コロナ影響でエンタメへの「投げ銭」に注目? インスタやSHOWROOMなどライブ配信プラットフォームを調査

コロナ影響でエンタメへの「投げ銭」に注目? インスタやSHOWROOMなどライブ配信プラットフォームを調査

新型コロナの影響でリアルライブイベントの開催が困難となり、この春~夏にかけて開催予定だったアーティストライブは軒並み中止に。野外音楽フェスティバル「FUJI ROCK FESTIVAL」も中止が発表され、ファンから落胆の声が広がっています。そんな中、ミュージシャンやアイドルの収益機会となり、ファンとアーティストを繋ぐ方法として、エンタメ界が新たな可能性を見出しているのが「投げ銭」サービス。今話題の「投げ銭」は、実際にユーザーからどれほど注目され、浸透しているのか?その実態を調査しました。


Youtubeでも注目集まる「投げ銭」

「投げ銭」とは元々、ストリートミュージシャンや大道芸人たちのパフォーマンスを称賛し、現金を投げ入れる行為のこと。最近では、インターネット上で配信されたライブ映像などのコンテンツに対し、配信プラットフォームを通じて金銭やギフト・ポイントなどの有料アイテムを提供する行為・サービスとして注目されています。

ユーザーはアーティストを支援したり育成する目的で投げ銭を行い、アーティストは投げ銭が収益となるほか、ファンとのコミュニケーションが形成されモチベーションの向上にも繋がるといいます。新型コロナの影響でリアルライブイベント開催が困難な中、ライブ配信や投げ銭はエンタメ界を活気づけるための手段として存在感を高めています。

それではまず、SaaS型のWeb行動分析ツール「eMark+(イーマークプラス)」を使って「投げ銭」の過去半年の検索数推移を見てみましょう。

(分析期間:2019年12月〜2020年5月、対象デバイス:PC)

指定キーワード:「投げ銭」

2020年3月~5月にかけて、検索数が急上昇しています。特に3月は前月の5倍以上です。

「投げ銭」検索の流入コンテンツでもっとも閲覧者が多かったのは、YouTubeの投げ銭機能を解説する記事でした。YouTubeには視聴者が有料でコメントを目立たせることができる「Super Chat」という投げ銭機能が搭載されており、配信者の広告以外の収益源や視聴者とのコミュニケーション手段として活用されています。

YouTubeでライブ配信を行うアーティストが増え、配信者や視聴者がYouTubeLiveでの投げ銭に関する情報収集のために検索したと推測できます。

コロナでジャニーズアイドルもインスタライブを配信

多くのユーザーがライブ配信を楽しんでいるプラットフォームが、インスタグラムとYouTubeの2つ。まずはインスタグラムとYouTubeのユーザー数を比較してみます。

(分析期間:2019年12月〜2020年5月、対象デバイス:PC、スマートフォン)

YouTubeの方が利用者数は多く、いずれも緩やかな右肩上がりです。

インスタグラムは、コロナ禍でインスタライブの配信数が増え、アメリカでは3月に70%増加したといいます。配信者は著名人に限らず一般人が日常生活を配信しているケースも多数。「Zoom飲み」などと同様に、外出自粛中に友人や社会との「リアルタイム交流」を可能にする手段として活用されているのではないかという見方もあります。

また、自分の好きなものや感じていることを、ツイートするかのように動画で「無観客配信」をする若者も、コロナ以降目立つようになったといいます。コロナの影響で入学式や卒業式、部活動の大会など人生の一大イベントが中止になったことを受け、「能動的に何かを発信しなければいけない」と切迫感を感じたり、発信することで世の中や社会に参加している実感を得られたりする、といった心理が働いているのかもしれません。

一方で、日本では著名人によるインスタライブも大きな盛り上がりを見せました。これまでネット上での音楽配信や顔写真公開などを一切行っていなかったジャニーズのアイドルが配信を始めたり、人気アーティスト同士のコラボも盛んに行われるなど、豪華な顔ぶれに話題沸騰。「コロナの苦境をみんなで乗り越えよう」というメッセージが沿えられた特別企画とはいえ、従来のエンタメ界に風穴を開けたとも言える映像は、多くの視聴者を驚かせました。

17LiveとSHOWROOMのユーザー数推移

では続いて、ライブ配信アプリとして人気を集める17LiveとSHOWROOMを見ていきます。

17Liveは、2017年9月に日本での配信を開始した台湾発のライブ配信アプリ。スマホのワンタッチ操作で配信できる手軽さが人気で、ライブ配信者(イチナナライバー)は全世界に約17,000名以上にのぼります。台湾、香港、アメリカなど世界9か国で提供されており、1つのアプリで全世界にライブを配信/視聴できるのも17Liveの特徴です。

