withコロナに対応するオンライン学習サイト〜プログラミングのTECH CAMPの集客施策を基に分析

withコロナに対応するオンライン学習サイト〜プログラミングのTECH CAMPの集客施策を基に分析

新型コロナの影響が長期化していますが、おうち時間をスキルアップに活用しようという動き、特にサービス業への大打撃を受けて、より将来性のある職種への転職を目指す動きが強まっています。今回は、オンライン学習サイトのユーザー数上位であるDMM英会話、TECH CAMP、Udemyの集客動向を比較した上で、ITエンジニア養成スクールTECH CAMPに注目し、コロナ禍におけるニーズの変化と集客戦略について考察していきます。


オンライン学習サイトへのニーズはどう変化したか

新型コロナウイルスの感染拡大により自宅待機を求められたり、在宅勤務により通勤時間がカットされたりしたことで時間に余裕ができ、空いた時間をスキルアップのために有効活用しようという風潮の高まりが見受けられます。中でもオンライン学習というスタイルは、自宅で好きな時間に勉強できるため通学時間がかからず、ちょっとしたスキマ時間を活用でき、感染リスクを懸念する必要もないことから、コロナ禍で様々なサービスが打撃を受ける中での伸びが期待されます。

そこで本稿では、株式会社ヴァリューズの行動ログ分析ツール「eMark+」を使用し、オンライン学習のトレンドを調査します。まず、2020年8月のeMark+の「教育」カテゴリ(ヴァリューズが独自に定義)のユーザー数上位10サイトを見てみましょう。

「教育」カテゴリのユーザー数ランキング(2020年8月、対象デバイス:PC)

1位の「DMM英会話」をはじめとして、英会話関連が4サイトを占めています。需要が高く、競争率の高いカテゴリとなっていることがわかります。2位のTECH CAMPはこの中で唯一プログラミングに特化し、エンジニアへの転職を支援するスクールで、3位のUdemyはプログラミングの他、デザインやビジネスなど多様なテーマを提供しています。

この上位3サイトに絞って、感染拡大が本格化した2020年3月からのユーザー数の推移を見ていきましょう。

オンライン学習3サービスのユーザー数推移(2020年3月~8月、対象デバイス:PC)

グラフを見ると、3月から5月にかけてどのサイトもユーザー数を増やしていることがわかります。中でもTECH CAMPが急成長を見せていますね。

IT業界は、パソコン一つあればどこでも仕事をすることが可能というリモートワークへの順応性の高さ、自粛の影響を受けにくいという将来性の高さから、関心が高まっている分野です。実際にTECH CAMPのサイトによれば、コロナ禍でもエンジニアの有効求人倍率は8倍以上、転職成功率もコロナ前と同水準の98.7%を維持しているそうです。このような背景から、コロナ禍におけるプログラミングスクールへのニーズが高まっていると考えられます。

3サイトの新規ユーザー率と直帰率を比較

ユーザー数の明らかな伸びを見せるTECH CAMPですが、それ以外の動きはどうなっているのでしょうか。他2サイトと比較しつつ、
● サイトに初訪問したユーザーの割合を示す「新規ユーザー率」
● サイトを訪れた際に着地したページだけを見てそのままサイトを離脱した人の割合を示す「直帰率」
の2つのデータの推移を見てみましょう。

ユーザー数上位3サイトの新規ユーザー率の推移(2020年3月~8月、対象デバイス:PC)

他2サイトに比べ、TECH CAMPは高い新規ユーザー率をキープしています。DMM英会話、Udemyが20%〜40%台を推移している一方、TECH CAMPでは70%付近を推移している状況です。

ユーザー数上位3サイトの直帰率の推移(2020年3月~8月、対象デバイス:PC)

また、3サービスの直帰率を比較してみても、TECH CAMPは他2サイトに差をつけて高いことが分かりました。

なぜ、このような傾向が見られるのでしょうか。次項では、コロナ禍においてユーザーがどのような経路を辿ってTECH CAMPのサイトに流入してきているのかという観点から、TECH CAMPの特徴について分析します。

