記記事ではネットスーパーの利用者数が増加した実態を明らかにしました。

コロナ影響でネットスーパー4サイトのユーザーが急上昇。1位はコストコ、楽天西友は経済圏内の回遊が強みか

https://manamina.valuesccg.com/articles/843

新型コロナの影響で外出自粛が叫ばれ、多くの業界が打撃を受ける一方、一部のサービスは需要を伸ばしています。その一つとして今回着目したのが、ネットスーパー。感染予防のために店頭での買い物を控え、ネットスーパーの利用者が増えているのではないかと予想し、eMark+を使ってその実態を調査しました。

コロナ禍が収まればネットスーパー利用は継続されない、という見立てもあるでしょう。ただ、現状はまだまだ収束時期が見えず、このままの状況が長引けば習慣としてEC利用が継続的に根付く可能性もおおいに考えられます。

また、購買チャネルや購入方法の変化にとどまらず、嗜好するお酒についても新しい傾向があると指摘されています。下記の記事では、消費者インサイトとしてアルコールを含まない「ノンアル飲料」への注目が取り上げられていました。カクヤス等のECサイトにおいても、ノンアル飲料の購入数が増加していたかもしれません。

在宅効果でノンアルビールが売れまくり…「オールフリー」の3月出荷が42%増

https://www.businessinsider.jp/post-214156

長期化する在宅ワーク推奨期間のなかで、サントリーのノンアルビール「オールフリー」が売れている。サントリーは6月3日、自粛ムード真っ只中だった3月の...

本記事ではお酒の大手ECサイト、カクヤスのユーザー実態の分析から、お酒の個人消費のコロナ影響について考察しました。最後に内容をまとめます。

1.購買チャネルの変化:オンライン化の進展 - ECサイト利用が増大。デモグラ属性の変化からは、関東地方の高所得者層において特にEC利用が増加した可能性が考えられる。コロナ禍の状況次第では消費者の間でEC利用習慣が定着するかもしれない。

2.消費者インサイトの変化 - ノンアル飲料の需要の増大。テレワーク中心の生活者の中には、新しいニーズが生まれる可能性も。サイコグラフィック属性の変化を追うことでより深く知ることができるだろう。

本記事ではeMark+を用いて調査を行いましたが、eMark+の機能がパワーアップした新ツール「Dockpit(ドックピット)」が2020年10月にリリースされました。より詳細なデモグラ属性や検索後のLP分析、コンテンツ分析などに興味のある方は、ぜひ無料版に登録して実際にDockpitを体験してみてくださいね。

dockpit 無料版の登録はこちら

関連記事

“第3のビール”の公式サイト訪問者数を調査!圧倒的な強さを見せたのは「金麦(サントリー)」

https://manamina.valuesccg.com/articles/951

気温も高まり、アルコール飲料がより美味しく感じられる季節になってきました。新型コロナの影響もあり、巣ごもり消費でビール業界にも変化があったのではないでしょうか?そこで、今回は第3のビール(新ジャンル)に絞って、公式サイト のユーザー動向や属性などについて掘り下げてみたいと思います。

緊急事態宣言解除後の消費者行動&実施時期を調査 ~ 日用品・化粧品のEC利用や出前・宅配は 約7割がアフターコロナでも継続意向

https://manamina.valuesccg.com/articles/931

インターネット行動ログ分析によるマーケティング調査・コンサルティングサービスを提供する株式会社ヴァリューズは、国内の20歳以上の男女25,382人を対象に、新型コロナウイルス感染拡大後から緊急事態宣言解除後までの消費意識の変遷、そしてアフターコロナにおける消費意欲およびその実施時期に関するアンケート調査第二弾を実施しました。

Uber Eatsなどデリバリーアプリが浸透するウィズコロナの今、グルメアプリとの利用シーンの違いとは

https://manamina.valuesccg.com/articles/934

外出自粛に伴い外食機会は減り、食のデリバリーサービスの利用者が増加しています。実際利用者はどれくらい増えており、どんな人が使っているのでしょうか。本稿では、これら食をめぐるサービスの利用実態を調査。グルメ系サービスとデリバリーサービスのコロナ渦中の状況を最新データから読み解きます。

​​

メールマガジン登録

最新調査やマーケティングに役立つ
トレンド情報をお届けします

この記事のライター

ウィーン大学への留学を経て京都大学文学部卒業。
外資系大手ITコンサルティング会社に勤務後、フリーランスライターに転向。

関連する投稿


ECサイトにおけるKPI策定のポイント

ECサイトにおけるKPI策定のポイント

ECサイトの売り上げをあげるためには、KGIの設定だけではなく、KPIの策定が重要なポイントになります。そこで、気になるKPIの策定ポイントや、課題の洗い出し・分析についてご紹介します。効果的なマーケティング施策にお悩みの方や、ECサイトの売り上げが伸び悩んでいる方はぜひ参考になさってください。