一般人ライバーも多く活躍し、トークや歌、料理動画などのコンテンツも多数。ユーザーは有料のギフトを投げ銭としてライバーに贈ることができ、ライバーの収益となります。人気ライバーの中には月に数百万円稼ぐ人もいるといいます。

SHOWROOMは、17Liveと同じく投げ銭機能のついたライブ配信アプリ。視聴者はライブ配信者へ有料ギフトを贈り、応援することができます。実際のライブ会場のような雰囲気が演出されているのが特徴で、視聴者自身もアバターとしてステージの下に登場。ギフトの量が多い人は前列にアバターが表示される機能があり、見ている側もライブ感覚で楽しめます。

イチナナライバーが人気を集める17Liveに比べると著名人による配信が多く、乃木坂46などのアイドルや声優、お笑い芸人など、人気芸能人がSHOWROOMでライブ配信を行っています。

これらのプラットフォームを通じたライブ配信コンテンツをどれくらいのユーザーが楽しんでいるのでしょうか。まずは、17LiveとSHOWROOMのユーザー数(MAU)推移を見てみます。

(分析期間:2019年12月〜2020年5月、対象デバイス:スマートフォン)

MAUはいずれも50万人程を推移していました。これらの2つのアプリはいずれも同規模くらいだと言えるでしょう。

また、ユーザーの性・年代別の構成比を比較すると、それぞれの特徴が見えてきました。

(分析期間:2019年12月〜2020年5月、対象デバイス:スマートフォン)

(分析期間:2019年12月〜2020年5月、対象デバイス:スマートフォン)

比べて見てみると、SHOWROOMは男性比率が高い一方、17Liveは40代以上の高年代も多くいることが分かります。17Liveは俳優の吉田鋼太郎さんが出演するテレビCMを2020年2月22日から放送しており、大人をターゲットにしたCM効果が表れたのかもしれません。

吉田鋼太郎さん出演の17LiveCM映像。17Liveプレスリリースより

また、SHOWROOMはコロナの影響によるエンタメ活動の制限を受け、有料ライブ配信機能「プレミアムライブ」を5月22日にリリース。合わせて、ライブ開催手数料を無料化し、売上の全額を配信者に還元するキャンペーンを行っています。(キャンペーン開催期間:2020/6/30(火)23:59まで)

これまでのライブ配信サービスは、無料で視聴し投げ銭でアーティストを支援する構造が主流でした。しかし、アーティストの収益機会を増やし、コロナで一時沈んだエンタメ界を活性化させるには、オンラインライブの有料化もこれから進んでいくかもしれません。

まとめ

ジャニーズをはじめ、かつてはネットでの顔出しがあり得なかった芸能人も、コロナ禍でオンラインで見られる機会が一気に増えました。よしもと芸人のYouTubeチャンネルも続々と登場し、オンライン上のコンテンツは益々バラエティ豊かになっています。さらに、スマホで手軽に視聴できるアプリやSNSを通じ、私生活を映したコンテンツも増えたことで、配信者との距離を近く感じられるようになりました。

コロナで苦境に追い込まれたエンタメ業界が、「何とか活動を続けるため」「ファンを喜ばせるため」と歩み始めたオンラインライブ。危機を乗り越えるための挑戦が、エンターテイメントの新しい楽しみを提供し、これまでの常識にとらわれない新時代を築いていくかもしれません。

収益機会としては、オンラインを活用した投げ銭に加え、プレミアム機能(有料視聴)も注目されており、既に独自サイトで有料オンラインライブを開催しているアーティストも出てきています。ユーザーが価値を感じれば、チケットも購入されるでしょう。ウィズコロナ時代のオンラインによるパフォーマンス、収益化の形から目が離せません。

本記事ではeMark+を用いて調査を行いましたが、eMark+の機能がパワーアップした新ツール「Dockpit(ドックピット)」が2020年10月にリリースされました。まずは無料版に登録して、実際にDockpitを体験してみてくださいね。

dockpit 無料版の登録はこちら

関連記事

外出自粛で需要増のYouTube。ユーザー数を伸ばしたチャンネルは?

https://manamina.valuesccg.com/articles/866

コロナによる外出自粛の影響を受け、需要が増加しているYouTube。ユーザー数を伸ばしたチャンネルは?ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「eMark+」を使用し、2020年3月のデータから動画共有サービス「YouTube」について調査・分析しました。

「在宅時間増加による動画配信アプリ利用者の増加~コロナの影響はあるのか!?」レポート

https://manamina.valuesccg.com/articles/937

緊急事態宣言は解除されたものの依然として在宅志向は変わらず、長時間自宅で過ごす人が多いようです。そんな在宅時間の増加とともに伸びているのが「動画視聴時間」です。新型コロナウイルスの蔓延により、Amazonプライム・ビデオ、TVer、GYAO!、Netflixなど動画配信アプリへどのような影響があったのでしょうか。eMark+を用いて調査してみました。(ページ数|8p)