流入元に見るTECH CAMPサイトの人気の背景

Webサイトへの流入には、広告や自発的な検索など様々な経路があります。TECH CAMPの場合を見てみましょう。

「TECH CAMP」サイトへの流入元(2020年3月~8月、対象デバイス:PC)

自然検索が圧倒的に優位に立っていることがわかります。多くのユーザーが明確な目的があって検索し、サイトに流入してきているということになります。

さらに、ユーザー数の多いコンテンツランキング上位10位までを示したものを見てみます。

「TECH CAMP」のコンテンツランキング(2020年3月~8月、対象デバイス:PC)

ここで注目して頂きたいのが、「/note」のディレクトリ配下のページ(上図赤線の項目)が上位10ページ中7ページを占めているということです。これはTECH CAMPのブログのページであり、プログラミングというトピックを超えて、生活の中のお悩み解決など様々なテーマで記事を投稿し、最終的に本来の目的であるスクールへ誘導する入口のような場所となっています。

ユーザーの興味を引くコンテンツを展開し、認知獲得等を目指すコンテンツマーケティングの取り組みが伺えます。

それでは、ユーザーはどのような悩みや疑問を持ち、実際にどのような検索をした結果流入してきているのでしょうか。

「TECH CAMP」検索キーワードランキング(2020年3月~8月、対象デバイス:PC)

コロナ禍の特徴として伺えるのが、Web会議アプリZoom関連の検索です。上位10ワードのうち3項目を占めているZoomは、学校の授業やリモートワークで頻繁に活用されるようになり、知名度をぐっと伸ばしています。話題性のあるトピックに着手し、素早くかつ丁寧に疑問に応えるコンテンツ作りが功を奏して、ユーザー数の大きな伸びに繋がっていると考えられます。

また、6位にランクインした「教師 年収」のキーワードからは、これから教師を目指す人向けの記事に流入しています。プログラミングは新学習指導要綱において、2020年から小学校で、2021年から中学校で必修化されます。特に小学校では担任が全教科を指導する必要があることから、プログラミングスクールの需要が高まっていると考えられます。例えばこうしたニーズを捉え、自社スクールへ誘導しようとする戦略かもしれません。

9位の「シリコンバレー ドラマ」は、IT業界で働くエンジニアを描いたコメディドラマに関する検索ワードです。コロナ禍でIT業界の強みが浮き彫りになり関心が高まったこと、在宅でドラマ鑑賞のためのまとまった時間を確保しやすくなったことが要因と考えられます。プログラミングスクールのサイトが、このようなエンタメ系のトピックもカバーしているということに、より多くの潜在ユーザー層を引きつけようという狙いが表れていると言えます。

2020年3月から8月までの上位検索キーワードを見てきました。時代の変化に応じて幅広いコンテンツをいち早く発信することで、サイトの認知を広めようとする戦略が伺えますね。また、これが高い新規ユーザー率と直帰率の大きな原因となっていることも読み取れます。

こうして潜在的にプログラミングに興味があったユーザーを集め、サイトや記事内でスクールの広告を訴求することで、スクール受講者獲得に繋げる施策を行なっていることがわかりました。

スクールユーザー獲得のための積極的施策

さて、前項ではいわば間接的にスクールユーザーを増やすための施策を分析しました。最後に、コロナ後(3月以降)にTECH CAMPが打ち出したキャンペーンや、他のプログラミングスクールと比べた強みについて分析していきます。

「コロナに負けるな!応援キャンペーン」
2020年7月13日~26日にかけて、受講料を5万円OFFにするというもの。6月で落ち込んだサイトユーザー数が7月に大きく持ち直した最大の要因と言えそうです。

「TECH CAMP」スクール公式Webサイトより(現在キャンペーンは終了しています)

