コロナ禍ダイエットに注目するのはどんな人?
コロナウイルスは私たちの生活様式に様々な変化をもたらしてきました。そんな中「コロナ太り」というワードが誕生し、メディアで頻繁に取り上げられるようになりました。実際に、コロナ後にダイエットに関心を持つ人はどれだけ増えたのでしょうか。
まずは「ダイエット」と検索したユーザー数の推移を見てみましょう。
対象期間:2019年9月~2020年8月 対象デバイス:PC&SP
テレワークやオンライン授業が開始した2020年4月から5月にかけての伸びが著しく、その後減少傾向にあるもののコロナ以前よりも高ポイントを維持していることがわかります。
ダイエットへの関心は急激な高まりを見せていますが、コロナ前後で検索ユーザーの属性に変化は見られるのでしょうか。感染が本格化してきた2020年3月から8月にかけてのデータと昨年同時期のデータを比較し、まずは検索者の性別変化を見てみましょう。
●性別:上→2019年、下→2020年
対象期間:2019年3月~8月 対象デバイス:PC&SP
対象期間:2020年3月~8月 対象デバイス:PC&SP
いずれも女性ユーザーが7割近くを占め、コロナ前後での大きな変化は見られません。依然ダイエットは女性の関心が高いテーマのようです。
では年代別に見るとどうなっているのでしょう。感染拡大によって働き方や授業の受け方など、ライフスタイルに大幅な変化が生じた若年層・中年層の検索者が増加したことが見込まれます。次のグラフは、「ダイエット」検索者の年代別の割合を表したものです。
●年代別:上→2019年、下→2020年
対象期間:2019年3月~8月 対象デバイス:PC&SP
対象期間:2020年3月~8月 対象デバイス:PC&SP
いずれの期間も20代、30代、40代がボリュームゾーンであり、この順にユーザーが多くなっていることがわかります。高年層に比べ若年層・中年層の増加が見込まれましたが、どの年代も同様に検索者が増加したことで、男女比と同じくこちらも割合としては大きな変化が見られませんでした。
結果、コロナは確かにダイエットへの関心やニーズを高めてきましたが、性別・年代といった各属性で同様に検索者が増えたため、割合としてはある属性に大きな変化が生じることは無かったということがわかりました。
検索ワードに見るコロナとダイエットの関係性
それでは次に、どのような検索ワードがこのトレンドの後押しになっているのか調べてみます。「ダイエット」検索者がピークに達した2020年4月から5月において、主にどのようなワードと共に検索されたのか見てみましょう。多く検索されたキーワードほど大きく中心寄りに表示されています。
対象期間:2020年4月~5月 対象デバイス:PC&SP
「コロナ」や「コロナ太り」、「テレワーク」、「在宅」、「マンション」など、状勢に合わせたキーワードが多くみられます。リモートワークが主流になったことが、ダイエットに関するコンテンツへのニーズの高まりに繋がったことがわかります。またジムに通えない中で、自宅でできる運動や、気軽に取り組めるインテイク系(ここでは食事やサプリメント、プロテインなど体内に摂取するものと定義します)への関心の高まりも伺えます。
関連して、コロナ禍における検索ワードネットワークについても見てみましょう。
対象期間:2020年3月~8月 対象デバイス:PC&SP
ダイエットでは運動と食事管理の2つが軸になってきます。次項からはこのネットワーク上にある項目から、トレーニング系として「筋トレ」と「ウォーキング」、インテイク系として「プロテイン」を抜粋し、それぞれについて詳しく見てみます。
筋トレとウォーキング、コロナ前後の変化は
トレーニング系として、「筋トレ」「ウォーキング」と検索したユーザーそれぞれについて、コロナ前後での検索者数、検索者属性の変化を調査していきます。
<筋トレ>
対象期間:2019年9月~2020年8月 対象デバイス:PC&SP
「筋トレ」の検索者は、2020年4月から5月にかけ急増しています。その後減少していますが、全体としてはゆるやかな増加傾向にあることがわかります。最近は自宅で行える「宅トレ」が流行していることもあり、その主なメニューとして、飛び跳ねる必要がなく騒音問題に配慮でき、またスペースも取らない筋トレが注目されていることが考えられます。
次に属性調査として、男女比の変化とコロナ禍における年代別割合を見ていきます。
●「筋トレ」性別:上→2019年、下→2020年
対象期間:2019年3月~8月 対象デバイス:PC&SP
対象期間:2020年3月~8月 対象デバイス:PC&SP
検索ユーザーの男女比を見ると、依然男性が優勢ではあるものの、コロナ後の女性検索者が5%増加しています。後に紹介する「プロテイン」との組み合わせで伸びたことが考えられます。
●年代別:2020年
対象期間:2020年3月~8月 対象デバイス:PC&SP
年代別に見ると20代が最も多く、比較的若者向けのトレーニング方法となっていることがわかります。
<ウォーキング>
対象期間:2019年9月~2020年8月 対象デバイス:PC&SP
「ウォーキング」の検索者も「筋トレ」同様2020年4月から5月にかけて急増し、ピークを迎えています。
