成果が出るランディングページを作るのに超重要な「ユーザーの言語化」とは!?【トラとキリンのマーケティング研究】

成果が出るランディングページを作るのに超重要な「ユーザーの言語化」とは!?【トラとキリンのマーケティング研究】

ランディングページ(LP)制作において、ターゲットユーザーの「言語化」を行わないとメッセージが曖昧なままプロジェクトが進んでしまい、結果よく分からないLPが出来上がる……ということが起こりがちです。精緻な「ユーザーの言語化」はどう行うのか。リラクゼーションドリンク「CHILL OUT」のLPを例にヴァリューズの岩間と谷口が解説します。「トラとキリンのマーケティング研究」連載の第1弾です。


ターゲットユーザーの「言語化」が多くのLP制作で足りていない!

岩間:今日は成果が出やすいランディングページ(LP)の作り方についていろいろ教えてもらいたいです。

岩間隆志朗(トラ)
株式会社ヴァリューズのデータプロモーション局にて、WEB戦略立案、コミュニケーションデザイン設計を行う

谷口:では、LP制作で1番大事だと思っていることをお伝えしますね。

谷口慶次(キリン)
大手金融機関、博報堂グループ代理店のマネージャー職を経て株式会社ヴァリューズに入社。運用型広告における戦略立案から実行、分析、改善まで一貫して従事する。Google広告認定プロフェッショナルの資格も持つ

岩間:なんでしょうか。

谷口:それは、LP制作では「ユーザーのニーズを理解しよう」という前提はみなさんあるんですが、形式だけで終わってしまっている場合が多いな……ということなんです。

岩間:ふむふむ。

谷口:LPOなど具体的な方法論は世の中にたくさんありますが、その前段で「ユーザーの言語化」ができていないLPが多いんじゃないかと思いますね。だから中身をかっこよく作ったとしても、ユーザーから見たら何が言いたいかよく分からない。それでPVもつかないという、悪循環にハマっているんです。

岩間:なるほど。たしかに言われてみれば、「これ何がしたいんだろう」みたいなLPも多いですよね。

谷口:ユーザーのターゲティングはみなさんされているんです。でも、どんなユーザーなのかを「言語化」する過程をすっ飛ばしていることが多い。これがないと、関係者間で共通認識がうまく作れず、見た目だけかっこいいアウトプットを作って自己満足に終わってしまうんです。

岩間:おおっと、手厳しいですね谷口さん。

谷口:初回から飛ばしていきますよ。でも言語化はほんと大事で、なぜかというと「言葉は思考を可視化できるツール」だからです。感じていることは人それぞれ違いますが、言葉があると認識を揃えることができるんです。

岩間:「思考を可視化できるツール」って言い方かっこいいですね。

谷口:今は世の中にデータもたくさんあるし、企業内にもたくさん溜まっています。だからみなさんターゲットの情報収集はしっかりしている。でもそれを使えるデータにするには、情報を精査して要素分解していく必要があると思うのです。

岩間:要素分解、ですか。詳しく教えてください!

多角的にユーザーの興味関心を深掘ることが超重要な理由

谷口:「ユーザーの言語化」にはいろんな視点があります。最初に出てくるのは、「商品に興味関心があるのは誰か」というポイントでしょう。でもそこだけに留まらず、「その人はふだんどういう暮らし方をしているのか」「どんな音楽や食事を好むのか」など、違った角度から細分化していく必要があります。

岩間:それが要素分解ということですね。

谷口:そうです。商品に興味があるユーザーと一口に言っても、今はみんなが右向け右で走っていく時代ではなく、個人主義の時代です。興味関心はどうなのか、検索しているキーワードは何かなど、一見関係ないところでユーザーの細分化、精緻化が大事なんです。

岩間:なるほど……!

