モーメントとは?
消費者が商品やサービスを求める瞬間が、もっとも興味・関心が高まることから、この瞬間を「モーメント」と定義します。モーメントはUX(User eXperience/ 顧客体験)の最小単位でもあります。
モーメントが重視されるようになった理由
モーメントが重視されるようになった背景には、スマートフォン、タブレットといったモバイルデバイスの爆発的な普及によって、モーメントを理解するために必要な「行動データ」を収集しやすくなった技術的な進歩があります。
行動データ収集の積み重ねによりモーメントを集めやすくなると、消費者が何をどのような順番で見ているのか?それと同じ行動をとっている人はどれぐらいいるのか?事前に想定していた行動を、施策によって生み出せたか?といったUX改善に向けた内容をすべて事実(=モーメント)に基づいて分析・判断できるようになります。
属性データの分析では物足りない?
これまでのUX改善の手法は、属性データ(性別、年代、職業、環境など)を集め、そこから分析・改善策の立案、実行というプロセスを経ていましたが、属性データのみでは消費者の行動の意図(背景)まで読み解くのは困難でした。そのため、時として改善策が的はずれになってしまい、効果的な改善にたどり着くまでに時間がかかってしまうケースが出てしまいます。
よって、行動データ=モーメントから分析を行い、UX改善につなげるというフローのほうが、消費者に寄り添った現実的な施策を効率的に行えるようになります。
■モーメントの種類
モーメントは以下の6種類に分類されます。購入前から購入後までの各段階にモーメントがあります。
■マイクロモーメント
マイクロモーメントは、Googleによって定義された用語で、消費者が商品やサービスを「知りたい」「購入したい」という欲求が起きたときに、パソコンやスマホを利用する瞬間を指します。
生活者の意図を捉えるマイクロモーメント(Micro-Moments)
https://www.thinkwithgoogle.com/intl/ja-jp/marketing-strategies/search/micro-moments/「マイクロモーメント」とは、人々が「何かをしたい」と思い、反射的に目の前にあるデバイスで調べたり、購入したりという行動を起こす瞬間です。 マイクロモーメントを的確に「見極め」、生活者が求めている情報を「届け」、 そして効果を正しく「測定」すればモバイルが生み出す価値を最大化することができます。 ここでは、マイクロモーメントという生活者の新たな動向をまとめたデータや インサイト記事をまとめています。
■ZMOT(Zero Moment of Truth)
ZMOTは消費者が店(オフライン)に行く前段階で、すでに購入の意思決定を終えているという考えに基づき、来店前の事前調査(オンラインでの検索など)における意思決定の瞬間、となります。こちらもGoogleが2011年に「0番目の真実の瞬間」と提唱したモーメントです。
Winning the Zero Moment of Truth eBook (2011)
https://www.thinkwithgoogle.com/future-of-marketing/emerging-technology/2011-winning-zmot-ebook/Jim Lecinski shares how to get ahead at this critical new marketing moment, supported by exclusive market research, personal stories, and insights.
■FMOT(First Moment of Truth)
FMOTは消費者が店舗で商品を購入する際に、その可否を3~7秒かけて判断する「最初の真実の瞬間」です。この理論は2004年に洗剤やコスメで有名なP&G社が提唱したものです。
■SMOT(Second Moment of Truth)
SMOTは商品を購入後、使い心地や体験などから再度その商品を購入するかどうかを評価する「二番目の真実の瞬間」、となります。こちらもP&G社が提唱した理論です。
■TMOT(Third Moment of Truth)
TMOTは消費者が購入した商品やサービスのリピーターとなり、何度も使っていくうちに愛着が芽生え、愛用者になる「三番目の真実の瞬間」を表します。この理論もP&G社が提唱しています。
マイクロモーメントからTMOTまでは、商品(サービス)購入前~購入後までの一連のサイクルになっています。
■トリガーモーメント
商品やサービスの購入に当たり、誰もが来店前に意思決定しているとは限らないため、ZMOT理論が通用しないケースも出てきます。
そのため、商品(サービス)にある各モーメントの中で購入への引き金(トリガー)となる重要なモーメントを「トリガーモーメント」とします。これは電通が提唱した理論です。
トリガーモーメントの捉え方として「カードローン」を挙げてみます。たとえば、ある消費者が結婚式に招待され、そのためにスーツに関するサイトを検索・閲覧していたとします。この時点ではとくにカードローンへの検索などは行っていません。しかし、数日後にご祝儀やスーツ代といった不意の出費に気づき、カードローンのサイトを訪問……この流れの中でトリガーモーメントは「スーツに関するサイトを検索・閲覧」になります。
次世代のマーケティング基盤となる電通の「People Driven Marketing 2.0」
https://japan.cnet.com/article/35127875/電通および電通デジタルは2018年9月18日、都内の電通ホールで「People Driven Marketing実践セミナー2018」を開催した。PDM(People Driven Marketing)とは、電通グループが提唱する「人」を基点にした最先端のマーケティング手法を統合したフレームワークだ。
モーメントの抽出方法
モーメントを抽出する手軽な方法は、検索データやSNSの書き込みの収集、分析です。
書き込みデータのテキストマイニングといった手法を用いて分析すれば、時間、場面、場所、気分といったモーメントの候補を抽出できます。
まとめ
商品やサービスには購入前から購入後まで、いくつものモーメントが潜んでいます。こうしたモーメントを分析していくと、購入に対して影響度の高い行動を抽出できます。
それによってUX改善が積み重ねられ、さらに行動データも集まっていきビジネス成果の向上が期待できるようになります。
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