●年代別:2020年
対象期間:2020年3月~8月 対象デバイス:PC&SP
筋トレと異なるのは、40代がボリュームゾーンであり、50代も約15%を占めていることから、中年層に人気のトレーニング方法であるということです。筋トレよりも体に負荷がかかりにくく、自宅周辺で気分転換や散歩がてら行えることから、気軽に取り組むことができる点が人気の要因と言えそうです。
「筋トレ」と共に増える女性「プロテイン」ユーザー
効率よく筋肉を成長させるために欠かせない「プロテイン」。筋トレとセットにして摂取するイメージが強いですよね。前項ではより多くの女性が「筋トレ」に関心を持つようになったことがわかりましたが、「プロテイン」の検索者はどのように変化したのでしょうか。
対象期間:2019年9月~2020年8月 対象デバイス:PC&SP
「プロテイン」と検索した人はコロナ後に増加し、特に2020年4月から6月にかけて急増しています。それでは男女比の変化についても見てみましょう。
●「プロテイン」性別:上→2019年、下→2020年
対象期間:2019年3月~8月 対象デバイス:PC&SP
対象期間:2020年3月~8月 対象デバイス:PC&SP
検索ユーザーの男女比は、2019年の対象期間においては男性が優勢であったのに対し、コロナ後には女性が過半数を占める結果となっています。このような変化をもたらした要因は何なのでしょうか。その原因を探るため、「プロテイン」が主にどのようなワードと掛け合わせて検索されたのか見てみます。
対象期間:2020年6月 対象デバイス:PC&SP
検索者がピークに達した2020年6月には、「キン肉マン」「北斗の拳」「森口ひろ子」「マツコ」「マツコの知らない世界」という検索ワードがトレンドになっています。
TBSの「マツコの知らない世界」について調べてみると、2020年6月9日放送の「プロテインフードの世界」において、森口ひろ子さんをゲストに迎え、プロテイン特集が組まれていました。「be LEGEND」というブランドが手掛ける「キン肉マン」や「北斗の拳」をパッケージとするプロテインが紹介されていたことを受けて、検索者が増えていたようです。また女性が語るプロテインの世界、ということで、男性が摂るものというイメージがあったプロテインに親近感を持つ女性が増えたことが考えられます。
女性YouTuberがトレンドを後押し?メディアを分析
「プロテイン」は前述のように、テレビ番組の特集をきっかけにした検索者の伸びがみられました。それでは、コロナ禍において「ダイエット」全般の関心を喚起させる要因となったメディアは何なのでしょうか。
「ダイエット」検索者の流入サイトについて、ユーザー数順に上位5位を示したものが以下になります。
対象期間:2020年3月~8月 対象デバイス:PC&SP
トレーニング方法が視覚的・感覚的にわかりやすいという強みを持つYouTubeが5位にランクインしています。
日本のYouTubeチャンネル統計情報を掲載する「yutura」の記事によれば、2020年上半期の登録者数増加ランキングにおいて、宅トレを発信する「Marina Takewaki」さんが第6位にランクインしています。竹脇さんのチャンネル登録者数は2020年1月1日に6.3万人だったのが、10月7日調査時点でYouTubeを確認すると172万人まで増えています。
7月4日に放送された日本テレビの「マツコ会議」へのゲスト出演や、今ではTBSで自身の番組「Let’s 美バディ」を手掛けるなど、「宅トレを当たり前の世界に」をモットーに目覚ましい活躍をされている竹脇さん。このような女性フィットネス系クリエーターが火付け役となり、コロナの相乗効果もあって、このトピックへの注目が高まっていることがわかります。
まとめ
コロナがもたらした新しい生活様式はダイエットの需要を急増させ、その流れを汲んだTV番組やソーシャルメディアがさらなるユーザーを呼ぶという状況を生み出しています。元々ダイエットは女性の関心が高いテーマですが、男性優位だったトレーニングや食事以外からのインテイクについても、コロナを機に女性ユーザーが増えていることは興味深い変化です。
リモートワークは家庭との両立がしやすいため女性の社会進出を促し、その結果今まで男性が主になって選択していたダイエット方法を選ぶ女性が増えているのかもしれません。このトレンドは継続することが予想されるため、このような女性たちをターゲットにした商品やサービスに今後も注目していきたいところです。
本調査が、皆様のお役に立ちますと幸いです。
【調査概要】
・全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報にもとづき分析
・行動ログ分析対象期間:2019年3月〜2020年8月の検索流入データ
※ボリュームはヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測
※対象デバイス:PC&SP
大阪大学でポルトガル語とブラジル社会学を、カナダのビクトリア大学でビジネスを学び、2021年に新卒でヴァリューズに入社。データアナリストを経て、現在はマナミナのコンテンツマーケティングと自社の海外PRを担当しています。