谷口:では、より理解を深めるために具体的な例で考えていきましょう。最近話題のリラクゼーションドリンク「CHILL OUT(チルアウト)」のLPを取り上げてみます。

「CHILL OUT」のLPトップ画面

岩間:「チルする?」ってやつですね!僕も飲んだことあります。

谷口:個人的にこのLPはとっても練られていると思うんです。以下、簡単にターゲットや訴求軸をまとめます。

キャッチコピー「そろそろ、疲れてない?」
ターゲット

リポビタンやアリナミンの様な伝統的な栄養ドリンクを購買するユーザーではなく、

レッドブルやモンスターを好む若年層

訴求軸

「ストレス社会を頑張る」というのではなく、「休憩しようよ」という真逆の訴求を実施。

ファーストビューでは「スタイリッシュ」で「ワクワクする感じ」の

ポップなデザインを置いている

岩間:これを見ると、ざっくり「疲れている人をターゲットに、リラックスしようよと訴求する」という感じですかね。

谷口:そうなりますね。じゃあ「疲れている人」って誰でしょう。たとえばサラリーマンと考えてみますが、それでもいろんな人がいますよね。

岩間:確かにサラリーマンだとまだ広すぎですね。

谷口:そこでマインドマップ的にいろいろな方向からターゲットを定義づけしていきます。たとえば「預貯金はいくらか?」とか「家族との関係は?」のような視点はどうでしょうか。そしてそれぞれの項目をできるだけ簡潔な一文で表していきます。

ターゲット例サラリーマン
預貯金は?

0円〜300万円程度(例)

訴求軸

東京の家賃5万〜8万程度の家で一人暮らしなので寂しい。地方に実家がある(例)

谷口:CHILL OUTの場合、預貯金の多い少ないはそれほど関係ないかもしれません。だとしても、一旦考えておくことには意味があります。貯金額は関係ないという共通認識を得られ、バイアスを除くことにもつながります。

岩間:なるほど。一文で表すと分かりやすくて良いですね。

谷口:じゃあ、サラリーマン以外で「疲れている人」を考えてみましょう。たとえばゲーマーやeスポーツ選手とかはどうでしょうか。ゲームは画面を見続けるのでめちゃくちゃ集中しますし、かなり疲れます。そうしたとき「リラクゼーションドリンクでひと休みはどうですか」という訴求は効くかもしれません。

岩間:確かに、ピンときますね。

谷口:ターゲット層としてはそこまで広くないかもしれないですが、アイデアを出すことが重要なんです。なぜなら、このプロセスを踏んでいくことでユーザーとの距離を縮めることができるからですね。

岩間:距離、ですか?

谷口:そうです。チルアウトを購入するユーザーが、LPやクリエイティブに感じる「心の距離」です。設計の段階で精緻にユーザーの言語化を行うことで、ターゲットにグサッと刺さるLP制作ができるはずだと私は思ってます。

岩間:なるほど……!ユーザーとの「距離」というのは意識していきます。

谷口:じゃあ、岩間さんも何かターゲットを広げるアイデアを出してみてください!

岩間:いきなり無茶振りきましたね……! でも僕個人的にCHILL OUTってなんかかっこいいイメージがあるので、クリエイティブ系の職業の人が好きそうな気がします。そういう人が興味を持ちそうなこと……。たとえば「インテリア」とかはどうでしょうか。部屋の模様替えをしたいけど、仕事に追われていてなかなかできない……みたいな人です。

谷口:とっても良いですね!全然アリだと思います。このように、直接商品には関係ないことでも議題に挙げて言語化を行うことが、ターゲットの精緻化につながるはずです。

CHILL OUTのLPから見えてくる精緻なターゲットの定義づけ

谷口:CHILL OUTのLPは、上記で例に挙げたようなターゲットの言語化が設計段階でしっかり行われていたはずだと私は思います。まず、LPのデザインは非常にすっきりとしていて、あまり文言が多くありません。

岩間:確かに。Top画面にも全然文字がないですね。

谷口:これは若年層に向けたコミュニケーションの取り方を意識していると思います。文字ではなく、視覚的・体験的に印象を伝えていく。インスタなどのSNSで即時的に直感でコミュニケーションを進めていく若者たちにフィットさせているんです。

岩間:なるほど!

谷口:あと、「この成分があるからリラックスできる」といった商品の機能性(ベネフィット)はあまり重視していない印象です。訴求しているベネフィットはほぼ「ストレスから解放されますよ」ということだけ。機能軸での積極的な訴求はしていません。

岩間:機能というよりは「これ飲んでる自分かっこいい」とユーザーが思えることが価値、みたいな?

