Youtubeでも注目集まる「投げ銭」
「投げ銭」とは元々、ストリートミュージシャンや大道芸人たちのパフォーマンスを称賛し、現金を投げ入れる行為のこと。最近では、インターネット上で配信されたライブ映像などのコンテンツに対し、配信プラットフォームを通じて金銭やギフト・ポイントなどの有料アイテムを提供する行為・サービスとして注目されています。
ユーザーはアーティストを支援したり育成する目的で投げ銭を行い、アーティストは投げ銭が収益となるほか、ファンとのコミュニケーションが形成されモチベーションの向上にも繋がるといいます。新型コロナの影響でリアルライブイベント開催が困難な中、ライブ配信や投げ銭はエンタメ界を活気づけるための手段として存在感を高めています。
それではまず、SaaS型のWeb行動分析ツール「eMark+(イーマークプラス)」を使って「投げ銭」の過去半年の検索数推移を見てみましょう。
(分析期間:2019年12月〜2020年5月、対象デバイス:PC)
指定キーワード:「投げ銭」
2020年3月~5月にかけて、検索数が急上昇しています。特に3月は前月の5倍以上です。
「投げ銭」検索の流入コンテンツでもっとも閲覧者が多かったのは、YouTubeの投げ銭機能を解説する記事でした。YouTubeには視聴者が有料でコメントを目立たせることができる「Super Chat」という投げ銭機能が搭載されており、配信者の広告以外の収益源や視聴者とのコミュニケーション手段として活用されています。
YouTubeでライブ配信を行うアーティストが増え、配信者や視聴者がYouTubeLiveでの投げ銭に関する情報収集のために検索したと推測できます。
コロナでジャニーズアイドルもインスタライブを配信
多くのユーザーがライブ配信を楽しんでいるプラットフォームが、インスタグラムとYouTubeの2つ。まずはインスタグラムとYouTubeのユーザー数を比較してみます。
(分析期間:2019年12月〜2020年5月、対象デバイス:PC、スマートフォン)
YouTubeの方が利用者数は多く、いずれも緩やかな右肩上がりです。
インスタグラムは、コロナ禍でインスタライブの配信数が増え、アメリカでは3月に70%増加したといいます。配信者は著名人に限らず一般人が日常生活を配信しているケースも多数。「Zoom飲み」などと同様に、外出自粛中に友人や社会との「リアルタイム交流」を可能にする手段として活用されているのではないかという見方もあります。
また、自分の好きなものや感じていることを、ツイートするかのように動画で「無観客配信」をする若者も、コロナ以降目立つようになったといいます。コロナの影響で入学式や卒業式、部活動の大会など人生の一大イベントが中止になったことを受け、「能動的に何かを発信しなければいけない」と切迫感を感じたり、発信することで世の中や社会に参加している実感を得られたりする、といった心理が働いているのかもしれません。
一方で、日本では著名人によるインスタライブも大きな盛り上がりを見せました。これまでネット上での音楽配信や顔写真公開などを一切行っていなかったジャニーズのアイドルが配信を始めたり、人気アーティスト同士のコラボも盛んに行われるなど、豪華な顔ぶれに話題沸騰。「コロナの苦境をみんなで乗り越えよう」というメッセージが沿えられた特別企画とはいえ、従来のエンタメ界に風穴を開けたとも言える映像は、多くの視聴者を驚かせました。
17LiveとSHOWROOMのユーザー数推移
では続いて、ライブ配信アプリとして人気を集める17LiveとSHOWROOMを見ていきます。
17Liveは、2017年9月に日本での配信を開始した台湾発のライブ配信アプリ。スマホのワンタッチ操作で配信できる手軽さが人気で、ライブ配信者(イチナナライバー)は全世界に約17,000名以上にのぼります。台湾、香港、アメリカなど世界9か国で提供されており、1つのアプリで全世界にライブを配信/視聴できるのも17Liveの特徴です。