動画配信市場を牽引する「YouTube」のユーザーってどんな人?

https://manamina.valuesccg.com/articles/1103

年々拡大しつつある動画配信市場ですが、2024年には3,440億円(※)まで市場規模が成長すると言われています。特に2020年は新型コロナウイルスの影響で生活におけるニューノーマル化も進み、外出を控え自宅で過ごす人が増加し動画配信市場にとっては追い風となっているはずです。また、これまでは若年層を中心に人気を博していた「YouTube」も、この数年で幅広い世代にも受け入れられるようになったのではないでしょうか。今回は動画配信サービスの中でも特に利用者の多い「YouTube」について調査・分析しました。<br> <small>※一般財団法人デジタルコンテンツ協会(DCAJ)の『動画配信市場調査レポート2020』より</small>

Web行動ログデータから見る消費者行動のリアル!withコロナ期における消費者変化とは |サブスクリプション編

https://manamina.valuesccg.com/articles/1068

withコロナ時代の消費者変化を、Web行動ログから考察したオンラインセミナーが9月17日に開催されました。今回のテーマは「サブスクリプション」。withコロナ期のいま、自宅時間、余暇の使い方も大きく変化したことが考えられます。そこで全体的な「サブスクリプション」サービスにおける現在の消費者行動を俯瞰し、さらに重点的に「動画配信サービス」にフォーカスして分析、解説します。 <br><b>※セミナー資料は無料でダウンロードできます。記事下部にあるフォームからお申込みください</b>

​​

メールマガジン登録

最新調査やマーケティングに役立つ
トレンド情報をお届けします

この記事のライター

フリーランスPRおよびライターとして活動中。二児の母。

関連する投稿


新興テック企業「Nothing」。2年で7倍成長の理由を世代別に分析

新興テック企業「Nothing」。2年で7倍成長の理由を世代別に分析

ロンドン発、今注目のテクノロジーブランド「Nothing(ナッシング)」。2020年の設立以来、スマートフォンやオーディオ製品を中心に、透明感ある唯一無二のデザインと高い性能で、多くの大企業がひしめくテック業界で急速に存在感を高めています。そんな革新的なNothing製品は、どのような人々に支持されているのでしょうか。本記事では、Nothingのサイト訪問者データをもとにユーザー像を分析し、なぜNothingが注目を集めているのかを年代別に考察していきます。


【2025年版】人気キャラ図鑑|ヒットしたミャクミャク・ラブブ等の注目度、次来るキャラは?

【2025年版】人気キャラ図鑑|ヒットしたミャクミャク・ラブブ等の注目度、次来るキャラは?

2025年、たくさんのかわいいキャラクターが流行りました。今回の記事では、2025年で人気が急上昇したキャラクター10選をご紹介します。また、ちいかわ・ミャクミャクなどの人気キャラの経済効果にも迫ります。最後には、2026年に人気が上昇するキャラクターを予想しました。


おじさん構文、おぢポ、無課金おじさん...なんで“おじさん”ってバズるの?

おじさん構文、おぢポ、無課金おじさん...なんで“おじさん”ってバズるの?

おじさん特有のLINEの文面「おじさん構文」、軽装備のオリンピック選手「無課金おじさん」など、聞き覚えのある方も多いのではないでしょうか。ポイ活アプリ「おぢポ」は250万ダウンロード、「おじさん構文」をテーマとした楽曲は3,000万回再生というようにバズっています。なぜ数々の「おじさん」は流行するのでしょうか?この記事では、おじさんがヒットの要因となる理由を探ります。


Threadsユーザー数1,000万人突破。ヒットの要因と未来予測

Threadsユーザー数1,000万人突破。ヒットの要因と未来予測

「Threads(スレッズ)」は、「Instagram」や「Facebook」で知られるMeta社が提供するテキストベースのSNSプラットフォームです。2023年7月にサービス開始したThreadsですが、ここ2年でユーザー数を大きく伸ばしていることをご存じでしょうか。本記事ではThreadsユーザー増加の背景と、今後の推移について分析します。


現役大学生が語るリアルなSNS活用実態。インスタ"本垢・サブ垢"の使い分けとは|Z世代インタビュー

現役大学生が語るリアルなSNS活用実態。インスタ"本垢・サブ垢"の使い分けとは|Z世代インタビュー

Z世代の消費やコミュニケーションを理解する上でSNSは無視できません。彼らにとっては目的別に複数のアカウントを使い分けるのが当たり前。アプリを横断しながら「本音」と「建前」を巧みに操ります。今回は現役大学生3名に、そのリアルなSNS実態について聞きました。Z世代ならではのアカウントの使い分け、自己表現とは?


ページトップへ