谷口:まさにそうです! ある種のシンボル的な訴求というか、「チルする」という文化自体を訴求しているのではないかと思いますね。私が言いたいのは、「ターゲットを分析せずにその結論って出ますか」ということです。若者のスタンスを深く理解していなければ、この軸一本に絞る決断は難しいでしょう。

岩間:あと「AIが導き出したオリジナルフレーバー」みたいな訴求もありますね。

谷口:お、いいところに目をつけましたね。別にわざわざ「AIで導き出した」とか言わずに、「~味」みたいなものでも良かったはずです。これもターゲットの関心が高い要素をチョイスしていると思いますね。「AI」みたいな言葉は、たとえばITベンチャーやスタートアップの人たち、あるいはフリーランスエンジニアなどに好まれそうです。

岩間:確かに……! 仕事の合間にCHILL OUTを飲んでいる絵が浮かびますね。

谷口:もうひとつ、最後のダメ押しポイントです。本来LP制作において、商品の思想やコンセプトなどはファーストビューに持ってくるのが鉄則。しかしCHILL OUTの場合はラストに持ってきています。

岩間:ほんとだ、なぜですか?

谷口:これもさっきの「若年層は文字よりも視覚的なコミュニケーションを好む」という点に起因していると思います。ユーザーがサイトに入ってくる→なんかよくわからないけどいいなと思って読み進める→雰囲気をキャッチしてもらったあと、言葉でコンセプトを説明する、という設計です。ターゲット起点で考えれば、セオリーどおりでなくても機能するんですね。

谷口:こんなところで本日の話はおしまいです。ぜひLP制作の際に活かしてみてください。

岩間:はい、そうします! 今日で谷口さんが言いたいことはすべて伝えられましたか?

谷口:い〜え、まだまだ話し足りないですね。成果を出すためには、まだまだ意識しないといけないことがあります。

岩間:おっ。じゃあ次回も楽しみにしていますね。

谷口:ええ。首を長―くして待っていてくださいね。

岩間:(キリンだけに、か……………)

▼ヴァリューズ社の提供するWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」では、検索者が関心を持っているワードの分析や、検索後の流入先LPの分析などがブラウザ上で簡単に行え、ターゲットユーザーの精緻化につなげられるツールです。無料版もありますのでぜひお試しください。

dockpit 無料版の登録はこちら

この記事のライター

マナミナ編集部でデスクを担当しています。新卒でメディア系企業に入社後、フリーランスの編集者・ライターとして独立。マナミナでは主にデータを活用した取り組み事例の取材記事を執筆しています。

関連する投稿


【3/25(月)開催セミナー】経営計画・事業報告に役立つリサーチ技法 – リサーチャー菅原大介さんが進め方とアウトプットを事例で解説

【3/25(月)開催セミナー】経営計画・事業報告に役立つリサーチ技法 – リサーチャー菅原大介さんが進め方とアウトプットを事例で解説

ユーザーリサーチの調査手法をまとめた記事がnote公式マガジンにも選出されているリサーチャー・菅原大介さんによる「経営計画・事業報告に役立つリサーチ技法」解説セミナーを3月25日(月) 17:00〜18:00に配信します!上場企業の中期計画作成に際し活用されているリサーチデータの事例をはじめ、情報収集や環境分析の効果的な進め方を、3C分析や競合調査、ケーススタディを交えて解説します。また、経営方針の整理や討議に役立つSWOT分析やバリュープロポジションキャンバス、リーンキャンバスといった成果物についても具体例をご紹介します。


企業イメージ経営 ~ キャラクターの威力

企業イメージ経営 ~ キャラクターの威力

企業イメージと聞き、最初に思いつくのはロゴでしょうか、色でしょうか、それともキャラクター?昨今では、キャラクターを用いての広告戦略は企業だけでなく、地域おこしなど、あらゆるところで目にするようになりました。誰も彼もが深い意味もなく「かわいい」と愛着を感じてしまう「ゆるキャラ」や企業のイメージキャラクター。実はそこに認知心理学が深く関わっているようです。本稿では人心を捉えるために計算尽くされたキャラクターの威力について、株式会社創造開発研究所所長を務める渡部数俊氏が解説します。