「U-39受講応援キャンペーン」
2020年9月2日~9月15日にかけて、39歳以下の新規受講者を対象に受講料が3万円割引になるというもの。7月の施策の成功を受け、引き続き割引キャンペーンを行なっていたようです。

「TECH CAMP」スクール公式Webサイトより(現在キャンペーンは終了しています)

芸能人の起用
上述の2つのキャンペーンを見ればわかるように、「ぺこぱ」さんや「カジサック」さんなど人気芸能人を起用することで、プログラミングというジャンルに親近感を持たせ、インパクトを高めていることがわかります。またサイト内では、自身もエンジニアとして活躍されていた「ホリエモン」こと堀江貴文さんがTECH CAMPの仕組みを紹介する動画も視聴することができます。

オンライン学習への切り替え
TECH CAMPではコロナ感染拡大を受けて教室への登校を任意とし、受講者が自由にオンライン学習に切り替えることができるようになりました。今までもスキマ時間を活用してもらうためにオンラインという形態は存在していたようですが、挫折してしまうことを懸念して登校を選択していたユーザーも見られたと言います。

しかし、サイト上には教室学習時よりもむしろ学習満足度が上がったというデータが記載されています。通学がネックとなっている潜在的なユーザーの存在を考慮すると、この実績を元に、今後さらにオンラインでのニーズが増えていくことも見込まれます。すぐに完全オンラインに移行できるような充実した体制が整っていたことが、コロナ禍においてユーザー数を伸ばした成功要因のひとつと言えるでしょう。


「TECH CAMP」スクール公式Webサイトより(https://tech-camp.in/expert/safety)

参入のハードルを下げ、継続に導くサポート体制
TECH CAMPは14日間無条件返金保証を設けることで、未経験からプログラマーを目指す人が「自分に向いているかも分からないのに、一度受講を始めてしまったらもう後戻りできない」という状況になることを防ぎ、受講のハードルを下げているようです。またオンライン学習でも質問し放題、専属トレーナーのサポートが受けられる、受講者同士でアウトプットすることで怠慢や孤独感を排除する、など挫折させないためのカリキュラムが充実しています。プログラミング特有のハードルの高さや、オンライン学習特有の継続の難しさを解消するための工夫が見られますね。

まとめ

今回はオンライン学習サイト上位であるDMM英会話、TECH CAMP、Udemyを比較しながら、特にプログラミングスクールTECH CAMPに注目して、コロナ禍でのニーズの変化と、それに応えてさらなるユーザー獲得を目指す集客戦略について分析しました。時にプログラミングというジャンルを飛び越えながら、どのようにサイトの認知を上げていくかの工夫が見られたと思います。

今後もしばらくはwithコロナの状況が継続されることが見込まれ、これを機にスキルアップや転職を考える人々にとって、オンライン学習サイトは引き続き関心が高まるカテゴリになっていくことが予想されます。英会話、プログラミング、法律、ビジネス、デザインなどコンテンツは多岐に渡りますが、ユーザー獲得のためにはそれぞれの特徴を活かした集客戦略が重要となってくるでしょう。

今回注目したプログラミングは学校教育が必修化されたり、コロナ禍でIT分野の強みが浮き彫りになるなど、一層の盛り上がりが期待される分野ですが、オンライン学習サイトとして今後の注目はどこに集まっていくのでしょうか。今後の動向が気になるトピックです。

本調査が、皆様のお役に立ちますと幸いです。

【調査概要】
・TECH CAMP公式Webサイト(https://tech-camp.in/)
・全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報にもとづき分析
・行動ログ分析対象期間:2020年3月〜2020年8月の検索流入データ
※ボリュームはヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測
※対象デバイス:PC

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この記事のライター

1997年生まれ、大阪大学卒。データアナリストを経て、Webマーケティング・リサーチを軸に、コンテンツディレクション、SNS運用、デジタル広告運用などを担当。現在はフリーで活動しています。

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