“第2次”アサイーブームは続くのか? 検索者属性や検索ニーズからカテゴリ浸透の未来を考察

“第2次”アサイーブームは続くのか? 検索者属性や検索ニーズからカテゴリ浸透の未来を考察

近年再び話題になっている「アサイー」。若い女性を中心に人気を集めているようです。他にはどのような特徴を持つ人がアサイーに関心を持っているのか、アサイー検索者がアサイーのどんなことに興味を持っているのかについて、Web行動ログデータから分析・考察します。そして、アサイーブームのこれからを考えます。


ファッション通販サイトのポジショニングを分析! 20代に人気「GRL」を4P分析で紐解く

ファッション通販サイトのポジショニングを分析! 20代に人気「GRL」を4P分析で紐解く

新型コロナウイルスの蔓延を経て、ファッション業界でもオンラインショッピングの利用が急拡大しました。実店舗よりも選択肢が増える状況下で、多くの支持を集めるブランド「GRL(グレイル)」「ユニクロ」「GU」「SHEIN(シーイン)」に注目し、好調の理由を分析します!


ECのLTVの計算方法とは?LTV向上の事例も解説!

ECのLTVの計算方法とは?LTV向上の事例も解説!

EC事業において重要な指標の一つであるLTV(ライフタイムバリュー)。LTVは顧客が生涯にわたってもたらす総収益を示す指標で、既存顧客のLTVを高めることで売上の維持、拡大につながります。 本記事では、LTVの基本的な概念と計算方法、LTVを高めるため方法について解説し、実際にLTVの向上に成功した事例についても紹介します。LTVの改善施策を考える際に役立てていただければ幸いです。


若者は海外旅行に積極的?最新の旅行需要を調査。航空会社大手、LCCの集客動向は

若者は海外旅行に積極的?最新の旅行需要を調査。航空会社大手、LCCの集客動向は

全国旅行支援や新型コロナウイルスの5類移行の影響もあり、徐々に人の移動が活発になってきました。今回は、昨今高まっている旅行需要に注目し、検索データを通じて旅行や観光への人々の関心を調査します。また、各航空会社の集客層の違いについても比較していきます。


最新の投稿


ネット上のクチコミを参考に商品購入経験がある人は約9割!購入商品のTOP3は食品・化粧品・日用雑貨【ホットリンク調査】

ネット上のクチコミを参考に商品購入経験がある人は約9割!購入商品のTOP3は食品・化粧品・日用雑貨【ホットリンク調査】

株式会社ホットリンクは、クチコミ投稿の経験や購買への影響を調査し、結果を公開しました。


約5割のマーケ担当がアクセス解析ツールのデータ活用において「データの最適な活用方法」に課題を実感【富士フイルムビジネスイノベーション調査】

約5割のマーケ担当がアクセス解析ツールのデータ活用において「データの最適な活用方法」に課題を実感【富士フイルムビジネスイノベーション調査】

富士フイルムビジネスイノベーション株式会社は、事業会社に勤めており、アクセス解析ツールを使用したことがあるマーケティング担当者を対象に、アクセス解析ツールの利用実態調査を実施し、結果を公開しました。


ガイエとRIZAP、chocoZAPの店舗環境と会員データを活用したエンタメ向け広告パッケージを共同開発

ガイエとRIZAP、chocoZAPの店舗環境と会員データを活用したエンタメ向け広告パッケージを共同開発

株式会社ガイエとRIZAP株式会社は、エンターテインメント業界向けの広告パッケージ「chocoZAPエンタメブースト」を共同開発したことを発表しました。


忘年会 ~ 従業員エンゲージメントの秘策

忘年会 ~ 従業員エンゲージメントの秘策

日本の年間恒例行事のひとつでもある「忘年会」。「忘年会」と聞いてどのような会を思い出しますか?そのコミュニティはどのような集まりでしょう。「無礼講」の下、飲んで騒ぐといった「酒宴」は過去の産物なのでしょうか。本稿では、広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長、一般社団法人マーケティング共創協会理事・研究フェローを務めている渡部数俊氏が「忘年会」の起源に触れ、現代社会においてあるべき社内コミュニケーションの姿、従業員エンゲージメントについて解説します。


Sprocket、顧客体験(CX)の全体最適を実現する3つの新プロダクトを提供開始

Sprocket、顧客体験(CX)の全体最適を実現する3つの新プロダクトを提供開始

株式会社Sprocketは、顧客体験(CX)の全体最適を実現する「Sprocket Personalize」「Sprocket DataStudio」「Sprocket Insights」の3プロダクトを提供開始することを発表しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