Web行動ログデータで読み解く"ロイヤル顧客"のリアル|日本マーケティング協会共催セミナーレポート

Web行動ログデータで読み解く"ロイヤル顧客"のリアル|日本マーケティング協会共催セミナーレポート

公益社団法人日本マーケティング協会と株式会社ヴァリューズによる共催セミナーが開催されました。本セミナーのテーマは、「ロイヤル顧客のリアル」。自社の商品を継続的に購入してくれるロイヤル顧客ですが、効果的なアプローチが分からずお悩みを感じている企業も多いのではないでしょうか。今回は、ヴァリューズの持つ行動ログとアンケートによってロイヤル顧客の実態を調査し、企業がロイヤル顧客マーケティング施策において重視すべきポイントを、データサイエンティスト協会 事務局長/新生フィナンシャル株式会社 CMOの佐伯 諭氏を迎えディスカッションしました。


TDとは?リスティング広告の成果を高める作成方法を徹底解説

TDとは?リスティング広告の成果を高める作成方法を徹底解説

Web広告におけるタイトルと説明文を意味するTD(Title and Description)。文章次第でユーザーが広告をクリックするかどうかが決まるため、TDは広告の成果に直結する重要な要素です。 この記事では、TDの意味や目的、作成方法などについて詳しく解説します。TDを作成する際に注意するべきことや広告の成果を高めるためのポイントも紹介するので、広告運用の参考にしていただければ幸いです。


キーワードは「価値創造」。日本のマーケティングの未来像を語る【日本マーケティング協会会長 藤重氏×ヴァリューズ代表 辻本】

キーワードは「価値創造」。日本のマーケティングの未来像を語る【日本マーケティング協会会長 藤重氏×ヴァリューズ代表 辻本】

コロナ禍を経て大きく変わりつつある企業の経済活動。日本企業のマーケティング活動の現在地と未来図、そしてマーケターが取り組んでいくべきことは何か。日本マーケティング協会会長 藤重氏とヴァリューズ代表 辻本による対談をレポートします。


最新の投稿


日本テレビ、AR撮影装置を活用した「没入体験型CM」の実証実験を開始 GW期間内に大型ショッピングモール内にて

日本テレビ、AR撮影装置を活用した「没入体験型CM」の実証実験を開始 GW期間内に大型ショッピングモール内にて

日本テレビ放送網株式会社は、日本テレビが事業展開する XR分野のコンテンツ制作および開発支援サービス『日テレXR』において、新たな広告没入体験ができるサービスの実証実験を開始しました。


ギブリー、生成AIがマーケティング業務を支援するサービス「マーケGAI」の提供を開始

ギブリー、生成AIがマーケティング業務を支援するサービス「マーケGAI」の提供を開始

株式会社ギブリーは、生成AI技術を活用してマーケティング業務を自動化・効率化するAIマーケティング支援ツール「マーケGAI」の提供を開始したことを発表しました。


「○○とは」検索に見るトレンドや生活者の気になりごとは?「インボイス」「NISA」「猫ミーム」など

「○○とは」検索に見るトレンドや生活者の気になりごとは?「インボイス」「NISA」「猫ミーム」など

検索エンジンで調べ物をするときによく使われる「〇〇とは」検索。今回は、直近1年間で検索数が多かった注目ワードや、時期によって急上昇したトレンドワードをご紹介します。「とは」検索から見えてくる最新の流行りやみんなの関心事を読み解いていきます。


GWに10連休を取得する人は約2割!連休の予定はインバウンドの影響か「国内旅行」が下降し「家事」が上昇【mitoriz調査】

GWに10連休を取得する人は約2割!連休の予定はインバウンドの影響か「国内旅行」が下降し「家事」が上昇【mitoriz調査】

株式会社mitorizは、消費者購買行動データサービス「Point of Buy®」の会員に対し「大型連休に関する調査」を実施し、結果を公開しました。


Supportive fans are willing to spend money? “Oshikatsu” insights & applying it to marketing strategy

Supportive fans are willing to spend money? “Oshikatsu” insights & applying it to marketing strategy

“Oshikatsu” stimulates consumption in Japan. In fact, more than 80-90% of teens answered that they have an “Oshi.” We will deepen our understanding by investigating the current state of the “Oshikatsu” market, behaviors like time and money spent on “Oshikatsu,” and its connection with collaborations, etc. in marketing.


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

ページトップへ