一般人ライバーも多く活躍し、トークや歌、料理動画などのコンテンツも多数。ユーザーは有料のギフトを投げ銭としてライバーに贈ることができ、ライバーの収益となります。人気ライバーの中には月に数百万円稼ぐ人もいるといいます。
SHOWROOMは、17Liveと同じく投げ銭機能のついたライブ配信アプリ。視聴者はライブ配信者へ有料ギフトを贈り、応援することができます。実際のライブ会場のような雰囲気が演出されているのが特徴で、視聴者自身もアバターとしてステージの下に登場。ギフトの量が多い人は前列にアバターが表示される機能があり、見ている側もライブ感覚で楽しめます。
イチナナライバーが人気を集める17Liveに比べると著名人による配信が多く、乃木坂46などのアイドルや声優、お笑い芸人など、人気芸能人がSHOWROOMでライブ配信を行っています。
これらのプラットフォームを通じたライブ配信コンテンツをどれくらいのユーザーが楽しんでいるのでしょうか。まずは、17LiveとSHOWROOMのユーザー数(MAU)推移を見てみます。
(分析期間:2019年12月〜2020年5月、対象デバイス:スマートフォン)
MAUはいずれも50万人程を推移していました。これらの2つのアプリはいずれも同規模くらいだと言えるでしょう。
また、ユーザーの性・年代別の構成比を比較すると、それぞれの特徴が見えてきました。
(分析期間:2019年12月〜2020年5月、対象デバイス:スマートフォン)
(分析期間:2019年12月〜2020年5月、対象デバイス:スマートフォン)
比べて見てみると、SHOWROOMは男性比率が高い一方、17Liveは40代以上の高年代も多くいることが分かります。17Liveは俳優の吉田鋼太郎さんが出演するテレビCMを2020年2月22日から放送しており、大人をターゲットにしたCM効果が表れたのかもしれません。
吉田鋼太郎さん出演の17LiveCM映像。17Liveプレスリリースより
また、SHOWROOMはコロナの影響によるエンタメ活動の制限を受け、有料ライブ配信機能「プレミアムライブ」を5月22日にリリース。合わせて、ライブ開催手数料を無料化し、売上の全額を配信者に還元するキャンペーンを行っています。(キャンペーン開催期間:2020/6/30(火)23:59まで)
これまでのライブ配信サービスは、無料で視聴し投げ銭でアーティストを支援する構造が主流でした。しかし、アーティストの収益機会を増やし、コロナで一時沈んだエンタメ界を活性化させるには、オンラインライブの有料化もこれから進んでいくかもしれません。
まとめ
ジャニーズをはじめ、かつてはネットでの顔出しがあり得なかった芸能人も、コロナ禍でオンラインで見られる機会が一気に増えました。よしもと芸人のYouTubeチャンネルも続々と登場し、オンライン上のコンテンツは益々バラエティ豊かになっています。さらに、スマホで手軽に視聴できるアプリやSNSを通じ、私生活を映したコンテンツも増えたことで、配信者との距離を近く感じられるようになりました。
コロナで苦境に追い込まれたエンタメ業界が、「何とか活動を続けるため」「ファンを喜ばせるため」と歩み始めたオンラインライブ。危機を乗り越えるための挑戦が、エンターテイメントの新しい楽しみを提供し、これまでの常識にとらわれない新時代を築いていくかもしれません。
収益機会としては、オンラインを活用した投げ銭に加え、プレミアム機能(有料視聴)も注目されており、既に独自サイトで有料オンラインライブを開催しているアーティストも出てきています。ユーザーが価値を感じれば、チケットも購入されるでしょう。ウィズコロナ時代のオンラインによるパフォーマンス、収益化の形から目が離せません。
本記事ではeMark+を用いて調査を行いましたが、eMark+の機能がパワーアップした新ツール「Dockpit(ドックピット)」が2020年10月にリリースされました。まずは無料版に登録して、実際にDockpitを体験してみてくださいね。
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